林 尚志

OKAZU Brand

3~4人
60分

セイルトゥインディア


舞台は15 世紀.16 世紀のポルトガル王国。地中海の制海権をオスマントルコに抑えられたポルトガルは地中海交易を制限され、新たな交易路を嘱望していた。
そんな中、造船技術の進歩・羅針盤の伝搬・中央集権の確立など様々な出来事がポルトガルを海外への進出へと後押しする。
そしてエンリケ王子やバルトロメウ・ディアス、ヴァスコ・ダ・ガマなど様々な航海者が登場する。

プレイヤーは航海者たちを後押しする王家の一人となり、インドへの航路を進めていきます。歴史に名を残すのはどのプレイヤーでしょうか?

プレイ感

2013春のゲームマーケットにてダンジョンオブマンダムと並び最も話題となったゲームである。わしゃ当時、同人について情弱だったため手に入れられなかったが、あちこちのサイトで大絶賛、ヤフオクでは既に8000円という価格も付けられており、こりゃあ手に入れるのは無理やなと思って諦めた。

しかし話題のゲーム、是非レビューしたいと、COQに持ってきて貰った。その時がCOQと初めてゲームをやった日なのであるが、タメラと2人で散々、活版やらなんやら説明され、やられまくってよう解らんままにゲームが終わった。残念ながらこれではレビュー出来ない。
しかしCOQが「僕は昔からジョーコデルモンドの大ファンなんです。良かったら差し上げます」
ええ! まじー! 超嬉しい。
さすがに値段も付いてるので悪いと断ったが、どうぞというので貰う事にしたのだった。

前置きが長くなったが、ようやく大阪の帰省のおりに、ムゲン、レイ、アマバとの4人プレイする事ができた。やっぱりルールは自分で読まんと記憶に残りにくいんよなあ。


ルールは公開されているが、かいつまんで書く。手番に2アクション行う。アクションの種類は、駒を増やす、船を動かす(商品マスに置いても良い)、商品を売る、建設、技術習得、船の移動力をあげる、である。

船はリスボンから出発する。移動させたあと、カードに描かれている商品マスに移動させて良い。こうすることでそれは既に船ではなくなり商品となる。商品を売るとは、これらを一斉にリスボンに戻す事だ。種類が多いほどお金が多く手に入る。カードに描かれている、教会、拠点、商館を建設する場合も船の駒をそこに移動させ、今後は建物として機能する。


左にリスボンのカード。そこから3枚までは航路が分かっている。残りは実際にたどり着くと公開されるという寸法。

このゲームの最も特徴的な事は、この駒の使い回しである。駒は、船、商品、建物、手持ち金マーカー、勝利点マーカーと全て同じ駒を使って使いまわすのだ。恐ろしい事に、マーカーまで使いまわす。リスボンにある船を使ってお金や勝利点を表し、駒が足りなければ、諦めなくてはならないのだ。

こうやって、ゲームを進めていき、最終的に最後のカード、インドに誰かが到着するか、ストックの駒がなくなったプレイヤーが2人になったら(このルールは後の商品化で追加)ゲーム終了。勝利点の一番高いプレイヤーが勝ちである。


たどり着いた船は、カード上に置くことで商品駒になったり、建物になったりする。反射して見づらいが個人ボードの駒と使い回しなのだ。左上がお金(つまり今0)、下が船の速度、その横が技術者(技術における駒)、右が勝利点だ。お金と勝利点は5点までしか刻めないので、5点を超える場合は駒を2個使わなければならない。

さてこのゲーム、とても不評な活版印刷という技術がある。もの凄く強い。で、これについても商品化によって改変があり、コスト1金にし技術を習得した時に1VP貰える、を使用する。もう1点、採掘技術のコストを0金にする。

スタート直後、駒を買わないとすぐに不足する。リスボンにある駒は1個だけなのだ。それに気づかず、早いもの勝ちなのでいきなり高度な建築技術を手に入れてしまい、お金が不足して相当辛い目にあった。
面白いのは、お金表示マーカーが0になると、そいつ自身もリスボンに置かれる船となるのだ。


これが技術カード。最初にもらった技術者駒をお金を払ってここに置くと書いてある特典が得られる。わしは建築学を身につけた。技術者駒は3個しかないので、技術は3個しか選べないということだ。

ムゲンとアマバは、2移動力のある快速艇にしたおかげで、序盤は非常に楽になった。というのは商品マスはカード1枚につき2マスしかなく、先にそこに置かれると、商品を売るまで居続ける。後からきた船は商品にできず、しょうがないので更に先のカードを目指さざるを得なくなる。移動力が1だと無駄にアクションを消費しなくてはならず非常にキツいのだ。

レイとわしはこれに嵌る。商品に出来ない→金がたまらない→快速艇にできない→商品に出来ない…の繰り返し。わしはなんとか隙間を見つけてお金を溜める事に成功したが、ここであえて快速艇にせず、拠点を築くことにした。拠点は、移動アクションを使えば、リスボンにいる船を何個でも拠点までワープさせる事が出来るのだ。

これでレッドオーシャンとなったリスボン付近から離れて、拠点以降のブルーオーシャンを悠々進める事が出来る。
拠点は勝利点が1しかなく、1個でええかと思ってたが、ムゲンの船が徐々にわしの拠点に迫り、未踏の地を冒険しにきた。

それでは困るというので更に進んだ先の拠点を建築。ここまでやってしまえば、もう拠点戦術に出るしかなくなった。技術進歩にある東インド会社である。これは拠点×2勝利点を追加で貰えるというもの。つまり1個につき3点だ。建築技術を活かし次々に拠点を建築する。


今まで写っていなかったが、船駒はカードの下に置く。カードに一旦おいてしまえば、もはやそれは船ではなくなるので移動できなくなる。

ここからはリスボン周辺で稼ぐアマバと、未踏の地を目指すわしとムゲンという図式。さすがに付近に拠点を建てられてしまっては、船足は大きなディスアドバンテージとなる。そこでわしもようやく2移動力の快速艇に改良した。レイは、リスボン近くでちょこちょこ教会を建てていたが、すでに脱落模様。

そろそろ買わなくてはやばいと思い、東インド会社設立。

ムゲン「しまったあ。買われた」

ドイツゲームで時々みかける、効果はないが、勝利点に影響するというものというのがこのゲームにもある。東インド会社(拠点×2VP)、海外布教(教会×2VP)、ルネッサンス(3VP)、ギルド(商館×2VP)と4つある。アマバはギルド、レイは海外布教と買われ、いちばんしょぼいルネッサンスをムゲンが買う。

船が3分の2を超えたあたりで、商品の奪い合いがなくなり、ひたすら前へ前へ進める事になる。ここからは一気にゲームは終息する。わしの船がインドに到達してゲーム終了。


最後は一気にスパートでインドを目指した。リスボン付近に駒がたまってることから、最後は一気にスパートしたことが見て取れるだろう。

拠点をおさえまくって東インド会社を設立したわしがぶっちぎりの勝利。

所要時間60分

レイのコメント

面白かったけど、わたしには難しいゲームでした。

ムゲンのコメント

おもしろかったけど、駒がイメージし難くてとまどった。

ソマーリオ

500円でここまでやるか、というのが最初の感想。ほんまに60分掛かるボードゲームの分量である。確かにこれは話題になるわ。

ナヴェガドールを元ネタにしているものの、使い回しの駒の使い方が非常に特徴的で、技術革新や勝利点の獲得方法とまったく違っており、完全に別ゲームである。似ているのは大航海時代というテーマと、ゴールマスがあるという事だけで、そもそもナヴェガドール最大の特徴であったロンデルですらない。

駒の使い回しというアイデアは、出来る限り生産コストを下げようとする500円ゲームズだからこそ思いついた裏技であり、それを新しいジレンマへと生み出す事ができた。お金と勝利点のトレードはよくある方法だが、まさか表示マーカーや移動駒まで考えなくてはいけないなんて、あまりにも面白い試みで感心するばかりだった。今までやった中でこんな不思議なジレンマをさせるゲームは他になかった。

あえてシミュレーション要素をすてる事で、コストダウン、システム的ジレンマというそれ以上のものを得たのだ。この割り切りは凄い。

ただし良いことばかりだけではない。駒の使い回しは、プレイヤーにゲームの見通しをイメージをさせにくくする。今回のメンバーは全員、最初何をしていいのか解らないとつぶやいていた。どのように駒が連動されるのかさっぱり解らないのだ。
結果、ナヴェガドールの方が時間が掛かり、ルール分量が多いにも関わらず、セイルトゥインディアの方が初見者にとって難しいゲームとなってしまっている。

コンポーネントは、コストダウンと書いたが、印刷の美しいカード類と52個もの木製の駒が入っており、赤字としか考えられないほどの大盤振る舞いだ。おそらく作者も、あえて伝説を残すといった意味でこのゲームを製作したんじゃなかろうかと邪推する。ドイツテースト溢れる絵柄もとても雰囲気があって良い。

この年の500円ゲームズは、他にも良作がわんさかと出ておりちょっとあり得ないくらいの豊作だったように思う。中でもチープさを売りにアイデア勝負のダンジョンオブマンダムと、コスト度外視で掟破りのシステムを持つセイルトゥインディアは、500円ゲームズの今後の発展を確約した。500円ゲームズの改革者たるラブレターは既に海外でも絶賛されており、日本が世界に勝負できるコンテンツなのは間違いない。

ダンジョンオブマンダムもセイルトゥインディアも1回限りで絶版となっているが、値段は高くなったがしっかりとリメイクされて発売されているので、誰でも手にすることが出来る。
オインクゲームズが再版したダンジョンオブマンダムの方は、絵柄もごろっと変えてしまったが、ゲームフィールドが再版したセイルトゥインディアは、原作に忠実に作られている。せっかくなんで、唯一使い廻さない駒として存在する3個の学者駒(技術マスに使う)を廃止して、技術カードにした方が良かったんじゃないかと思ってたら、ちゃんとそうなってた。良い仕事だ。反面、AEG版はそのまま。あかんのう。

gioco del mondo