Sid Sackson
ランドルフとサクソンは現代のドイツゲームに非常に大きな影響を与えた人物だ。といっても現代のドイツゲームというデザインではなく、その根底はあくまでアメリカゲームだが、一時期流行したAH社などのシミュレーションゲーム(ウォーゲーム)というものではなく、ルールの分量はマニア以外の人にも十分理解出来る。モノポリーや人生ゲームを純粋に発展させたアメリカ式ゲームを作ったってのはサクソン以外にいないだろう。ムーンなどはシミュレーションゲームからの発展だし、ランドルフはどこから発展させたか解らない不思議なデザインをする。まさにアメリカゲーム界の神様というべき存在なのだ。言い換えれば、サクソンが死んだ時、純粋なアメリカゲームは死んだのだ。
サクソンはゲーム蒐集家であり、先に述べたようにシミュレーションゲーム全盛の時代にでも生き残る素晴らしいファミリー向けゲームのデザインをしていた。その素晴らしいデザインセンスは絶版になりつつも、そのほとんどを復刻するというプロジェクトが立ち上がっている。現代もサクソンのゲームが手に入る喜びを味わって欲しい。ゲームデザインはシンプルかつ、緻密である。
今では考えられないアブストラクトのフォーカスがドイツゲーム大賞に輝いているのが、ドイツゲーム大賞の黎明期という感じがして面白い。ただ、内容はやはり当時の大賞にふさわしい内容だったように思う。
※カードとアブストラクトは大賞に選ばれにくい。というより事実上選ばれない。
アブストラクト先行デザインだが、その中にテーマを上手く埋め込んだアクワイアは経済ゲームの傑作である。当時、シミュレーションゲームの雄だったアバロンヒルが、版権を買い取って出していた事からも、その凄さが解る。モノポリーという経済ゲームだかなんだかよく解らないゲームから比べるとアクワイアのその洗練度は群を抜いている。アメリカ式デザインの正常進化といったのはここに端を発している。
本人はアルツハイマーになり、その入院費を稼ぐ為に、蒐集したゲームはオークションに出されてしまった。2003年83歳で亡くなってしまったが、この人が生涯掛けて作ったゲームは復刻され世界中の人に愛される機会を持っている。