Alan R. Moon

AMIGO

2〜6人
150分

ユニオンパシフィック

ゲーム説明

近世のビジネスにおいて切っても切り放せないのは株の存在だろう。
株式があるからこそ、留まることなく資本主義経済は発展してきた。
今、鉄道王カーネギーと中国人労働者の手によって、アメリカ横断鉄道が完成したのだ。
各鉄道会社は覇権をかけて拡張路線に走る。
マイアミ・ニューヨーク間開通、ロサンジェルス・サンフランシスコ間開通……
会社の主たる株主は、ばく大な利益を得ようとマネーゲームに興じた。

プレイ感

シミュレーションゲームからドイツファミリーゲームまでのつなぎ目にあるゲームはいくつかある。シミュレーションゲーマーが現在のドイツゲーマーの基盤となっているのは明らかだが、どのように過渡期を過ごしてきたのだろうか。その答えのひとつがムーン作エアラインズだ。そのリメイクである本作ユニオンパシフィックをようやくプレイ出来た。兄、TAM夫妻、たっかんとの五人プレイにて。

結構昔にルールを読んだきりだったので、ルールブック片手に説明するがどうにも的を得ない。見た目はチケットトゥライドに似ている事から、つい同じ列車で駅間を繋げばいいと思ってしまうが、箱の絵を見ると駅の間は同色駒1つであるようだ。

スタート後、やたらともたつく。手番に行える事は、路線の拡張か株式の公開なのだが、路線の拡張がどうにもややこしい。各鉄道会社によって敷設出来る線路の種類が決まっているのだが、線路カードと地図と手札の株と3つを見比べながらやらないといけないのでやたらと煩雑できょろきょろしてしまう。

こりゃ駄目ゲーかも。。。


線路は4種類あるのだが、これがさっぱり判別出来ず。チケットトゥライドと違って、色は鉄道会社のものであって、誰のものでもない。株を手に入れて、利益を得ればいい。左に4枚表向きに並んでる株券を取るか、裏向きの奴を引くか選ぶ、チケットトゥライドと同じシステムである。

チケットトゥライドと違いコンポーネントの見栄えは悪く、しかもゲームに重要な路線の種別が凄く分かりにくい。更に10色もある鉄道会社の株式の色と駒の色を何度みても見間違うのだ。この不親切なコンポーネントはゲーム最後まで響くが、初めの決算が起きたころようやくゲームが見えてきた。


株券はこのように公開しておかないと手札に持ってても価値はない。公開する為には手番を消費しなくてはならない。また拡張した駒数がその会社の大きさ(収益)となる。このゲーム最大の難点、使える線路の見分け方は、カードの下に線路の種類として描かれている。これとボードの絵の線路と手札の線路カードを見比べて使わなければならない。みてもらえれば分かるように緑は4種類、黄色は2種類、茶色は1種類といった感じである。また数字は駒の総数である。

最初の決算で、TAM嫁が見事な株式公開で完全にリード、二番手はたっかんである。わしはもう一巡粘ろうと株式の公開をしぶったおかげで、水色の鉄道会社の株を手札に持ったまま、1株出しただけのTAMに筆頭と二番手の独占を許してしまった。そしてわしの将来の展望である赤の株も公開している。

※ 手札にある株は意味がない。公開した各鉄道会社株の筆頭と二番手だけが配当を貰えるのだ。また自分だけしか株を公開していない鉄道会社は独占となり、両方の配当を貰える。

最初から一手の差でほぞを噛むわし。ちきしょー。株式の公開をほとんどしなかった兄は手札にごっそり鉄道株を持ったまま配当ほとんどなし。

※ 路線を拡張した時に株券を貰える。つまり兄は株の公開をしなかった=株券を手札にいっぱいとなっている。

手番に出来る事は、線路カードに合わせた列車駒を置いてから場にある株券を1枚手札にするか、手札の株券を公開するか(二色なら1枚ずつ、同色なら何枚でも一気に公開出来る)だけである。

この二択の中に凄まじいジレンマが生まれる。筆頭株主になるには、場にある株券を取りたいのだが、手札の中に持ったまま決算が来てしまっては元も子もない。ターン数が少なく、いつも心の中で「やばい、やばい」と思ってしまう訳だ。また株券を公開したところで、相手がどの株を集めてるのかが分かるので、「公開はやめてくでぇ」と心の中で思う訳だ。どんなけ、もどかしいねん!!


チケットトゥライドと違うのは、各駅間は1つしか駒を置けないところ。1個おけば繋がった事になるのだ。つまり同一駅間で混在する事が出来る場所がいくつもある。茶色が勢力を伸ばし始めたので、茶色を公開する。もったいないのは同じ株券なら何枚でも一度に公開出来るのだが、別々の色なら1枚ずつの2枚までしか出せないのだ。同色を溜めに溜めてドンと出したいところだが、決算が先に来てはどうしようもない。

決算は合計四回行われるが、これが何時行われるかさっぱり分からない。これがすさまじくもどかしいのだ。欲しい株を集めるには拡張しなければいけないのだが、株を公開しなければ、配当は貰えない。手番に行えるのはどちらか一つだけ。

そうこうしているうちに早くも2度目の決算が!

(|| ゜Д゜)ガーン!! 早すぎっ

もう独占は許せないと伸びている水色の株を公開したのはいいが、赤色の独占をまたしても許してしまった。おろかだったのは、途中、中部の鉄道の株が誰も持っていないので、うつつを抜かして手番を消費したことである。
TAM嫁、たっかんと大きくリードを広げる。たっかんは東部のオレンジと黄色の鉄道会社で独占してごっそり配当をゲットしている。

あぶはち取らずは駄目だ。このゲームはやりたいことがいっぱいあるのに手番に出来る事が少なすぎる。こうなりゃ赤に運命を全てかけてみる。ひたすら赤の鉄道を伸ばした。三度目の決算の前にどうしても赤の株を公開しなければならない。そして公開するのはTAMの野望を十分にくじく枚数でないといけない。
「まだ決算は起きるな、起きるな」と願いつつ、伸びの大きな赤の鉄道会社の株を集めるわし。ようやく4枚目をゲット。その間にTAMは既に二枚公開して余裕の体。

※ このゲームのよく出来ているところは各鉄道会社によって伸びの上限が決まっている。小さな会社はすぐ頭打ちするが株数も少ないので独占しやすい構造になっている。決算は、鉄道の駒数+1(百万$)である。二番手株主はこの半分の配当だ。
また株は一度に同一の株を複数か、二社の株を一枚ずつ公開かのどちらかが出来る。

TAM嫁は最初に独占した白の鉄道会社の株をどんどんと公開して、今は三枚となった。元々8枚しかない小さな鉄道だけにこれではお手上げである。余裕をもって白の鉄道会社の拡張を行っていく。

相変わらず恐ろしい引きの良さである。もんどりうつような祈りのおかげで決算を迎える事もなく手番がきた。

「よっしゃあ、赤株公開や!」

ごっそんと四枚だす。

TAM「うわ、やられました」

ふう、助かった。


溜めに溜めた赤株。わしゃこれで勝負じゃああ!! 色によって伸ばしやすさやコマ数も違うので、この色の鉄道会社は得だとかの戦略研究も出来る。ちなみに緑、赤の順に伸ばせる駒が多い。

なんつう安堵感。ここでようやく余裕を持ってユニオンパシフィック株を公開した。この株はリメイク前のエアラインズにはないもので、ボードには駒がない。代わりに決算数ごとに配当が決まり、五番株主まで配当を貰えるのだ。

そうこうして三度目の決算も早めにきたが、相変わらずTAM嫁とたっかんのリードは揺るがず。悔しいのはわしのユニオンパシフィック公開に併せてTAM嫁も公開してきたことだ。三回目の決算ともなると配当はかなりでかくなる。


左上のTAM嫁の白の独占がでかい! 独占すると筆頭、2番と両方のお金が入るので、阻止しないと駄目だったのだが、なかなかやりたいことが多くて出来ない。さらにぐいぐいと白の路線を拡張するTAM嫁。

そこから四度目の決算までかなりの時間がかかった。わしはなんとかTAM嫁の白の独占(すでに10駒もおかれている大勢力である)を防ごうと株をめくるが、関係のない色ばかり。すぐにユニオンパシフィックに交換する。当然路線拡張はひたすら赤である。

※ 要らない株はユニオンパシフィック株に交換出来る。

くっそー、ひけひけー!

兄もユニオンパシフィックの強力さに魅了されて、TAM嫁、わし、三人でひたすらユニオンパシフィックの株を集める。手番順的には、わしは兄の後なので、奴が公開したと同時にわしもユニオンパシフィックを公開するつもりである。TAM嫁は一枚遅れているので、ユニオンパシフィックにおいてはわしがリード権を持っている。

ようやくたっかんが、白の株を一枚公開。そのターンにわしも白の株をようやく引いた。結果的にこれがまずかった。1枚リードしていたユニオンパシフィックをビハインドしてしまったのだ。山札の残り枚数も少なく、決算は近い。さすがに我慢しきれずにまずユニオンパシフィックを公開。それに併せてTAM嫁、兄と公開した。兄が筆頭、わしが二番手、TAM嫁が三番手である。

運命はもう一巡待ってわしに白株の公開を許さなかった。最終決算がやってきたのだ。


ラストはユニオンパシフィック株をやたらと引きまくる。一番左の株券であるが、こいつの配当がかなりデカいのだ。赤は十分に伸びた。問題はユニオンパシフィック株で二番になってしまったのが不覚であった。

その差1200万$まで詰め寄ったが追い込み届かずTAM嫁の勝利。無念。
手札に株をかかえた兄がべべやと思われたが、TAMがべべに転落していた。うーん、スタートがわしと同じく悪かったな。

所要時間 2時間半!

TAMのコメント

うわ、やばいっすわ、これ。無茶苦茶おもろいですやん! まじやばい。

わし「だから前に新品あるからアンドロメダと併せて売ったろつうたのに要らんちゅうから。もうヤフオクで売ってもたわ」

これ完全にチケットトゥライドよりおもろいですやん!! なんであっちが大賞?

わし「チケットトゥライドは初心者に分かりやすいねんて。これは時間かかるし、ちょっとむずいからな。中級者以上には当然こっちでしょう。ゲーム内容ちゃうけどな」

なるほど。いや、先にやったオアシスもおもろかったですが完全に霞みました。

先頃、TAMはヤフオクでこれを購入したとさ。

TAM嫁のコメント

お金が入るゲームって楽しい。

TAM「おいおい(笑)」

ソマーリオ

ムン様。もう一度その呼称でよばせてください。
なんつうおもろさ。確かに線路は分かりにくく、駒も分かりにくい。一体何色やねんと思うこと多々あり。そしてその認識の悪さから超長いゲーム時間。しかしながらこの2時間半の間、一刻もだれることなく、すさまじいまでのジレンマを味わい尽くす。株を手に入れるか、公開するか、もどかしいったらありゃしない。ほとんどの時間はボードの見難さなので、見るのに慣れたら90分くらいでいくんやろか。

参りました。これ、ムン様の最高傑作じゃないでしょうか? いや、あきお5大ゲームを入れ替えるほどの衝撃。残念な事にバッティングゲームなので人数が3人以下だとまったく面白くないらしい。そういった意味で総合力では洗練されたマンハッタンに軍配があがるだろうが、とうとう入れ替えを決定する。経済ゲームNo1だ! ここまでおもろいとやはり最上級のに変更せざるを得ない。

初めてアクワイアをやった時、これに勝る経済ゲームはないと感じたが、これは勝るとも劣らない。マンハッタン、アクワイア、ユニオンパシフィックを3大経済ゲームといって差し支えないだろう。経済ゲーム好きなら是非3つともやってもらいたいが、こいつは絶版か。リメイクして絶版は痛いよなあ。でも再びリメイクしそうなゲームではある。

リメイク前のエアラインズは、ユニオンパシフィック株がなく、誰も使わないルールがあるらしいが、地図が見やすいらしい。後半無意味な株を防ぐためにユニオンパシフィック株を加えたらしい。しかしこのゲーム、最大の欠点は線路の見難さであるので、甲乙つけがたいかも知れない。

またこのゲームによく言われるのは、決算時期がまばらで運の要素が強くなり、早くに決算が出てしまうとゲームの楽しさを味わえない時があるらしいので、下記のヴァリアントを試してみると良いかも知れない。(URLを失念してしまった。申し訳なし)

私達がゲームをする時は4枚の配当カードを次のように、山札に入れます。
@ルール通り上から6枚には入れません。その後の18枚の中に1枚目を入れます。
A次に残った全ての山の中に1枚を入れてよく混ぜます。
Bその山札をA・B半分に分け、それぞれA・Bに1枚ずつを入れてよく混ぜます。
CAの上にBを。その上に18枚の山を。そしてその上に6枚の山を置いて完成です。


いずれにせよ、株の不安定さを見事に演出した傑作ゲームである。これをカードゲームにしたぼろ儲けカンパニーがあるが、カードゲーマーにはこちらが好評である。会社(商品)に特性がないのは残念だが、決算カードが10枚あり、徐々に決算時期が解るようになっているので運の要素が少なくなっている。逆に一発で決算という不安定さがボードゲーム版にはあり、これが死にそうに身悶えするジレンマとなっているのでここらへんは好きずきである。

ちなみにここを見てもらえれば、このゲームの雰囲気がさらにアップして楽しさ倍増。ユニオンパシフィックのビッグボーイ、無茶無茶かっちょええやんけえ!! なんか鉄道マニアの気持ちがちょっとだけ分かった。

またつい先日ぼろくそに書いた10万セット出した日本の誇る経済ゲーム(?)人生ゲームM&Aに比べると、まるで異次元のものである。あのゲームをおもろいと思った人には是が非でもマンハッタンをやって貰いたいなあ。ここらへんはもう少し暇になればコラムに書いてみようかと思ってる。

gioco del mondo