Sebastien Pauchon

YSTARI

2〜4人
60分

イスファハン

1598年サファヴィー朝ペルシャ帝国の首都イスファハンは、世界の交易の中心として栄華を誇っていた。
今日もまた絨毯、宝石などの交易品を積んだ長大なラクダのキャラバンがイスファハンを出発する。
それはシャー(皇帝)への貢ぎ物なのだ。






プレイ感

非常に評判がいいので、前々から欲しかったがまったく日本に輸入されてこない。しまいにドイツゲーム大賞にノミネートされて、ようやく増産されたのか日本でも手に入るようになった。TAM夫妻、タカダとの4人プレイにて。


親プレイヤーがサイコロを9個まとめて振る。同じ目ずつに分けて、ダイスタワーと呼ぶアクション表に小さい順に上に置いていく。手番になると、このどれかのアクションを選択するのだ。サイコロの数ってのは、商店に駒(商品)を置いたり、ラクダを手に入れたり、お金を手に入れたりする数のみを決める(といってもかなり重要)のであって、他のアクションを選んだ場合は特に関係ない。


ボードはスークと呼ばれる市場を表してる。サイコロをぞろ目に従ってダイスタワーに配置する。各プレイヤーはどのアクションを使うかを決定する。今回の目はばらばらに出たので親としてはがっかりである。一番下のラクダと一番上のお金は絶対に埋まるようになっている。それにしてもこのボードの色合いはないよなあ。。

商店はこのゲームで最も一般的な勝利点の稼ぎ方である。4つあるエリアのうち、同色の商店に全て駒を配置出来れば、独占となりポイントが入る。また通路にはシャーの代理人がおり、店先に止まると商品を召し上げる。つまり商品駒がなくなって交易ルートに載せられるのだ。これは独占という事から考えると、損なのだが、交易ルートに載せる事で勝利点が入るようにもなっている。一挙両得を狙えるようにするのが、ラクダ駒の存在だ。

ラクダ駒は、なくなった商品の在庫を補充してくれる。つまり手元のラクダ駒を捨てる事で、手元にある商品駒をいきなり交易ルートに置く事が出来る。商店の在庫切れを防ぐのだ。


白コマがシャーの代理人であるが、仮面を被った少佐の代理人という訳でない。こいつを動かすと、目の前にある商品を召し上げてくださるのだ。商品はキャラバンに載せられる勝利点が入るが、売り切れになってしまうと同一色商店の占有(週ラウンド毎に勝利点が入る)が出来なくなるというジレンマがある。逆にこれを使えば相手に嫌がらせも出来るのだ。それを防ぐラクダコマの存在はとても重要だ。


これがキャラバン隊。召し上げられた商品コマは、ラクダの一番後ろから順番に載せられていくと同時に勝利点がラクダの数字だけ貰える。また満載になったらキャラバン隊は出発して、それに応じてさらに勝利点が貰える。

このイスファハンは、ラクダ駒の使い方が勝利を呼び寄せるキーポイントとなっている。商品の流通をになうからだ。

そのラクダ駒に目を付けたTAM嫁はひたすらラクダ駒を集める。わしらにはまったくラクダ駒を与えてくれない。どうせアクションを選択するなら一気にたくさんのラクダを貰った方が得なので、どうしてもサイコロの数をみてしまう。

しょうがないのでわしとTAMは金貨ばかり貰う事になった。金貨はラクダと同じような特殊な駒で、サイコロの数を増やしたり、シャーの代理人の進む数を調整したりといったラクダに出来ない事をやってのける。


このように金貨にたくさんのサイコロが集まるとどうしてもねえ。サイコロの数の関係あるのは、金貨、ラクダ、商店の配置のみでサイコロの数だけ貰えるのだ。それ以外のアクションは何個あろうと1アクションしか出来ない。

タカダの戦法は違っていた。こいつはお金とラクダを溜めては公共施設を作っていった。公共施設は、ラクダやお金を支払う事で特殊効果を貰えるといったもの。特に最強だと感じたのはクレーンである。


2の集中! やけど、麻袋エリアってピンクのところを独占しても8ポイントしかないんよなあ。黄色のサイコロは親だけが使える目で1つにつき1ゴールド払えば増やせる。下に見えるのが公共エリアタイル。絵の下のコストを支払う事で、様々な特典が貰える。中でも一番右のクレーンは超強力。またある程度建てるとそれだけで勝利点が入る。

クレーンはラクダ4、お金4という高いコストがかかるが、こいつがあれば商店に駒を置くとき、余分に1個置けるのだ。商店エリアのうち最も出にくい壺エリアは、わずかの駒だけで独占出来て勝利点が高いようになっている。クレーンの効果を使えば、すぐに独占出来るので暴力的な強さを発揮する。


よっし。マップ右上の壺エリアで最も得点の高いエリアを独占。わずか3つだけだが、12点も入るのだ。クレーンがあればここを簡単に独占出来てしまう。タカダは交易所まで建てたので、独占エリア毎に2ポイント増加するというとんでもないマンセー状態であった。


2週目の最終ラウンド。TAM嫁が独占しまくりのボーナスラッシュをかけてきた。3週間21日間ゲームはあり、各週の最終のみ独占ボーナスが貰える(その後リセットされる)ので、それまでに独占すればいいのだ。逆にいうと、独占出来なかった場合、何の価値もなくなる。

クレーンを使ってひたすら独占をするタカダに対して、わしとTAMは交易ルートに載せて地道に商品をシャーに送る戦術を取る。クレーンの強さに惹かれてはいたが、なんせまとまったラクダが手に入らない限りどうする事もできないのだ。ここらへんはサイコロ運というのが大きい。

結局、そのクレーン攻撃に全員見事惨敗。タカダぶっちぎりの勝利。

所要時間60分


最終ラウンド。わしはひたすら商店の独占を狙ったが、届かず。

TAMのコメント

あのクレーン無茶苦茶強いですね。しかしこのゲーム、かなりおもろいです。

ソマーリオ

なるほどサイコロは選択肢というものを与えるだけで、一般的なサイコロゲームではない。サイコロの使い方が非常によく出来ていて、運だけでなくプレイヤーに戦略的な要素を持たせるようになっている。

ヘビーゲームという要素と初心者にも遊びやすいゲームという要素と、果たしてどっちが上かと判断に困るゲームであるが、ルール自体はそれほど複雑ではない。複雑ではないのだが、いろんな要素が絡まり合って、勝つためにどうすればいいか見えにくくなっている。逆にいえばこの見えにくさこそが、様々な勝利方法があるともいえる。

あまりにもおもろかったので、翌日、TAM夫妻と3人で再戦した。前日のタカダのクレーンがやたら強かったので、カードの力を使って序盤にクレーンを建てる事が出来た。慌ててTAM嫁も同じようにしたが、クレーンのアドバンテージは強力でそのまま一気に勝ってしまった。

これでちょっと疑問符がついてしまった。というのは、最初にやった時、を付けるつもりだったのだ。ところがこのクレーン、最初にお金やラクダを払わずにいいというカードを使うと、事実上コストが半分になるため、簡単に建てられてなおかつ、異常に強い。

これでは交易ルートにラクダを載せて勝つという戦術や、独占を狙って勝つという戦術など、ゲームに勝つ為の様々な戦略が何の意味も持たなくなる。実際にもっとやってみて試してみないことには解らないが、もしクレーンがキラーツールという事であれば駄作となってしまう為、コストを減らすカードをクレーンなどの強力な公共施設では利用出来ないようにするなどの追加ルールが必要だろう。

また、ボードの絵柄が冗談かと思うくらい酷くて、その部分を直せば或いはドイツゲーム大賞に輝いてもおかしくなかったのではないかとも思う。(ドイツゲーム大賞の審査対象にはコンポーネントも含まれる)砂漠の商店やのに、どぎついショッキングピンクやブルーを使うなど論外である。事実、ノミネート作が発表されたとき、ズーロレットが未知数であったため、こいつが受賞すると思ったものだ。それでも最低ドイツゲーム賞を獲ると思ったのに、4位と票は奮わず大聖堂になったのには驚いた。それくらい評判は高く、おもろかった。やはりこのコンポーネントのせいだ。
ノートルダム(同2位)はやっていないが、2007年はヴァイキング(同3位)、イスファハン共に質の高い佳作が揃ったように思う。これら3つ共が無冠であったのはあまりにも残念だ。ズーロレットのテーマに負けたという感がある。

話はそれたが、その部分を差し置くと、ゲームとしてのおもろさは抜群であり、たくさんの人に支持されているのがよく解る。公共施設で特典が増えていくのは、大傑作プエルトリコにそっくりだし、クレーン戦術、キャラバン-シャー戦術など勝ちパターンがいくつもあり考えどころもあるくせに、サイコロ運というのも十分以上に加味されている。商店やキャラバンなど砂漠のイメージが非常によく出ているのも好感度が高い。

イスファハンは運の要素が強めだが、それでもプレイヤーに選択する権利を与えて、プレイさせた気にさせる非常に優秀なゲームである。負けても運のせいに出来るし、勝ったとしたら自分の戦略のおかげだと思えるからだ。Ystariはミケリノスなどアブストラクトチックなゲームが多いが、こういったゲームを次々に出して欲しいものだ。もう少しボードデザインを良くしてw

後日やったOECのコメント

やる事が多いようで少なくて、長いようで短い3週間21日。
普通のサイコロをよくぞここまで面白くしたなぁ〜って思った。
レビュー読んだ時から面白そうだとは思ってたけど、そうぞうとは違った面白さ。良い方で。やっぱサイコロゲームが好きだ!
<備考>
あきおさんのカード戦略にやられて2位。めっちゃくやしい〜!
重過ぎない感じが、とても良い。

その後の評価

mia、OEC、コツミと後日4人でプレイしたが、クレーンが強いというのを前もって話したので、カードを使ってクレーンを前半早くに3人が建てる展開となった。

OECはその後、ラクダのパドック(ラクダ+1)、工房(金貨+2)を作り、資金を潤沢にしてから次々と公共施設を建設していく。これが見事に回転して、このときのタカダのプレイを彷彿とさせた。miaはバザール(商店独占で勝利点+2)を建設し、クレーンとバザールの最強コンボで挑む。

わしは、クレーンを建てたがかなり出遅れてしまい、ほとんどクレーンを活用出来ないまま、方向転換を余儀なくされた。今回は3人がクレーン戦術をとったので、キャラバンは2週目中盤入ってもまだ1個しか置かれていない異常事態。こりゃあ、負けたなと思いつつもしょうがなしに、わしはキャラバン戦術に変更。

ひたすらシャーの代理人を動かして自分の商品を召し抱えて貰う。公衆浴場(シャーの代理人を3マスまで追加移動)を建てずとも、誰も動かさなかったので、楽な展開であった。そして、今更、バザールを建ててもしょうがないと思い、思い切って隊商宿(キャラバンに送られる毎にカード1枚)を建ててみた。何かあればとりあえずキャラバンに送っていったが、カードがどんどんと手札に溜まっていった。

そして最終的にキャラバン隊は一度も出発せぬまま、コンスタントに点数を稼ぎ出し、最期なんかは自分の商品が8個もあるという完全な独占状態で、×3で24点も獲得して、勝利した。この時、忘れてたのがカードのもうひとつの効果。ゲーム途中「左上のこのマークはなんでしょ?」と大石が訊いてきたが、多分カードのマークやろとルールを調べずに返事してしまった。後でルールを確かめたところ、カードを捨てる事で手番に1度だけ、商品、ラクダ、金貨アクションを選択した時に+1余分にアクション出来るというものだった。要らないカードがわんさか来ていたので、これがあれば更に得点は伸びていただろう。

かつてクレーンが強すぎると思っていたが、実に様々な勝ちパターンがあることが解った。プレイ感も軽く、これは最初に思っていたようにに評価を変更したい。

実のところ、レイハリーハウゼンのシンドバッドシリーズよりも、もっともっと砂漠を描いた物語がある。それが手塚治虫の千夜一夜物語である。エロティック、残酷、自分勝手と見事にアラビアンナイトの世界観を描いている。レイハリーハウゼンのシンドバッドは、ファミリー向けに仕上げているのでそういったシーンはないが、本来のアラビアンナイトの世界観とはまさにこんなんである。内容は思いっきり大人向けだが、子供の頃みて、もうその不思議な感覚に完全に魅了されてしまった。
絵はアンパンマンのやなせたかし、声優は青島幸夫、さらに友情出演に筒井康隆、小松左京、遠藤周作とか大物作家たちが出ている。最近、廉価版のセットが出てるのを発見したので購入した。この世界観が好きなら、観て損はない。

gioco del mondo