Michael Schacht
ポストクニッツィアとして、話題になったシャハトのデザインは、同じドライなデザインをするクニッツィアとはまったくデザインセンスが違っている。
シャハトはゲームの積み重ねによって同じカードなのに破壊力が変わってくるというデザインを得意としている。カードそのものに強さはない。周りの状況が強さを決めていくのだ。逆にクニッツィアの場合は、数値が書いてあり単純な足し算で済むケースが多いので細かな手札山札の管理が大切になってくる。(7は既に切れてしまっているから大丈夫とか、そんな感じ)
場の状況を上手く動かし、出来る限り破壊力を高めてから必殺の一撃を繰り出す、そんなイメージがシャハトデザインの基本となっているようだ。そのキーとなるのは得点計算の方法である。どのゲームもとてもユニークな計算方式を用いる。
こう書くと非常に難しく感じられるかも知れないが、どのゲームでも非常にルールは簡単である。シャハトの場合、手番に行える事は2択しかない。例えば、駒を置くかタイルを置くか、もしくはカードをめくるか場のカードを取るか、そんなのばかりである。
他の多くのデザイナーのように手番に細かなフェイズがあって4つも5つも様々なアクションを行わせることを良しとしないところが非常にユニークであり、単純ながら奥の深いジレンマが味わえるのだ。
このようなデザインは長時間ゲームに疲れたヘビーゲーマーにはとても心地よく映り、初心者にはドイツゲームの本質のようなものを見せてくれるはずだ。
ルールを読んだだけでは、「え! こんだけ?」と思ってしまうかも知れないが、これほどデザインの妙を作り出すデザイナーはシャハト一人かも知れない。またシャハトのいいところはゴテゴテした特殊カードが好きなフェドゥッティと一緒にデザインを手がけるところである。この二人はお互いの欠点を見事に補完しあうのだ。
もうはまだなり、まだはもうなり。積み重なっていく二択ジレンマを味わいたければシャハトのゲームをやればいい。
今後シャハトの二択という言葉がドイツゲーム界をリードしていくだろう。
そして2007年、クニッツィアに先駆けて、ズーロレットで待望のドイツゲーム大賞を受賞した。