Alan R. Moon
ムーンは旅ゲームがお好き!?
ヘビーゲーマーからはこう酷評されるだろう。アランムーンは切れ味がない、と。しかしそれは冷静にムーンデザインのゲームを見れば間違いである事に気づく。ムーンデザインの基本はアブストラクトである。テーマ性のあるゲームと誰もが思ってしまうかも知れないが、根本に流れるのはアブストラクトといった無味乾燥としたものだ。ムーンはそれを見事にテーマのあるゲームに変貌させてしまう。ここらへんはテーマへの変換が下手なクニッツィアと対比させると面白いかも知れない。
アブストラクトといえば将棋やチェスのような完全実力ゲームであるが、ムーンは実力主義を見事に緩和させてしまうのだ。プレイヤーの失敗を優しく包んでくれるデザインこそムーンの持ち味なのである。
やってみれば分かるが、ムーンデザインのゲームでは全てのプレイヤーは最後まで頑張れる。誰もが勝つチャンスが残される。アブストラクトのように積み重ねる必要があるにも関わらず、圧倒的な実力がものを言わないからこそ切れがないと言われるのだろうが、そこがムーンの良いところなのだ。簡単に言えばミスが許されるアブストラクトである。
またムーンのゲームには旅ゲームが多い。まったりとムーンの作り上げた世界に浸るにはぴったりのテーマだろう。
アランムーン、プレイヤーの失敗を優しく包み込んでくれる至高のデザイナーである。
ムーンは、ボードゲームを作ると、その同じシステムを使ったカードゲームを出すという面白い特徴もある。ユニオンパシフィックがぼろ儲けカンパニーに、エルフェンランドがエルフの玉座に、サンマルコがカナルグランデに、チケットトゥライドがチケットトゥライド・カードに。
ムーンはウォーゲームブームの火付け役であったAH社のデザイナーだったので、昔ながらのデザイナーには懐かしい人でもある。