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Mac Gerdts
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PD-Verlag
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2〜5人用
90分
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ナヴェガドール
駿河屋で購入
15世紀、ポルトガルのエンリケ航海王子は当時最高の地図制作者と海洋探険家を招集し、アフリカ沿岸を調査するよう命じました。
その結果、彼らは航海術と造船の専門知識を身につけて探険の時代の到来を告げ、のちのポルトガルによるインド・中国への直航路発見を可能としました。
その力の絶頂期において、ポルトガルはブラジルから日本にいたるまでの海洋貿易を支配し、香辛料貿易の独占によって莫大な富を手に入れました。
プレイ感
かなり前に話題になってたので買うたものの、なかなかやる機会がなかった。COQが一押しとよく話してたので今回一発目に出してかなり前から噂のロンデルシステムとやらを試してみることにした。タナカマ夫妻、COQとの4人プレイにて。
ロンデルというのは作者マックゲルツが生み出したシステムで、円グラフ上のマスにアクションが書かれている。手番には、自分の駒を時計回りに3マスまで移動させてそのアクションを実行するというものだ。
つまりマスの説明をすれば、ルールの説明となる。その他ロンデルについての考察はソマーリオに譲る。
・航海 自分の船を1マスずつ(ラウンドによって、2マス、3マスと移動力が増える)動かして良い。
・労働者 金を支払い労働者を増やす。
・市場 特産品(植民地タイル)または製品(工場駒)を市場価格にて売る。
・植民地 自分の船がいる植民地タイルを貰う。(植民地化)
・恩恵 労働者1減らし恩恵タイルを受け取る。
・造船 金を支払い船駒を増やす。
・建設 金を支払い製品工場駒、造船所駒、教会駒を増やす。
このうちお金が手に入る市場だけが2カ所ある。
青色のチップが未踏の地。左のポルトガルから一番右の長崎であがるすごろくのような形。ロンデルの輪に自分の駒をおき、3マスまでの好きなアクションを選んで行動する。右下は個人ボード。
勝利点の手に入れ方は、途中経過ではなく、どういった人生を歩んできたかにより、最後に計算される。
例えば航海する作戦にするなら、ヴァスコダガマの恩恵タイルをたくさん手に入れておくべきだ。これにより、未踏の地チップ数×(航海初期ポイント4+恩恵タイルポイント)が勝利点として加算される。
他にも植民地化を進めるなら、植民地タイルをたくさん取り、それを倍増させる恩恵タイルを取るべきだ。
ゲームの終了条件は、誰かが長崎に着いたか、場の駒が全て無くなったかである。その時にこれらを全て合計して一番勝利点を獲得したプレイヤーが勝つ。
公海上のマスは必ず陸地マスと結びついている。陸地にあるのが植民地タイルで、誰かが初めてたどり着いたら表向けにする。その貿易をするための(つまり植民地にするための)価格が書かれている。当然、安い方が得だ。上の方にある人駒は労働者数を表している。なぜか最低が2である。
またラスプレイヤーにエンリケ航海王子のタイルを渡す。これを使うと航海アクションを追加で実施出来る。その後タイルは右隣(手番順と逆)に渡す。
ルール説明を聞いた瞬間、このゲームでは特化させた方が良いと誰もが気づく筈だ。そして一番のポイントは勝利点を倍々にする効果のある恩恵タイルであるとも気づくだろう。ただ恩恵タイルはラウンドが進まないと補充されないので、相手とバッティングしないようにしていく事が大事だ。
個人ボード。手に入れた建物や恩恵タイルをここに配置する。タイルの数字は勝利点になっている。上に書いたように例えば未踏の地チップが3枚なら航海は5(初期値4+1)なので合計15点入るという事。その隣の茶色の造船所なら2個×5(初期値3+2)の10点だ。それぞれ恩恵タイルは3枚まで貰えるので、ここでどれを伸ばすかじっくり考えてやらなければならない。
また工場などの駒類はロンデルの横にあるところで価格が解る。安いのから購入されていき、段段と値段が高くなっていく。
わしは大航海時代で重ガレオンの艦隊をつくり、アメリカ大陸を目指したあの懐かしき思い出が蘇り、航海貧乏を目指そうとした。
というのはCOQによれば航海作戦は割と弱いらしい。おいおい、ナヴェガドールのテーマから逸脱しとるやんと思いつつも、ゲームは楽しんだ者が勝つという意識でやることにした。やっぱり航海したい訳だ。
しかしここで偉そうに宣言しときながらもせこびっちのわしは、恩恵タイルを取る時に(最初は1枚ずつしか配布されない)、ヴァスコダガマの航海恩恵ではなく、バルトロメウディアスの造船恩恵を得た。恩恵タイルの数値は決まっており、造船と教会だけが2倍ずつ増える。その他は1倍ずつだ。
《わしの思考回路》
航海して発見したい→でもちょっとだけ勝ちたいところはある→未踏の地に入るには船が1隻沈むので最低2隻必要→船がたくさん要る→造船能力を高める→恩恵タイルのボーナス点が高くて(゚Д゚)ウマー
※恩恵タイルの倍数は違うが、初期値も違っており、航海が4倍、造船と教会が3倍、工場が2倍、植民地が1倍となっている。お金の手に入りやすさなどを考慮した結果の倍数となっている。
既に思考回路で書いたように、未踏の地チップの置かれているマスに入るには船が2隻要る。そこで1隻沈むのだ。さらに発見ボーナスとして、植民地タイルを全て表向けた上で一番安い価値のお金も貰える。
また、1隻いれば、その植民地タイルは手に入れられるのでそれほど悪くはない。植民地タイルは、表示価格で貰う事が出来るので、一番安い価格の植民地タイルなら所持金ゼロで突入しても買えるという寸法だ。
黄色わし、緑あっきーで、どんどんと航海が進んでいく。
植民地タイルに描かれる特産品は、近い順に砂糖、金、香辛料となっており、その順番に価格も高くなっている。同じ特産品なら、同じ価値で売れるので、植民地化タイルは安い方が得となっている事に注意。
次の手番に金を産出できる植民地化を行った。
あとは市場マスで売れば、お金が手に入る。
それを見越して、COQは金製品工場を建築する。
わし「じゃ、金の特産品を売る。60クルザード貰う」
それによって金の特産品価格が下がると共に、金の製品価格があがる。
COQ「じゃ、金製品売りますね。最初に工場はジョーカーが1個あるので合計2個になります。80クルザード貰います」
それによって金の製品価格が下がると共に、金の特産品価格があがる。
わし「じゃ、金の特産品を売る。50クルザード貰う」
それによって金の特産品価格が下がると共に、金の製品価格があがる。
COQ「じゃ、金製品売りますね。最初に工場はジョーカーが1個あるので合計2個になります。60クルザード貰います」
わし「ちょっと待てーい!!」
常に若干損しとるやんけ!
売った個数分市場価値が下がるというルール間違いを発見したが、どうにも万能工場が最初から1個ずつ配布されてるだけに分が悪い。
※実際は売ってもタイルや駒は無くならない。持ってる数だけ常に売る事が出来るのだ。
これが市場価格表。貿易品は3種類で、駒のマスの数字が植民地タイルによって手に入るお金。右端のマスの数字が工場で手に入るお金だ。実はこの売り買いのところが実際のモノがないので解りにくい唯一の欠点だ。ただし、市場経済はプレイヤー間で完結しており、簡素だが機能している。
わしはやはり初志貫徹、航海に徹する!
新しい地にたどり着くたびに…
COQ「金の植民地買うてくださいよ〜」
新しい地にたどり着くたびに…
COQ「金の植民地買うてくださいよ〜」
わし「えーい、うっさい!」
実はこの現象はタナカマ夫妻にも起きてた。
あっきーは、砂糖の植民地化を行うとみたら、タナカマは即座に砂糖工場を購入。
以下、同文。
ゴアに到着。2色の駒が我先にと争っている。ロンデルに置かれているオレンジの船駒がエンリケ航海王子の駒で、タイルを持ってるプレイヤーはここにたどり着くまでに使わなければ、流れてしまう。
タナカマは、教会を買いまくり出した。
教会は、造船と並んで、最大9倍になる恐ろしい駒だ。
あっきーがあげた砂糖製品を高値で売りまくり、次々に砂糖御殿ならぬ砂糖教会を建てまくる。
COQ「相変わらずぼったくってますねえ」
タナカマ「ぼったくってないですって」
わし「大体やな、最初はだんまりやったのに、饒舌になってるところがぼったくりが上手く回転してる証拠じゃ」
タナカマ「そんなことないですって。テンション変わってないですって」
そのうち業を煮やしたCOQは自分で金の植民地化を行う。
COQ「マッチポンプします」
わしはもっと航海に特化しようと、先へ先へと進んでいく。
同じ戦術をとったのがあっきーで、同様に先へと進もうとするが、巡りが悪く、常にわしが先手をとっていく。
再びわしのボード。金1胡椒2の植民地化。工場2航海4造船所3教会1。みての通り航海と造船所の恩恵タイルでパワーをあげている。ちなみに恩恵タイルの得点は種類によって全て同じなので一喜一憂する必要はない。
わしは造船所が欲しかった。造船所の恩恵タイルを取ったものの、造船所を建てられなかったのは、労働者が少なかったからだ。造船所を建てるには労働者が4要る。ハロワで募集しても教会が1個しかないわしは、追加で150クルザード支払いたくなかった。(教会があれば1個につき50で雇える)
4に増やしたら、次のロンデルでは恩恵タイルを取りたい。そうするとまた3に減る。3に減ったままで建設マスに止まっても造船所を建てることは出来ないの延々繰り返しだ。
そこで大枚はたいて一気に労働者を2増やす事にした。1度やってしまえば、4,5の間をウロウロするだけなので、造船所を建設していく事が出来る。
実はその事もあって、航海の恩恵タイルと造船所の恩恵タイルの両取りで進めていた。
特化させた方がいいと最初に書いたが、終わってみるとワイルドカードが1枚あるので3カ所くらい狙うのが丁度良かったようだ。今回は皆、2カ所を狙っていた。
喜望峰に到着するとラウンドが変わる。ここから船は2マスずつ進め、労働者や船を買うのも高くなる。
そろそろやばいのがタナカマの教会である。
建築価格は、買われると50ずつ上がっていくようになっている。タナカマ一人だけで教会を買いまくると、それは非常に困ったことになる。
COQ「教会を建てます」
一度建てると、その分高値になるという事だ。
それはわしとあっきーとの間にも行われ、どちらも航海戦術ゆえに、造船所でバッティングを起こしてた。
わしに未踏の地を踏まれっぱなしだったのを覆すために、船を大量に作り、まるで曹操が赤壁の戦いに向かうような大軍船で、洋上を遡上してくる。
駒の価格表アップ。残数とその値段が書かれている。左の人の絵は、それを買うに必要な労働者の数である。またロンデルは3マスを超えて移動させることもでき、その場合、1マスごとに船駒を1個捨てる。
そうなると機動力がアップする第2フェイズでの意味がでてくる。船を建造すると当然、スタート地点であるポルトガルに置かれるので、遠洋航海に時間が掛からなくなるのだ。世界が狭くなる訳だ。
わし「エンリケ航海王子を使う」
わしがマラッカ海峡を突破し、とうとう最後の第3フェイズに突入。
ここを無理に突破したため、わしの船はとうとう1隻となった。その1隻を使い、香辛料の植民地を作る。
ここが限界である。
わし「というか、エンリケ航海王子はどんどん使ったらええやん。経済のお金と同じく廻せば廻すほど皆何度もつかえるやんけ。すぐ使おう」
あっきー「そうそう」
COQ「そら、航海作戦の人はそうでしょうよ」
とはいうものの、ここにもこのゲームはしっかりとルールが効いていて、エンリケが廻ってきたら、ロンデル上のそのプレイヤーの横にエンリケの駒が置かれる。ここにたどり着くまでに(1周するまでに)使わないと、エンリケは次のプレイヤーに移ってしまうのだ。
人身売買戦術でお金を手に入れては教会に投資するタナカマ。労働者や船はオーバーすると1つにつき100で売れる(±50となる)のだ。おそろしや。
ここにきてマッチポンプ作戦が完全に軌道にのり、わんさと金を手に入れるCOQ。
ひたすら航海に明け暮れて、我先にと進んだわしとあっきー。
最後はあっきーが、あっさりと長崎に到着。長崎では船が2隻沈むが、何故かボーナス点がないのがちょっと可哀想。途中の未踏の地タイルは洗いざらい持って行き、わしと同数になる。
COQ「もっとわんさとやりたいと思った頃に終わっちゃうんですよ。それが残念」
いや、それそのまま儲け続けたら明らかにつまらんでしょw
得点結果は、なんとわしの勝利。航海というよりも、造船所の得点が大きかった。
所要時間90分
最終。 左にいるCOQの金の植民地だらけには驚く。そらわんさと貿易やり続けたいわw
正面タナカマは教会だらけだ。ここらへんの偏りは妙な感じがするがまさに大航海時代そのもののように思える。
タナカマのコメント
ロンデルといえば、僕はインペリアルの方が好きなんですが、ドイツゲームテーストよりなのは明らかにこっちですね。だからどちらが好みかが分かれると思います。今回、久々にやるとやっぱり良いゲームだなあと思いました。
COQのコメント
拡張カードがあるんです。このゲーム、抜群に面白いんですが、航海せずにひたすら工場設置ばかりする引きこもり戦術で勝つ場合があるらしいです。それを防ぐために拡張ルールが作られたようです。
これを元にしてセイルトゥインディアが作られてますね。
ソマーリオ
少し前に大航海時代のボードゲームが一挙に出た時期があった。エンデバーは大局観はあったが、あまりにもドライ過ぎており、まるで無機質な将棋を指すようであった。ヴァスコダガマは、船員の配置など細かなところが面白かったが、あまりにも細事が多くて、大航海時代そのものを描くには若干物足りないところがあった。
ナヴェガドールは、非常に戦略的でありながら、冒険の楽しさをも兼ね備えたゲームといえる。
PCゲームでいえば、ヴァスコダガマが光栄の大航海時代で、ナヴェガドールがアートディンクのATLASだ。
優秀なところをあげればキリがないが、特に素晴らしいのは、工場の建設、労働者の募集、船の建造、危険な航海に対する見返り、植民地支配、そういったバラバラのものが、きちんと同じ土俵の勝利点に整理されており、プレイヤーの見通しが悪くないという事だ。
少し自分に置き換えて考えてみて欲しい。今回の航海の満足度は、お金に換算すればいくらになるのだろう? とても難しい事が解る。アグリコラで書いた、羊10頭は、土地タイル何枚に相当するのか? というのが感覚としてさっぱり解らず、勝利点に関する見通しが悪かった。
ところがナヴェガドールでは、それがすっきりと美しくまとめられているのだ。
未踏の地チップの存在はプレイヤーの満足度を高め、またプレイヤー間に閉じられた市場経済も、簡素ながら上手く機能しており、大航海時代は浪漫とお金の時代であったキモとなる部分がしっかりとルール化されている。
ポルトガルから出発して長崎でゴールという形にしたのは慧眼という他ない。これは思いつかない。
そしてそれらを支えるのがロンデルシステムだ。
プレイヤーにしっかりと選択肢を与えながらも、1周するまでは同じアクションを選ぶ事が出来ない。我々の生活の場というのはそもそもロンデルの輪そのものだ。春夏秋冬、春に耕し、夏に田植えをし、秋に収穫し、冬に次に備える。それを何度も何度も繰り返す。
それと同様に航海したくとも連続で航海することはできない。それには工場を建設したり、労働者を雇ったりして、次の時期を待たなくてはならない。その巡りがとても美しいシステムの中に見事に封じ込められている。
このロンデルのマスの並び順にも非常によく出来ており、あれもこれもやることを禁じている。いや、禁じているのはロンデルではなく、他のプレイヤーの動向である。他のプレイヤーに先を越されると困るという場面が何度かある。その時に、ロンデルの輪をよくみてそのプレイヤーが次に選択できるアクションを見れば、一目瞭然だ。ただし、船を取り除くことで3マスを超えて移動することもできるので注意が必要だ。
とは言っても、全然厳しくなく、実は落ち着いてロンデルの輪を廻す事ができる。取りうる作戦の幅が広くて、様々な勝ち筋があるからだ。
やりたいことはどんどん出来る。胃がキリキリ痛むようなゲームではないくせに、他のプレイヤーとの絡みがしっかりとあるのだからほんまに恐れ入る。
ウォーゲームのCRT(戦闘結果表)システム、マジックレルムの戦闘システム、マジックザギャザリングのトレーディングカードシステム、ドイツゲームの基本となった勝利点システム、エルグランデの1位2位何点システム、プエルトリコの役割選択システム、アグリコラのワーカープレースメントシステム、ドミニオンのデッキ構築システム、これらはわしがやって驚いた革新的なシステムの面々だ。ロンデル方式は、まさにこれと並ぶ衝撃を受けた。
この小さな円に全てが詰まっている。それでいて、とても簡単にプレイヤーに選択肢と制限をかけている。
ドクター中松がフロッピーディスクを発明したのと同じ感覚かも知れない。
再びナヴェガドールの話に戻して、コンポーネントはとても雰囲気のある大航海時代のセピアカラーだ。ATLASと同じ色彩調である。工場駒は捻りはないが、全て木製の駒で出来ており、満足度は高い。またボードはリバーシブル仕様で、英語、独語となっている。
しっかりとシステムがサポートしてくれるため、とんでもない作戦をとったとしてもそこそこ戦えるところが如何にもドイツゲームらしい仕上がりだ。
欠点は、誰も航海作戦をとらないとプレイ時間が長くなる事なので、もう少し航海に向かいたくなるような仕掛けを作れば良いように思う。
COQのいう引きこもり作戦を防ぐ手だてである拡張カード(外交官と海賊)は、Spielbox2012/1号の付録だったらしい。わしも購読してるので、早速調べてみたら、唯一、配送ロストした号やったらしく手元になかった。くっそー。しょうがないのでバックナンバーで先ほど注文した。
まあ、ルールさえ解れば簡単に自作できるので、追加してやってみるのも良いだろう。ルールはCOQが訳している。
このゲームはナビゲーターという英語タイトルでも各HPで紹介されているが、検索する事を考えてナヴェガドールをジョーコデルモンドでは採用した。ナヴィガドールとも別名で紹介されてるけど。