Sid Sackson

Hasbro

2〜6人
90分

アクワイア

amazonで購入

小さなホテルは、より大きなホテルに合併され吸収される。
アメリカのホテルチェーンは未曾有のM&A合戦に沸いていた。
そのかどで、株の売買により莫大な利益をあげている男たちがいる。
マネーゲーム。
彼らの理屈では勝者と敗者を分かつものは、お金でしかない。

プレイ感

人生ゲームM&Aがあまりにも酷いんで、この1962年に発売された古典的名作をレビューせんとと思い、TAM夫妻と3人プレイをする事にした。
何度もリメイクを繰り返しているが、今回は、立体的なコンポーネントに戻ったが、ホテル名まで変えてしまったのが賛否両論のHasbro版にて。


ルールは、手番にタイルを1枚番号通りにおく。それが2つ以上縦横に接すればホテルチェーンが生まれる。まだ使っていないどのホテルを使ってもいい。


手番に常に6枚持っているタイルの1枚を番号のところに置く。で、縦横に2つ以上並んだらホテルチェーンが作られる。これは使われていないどのホテルでもいい。

もしそのタイルが他のホテルチェーンと縦横に接するタイルだったなら、ホテルのM&Aが行われる。より小さなホテルはより大きなホテルに吸収される。そのときに”小さな”ホテルの株主に、補償金として株主配当が入る! そう、吸収された方に。


Hasbro版は、ホテルがかなり豪華である。豪華なホテルほど株価は高くなるが、どのホテルを使ってもいいのだ。

ここまで書くと、小さなホテルを吸収されるためにガンガン建てたらいいと思うかも知れない。
まさにその通りだ。小さなホテルを建て、株券を買い、でかいホテルに吸収させるとがっぽがっぽお金が入る。とんでもねえゲームである。M&Aで、でかいホテルの株主には何も入らない。
最後に同じ換算レートでのボーナスが入るだけだ。

投資より投機。

まさにマネーゲーム。

しかも自分で建てて、自分でなくす。

その自作自演ぷりは、村上インサイダー犯を彷彿させる手腕。「宮内くん。まだ、日本放送を買ってないじゃないか!」

このゲームはそういう風に仕向けるために、わざと資金はショートするように出来ている。
M&Aがおきた時にしか現金化できないのだ。


この状況で、巨大になりつつあるサクソン(赤)がなくなるとは誰にも解らない。そしてヒドラ(橙)を吸収してフュージョン(緑)もかなりの勢力を持ち始めた。

TAM夫妻は最初はよくわからないまま、ゲームは進行。

ところどころで拝金主義の素晴らしさをレクチャーしつつゲームを進める。

このゲームのポイントは株である。筆頭株主と2番手株主のみがホテルチェーンの大きさに応じてお金を貰える。買うタイミングは手番に3枚まで買える。またホテルチェーンを作ったときにはそのホテルの株を無料で1枚貰える。

そろそろ吸収されそうなホテルチェーンは明らかにわかるので、一旦、大きなホテルチェーンに近づいたホテルチェーンの株は、

わし「買いや、買いや!」

TAM「買います!」

TAM嫁「じゃ、それ3つ買う」

と凄まじく浅ましい光景が展開されるのだ。


フュージョン(緑)危うし! クワンタム(薄青)がM&Aの魔の手をさしのべる。しかし金の亡者になったわしらはフュージョンの株を浅ましく漁るのだ。大型のM&Aの状態が起きる手前だ。これに乗り遅れたら致命傷になる。

序盤にでかい合併(先に書いたクワンタムによるヒドラの吸収。これはわし一人が利益を得た)を完成させたわしは終始、お金でリードを保つ。

このまま勝ってしまっては、皆もあまりおもろくないだろうということで若干手加減しつつ、教えつつゲームを展開させていく。


わしがさらに狙ってたのは、サクソン(赤)であった。アメリカ(青)と繋がるタイルをたくさん持っていたので、サクソンを吸収出来ると踏んでいた。そこでサクソンの株を買いあさり、とうとうサクソンを吸収した。

最初、このゲームはどうしたらいいのか解らないものだ。

それでいい。いきなり解った奴は完全に拝金主義者である。

大きなものが勝って負けたものは「わーん」となるのが普通だ。ところがこいつは、

わし「えー、吸収されたん? 爆裂ハッピー(はぁと)」

となる。

ここまで読んでおもろそうと思った人は拝金主義者に一歩近づいたことになる。ステキ。

中盤から、皆もこぞって合併されそうな弱小ホテルを見つけては株を買い漁り、段々と潤沢になってきたようだ。

ホテルチェーンが11個以上になったものはセーフティチェーンとなり、決して吸収されなくなる。これが1つ2つ誕生したらもう後半だ。


しかしさらなるM&Aが行われる。そのアメリカ(青)でさえ、超巨大企業クワンタム(薄青)に飲み込まれる。こうなると株価はうなぎ登りで、まともには買えない金額となる。そこで人気が出たのが最初から弱小ホテルとしてクワンタムの脅威にさらされながらも奇跡的に生き残っている上の方にあるゼータ(黄)である。

増大を重ねたホテルチェーンという化け物は、やがてボードを埋め尽くすようになる。こうなると、最後の株の価値の心配だ。最後も同じ計算で株価を貰えるので、株の交換が頻繁に行われるようになるのだ。2対1のレートで吸収した株と交換できる。肥大化しきったホテルチェーンはまともに買えないくらいの値段になってるので、この交換が非常に重要になってくる。ゼータに人気が集まりだす。

それに一歩リードしたTAM嫁。ゲームのポイントとなるものに株券の枚数は決まってるので、3枚ずつ買うと順番で、トップになるというのが解る。最後の大物チェーンに関しても、トップ目というのが次第に見えてくるのだ。

ゲームの終了は、ホテルチェーンが41個以上になったとき、盤上のホテルが全てセーフティチェーンになったとき、誰かが終了と言えば終わる。

わしは勝利を確信して終了宣言をした。最後の清算が行われる。

ぶっちぎりの勝利といいたいところだが、思ったよりも差がつかないのだ。

それでも余裕の勝利。

所要時間80分


最終局面。再び立て直したフュージョン。潰れても、ホテルチェーンが出来たら復活させる事が出来る。それを見越して株券を精算しない手もあるが、あまり持ってても意味がないケースが多い。

TAM嫁のコメント

なんか難しかった。

ソマーリオ

やってることは最低最悪。でもゲームは抜群におもろいから困ってまう。

アメ公めえ! とシドサクソンに呪いの言葉を吐きたくなる。

序盤、M&Aを仕向けさせるルールといい、セーフティチェーンが出来た頃から株式の交換に移る処理といい、まことに自然に美しくゲームの流れが移り変わっていく。

※ ただ欠点として、手札が悪いとほんまにどうしようもない時もある。昔、やった時に、それでかなりつまらなかった経験がある。そういった意味ではタイル運というのが十分にあるので、初心者が勝つこともあるだろう。

この手のゲームは、アメリカ人にしか作れない。アメリカの資本主義経済を具現化している。しかしこの盤面をみて改めて、M&Aの怖さみたいなのを感じてしまった。
このゲームは既に古典といわれる部類だが、いまだその面白さは損なわれていない。今回は3人でやったが4人以上が最もおもろいらしい。(今回はとりあえず3人でやったが前に5人でやった時に比べるとやっぱりおもしろさは半減している)

ここからムン様が意識して名作エアラインズユニオンパシフィック)が生まれたのだ。

そして人生ゲームM&Aが…な訳ねーな!!

ユニオンパシフィックにしろ、アクワイアにしろ、紙幣を使うというところから脱却はしていない。経済ゲームのくせにそれを成し遂げたのがマンハッタンである。この3つを称してわしは3大経済ゲームと呼びたい。そのどれもが卓越したおもろさを誇っている。3,4人ならマンハッタン、4人以上ならアクワイア、5人以上ならユニオンパシフィックだろうか。

問題点として、ルールはかなり簡単なんだが、日本人が意識的に理解しがたい方法でお金が儲かるので、TAM嫁が難しかったというように、感じてしまう人も多いと思う。

M&Aとは何かを知りたければ、人生ゲームM&Aではなくこのアクワイアをやって欲しい。
まあ、この名作をあの駄作と比べる事自体、間違っているのだが。

安田均が著書ゲームを斬る! の中で、このアクワイアのM&Aの状態が現在の状況とそっくりだと書いている。確かに、堀江や村上が行ったM&Aなどはまさにアクワイア状態である。シドサクソンが予言していたのかと書いているが、ゲームと同じ状況になるとは。まさにマネーゲームとは読んで字のごとく、本人たちは完全にゲーム感覚なのだろう。(それにしても村上だけは許せねえ! 身の危険を感じてシンガポールに逃げやがって! おかげで阪神というローカルならではの良さがなくなるやも知れん。まさにこの盤面をみて、村上1人の為にそんな状況が百貨店業界に起きつつある)

そうそう、後年になって、特殊タイルが出てきて一度に2つタイルがおけるとかあったが、わしのHasbro版では再び削られているようだ。
AH版を持ってたが、コンポーネンツの違いで、売ってしまったのをちょっと後悔している。ホテル名はともかく、どうにもHasbro版の株券などの絵柄はサイバー過ぎて好きになれない。

また無味乾燥とした黒のボードよりも、絵が描かれているほうがなんとなくホテルチェーンっていう感じだった。(最初の版は黒のボードだけだったが)そしてもうひとつ、タイルがブロックになってそのまま立たせることが出来るのは素晴らしいと思ったが、実際にやってみると、角度がついてないので見難い。衝立を使った方が良さそうである。ここらへんは完全に好みの問題やけどね。

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