林 尚志

OKAZU Brand

3~6人
30分

はんか通骨董市


家康公が江戸に幕府を開いてからいくばくか。江戸の町は、かつてないほどの賑わいを見せていました。
あるとき、その江戸のある蔵から多くの品が見つかり、骨董市を開くことになりました。
そのうわさを聞き付けた商人たちが集まってきましたが、実は彼らは全く相場もわからない知ったかぶりなぼんくらばかり。
これは売れると見込んでたくさん集めてしまうと、価値が激減してしまう厳しい世界で、より多くの儲けを出すのはどの商人でしょうか?

プレイ感

2015年秋のゲームマーケット新作で、ケーキの切り分け問題をテーマにしたOkazuBrandのカードゲーム。他にあるケーキの切り分けシステムであるサンマルコもっとホイップを!の評価はボチボチであった。なんか爽快感がなくてそんなに好きなシステムではない。ゲムマでも買わずにスルーしたのだが、評判をみて気になって結局、アマゾンで買うてしまった。カードゲームのくせに、やたらとカードの種別が多く、一体どれがどのカードやねん! となるこの手のタイプはルールを読むのが億劫だ。理解するのに面倒なので、裏面にずばりなんたらカードって種別書いとけよと思う。まあ、そんな話はええか。もうすぐ6歳になるコタとmiaとの3人プレイにて。


今回は3人なので、骨董品カードを8枚ずつ5つの山にしておく。1つの山が1ラウンドを表しており合計5ラウンドで終了。
1つの山を順番に表向ける。元締めカードを持ってるプレイヤーが、順番を変えずに2つのグループに分けて、さらに元締めカードをどちらか、好きな場所に置く。グループを判断するために、それぞれ甲乙カードを置く。


初期状態。元締めのプレイヤーが甲乙、仕切り、元締めカードを手元におく。それから山札を展開する。

プレイヤー全員は、欲しい方のグループを裏向けで提示して、一斉に開く。
もし、選んだのが1人だけなら、そのグループのカードを全て貰い、一旦ゲームから抜ける。
選んだのが複数なら、今回元締めだったプレイヤーの左隣の人が仕切りカードを貰って、そのグループを同じように2つのグループに分ける。さらに複数なら、仕切りカードを左隣に渡して同様な事を繰り返す。

もし、誰も選択しないグループが出来たなら、それは一旦千両箱エリアに置かれ、ラウンドの終了時に元締めカードを貰ったプレイヤーが総取りする。
もし、グループが1枚しかないのに複数プレイヤーが選択していたら、そのカードは千両箱に置かれ、選んだプレイヤーは代わりに反物カードを1枚ずつ貰う。

元締めカードを貰ったプレイヤーが次のラウンドの山を開いて、2つのグループに分けて、と繰り返す。
5ラウンド終了したら、得点計算。
得点計算には特徴があって、骨董品の種類によって得点できる最大枚数が違う。最大枚数以下なら、書いてある得点が貰えるが、超えてしまったら、全て1枚につきマイナス1点となる。
例えば、刀剣は1枚6点で最大枚数は2枚なので、2枚持っていたら12点だが、3枚持ってしまったらマイナス3点となる。こうして合計点が高いプレイヤーが勝ちだ。

まずはわしが元締めとなって、グループ分けを行う。

「最初やし、まあ、どっちでもええな」


開いたカードの順番を変えてはいけない。2つのグループに切り分けた後、元締めカードをどこか好きなところにおく。元締めカードを取ったプレイヤーは流れたカードを貰えるのと、次のグループ分けの権利を獲る。それからプレイヤー全員が、どちらのグループが欲しいか、甲乙カードを同時に出して示す。

そして甲乙カードを一斉に公開。

miaとわしが被り、コタは総取りで抜け。

さらにコタが残ったカードのグループ分けを行う。

※抜けたとしても、グループ分けを行うのは左回りに廻ってくる。

そしてここでも被り。

「むかつくことにこういったものはいっつもお前とバッティングするんよな」

通常のバッティングやとここで、めげて終わりだ。


miaといきなり被ったので更にグループ分けを行う。


そしてまた被った。この1枚グループでもさらに被ったので、どちらも反物カードを1枚ずつ貰って終わりだ。

ところがはんか通りでは、そうならないように出来ている。
それはルールで説明した通り、枚数が多いとマイナスカードに変わってしまうからだ。
枚数が多い=有利というのを覆したシステムとなっている。確かにドイツゲームではよくある手法だが、マイナスに移行するカード枚数が絶妙できちんとテストプレイを重ねて作り込まれているからこそ良いゲームといえるのだ。アイデアだけではこれは出来ない。

次の第2ラウンドでは、コタがたまたまなのか、このゲームの神髄であるグループ分けを行う。

恐ろしく不平等な切り分けだ。

第1ラウンドでごっそり取ったコタは、通常のグループ分けだとマイナスカードになってしまうのが出てくる。
そこで、あえてマイナスになる部分を思いっきり他プレイヤーに有利になるように切り離し、自分が欲しいところだけを少数取るように切り分けた。

たまたま?

こうなるとmiaとわしは圧倒的に枚数が多い方を選択せざるを得ない。どちらも人身御供になりたくはない。

「凄い。これはTAMが5年に一度だけ見せるファインプレイと同じ感覚や」

とまあ、こんな感じでゲームは進んでいき、大量に取りまくってるコタがぶっちぎりの様相を示していた。

そして5ラウンド終了後、例のシステムがしっかりと働き、なんと勝者はわしで2番にコタ。

この枚数でも勝てるんや。


これがわしの終了状態。カードの得点の下にある絵馬みたいなマークが最大枚数を表しており、これを超えるとすべてマイナス点になる。左の茶器なら1枚のみ、その隣の刀剣は2枚までという事。


これがコタの集めた骨董品。見ての通り2箇所で枚数オーバーしている。ちなみに絵馬の描いてない宝石は何枚貰ってもマイナスにはならない。

所要時間20分

miaが悔しいというので、すぐに2回目。

しかしここでもわしが勝利して、コタが2番だった。5歳に連敗とはのう。

ソマーリオ

目新しいところはない。しかし、ケーキの切り分けシステムを見事に活かした面白いゲームとなっている。
カードの得点や枚数が絶妙で、1枚しかないカードを複数人が選んだ場合の処理など、一見すると破綻しそうなところを反物カードできちんとフォローしているのが素晴らしい。

プレイ感はケーキの切り分けという重くなりがちなシステムのくせに軽く、誰でも簡単にジレンマを感じる事ができるようになっている。点数計算の見通しがいいのだ。誰でも簡単に、というのは非常に大事で、最近のゲームにはこれが欠けているのが多くてうんざりしていた。

日本風にしたテーマもとても良い。すきものガラクタオークションのような革新性はないが、非常に丁寧な作りで好感度は高い。骨董品にツボなわしとしてはこういったゲームが出てきたのは嬉しい。
同じようなテーマでは、貴族の努めが有名だが、マスターピースの日本改訂版である大競り市ゲームが好きだ。古いゲームで恐縮だがこれは近いうちにレビューしたい。

話を戻して、このゲームの唯一の欠点は、ルール表記がやや解りづらいところである。特に「仕分け」という単語。これは仕分けカードを表しているのか、グループ分けを行う事を表しているのか、仕分け人を表しているのか、すげぇ解りにくい。ちゅうわけでこのレビューでは行動の事をグループ分けと表記した。
また元締めカードが流れた時の処理がいまいち解りにくい。せっかく裏は済みマークまで付いてるのに、どのタイミングでやるのかもぱっと見たところ見つからなかった。見逃しがちなルールとしては元締めカードを貰ったにも関わらず、千両箱に一枚もカードがない場合は反物カードを1枚手にできる。

Okazuのゲームは500円ゲームズの会心作セイルトゥインディア以来初めてやるが、カードの品質やシステムの品質含めて同人とは思えなかった。プレイ時間もさくっと終わるので、すぐに2回目3回目との声があがる。このまま商業製品として流通させてもまったく問題ない。

gioco del mondo