Wolfgang Kramer
&
Michael Kiesling
Ravensburger
2〜4人
45分
アサラ
みなさん、いらっしゃい。
アサラは、あなたに門戸を開いた数千の塔のある国です。そこが白い石膏の壁と金のドームの屋根で出来た宮殿に支配された魔法の国であることに気がつくことでしょう。
クレーンは空へ届き、様々な建物が計画されています。不思議な空飛ぶ機会が重たい部材を空高く運んでいるところも見る事が出来ます。
カリフが国を美しくする建物を作る競争を開催していることは国境を越えて伝わってきました。
あなたの技術で競争相手に打ち勝ちましょう。
メビウス訳より
プレイ感
ドイツゲーム大賞
にノミネートされたので、急遽、miaと二人でやってみることにした。ルールを読んでおもろそうと思ったので、実はこれが大賞になるんとちゃうかなと思ってた。
ルールは一言でいえばマストフォローのトリックテイキングを利用したボードゲームである。だからマストフォローと聞いてピンとくる人であれば、非常に簡単なルールだ。
手番には配られた買い付け人カードを、自分のやりたい行動に配置して実行する。買い付け人カードは全部で5色あり、一番最初に配置した色をフォロー(例えば最初に置いたカードが緑なら緑のカードを置く必要がある)していかなくてはならない。フォロー出来ない場合はカードが2枚必要となる。最初に配られる買い付け人カード枚数がイコールアクション数となるので、2枚使うのは非常に痛いのだ。
最初の1枚目は何色を置いてもいいので、言い方を変えれば相手を苦しめるように最初の1枚を配置していけば良いわけだ。
今回は二人プレイなので、9枚ずつ買い付け人カードを配る。このように5色あり、各マスごと最初に置く場合は制限はないが、2枚目以降そのマスに置くにはマストフォローしなくてはならない。
アクションには、てっぺん、窓、中央、土台と4種類ある塔の部材を買うのと、集めた部材で塔を建設するのと、金を調達するのと、好きな山から見て部材を買うのと、スタートプレイヤーになるのと、がある。
このゲームの目的は塔を建てる事なので、部材を集めて、塔を建設するのが重要だ。他のアクションはその補足事項にすぎない。
マスは十字形の各マスに5カ所、斜めの端に2カ所ある。部材は各ラウンドごとに規定枚数を表向けにしておく。縦横の4カ所は部材、真ん中は建設現場のマスだ。
建てた塔によって4回決算し、最終的にポイントが高いプレイヤーが勝利である。
今回は二人プレイなので、買い付け人カードは9枚ずつなのでそのまま上手く使えば9アクションあるという意味だ。
二人ともまずは塔の中でも重要なてっぺん、もしくは土台の部材を買う事にする。てっぺんと土台の2枚が最小構成で建てられるからだ。建てる場合、既に建てている塔に部材を追加するのは構わないので、小さいのを建てて後からでかくする方法が良い。
部材を買うアクションは簡単で、買い付け人カードを置いたら、そこに表向けになっている部材をひとつ取って、自分の衝立の後ろに置く。そして買うた色の価格を支払うだけだ。塔は5色あり、一番高い白は8アサラ、安いのは茶色の3アサラという風に色によって部材の値段が違う。
また部材には、紋章が施されているタイルがある。これは追加点をもたらすので、同じ値段ならこれを買うのが得策となる。ちなみに含有率は、各色の各部材毎に1枚ずつだが、てっぺんだけは白しかない。そしててっぺんの白は100%付いている。さすが高いだけある。
miaは赤の紋章付き土台を、わしは黒の紋章付き土台を買う。手札が多いので1枚目のフォローはさすがに簡単だ。まだ最初のプレイなので、相手を苦しめるより自分が複数欲しい部材があるマスに、枚数の多い色を置いていった。こうすれば、何度かそのマスを選ぶ事が出来る。
買うた部材はお金と一緒に衝立の後ろに置いておく。わしは黒の塔を、miaは赤の塔を建てている。てっぺんと土台が最小構成だが今回は二人とも3枚で建てた。
数枚、部材を集めていくと、すぐにお金が枯渇することに気づいた。お金の調達は、先に置いた方が金額が高いので、さっと置く。それに気づかないmia。わしはさらにお金を調達した。そこでようやくmiaもお金が足りない事に気づいた。
mia「あ!」
遅く調達すれば、マストフォローせんといかんわ、金額は少ないわで踏んだり蹴ったりである。
それから、集めた部材で塔を建てる事にした。建設現場で、建てる塔の枚数のところに買い付け人カードを置く。それと同じ金額を支払って、衝立の後ろから部材を出して合体させるだけだ。勝利点も同じだけ入る。三日月が紋章の黒色の塔がたった。トルコか??
miaも赤色の塔を建てる。
こうして1ラウンド目が終了。決算だ。
塔1つにつき1点。紋章1つにつき1点。スタートプレイヤーマーカーが1点。それだけ。
2年目にはわしが3つに対してmiaは2つ。一番高い白の塔を建てた。もちろん紋章付きだ。
ただし4ラウンド目の最終決算は、これに加えて、強烈な得点が入る。塔の色ごとの高さ1位2位に、1番目2番目の高い塔に、1番目2番目にたくさん塔を造ったプレイヤーに、それぞれ勝敗を左右する得点が入るようになっている。例えば白の塔なら1位12点で2位は6点だ。
そこでわしは同じ色の塔を建てるのは愚策だと思った。二人プレイなら、2枚構成のしょっぱい塔であっても2位の得点が入るのだ。わしは最終的に5色の塔を建てる事にした。ドイツゲームによくあるいっちょ噛み方式だ。
次ラウンド開始時に20アサラの補助金が出る。なんせお金を潤沢にして廻す事が肝心だ。なるべく早くに資金調達に置く事にした。
常に紋章の数ではわしを圧倒するmiaだが、お金の工面でいつもわしに出遅れ、なかなか思うように出来ないようだ。
わし「じゃ、白の部材を買う」
mia「えー! どうしてそんなにお金あるの?」
4年目は、建てた塔に対して伸ばす作戦にでる。中央部ばかりを集めて足すだけだ。
4ラウンド目ともなると、マストフォローの利点を活かして、相手にいやがらせをする。もうないやろというつもりで同じ色ばかりの買い付け人カードであちこちを手に入れるようになった。
わし「お前、それごっつうざいんやけど」
mia「それはこっちのセリフ」
仕方がない。とりあえずカード2枚で手に入れていくしか方法はない。特に気をつけなければいけないのは、集めに集めた部材が建設出来ないなんて羽目に陥らないよう最後は2枚を残しておかねばならない。
mia「じゃ、建設」
ほっ。2枚残して正解。
わし「じゃ、これで7アサラ払って建設する」
※建設したい枚数だけお金を払うが、最高は7枚までだ。また建設枚数と同じマスに既に買い付け人カードが置かれている場合は、それより上位コストのマスにおいて建設出来る。
そうこうして最終決算。
5色建てたわしに対してmiaは4色。赤の塔は最小構成で2位狙いだ。
わし「建物は色ごとに得点ある。じゃ、安い茶色から」
今まで一進一退だった得点が、ここで一気に開く。
どちらも合計5つの塔を建てたのだが、miaは赤の塔を2つ建てて、茶色の得点を丸々損してしまった。
最も高い塔もわしが押さえて圧勝。
所要時間40分
ボードはこんな感じで、同じ色をあちこちのマスにおいてせめぎ合ってるのが解る。
mia「むう、同じ色建てたら損なのか」
わし「そう。よくあるドイツゲームのパターン。2位狙いでしょっぱいのを狙う」
というわけで翌日、もっかいやってみる事にした。
2回目のプレイは、序盤から激しい買い付け人カードのせめぎ合い。相手が苦しむようにカードを配置すると、ボード上は同色で固まりだす。
2回目も資金調達を上手くこなしたわしの勝利。
miaのコメント
あ、これ面白い。でもなんであきおくんはこの手のゲームはいつもお金があるのか不思議でしょうがない。いっちょ噛みの法則を忘れてた。
ソマーリオ
ルールは簡単でジレンマが解りやすいドイツゲームのお手本のようなゲーム。マストフォローの概念を知らなくても、すぐにルールは理解出来る。最近のヘビーゲーム寄り、
ドミニオン
方式、
アグリコラ
方式の流れからドイツゲームも原点回帰したなあなんて感慨深く思った。
もしこれが
ドイツゲーム大賞
にならなければ、時代が変わりこの手のタイプは消費者に求められなくなったのかも知れない。といっても2011年から、ヘビーゲームはエキスパート賞というのが創設され棲み分けするようになったので、そこに時代の流れが向いているのだろう。
原点回帰というよりも熟成という表現がぴったりで、マストフォローのトリックテイキングをボードゲームに流用して、ドイツゲームで培った勝利点方式と融合させまろやかなシステムを生み出した。
クラマー
が意図したジレンマが見事に機能しており、手番に行うアクション数が決まっている事や、建てられる枚数に限界がある事から非常に接戦となるようにデザインされている。長考しがちなシステムだが、衝立で見えなくすることで確実性を緩めプレイ時間を短くすることに成功した。ボードゲームのくせにカードゲームのプレイ感だ。コンポーネントもこの値段にしてはよくやっている。
アサラの欠点を無理矢理探せばそのあまりにまとまり過ぎた優等生体質が鼻につくってところかも知れない。
基本ルールで二人プレイだと、作戦にパターンが決まって飽きがきそうだが、上級ルールの買い付け人カードの追加や光る窓タイルの追加でワンパターンになるのを防ぐように出来ている。もちろん3人以上だと揺らぎが増すのでそんな心配もなくなるだろう。
うっとおしいくらい完成されてるからこそドイツゲームをやってみたいという人に安心して勧める事ができる。初心者に裾野を広げる意味合いのゲームとしては、
チケットトゥライド
に比肩しうるゲームだと思う。攻防がとても分かり易く初心者でも肝となる部分をすぐに理解する事が出来るからだ。そして値段が4500円と内容の割に安いのはかなりの魅力だ。
チケライに比べて若干劣っていると思うのはテーマ性だろう。地図に線路を敷くのは、塔をにょきにょき伸ばす行為よりもちょっとだけ楽しい。ただし言語依存のまったくないのがアサラの勝っているところで、これから初心者にお勧めするゲームの1番手としてあげる事になった。もちろんゲーム中級者以上でも十分楽しめる。
※ホビージャパンの
チケライ・ヨーロッパ
は日本語版でありながら、地名が英語表記というがっかりな仕様なのだ。また正規の販売価格なら推したいのだがバンダイのチケライは、コンポーネントが貧弱でヤフオクで高価に取引されるようなものではない。値段的にもバンダイの方が断然良かったのだが、撤退してしまったのが残念だ。
ほぼ間違いなく2011年の
ドイツゲーム大賞
はこれだ。本命は
世界の七不思議
だと言われていたが、世界の七不思議がエキスパート賞にノミネートされた事でアサラが大本命になった。ドイツゲーム大賞最多受賞者のクラマーが、老舗のラベンスバーガーに2000年
トーレス
以来11年ぶりの戴冠をもたらすのはもうまもなくだ。
そして予想は見事に外れた。大賞はクゥワークルで、初版は2006年である。
ディクシット
と同じく、今更感はあるが、ドイツで販売されたのが2011年だからしょうがない。
gioco del mondo