Stefan Feld

alea

2〜5人用
90分

ドラゴンイヤー

辰年。
中国では最も争乱が起きる年という。
時は北宋の時代。疫病が蔓延し、騎馬民族の契丹が攻めてくる。
この中国未曾有の危機にどのように対処すればいいのだろうか。

※hiroceanさん曰く、北宋時代の辰年といえば992年、1004年が該当する。北宋が遼(契丹)に屈服するのが1004年なので、おそらくこのゲームは1004年をテーマにしているっぽい。


プレイ感

ゲーマー向けのaleaブランドを乗っ取った感のあるフェルドが、ノートルダムに続いて出したのがドラゴンイヤーである。他のサイトを見てみると、ノートルダムを越えたみたいな意見がよくあった。mia、コツミ、Jyama、OECとの5人プレイにて。


ゲームの基本構造は、アクション、人材登用、災厄イベント、勝利点獲得を12ラウンド(12ヶ月間)行う。アクションってのは、税金取り立てたり、軍事パレードしたり、花火作ったり、建設したりするのだが、それに関係する人物タイルがあればより効果的にアクションを行える。で、翌年以降のために人材タイルを入手する人材登用があるのだが、各プレイヤーは人材タイルを1種類につき1人ずつ登用するようになってて、9種類+ジョーカー2枚の11枚の使い切りのカードで人材タイルを毎月得ていく。最終月に登用フェイズはないので11枚だ。予定人事って奴だが、ジョーカーが2枚あるのでここで自分の味付け人事が出来る。で、それが終われば、王への貢ぎ物、疫病の蔓延、契丹の侵攻、干ばつなどの災厄イベント処理がある。このイベントは最初からその月に何があるか公開されているので、その災厄に備えて準備しておくというのがゲームのテーマとなっている。最後に勝利得点を記録して、翌月に移る。

初期セットアップとして2階建て2つの宮殿と、その宮殿に住む人材タイルを2枚選ぶ。この2枚は違う人材タイルであり、かつ他のプレイヤーとまったく同じ組み合わせで取ってはいけない。今回の災厄は3月に起きる王への貢ぎ物からだ。1月2月は平穏と決まっているが、3月以降はランダムに配置して、公開される。当然、皆は税吏を選びたがるものだ。税吏は税収アクションを行う事で、通常2元しか入らないのに1人につき3元余分にお金を手に入れる事が出来るという庶民にはとてつもなく嫌な人物だ。王には4元支払わなければならず、1元足りない毎に人材タイルを捨てるというとんでもない独裁者である。


2階建ての建物に一人ずつ住まわせる。人がが居なくなれば建物が1階ずつ壊れていくので注意が必要。人物タイルは上にあり、カードを使って登用する。その下にあるドラゴンをおいてる場所がアクションタイルで人数に近いように適当に分けるその周りにある優先順位マーカーに従って好きなアクションを取っていくのだ。一番下は、今年1年に起きる災厄となっている。

ほとんど全員、税吏を絡めて他のタイルを選択していく。一番いいのは、王への貢ぎ物の次の災厄である干ばつに関係する農民だろう。農民は収穫アクションを行う事で米を余分に収穫する。干ばつは、米チップを3枚払うというもので、足りないだけ、人材タイルを捨てなければならないという災厄だ。農民がいないと収穫アクションを行っても米チップは1枚しか手に入らないので、アクションを無駄にしないためにも農民の存在は大きい。これはスタートプレイヤーのmiaが選択したので、わしは別の組み合わせで医家を選んだ。

アクションタイルは7枚あり、それをプレイヤー人数分のグループに出来るだけ均等に分ける。つっても2,2,1,1,1であるので均等に見えんけどw
手番マーカー順に、どのアクションを行うかのグループを選んでいく。同じアクションを選んでもいいが、その場合3元支払わなければならないので、この手番マーカーというのは非常に重要だ。これが後ろやと、まじで何も出来ない。お金は初期に6元貰うだけで、あとは自ら徴税アクションを選択しない限り貰えないので、3元の支払いはかなりきついのだ。

この手番マーカーは、人材を登用した時に人材タイルに書かれている数字分だけ進める事ができる。踊り子など強い人材ほどこのポイントが少なくなっている。これは初期に2枚取った時にも行う。

コツミは最初に軍人タイルを取った事から序盤に「アンチャンカンミョン!(適当)」みたいな将軍様がお好みになる軍事パレードアクションを敢行する。軍人はこの手番マーカーを強烈に推し進めるタイルだ。軍事力があれば、声が大きくなるというものだ。

これがあなどってた。手番マーカーが後ろ寄りスタートのわしは、好きなアクションを選べずかなり苦労する事となる。逆に言えばコツミは最初、圧倒的優位さで、徴税し、米を収穫する事が出来たばかりか、お金を温存する事(アクション選ぶのに3元払う必要がない)に成功した。

わしは徴税を諦めた。何故なら、3元支払って同じアクションを選んだところで得るものは2元だけだ。そこで残ってる中で適当に選んだのが、2元払って毎月1勝利点はいる特権タイルの購入だった。これなら、4元残るので王への貢ぎ物はばっちりだ。

急務なのは、手番マーカーを如何に前に進めるかである。これをやるには、徹底した軍事体制にしなくてはならない。

わし「きつい」

OEC「きついっす」

コツミ「そんなにきついの? 手番が後ろになった事ないから解らない」

やろな。わしは災厄対策を後回しにしてでも手番を前に行かせるように人材登用した。かたやOECは踊り子を登用した。踊り子ってのは手番マーカーが僅か1しか進めない。その代り、毎月1勝利点が入るという強力な人材だ。


完全に軍事国家w 軍人は優先順位マーカーを5マスも進めるので順位を前にしたいわしはこうしてみた。ちなみにこのマス数が少ないタイルほど強いと思ってくれていい。隣にあるのは権利書タイルで毎ラウンド2点の勝利点が入る。終わった月は生という面に裏返される。

月の最後に勝利点が入るのは、宮殿の数だけなので、特権タイルや踊り子の1点というのは比重がかなりでかい。手番マーカーが後ろのOECが特権タイルの購入と共に毎ラウンド2点追加で入り、序盤から徐々に抜け出してきた。手番順は苦しいが、勝利点で他を抜き離しつつある。

わしは前へ前へ、進めようと花火職人なんて意味不明な人材すら登用した。花火大会は唯一プラスとなるイベントで、花火チップが一番多いプレイヤーに6点、2位に3点をもたらす。意外とこれでかいんじゃないかと思い、花火製作アクションを選択してみた。通常1個だが花火職人がいるので、2個出来上がった。


ようやく苦心の甲斐があって2番手に順位を確保した。アクションタイルを選ぶ順番は非常に重要で、同じタイルを選ぶことは出来るが、3元の支払いが必要で、これが相当きついのだ。OECの黄色が勝利点で抜け出してるのがわかる。

花火職人「任せろ、任せろい! わしの作った花火は中国一じゃあ! 中国一の三尺玉を見せてやらあな」

そして干ばつイベントである。

わし「じゃ、あんた飢え死にね」

花火職人「へ? わし? わしが作った花火は中…」

わし「いや、さっき作ったやん。ここに花火チップあるし。だからもうええねん」

花火職人あえなく飢え死に。ちーん。

どんどんどん! パパパポァ!

年に二度の花火大会の始まり始まりぃ!

わし「あー、さすが中国。やっぱりCGの花火は綺麗やわ」

と時事問題を混ぜつつここでOECをビハインドしてたわしは一気に6点を獲得して首位に躍り出る。花火チップの半分(切り捨て)は捨てなければならない。これはもう一度ある花火イベントで使えるだろう。他に花火を作ってたのは、Jyamaである。3点獲得して、三つ巴の様相を示してきた。


花火大会さえ終われば、花火師は不要。大事なのはやはり毎ラウンド点数の入る踊り子(1のタイル)か? 左のJyamaの宮殿に二人の踊り子がいる。このおかげで順位はいつもドベだ。建物に住める人数は階数によるのだが、最高でも3階までである。毎ラウンド、建物の数だけ勝利点が入る。ここにきてわしは順番がトップとなったので自由にアクションを選べるのだ。ちなみに緑のタイルが米で、紫のタイルが花火である。

手番マーカーが苦しく、特権を買うたり、花火作ったりと初期のイベントをまったく無視してたおかげで、わしの宮殿は相変わらず2軒のままで、人材も来ては死に、来ては死にの繰り返しである。さらに…

「チョンケンパンチョーン!(適当)」

軍事パレードまで断行して民は益々苦しくなってきた。しかし中盤、ようやくここにきてわしは手番マーカーがトップになった。苦労した。花火職人なぞはまだいい。最初に選んだ二人なんか何もせんまま死なせたりして、しょっぱいプレイでボロボロである。

OECもなんとか踊り子を挽回しようと、6マス手番を進める坊主を取ったりと頑張っているがなかなか順番を前にする事が出来ずに四苦八苦していた。その矢先…

Jyama「じゃ、踊り子取ります」

わし&OEC「マジ? きつくない?」

この感覚は常に先手番を走ってたmiaとコツミには解らない。


踊り子作戦で、なんとJyamaとわしが同点一位。OECここで抜かれてしまう。順番がドベのJyamaの作戦が吉と出るか凶と出るか。

しかしその先手を取ってる二人は、勝利点においてはかなり後方にいるのだから面白い。宮殿もそんなにたくさん建てるのはなかなか難しく、多くて3軒なのだ。つまり特権タイルと踊り子により、この差がついたと考えた方がいい。現在、わしが特権2枚、OEC特権1枚+踊り子1枚、Jyama特権1枚である。Jyamaが1枚ビハインドしてるのにも関わらず、食らいついているのは終始3つの建物を持っていたからだ。OECの踊り子のおかげでわしは慌てて特権を2枚にした。なんせ毎月1点ずつ差が広がるのはあまりにも痛かった。そこでJyamaも同じく踊り子を登用したのだった。

次の登用フェイズで、ジョーカーカードを使ってJyama、再び踊り子を登用。さらには災厄が襲ってくるたびに大工や農民などを次々に殺していった。

Jyama「手番を捨てました」

mia「その宮殿どうなの? 踊り子しかいないじゃん」

わし「ひでぇな、それ。国政の末期症状やんけ。踊り子と花火職人しか残ってへん」


これがJyamaのピンク国家。踊り子3人! しかも権利タイルが3つもあり、これだけで毎ラウンド6点も入る。人物タイルはゲーム通じて各種類1枚ずつしかなく、2枚はジョーカーとなっている。つまり踊り子を3人にするにはジョーカーを2枚とも踊り子にしたってことだ。このジョーカーの2枚と初期セットアップの2枚によって他人と違う戦略を作るゲームだ。

何故かJyamaの宮殿の様子が脳裏にありありと浮かぶ。民は飢えて苦しんでるのに、宮殿では酒池肉林の狂態をさらしている。

わし「そんな国、嫌やな」

と、軍人二人と医者しかいない超軍事国家で将軍様と呼ばれるわしは感慨深げに語る。
手番を前にするために相当無理をしたのだからしょうがない。喜び組がいないだけマシだ。

しかしこう決めてしまっては、それも作戦のうちだ。なんとJyama勝利点を次々にたたき出し、とうとうトップを独走し始めたではないか。

どんどんと差が開く、miaとコツミ。

コツミ「もう、どうあがいても無理やから適当でいい」

なんて投げ出す始末。あんなピンク国家が独走するのだから無理もない。

わし「まあ、そう言うな。勝負を最後まで諦めちゃいかんて」

コツミ「でも、この差だよ?」

確かにかなり離れてしまった。ちょっとバランスが悪いゲームなんかな。

わし「投げたら周りがおもろなくなるからあかんて。頑張れ」

と、なだめすかしてゲーム続行。

さあ、それはそうと、もうすぐ中国国民が愉しみにしてる花火大会だ。コツミは途中、花火を3個にして機会をうかがっている。

Jyama「じゃ、残ってる花火アクションを貰います」

花火はあまり人気がないので、アクションとして残ってるケースが多い。そして花火を2個にしてきた。

やばい。わしは前回の残りが1つあるだけなので、このままでは3位になり得点出来ない。タイであっても満額得点が貰えるので、ここは是が非でも花火を作りたいところ。次の手番で花火アクションを選択して1つ作った。

mia「あれ、花火職人居なくても作れるの?」

わし「アクション選んだらとりあえず1つは作れる。ほら、前の職人のを見よう見まねで作ったんやって」

Jyama「そうそう、前の職人を通りがかりで見た人が、親方こんな感じでやってたで? って作ったんですよ、きっと」

わしとJyamaは妙に受けて「ここで親方は紙を糊付けしてたで。もうちょい丸っこい感じ?」としばらくこの話で持ちっきり。光景を思い浮かべると笑けてくる。

契丹の襲来イベントでも軍人がいないJyamaはあっさりと…

Jyama「あ、じゃ、花火職人死にます」


正面のmiaは4軒目を建て、かなり順調だったが、権利タイルや踊り子がないのが響いている。左にちらりと見えるJyamaの花火3発とピンク宮殿。当然その花火を作った職人はこの世の人物ではなくなっている。合掌。

わしは医家を大切にしてきた。それは最後の12の月に疫病が蔓延する。なんて大予言みたいなイベント配置になっていたからだ。最終得点には人材タイル1枚で2点はいるので疫病の蔓延で大量死するのは避けたい。その前の干ばつ対策としては、農民を雇い、米を収穫した後、宮殿が3つになってたので足りない分は、その農民を餓死させてクリアした。

Jyama「こうしてみると、中国では人の命が軽いのがよう解りますねえ」

わし「ほんまやな。1元足りない毎に1人死ぬとか、人命が軽い軽い。たった1元よ?」

Jyama「日本に生まれて良かったですわ」

中国の荒野に、花火職人と農民、大工の死体がごろごろと転がっている。まず死ぬのはこいつらなのだ。

それにしても、Jyamaのおっさんめ。まさか最後尾の手番で、このまま勝ってしまうんかと驚いた。全然、差がつまらないのだ。わしはここで、学者先生を招く事にした。研究アクションを取る事で、そのまんま本の数だけ勝利点を手に入れる事が出来る。学者は最低でも本2冊あるので、合計3点手に入れる事が出来る。これはかなり大きな得点だ。

契丹が来ないと解った段階で軍事体制を解除し、災厄のたびに医者と学者を守ってきた。そしてことある毎に、研究アクションを選択してJyamaとの差を埋めていった。

トップのJyamaはどこ吹く風で、アクションを選択。残ってる中から適当に選んでいってるようだ。
OECは、お金を使ってアクションを選ぶ為に、終始金欠状態で、アクションを選ばず(そうすると3元にまで手持ちを増やせる)したりしてゲームを行っている。

OEC「今、Jyamaさんいくら持ってますか?」

Jyama「あ、しまった。ばれてしまった」

それとなく手に握りしめた2元を見せる。

OEC「じゃ、特権アクションにします」

要所でしっかりとみるOEC。Jyamaはこの2元を使って特権タイルを買おうとしてたらしい。こういう細かいプレイをOECはよくする。たいしたもんだ。

こうして最後の月の前にわしは、とうとうJyamaを追い抜く事に成功した。


ピンク宮殿に限界が見えてきた。次々に崩落していく建物。あれほど大切にしていた踊り子も天災によりひとり死んでしまった。彼女の住んでた建物も無人となりこのラウンドに撤去されるだろう。

コツミ「うーん、じゃあ建築します。どっちにしよかな…」

4軒目にするか、3階建てにするか悩むコツミ。

わし「もし手元に坊主カードがあるんやったら、3階建てやろうけど、そうじゃなければ、軒数で得点はいるから4軒目建てた方がええで」

坊主タイルは、最終ラウンドにのみ効果があるタイルで、仏像数×住んでる宮殿の高さだけ得点が入る。コツミの宮殿には既に坊主が1人住んでいる。そこを3階建てにした。そこから坊主カードを出して、さらに信仰を厚くした。

そして最後の12月、疫病が中国全土を覆った。あちこちで医者が大活躍しているさなか、踊り子と学者しかいないJyama御殿は、全員、死亡。そして人の居なくなった宮殿は崩壊。綺麗さっぱり、ぺんぺん草も生えないように無になった。いや、正確には花火ひとつだけが残された。

通常得点の後、最終得点を加える。人材タイルは1枚2点で、花火と米は2元になり、3元毎に勝利点が1点入る。

結果、わしがぶっちぎりで勝利し、2位は驚きの坊主3階建て9点を獲得し、一気に後方からまくったコツミである。あれほど離れてたのに、凄い。3位は僅差でOEC、miaと続く。ドベは最後、全員に抜かれたJyamaであった。

所要時間110分

冬空に、夢と踊りし、二尺玉  あきお

JyamaのへっぽこプレイぶりはTAMを彷彿とさせた。


最終。Jyamaの宮殿は笑えるくらい見事に全て無くなった。そして勝利点でドベに転落。2位は坊主で後方一気できたコツミ。

OECのコメント

前回ペストに街を崩壊させられたノートルダムに続いて、同じ作者のゲームということで、序盤から衛生管理を怠りませんでしたw
ほいでも、12ヶ月ある毎月の災厄には衛生管理だけでは不十分で……
後手後手になるのはある程度しかたなくても、干害なり疫病なりであるていど人員を整理するのがポイントと気付いた中盤、先の方を見据えすぎていた先物プランは中盤で大きくもたついてしまって、joeyamaさんのピンク色オトナ計画をギリギリかわせたものの、コツミさんのボウズアッパーに1点差で3位に。
コンポーネントならノートルダムやけど、リスクが先に見えてるこっちのが楽しめた。やっぱオープン要素があるほうが性に合ってるんだわ。てか好みかw
ちょっと購入を考えてみるかな。

Jyamaのコメント

11ヶ月くらいまでは踊り子作戦でもなんとかいけたんですが、最後は限界でした。勝ってたら本日の一番のゲームでしたけど、残念です。

miaのコメント

難しいゲームだったけど、Jyamaさんはかなり面白かった。でもこの作者のゲームって爽快感がないから、あまり好みじゃないかも。

ソマーリオ

次々に襲いかかる災厄に対抗する手段は、人命のみ、だ。これがわしの出した答えである。やたらめったらえげつない災厄がやってくるので、はっきりいって全部対処するのは無理っ! とりあえず殺しとけって話になる。その殺しとけってのも、むやみやたら殺すのではなく、『生産させてから死んで貰う』だ。出来たら、お役目終了、死んで貰っていい。

こうしないとこのゲームでは回らない。最初の2枚のタイルを無駄にしてしまったばかりか、全然、宮殿を建てる事が出来なくて、人材も終始2人か3人しか居なかったわしだが、途中、この非情ともいえるやり方が上手く機能して、勝利を収める事が出来た。別に考えた訳でもなく、そうするしか仕様がなかっただけなのだが。

途中、Jyamaが言うたように、人命の軽いことといったらありゃしない。テーマといい、ほんまに昔の中国を醸し出してて、非常にテーマとゲーム性がマッチしている。

こうして災厄に対抗するも、最終的にはトカゲの尻尾切りを行っていくのって、なんだかマジの政治家をやっているようなゲームだ。おーこわ。テーマを日本の政治に変えてしまえばまんまゲームにすらなるだろう。政治家ってこんなんなんやろなあと思いつつゲームをやってた。政治家気分がたっぷり味わえる。中国の政治そのものという雰囲気があるのだ。
日本の政治家もこのゲームをやって、郵政民営化、年金問題、領土問題など多発する問題から対処する術を養って欲しいくらいである。

ゲームとしてはこれほどたくさんの要素が詰まったゲームをようまとめたなあと感心する。サイコロを使わず、カード運もまったくなし、非公開情報もなし、テキストカードもない。それでいてプレイヤーは多種多様な展開を迫られるのだから、ちょっと驚いてしまう。実のところルールを読んだ限りでは、どこにランダム性があるのかさっぱり理解出来ず、災厄の順番が決まってるのだから、全員、順番にその対策をしていく同じ戦術になるやんけと思ったものだ。

ところがやってみると、皆、違う方向性でゲームをやる。ひとつはアクションカードの選択方法だろう。同じのを選ぶと3元支払うってのが無茶苦茶効いてる。
この3元の為に、手番マーカーの進行具合が気になり、戦術をばらけさせるのに成功しているのだ。
プエルトリコでは、使われなかったカードにお金を追加することで魅力的にしているが、ドラゴンイヤーはあくまでネガティブ要素の追加で、選択肢を増やしている。

ノートルダムとの比較だが、ノートルダムの方が、馬車の存在により立体的な繋がりがあり、またカード運あり、イベントにランダム性あり、個人的にはノートルダムに軍配があがる。むしろ、ノートルダムで、運が強いだの、特殊効果が強すぎるだの、言われたフェルドがむかついて、そういった要素を全て廃して作ったのがドラゴンイヤーのようにすら感じられるのだが。全ての情報が公開されているアブストラクトなので、アブストラクトが好きという人はドラゴンイヤーの方が楽しい筈だ。アブストラクトが嫌いなわしはそういう理由でこのゲームにをつけなかったが、色々戦術は試してみたくなる魅力がある。プレイ感は全然別物なので、こういった複雑系が好きな人は両方持っておいた方がいい。追記:感覚として爽快感がないので付けなかったが、やっぱり付けるに値するおもろさなんで付ける事にした。

コンポーネントで言えば、フェルドらしくやたら内容物の多いデザインで、あまりの具だくさんのために、タイルは一般的なドイツゲームに比べてかなり薄いのが不満といえる。またタイルを抜く量にうんざりした。通貨に穴が開いてるのは凝ってていいが、これもいちいち抜くのだから大変である。紙質も若干悪いが、値段的にしょうがないだろう。
あと、視認性が悪いのでアクションタイルの色をもうちょっと濃いめにしてくれれば良かった。龍の駒に衝立まで付いてて、頑張っているのだが、もうちょっと全体的に上手く中国色を出せたように思う。中国ってのはもっと色が濃くて鮮やかだ。

ゲーム時間は先に述べたように完全公開アブストラクトゲームなのでどうしても長くなると思う。早回しの連中でやったとしても、5人でやれば90分くらいはかかるだろう。考えどころがたくさんあるのと手番数が12ラウンドと多いので、これはしょうがない。最初突っ走られるとどうしようもなくバランスが悪いかなと思っていたが、コツミのを見る限りそうではなかった。全員が良い勝負をしてるのが最後の画像で見てとれるだろう。ただし、積極的に戦略を考えていかないと勝利点でどんどん置いていかれるので、初心者にはちょっと厳しいゲームだと思う。適当にやってると、ほとんど点数が入らない。これはフェルドデザインのほとんどがそうだが、ドラゴンイヤーは全て公開情報なので特に感じる。

人が処理しきれないくらいの要素をわざとたくさん持たせる事によって、歯ごたえのあるプレイ感がありノートルダムよりもゲーマー向けといえる。システマチックにゲームを作るよりも、ちょっとこういった複雑な組み合わせでゲームとして成立させる方が好みだ。またシステム的に、ゲーム全体にドラマ性があるのはとてもいい。このようにレビューが長くなったのはそのせいである。終われば、いっぱしの中国式政治家の出来上がりだ。

中国をテーマにした小説家といえばなんといっても宮城谷昌光であろう。宮城谷小説を読めばドラゴンイヤーが楽しくなること請け合いである。是非読んで欲しい。わしもまだ読み始めたばかりだが、まずは最も古い夏王朝を扱った長編、天空の舟を薦めたい。かなり面白い。ちなみにわしは、ファンの方には申し訳ないが気取った文章の北方謙三は大嫌いだ。北方三国志は人気はあるようだが、最初の20ページくらい読んでうっとおしくなって辞めた事がある。
「劉備は、督郵の顔面の中央に拳をたたき込んだ」なんて文体は明らかに三国志の世界じゃない。興ざめも甚だしい。

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