Stefan Feld
最近、ゲーマー向けのaleaが連続して発表するのは、フェルド作品である。フェルドとわしの出会い(大げさ)は、マイナー作品として日本にそれほど入荷されなかったローマ革命である。日本ではメビウスが扱わず二人プレイ専用という事でほとんど取り上げられなかった。意外とおもろいという話を聞き手に入れてみたが、なんとも変わったプレイ感に驚いた。
サイコロの使い方が変わっているばかりか、カードの能力がなんとも言えないバランスに感じたものだ。ちなみにサイコロの妙な使い方は、その後イスファハンに引き継がれたように感じる。しかし、この妙なバランスでもやってみたい楽しさがこのゲームにはあった。
それから新しいゲームをリリースするわけでもなく、かなり経ってからaleaブランドからラムと名誉が発売された。ここでも、進むのに駒の数量を用い、何かの判定にサイコロを1つだけ使うという、昔のスクールパンチシリーズのようななんとも子供じみたサイコロの使い方がされており、なんせ驚いた。ローマ革命の時はたまたまデザインが上手いこといっただけと思っていたが、ここにきて、これは完全に意図されたデザインであると解った。
そこからはフェルドは最も熱い新進気鋭のデザイナーであると周りには吹聴している。この人のデザインは、ルールだけを読んだ限りでは「えー、こんなんでゲームにランダムな揺らぎを与えられるの??」と思ってしまう。かなりの部分でオープン情報となってアブストラクトチックに感じるか、サイコロを使ったやたらと揺らぎがあるデザインに思ってしまうのだ。しかし、実際にやってみると、きちんとランダムな揺らぎが入っているばかりか、不思議なバランスにおいて、ゲームが奇妙に保たれてしまうのだから不思議だ。
特殊カードを使うといった事ではドーン作品と似ているが、ドーンと違って効果が見えやすいのが特徴だ。むしろクラマーのエルグランデに代表されるアクションカードシステムに似通っている。なんだかドイツゲームに新しい潮流を巻き起こしそうな、未だかつてなかったプレイ感を与えてくれる。
数多くの特殊タイル、カード、駒、を使って複雑なシミュレーション的な構造を、見事に誰でも出来る簡単なシステムにまとめてくるのだ。フェルドに一時期流行ったウォーゲームなどを作らせたら、現代のドイツゲーム風のシミュレーションウォーゲームに仕立て上げてくるのは間違いない。つまり、長くても2時間以内に収束、初心者でもプレイ可能なシミュレーションゲームといえば解りやすいか。特に長期スパンでみる戦略ゲームは相当な腕前で、複雑系シミュレーションの雄ワレスと対極に位置するだろう。フェルドの特徴を一言でいえば、アクション選択の多様さだ。フェルドデザインは、アクションカード選択そのものがゲームのひとつといっていい。ゲームによって様々な方法でアクションカードを選ばせて、それがシステムの基幹となっている。アクションカードはシミュレーション系のゲームと非常に相性がよく、フェルドがこの手のゲームを得意としている要因なのだ。
aleaがフェルドに目を付けるのは当然で、ここ数年以内にフェルドはドイツゲーム大賞受賞者に名を連ねるだろう。そのデザインにすさまじいまでのポテンシャルを感じる事が出来る筈だ。最近出てきたデザイナーの中では、わしの最も好きなデザイナーであり、ちょっと飽きた感のある大御所デザインに新風を巻き起こす。フェルドはここにきてようやく、ドイツゲームとアメリカゲームを融合させた。ボードゲーム界のヘレニズムである。