Michael Schacht

ABACUS

3〜5人
90分

ヴァルドラ

遠くはなれた場所にヴァルドラという豊かな谷がありました。そこには全世界から冒険者が集まり、自らの幸運をためしにきます。町で装備や契約書を購入し、金やさまざまな宝石を手に入れます。
契約を請け負って、必要な宝石をパトロンの家まで運べば、名誉を獲得します。さらには、職人を雇うことができます。
職人は、金、銀や特定の宝石の専門です。それぞれの専門について必要な数の職人を最初に集めたプレイヤーは、工房を開くことができます。

プレイ感

フェドゥッティが選ぶ2009年度のゲームの推薦に、このシャハト作のヴァルドラがある。タナカマ提唱のブルクハルトを酷評する会に持ってきた。タナカマ、アッキー、mia、わしの4人プレイにて。


一言でいえば昔からよくあるお使いゲームである。場にある宝石を契約に従って、貴族の元へ運べば勝利点が得られる。手番には、都市をまたがない好きな場所へ移動。宝石を発掘出来る装備があれば、そこにある宝石を受け取る。移動先が町ならば、その町にあるカタログから発掘する装備カードや契約書をめくって購入するか、お弁当(都市をまたいで好きな場所に移動出来るようになる)を受け取る。手に入れた宝石は、契約書に従って貴族の元へ送り届ければ勝利点が入るという非常にオーソドックスな作り。


ボードのマスに置いている宝石を取って運べる道具に置く。最初は金塊だけだ。人物カードを裏返せばお弁当持参となる。大きな都市の左隅に見えるのが緑の宝石を集めている貴族の家である。契約書で緑の宝石があれば、ここに持って行けば勝利点となる。こういった貴族の家が各色ある。

このゲームのポイントはカタログであろう。開いた本に見立てた木製台があり、この上に装備カードや宝石カードを置く。これがページにあたる。町にきたら1ページめくるのは無料だが、目的のカードがない場合は、1銀貨払う毎に1ページめくることが出来る。欲しいカードはお金のある限り購入出来るのだ。ただし契約書は銀貨払いで、発掘装備は金塊払いとなる。金塊ってのは宝石と同じように発掘しなければならないが、初期装備として、皿(まあ、砂金取りの定番ですな)カードが貰える。

この見立てがなかなか良くできててまさにカタログショッピングな気分なのだ。ただし…

わし「おいおい、カタログ1ページめくるだけでお金請求するなんて、悪徳通販業者でもやらんで。テン○ィズゲー○ズは、こんなぼったくり商売やっとんのか?」

タナカマ「ぼったくってませんて!」

わし「ほな、これからはこのビジネスモデル使ってがっつりぼったくるつもり?」

タナカマ「やらないです。やらないです。もう」


ボードは適当に宝石が置かれている。そこで発掘できるというシチュエーションだ。都市から都市の間の道はどこに移動してもいいが、都市を超えての移動を一気にするにはお弁当が必要となる。都市はカタログがあるのが4つと、港町が1つ。スタートは港町からだ。また他のプレイヤーが先にいるマスに入るには1銀貨渡す必要がある。

銀貨ってのは銀山にいけば6枚に補充する事が出来るので、出来る限り使って補充したいところだ。

自分が移動したい所に先客が居た場合、その先客に1銀貨ずつ支払わなければならないというルールもある。

わし「通行料寄越せってか?」

タナカマ「みたいです」

後は非常にオーソドックスなルールで、これがほんまにシャハト作? って疑いたくなる。

序盤、miaは契約書の3個必要な奴をとる。契約書は単品バージョンと、3つ揃えて持って行くバージョンと2種類あって、当然3つバージョンの方が勝利点は高くなっている。

わしは、一度このゲームを経験した事のあるアッキーが欲しがったリヤカーを入手して、様々な契約に対応するつもりだ。リヤカーはどんな宝石も発掘して運ぶ事が出来るが使用するたびに2銀貨必要なのだ。

mia「リヤカー使うのに毎回2銀貨要るの?」

わし「そらそうやろ。西○区に住んでる日雇い労働者を雇うお金やん」

タナカマ「同じ能力のロバは3銀貨要るんですよ」

わし「日雇い労働者は安う叩かれとるのう」


特筆すべきはカタログ台。カードを置くとまるで本のページのようになる仕掛けである。1ページめくるのは無料だが、それ以上めくるときは1銀貨ずつ支払う必要がある。わしの右側にあるのが契約書で3枚までしかもてない。なんか適当に1個の依頼ばかりを集めたがこれは失敗。左が日雇い労働者が引っ張るリヤカーである。使うには2銀貨必要。

mia「よし、これで届けて任務完了」

なんと、契約書通りぴったりと集めていきなり任務達成しているmiaに反して、わしゃ、何の契約書とまったく合っていない宝石を運んだりしてかなり阿呆な展開に。

次々に3つの契約書を達成するmia。かたやわしゃルビーを1個運んで達成するはいいが、契約書を持っていない意味不明のルビーをずっと持ったまま、一体どうせよという感じである。

右往左往するうちに、タナカマが銀貨戦術に打って出る。

タナカマ「じゃ、これ買います。あ、また銀貨の契約書出た。買います」

銀貨も契約書にあり、その契約書を買うて、銀貨を求める貴族の元へ行き、一気に契約を解決していく。

わし「それ強ない?」

タナカマ「でも、銀貨は簡単なんでボーナス貰えるまでかなりタイルを獲得しないと駄目なんです」

契約書を達成すると達成タイルが貰える。この達成タイルは契約別に分かれており、一定枚数集めるとボーナスタイルが貰えるのだ。ボーナスタイルはボーナス得点の他に、以降同じタイルを獲得する毎に+10タイルを貰えるのだ。同じ契約を達成すればするほど、何度も+10ずつ貰えるのでかなりお得なのだが、達成のし易さに応じてボーナスタイルを貰える枚数が違っている。


道具を売っている町と契約書が売ってる町は違っている。こちらは道具で、道具は帯が金色をしているので金塊で買わなくてはならない。ただしめくるのは銀貨である。それぞれ持ち運べる宝石の種類が描かれている。同じ道具を2枚買うことはできない。

miaは3つの契約書を2度達成してボーナスタイルを獲得しているので、今後、それを行うたびに+10ずつタイルが貰えるのだ。

タナカマ「じゃ、もっかいこの町でカタログをめくって、銀貨買います。あ、またでた。買います。ラッキーまた出た、これも買ってと」

わし「おい、おっさん。積み込んだんちゃうやろな?」

アッキー「うん。なんかおかしい」

タナカマ「いや、しっかりとシャッフルしたんですけどねえ、あはは」

皆「怪しい!」


依頼を達成したら、その宝石は畑に置いておく。船のあるマスにくれば交易として、船の数だけここから手に入れることができるのだ。

契約書は3枚までしか持てないが、またカタログには銀貨契約が出てる。

わし「うーん、これは阻止せんとあかんやろなあ」

と思ったが、現在、迷走中のわしが、この銀貨契約を引き受けて人身御供になるつもりはなし。
わしはルビーの契約を集めてボーナスタイルを獲得して次に何を照準にしようかと思ったが、あちこちとボーナスタイルを獲得されるのをみて作戦変更。
というのは+10タイルはボーナスタイルを持っている人にしか貰えないボーナスなので、今後集めてもあまり有効ではないからだ。そこで、多色化を目指す事にした。

わし「じゃ、サファイアの契約書を貰う」

多色化というのは、ゲーム終了時に、各契約毎に1枚以上タイルがあれば10点のボーナス点が貰えるルールを狙ったもの。つまり1点豪華主義ならばボーナスタイルを貰ってからは+10タイルずつ貰えるが、各1個ずつであっても終了時それぞれ10点貰えるのだ。周りが一点豪華主義が多いのでこれはこれで有効だろう。6つの違う契約を集めたら60点も貰える。


達成した依頼書は自分のカードの下に積み重ねておくが、銀貨の依頼を積み込みでやたらと達成したタナカマのカードはまるでドミニオンの最後のように分厚い。きたねー!

わし「ところで非常に気になるところがあるんやけど、これほんまに貴族の家かあ? 掘っ立て小屋にしか見えんぞ?」

タナカマ「まあ確かに。宝石集める前に、まず家を改築しろと言いたくなりますよね」

アッキーは、金塊の契約でタナカマと同じような戦術を取ってくる。

アッキー「じゃ、これ買います。あ、また金塊出た。買います。あ、また。じゃ買います」

わし「お、おのれらカップルは、絶対に積み込んだやろ!」

タナカマ&アッキー「いえ、しっかりとシャッフルしました」

わし「怪しすぎんぞ」

こんな感じでゲームは進み、タイルが1色しか残らなくなったらゲーム終了。ちなみになくなった色のタイルは、時計回りに次のタイルを貰う事が出来るので、無くなり出すとゲームはあっという間に収束するように出来ている。

タナカマぶっちぎりの勝利。

所要時間100分


最後はこんな感じ。5色のタイルを集めたおかげでこれで50点である。ボーナスタイルはルビーのみで、もう一回達成したので+10タイルが1枚乗っかっただけ。

miaのコメント

面白かった。落ちてるお宝を拾いに行ったり、弁当食べなきゃ遠出が出来ないとことか設定がなんかカワイイ。高得点の目的カード狙いにしたのに、ダイハチ車も持たずひたすらチマチマお宝を運ん届けてるというで率の悪さに途中でやっと気づくという失態を犯してしてしまった…結果2位…。残念!

ソマーリオ

文中にも書いたが、これはほんまにシャハト作かと疑わしくなる。シャハトの持つジレンマがまったく感じられない。有名デザイナーは、ジレンマの作り方に癖があり、何度かやってると作者は誰かなんて解るのだがこいつはまったく解らない。このゲームをやってシャハト作と言える人なんて居らんのとちゃうかな。アランムーンのデザインかと思った。

プレイ感は、帝国の商人にびっくりするくらいそっくりで、あれが同時プロット方式を採用したお使いゲームでこっちが得点の計算方法に趣向を凝らしたお使いゲームの違いだけである。どうやって効率的に回るかというゲームの肝はまったく同じだ。

それよりもおかしくなったのは、最新ゲームである筈のヴァルドラが30年前に出たスクールパンチ鉄道輸送ゲームにもそっくりな点である。この手のお使いゲームはむしろあれで十分ちゃう? とさえ思ってしまうが、さすがに頭狂駅は現代のネーミングとしては不味いわなw

そういう背景を抜きにすれば、さすがは後発だけあってゲームバランスは見事で、内容も綺麗にまとまっておりやってて文句なく楽しい。またボードから伝わるテーマと雰囲気はばっちりで、この世界観で旅をやっている気分にさせてくれる。まあ、貴族は掘っ立て小屋に住むただの物貰いやけど。
長考さえしなければ、万人に勧められるファミリーゲームである。考えるといってもハンザと違い手番に1箇所しか行けないので、なるべくテンポ良く進めるような工夫もある。

シャハトが好きな人は、むしろ買わない方がいい。皆で楽しめるファミリーゲームを探している人にこれを勧めたい。正直、何を思ってシャハトはこんなゲームを作ったんやろか…
まあ、個人的にはシャハトトのジレンマはドライ過ぎてあまり好きじゃないのが多いので、こっちタイプのゲームの方がおもろいねんけど。

については、シャハト知ってるゲーマーという立場からみたら「自分のデザインセンスを忘れてこんなゲーム作ってええんか?」と問いかける意味で無しとしたいところだが、純粋にゲームレビューという立ち位置で紹介すれば、ストーンエイジのように新規性がなくパンチ力不足ながらも、ドイツゲーム大賞を受賞したアウフアクセなど完全に過去の遺物と言うてもいいくらいレベルが違っておりをつけざるを得ない。宝石をばらまいたりするセットアップが面倒なところはあるが、コンポーネントなどの見かけも素晴らしく雰囲気を盛り立てる。

gioco del mondo