ケタ違いの人生をつかめ!

タカラ 平成16年

2〜4人
60分

人生ゲーム -M&A-

ライブドアの堀江社長などベンチャー起業家が集まって監修した企業買収をテーマとした人生ゲーム。
最低のお金が10億円、最高は1兆円というまさにケタ違い!
株を買い入れ、企業買収を繰り返し、時価総額世界一の会社に出来るか!







プレイ感

堀江社長が逮捕されて、数日後にタカラが出荷を自粛。記事を読むと「ホワイトナイト、TOBなどの用語がわかり社員教育などにも利用され……」と、ちょっとおもろそうと思ったのでそのニュースが流れるや否や即座にアマゾンで注文。ネットで高値を呼んだ。特にライブドア特別バージョンでは3万円以上する。こういう旬なものは早めにやるべしとBBと二人プレイにて。


普通の人生ゲームとの違いは、企業買収が出来るところ。攻撃カードと防御カードの数値を比べて、買収出来るか勝負する。後はマス目の指示に従えばルールは読まずとも大体出来る。


さ、桁違いの人生を歩むぞ! 最初は名もなき経営者をぐるぐる回る。わしは外車なんで左ハンドルじゃと人生ゲームらしい会話をしてスタート。ちなみに立体的建物は橋だけ。

最初は10億円を持ってループになった「名もなき経営者コース」をぐるぐる回る。ここでマス目の指示に従ってお金を手に入れ、1社を買収出来た時に本編コースへ移動。最後に残ったプレイヤーは名もなき経営者のまま本編へ移動する。つう訳でBBはマス通りに100億円の玩具メーカーを買収した。わしゃ、買収失敗して名もなきままスタート。だが、執筆した本が馬鹿売れで1000億円も持ってる。なんだかなあ……


玩具業界を買収したBB。特許権まで持っている。この資産価値はマス目の指示によって2つまで付ける事が出来る。

わしゃ、企業価値アップ(企業カードを裏返すと5倍の価値になる)のマスに止まるも企業を持ってないのでほぞをかむ。買収出来るマスに止まらんとお金いくらあっても無駄なのだ。決算日には企業カードの純利益を得られるのでBBは20億円、わしの場合10億円止まり。

BBは小さいアパレル業界を友好的買収(誰のものでもない場合、人材ピン+ルーレットの目が7以上で成功する)かけてすくすくと成長。かたやわしは、ようやくマスの指示で好きな企業を買収でけるようになった。金はあるので一番価値の高い自動車業界を1700億円で買収。1000億円の約束手形を貰って。

そしたら即座にBBが敵対的買収のマスにとまりわしのト○タ自動車を買収かけにきた。攻撃防御カードそれぞれ0から5の数値があり、3枚まで出せるが、わしゃ防御カード1が2枚しかない……_| ̄|○

BB「やったー、ニッ○ン自動車買収したあ」


わしのト○タがああ! TOB(株式公開買い付け)という最強カードと現実なら強いはずの人脈カード(1)2枚によって買収された。うちはマスコミの支持だけw

そんなこんなで、BB着実に企業を買収し、特許権など付加価値を付けていく。決算では430億円とか貰っている。わしゃ10億円……ちぇ。とか思ってたら、なんかのマスの指示で3000億円手に入れたりと出来た。問題は買収出来るマスに止まらない事なのだ。簡単にマスの指示で1000億円くらいは手に入るので、別にどってことはない。

ここらへんで相当だるくなってきた。なんじゃ、このゲーム?

しょうがないので人材二人手に入るとかいうマスで「叶姉妹じゃ」ちゅうて女のピンを2本さしたりして気分を盛り上げようとするが、友好的買収でIT業界の買収を失敗したりしててんで役に立たない。


マスの横にはみ出てる紺色のところが敵対的M&Aできるマスである。わしの叶姉妹秘書に対抗してBBも人材ピンを男にした。やらし〜w

BBは企業価値アップマスに止まり、どんどんと価値があがっていくが、ようやく敵対的買収マスにわしが止まった。ここで溜めに溜めてたLBO(レバレッジドバイアウト,フジテレビ買収に使おうとした手口)など5のカードを使いまくって、特許権が付いてる玩具業界を買収。わしのト○タ自動車は企業価値アップしてて8500億円にまで達していたので買収は無理だったのだ。


これがBBの買収企業。自動車は裏返しになり企業価値がアップしている。2枚まで付けられる企業提携カードは最後の精算時に資産価値をあげる役割がある。特許権などの資産カードはルーレットで価値が変わる。


ようやく2社買収成功。借金はいっぱいあるが別にどってことない。決算時には純利益分のお金が貰える。ようやくわしゃ80億円である。

ようやく成功した頃、すでにゴールは近し。

そのまま終了。

企業価値を精算。特許権などの資産は昭和おもひで劇場のようにルーレットの目で10倍か10分の一になるが、わしの特許権は10分の一になった。

わしが8870億円に対してBBが5兆9740億円と圧勝。

所要時間45分


ゲーム史上2番目に高い通信まで企業価値アップしているBB。ちなみに1000個限定発売のライブドアバージョンではライブドアが2兆円という最高価値になってて、紙幣が堀江社長の顔になってるらしい。

BBのコメント

もう、これすぐに売ったら? ルーレット回すんはちょっとだけ懐かしかったけど、ほんまに運だけやから、勝っても「やったー、嬉しい」ってならへんねん。ああ、そうか、勝ったかみたいな感じ。

ソマーリオ

日本の発売中ゲームは酷く書かないのがポリシーだが、このゲームは既に出荷停止になっており、絶版扱いとして書く事にする。

まず最初に一言。これ、ゲームか?

酷い、あまりにも酷すぎる。決算になったら買収した企業の純利益を足させて710億円とか細かい計算させるくせに、マス目で簡単に3000億円とか手に入る。
決算の意味がまったくないやんけ!! マスの指示だけで十分じゃ、こんなん。

おまけにそんなデカい金が動くかと思えば40億円払えとかくだらない指示まである。もう単位がめちゃくちゃでどうしようもない。

※1000億単位で入出金するのに、10億単位の入出金の指示に意味があるのか!

単位の統一性がなく、やっててそれは喜んで良いことなのか、たいした事ないのかさっぱり分からない。ふわふわしたなんともいえない感覚だけが残る。

このゲーム最大の売りである、買収カードであるが、やってみるとマスの指示で出来なかったりするので「株式公開買い付けじゃあ!」「おっと、ホワイトナイトとクラウンジュエルで防御」とかいってまったく盛り上がらない。同時出しなので、はいはい、ほな数字足して成功みたいな、そんな感じ。しかもマスに止まらなかったのでほとんど起こらなかったので、凄まじくだれた。用語の説明で、ふーんって思うだけで、ゲーム自体の楽しさにまったく関わっていない。ただの文字にしか過ぎない。例えば、交互にカードを出していくシステムにしただけで楽しさは変わってくるのだが、このシステムでは盛り上がりようがない。(ひょっとしたらプレイ人数を増やせば止まりやすくなってもう少しマシになるかも知れないが……)


これが買収カードと資産カード。ライブドア版では堀江つうのが6という設定になってる。

このゲームのテーマとしての失敗は、わしら一般人が、企業というものに対して何の思い入れがないという点であろう。例えば昭和おもひで劇場ならば、ぬんちゃくやらトヨタ2000GTやらとても魅力的に映ったが、IT業界、通信業界とあっても、現実感はまったくないので、だから何? って感じである。イメージをまったくかき立てないのだ。ああ、はいはい、ほなそれ価値高いから買収しとくわ、みたいな感じになってまったく嬉しくない。

人生ゲームは単にルーレットを回すだけの運のみのゲームだが、そのマスの指示が現実にそくしていて思い入れがあるからこそ、なんとか遊べるゲームであって、宇宙のどこかの惑星の出来事を描いててもおもろい訳がない。昭和おもひで劇場なんかはその好例だろう。

阿呆か? ほんまにこれゲームか?

しかも、毎回企業カード1枚につき1000億円借金出来る(アップしてたら2000億円)って、これは絶対に地球の話ではないな。例えば玩具業界みたいな小さなところでも20手番あれば2兆円借入出来るのだ。この星ではとりあえず企業を持ってれば無尽蔵に誰かが貸してくれるらしい。超弩級の猛烈なインフレ経済である。金融の事をまったく考えていない。

社員教育に使ってるだって? どこの星の社員教育でしょうか? 説明書に書いてある用語説明だけを読めばOKである。このゲームをやって60分も時間を無駄にする必要はない。単位などの価値は無茶苦茶もええとこ。本の印税1000億円って何を考えてるんだ? 印税ちゅうのは破格にして10%である。という事はこの本を高めの3000円で売ったとして3億3333万3333部売る訳だ。あの驚異的なハリーポッターでさえシリーズ全部で2億5000万部である。全世界の20人に一人が「M&Aで大成功」なんてクソくだらなさそうな本を買うのだ。1億部も出した本ってのはわしゃ、ハリーポッターと聖書くらいしか知らんわ。どんなけリアリティのない設定やねん。阿呆らし。

コンポーネントは、人生ゲーム特有の立体的なフィギュアが橋だけという廉価仕上げ。システムには改良と呼べるほどの改良もなく、ゲームデザインをした事がある人なら20分で考えて作れる。なぜならゲームバランスはまったく考えずに作られているから、作りっぱなしでいいからだ。つまり制作でバグ取りは必要なく、どんな事件が起きたかを羅列的にマス目に当てはめただけだろう。絵はテーマにまったく合っておらず、ルーレットはよく回るというところだけがいいとこか。

ゲームとしてこれほどの駄作は生涯で初めてだ。今までどんなくだらないゲームであっても楽しませようという制作者の意図みたいなモノが見え隠れしていたが、生まれて初めて、心の底から「これゲームか?」と思ってしまった。こんなものを社員教育に使っている会社の人材育成はどうなっているのか? こんな子供でも考えつくようなちゃちなシステムで何か得られるとでも思っているのだろうか。今の若者はそんなに馬鹿なのか。これが出荷停止になったのはとても良いことだ。これがボードゲームだと思われては恥ずかしくて、HPを閉じたくなってくる。ゲームとして駄目でも勉強になればいい、その逆もOKだ。しかしこいつは両方とも皆無である。それどころか間違った経済観念を植え付ける事になる。借金帳消しになるだとか、何を考えてんだ! 大手ゆえにそれが恐ろしい。

拝金主義こそが勝ち組だという歪んだ時代の価値観から生まれたゲームだが、それも良い思い出になる事を祈ってる。拝金主義であってもいい、時代が産んだものとして、それがゲームとしておもろければと思って記念にわしゃ購入したがあまりにも内容がお粗末すぎる。間違ってもオークションなどでこんなどうしようもないゲームに高い金を出してはいけない。ジョーコデルモンド始まって以来ぶっちぎりNo1の駄作である。日本の玩具業界は何年かけてもこんなものしか作れなかった、周りもこんなものしか買わなかった(10万個も出荷したらしい)というのに腹立たしさを覚える。これがスクールパンチシリーズなら値段的にも影響度からも許せる。ビッグタイトルで出したのが許せない。20Qでは戦慄するほど日本玩具業界の誇りを感じたが、これにはとてつもなくがっかりした。

※ お金があればなんでも買える訳じゃない。お金は人生を豊かにする手段であるべき筈なのに、拝金主義の連中は目的となってしまっている。手段と目的が入れ替わってしまっているのだ。お金の単位でしか物事の価値をはかれない。高いもの=良いもの と考えるのだ。つまり自分で価値観を持てないのだ。自家用ジェットに乗るよりも、子供はポケモンジェットに乗りたがるだろう。価値というのは一様ではない。

もし、人生ゲーム、モノポリー、黒ひげ危機一発やUNOしか知らず、たまたま検索でこの文章を見つけて興味を持たれた方がいるなら、ドイツゲーム大賞に選ばれたゲームを一度試してみてください。日本で手に入りやすいのはカタンの開拓者ですが、株による乗っ取りを体験したいならマンハッタンを薦めます。また超リアルにM&Aを体験したいなら、アクワイアをどうぞ。こんな事が許されるのか! と衝撃を受けますw

gioco del mondo