Paolo Mori

What's Your Game?

2〜4人
120分

ヴァスコ・ダ・ガマ

駿河屋で購入

15世紀半ば、ポルトガル王国による遠征は、インドへの定期航路を探す事に躍起になっていた。
1488年、バルトロメウ・ディアスが喜望峰に到達し、ペドロ・ダ・コヴィーリャが陸路を発見した。
その10年後、最初に到達したのはヴァスコ・ダ・ガマだった。途中で何度も寄り道しながら、ヨーロッパ人で初めて海路で伝説の地コルカタ(カルカッタ)にたどり着いたのだった。ヴァスコ・ダ・ガマの素晴らしい業績によって、ポルトガルはインド・ヨーロッパ間の香辛料の交易を独占出来るようになった。

プレイ感

2009年のエッセンでイタリアのこのゲームが一番人気。またしても駒をおいて行動選択するタイプかと思ったが、ちょっと雰囲気が違うらしい。テーマは大航海時代でかなりツボでルール読むとおもろそう。オビ湾、ロー、miaと最大人数にてプレイ。

アグリコラに代表されるようなこの手のシステムをワーカープレースメントシステムと呼ぶらしいが、こんなマニアしか解らない日本語はここでは極力省きたい。ある程度はしょうがないにしても、カタカナ英語ばかりだと初心者がさっぱり解らんようになるのでは? 難しそうって思わせたくない。


通常の行動選択システムでは、手番が早い人からアクションの選択権があるが、このゲームでは順番マーカーを一緒に配置する事で、後の手番でも先にアクションを行う事が出来るようになっている。毎ターン無料ゾーンの順番ってのが決まる。無料ゾーン以上の手番ならそのアクションは無料で出来るが、無料ゾーン未満の場合はその差額をお金で支払わなくてはアクションが出来ないのだ。例えば無料ゾーンが10なら、6の順番マーカーを載せた駒は4レアル(このゲームの単位)支払わなければ実行出来ない。


アクションを選択する時は中央にある順番マーカーを載せる。今回の無料ゾーンは12からだが、±2以内で移動する。右上が酒場、その下がパトロン、左上が航海、左下がプロジェクトのアクションマスだ。この写真でしか写っていないので説明しておくが、プロジェクトタイルのマスの下に1枚だけおけるようになっている。これは聖ガブリエルのプロジェクトといって特命のプロジェクトとなっている。使うタイルは普通のプロジェクトと同じであるが処理が違う。

行動選択はシステム上、手番順が非常に重要でわしの知ってる限り「スタートプレイヤーになる」アクションが必ず含まれている。このゲームでもそれは存在するが、早手番の強さの濃度を薄める事に成功しており、面白いシステムだと思う。弱点は、アクションの選択と順番も同時に考えなければならないので、テンポが悪くなってしまった事だ。

このゲームの基本は、船を航海に出させる事。船を航海に出させる為に必要なのは、乗組員と船長の確保、プロジェクトの購入、パトロンの援助、そして出航計画だ。これらをアクション選択して出航させる事で勝利点を得ていく。

このゲーム、資金が不足気味のバランスらしいので、一番最初に選択するのはなんつってもパトロンの援助。ポルトガル王マヌエルT世、バルトロメウ・ディアス、セルニーギ商人、アルヴァレス宣教師がいるが、中でもヴァスコダガマは直球でお金をくれる。ここが一番人気なのだが、順番マーカーを置く時にかなり悩む事になる。無料体験ゾーンは選択後に±2の範囲内で移動するので、完全に読めないようになっているからだ。


2ターン目の航海のマス。下から上へと航路は、リスボン→ナタール→喜望峰→モザンビーク→モンバサ→マリンディ→コルカタ と遠くなっている。基本的においたマスの勝利点が貰える。赤字で船長が乗っていないタイルはセルニーギの商船である。目的地の横の絵がそこにおいたら貰える配置ボーナスで(後述するがセルニーギの商船はこれだけが貰える)、その横の盾の数字はすべてのマスを埋めた時に貰える勝利点だ。

わし「じゃあ、8取って、パトロンへ」

凡人は最低ランクのマイナス2をみてそこらへんを基準とする。

mia「じゃあ、9でいいかな」

ロー「7取っておく」

ここまで来たら損得勘定でいくしかない。ヴァスコダガマを取れたら8レアル入る。その前に4レアル払ったとしてもプラスマイナス4レアルの得だ。

この最初の部分が他者との読み合いが入る為かなり時間が掛かるが、現在値マイナス2,3辺りの熱い順番を取り終えたら、後は自動的に選択しては置く事になる。プラス2以上はまず間違いなく無料なので、順番に若い数字から取っては配置していくという寸法だ。

わし「じゃあ、全員配置完了ね。修正値は…+1。無料体験ゾーンは11からになります」

±2というと大した事がないと思うが、マイナス2がギリギリと思って出してるケースがほとんどなので、そこから更にプラス方向に移動されたら相当きつくなる。

順番の一番若いローは、先に書いたように差額を使って少し儲ける事にした。

ヴァスコダガマ以外の人物も侮ってはいけない。他の4人はタイルとなっており、一度手に入れると他のプレイヤーに取られるまで毎ターン恩恵を受ける。バルトロメウディアスは、毎ターンの最後に2勝利点貰え、スタートプレイヤーになる。勝利点を手に入れる方法ってのは航海に出るしかないので、2点ずつ増えるのはかなり強い。
最初この強さがいまいち解らず初期パトロンのローにかなりの間キープされてしまった。

船員の募集は、ひとつの酒場にいる船員を複数一度に雇うことが出来る。コストは数ではなく、色の種類で変わってくる。1色なら何個雇っても1レアルだが、2色なら何個雇っても3レアルとなる。この色ってのは航海士、コック、操舵士などの船員の役割を表わしており、航海に出る時は必ず色違いで出さなければならないのだ。確かにコックばかり5人居っても素敵な料理は出来るかも知れないが航海は出来んだろう。この概念は非常に面白い。
また同時に船長も雇う事が出来る。船長は、今回雇った船員の数(色ではない)がコストだ。つまり船長だけ雇うなら無料で手に入る。


ようやくバルトロメウ・ディアスの強さに気づいたわしはローから奪い取る。アルヴァレスとパトロン二人体制だ。アルヴァレスは白い宣教師の船員を貰える。
その上にあるのがプロジェクトタイルで、右上の数字の種類の船員があればひっくり返して出航可能状態に出来る。左上の数字は航海可能日数を表している。左のプロジェクトタイルならば、4色で裏返せるので、4色集まっているわしは当然そうした。その前にいる小さい黄色の駒が船長駒である。船長駒はプレイヤーカラーと一緒になっている。

わし「つーかね、なんで船長だけこんなにこまいねん! なくすわ!」

オビ湾「乗組員でかいのにねえ」

※理由は上の写真の出航タイルをみれば解る。自分の船であると主張する必要があるのだ。

皆はなるべく同じ色の数が多い酒場を狙って雇う。3色は6レアルとさすがにきついので1色+船長=2レアルか、2色=3レアルが基本である。

プロジェクトの購入は、1枚なら1レアルだが、2枚なら4レアルで、場にあるプロジェクトタイルを手に入れる。これを裏返せば船も船員も集まった事になり後は船長さえ居れば出航可能状態となる。裏返す為には、プロジェクトに描かれている色数の船員を袋に戻す(乗り込むという意味)が、これはどのタイミングでもいい。
わしの初期に貰ったフランチェスコアルヴァレスもかなり強く、毎ターン、宣教師駒を1個貰える。これは船員として使えるので1色は確保出来るという事だ。

そして毎ターン1枚だけ聖ガブリエルのプロジェクトというのがある。この位置に置かれたプロジェクトタイルは、特命のため、船員は既に用意されている。代りにお金を払って手に入れるのだ。船員の種類の数のお金を払えば、出航可能状態として手元における。後は同じように船長さえいれば出航可能だ。

このゲームはお金に苦労するが、聖ガブリエルのプロジェクトは非常に強いと言った方がいい。なんせ集めるのに苦労する船員集めを無視していきなり遠洋航海可能な船を手に入れる事が出来るからだ。このアクションを選択したならまず狙うのはこのタイルといっていい。

ロー「じゃ、これ獲るよ」

この強さに気づいてたのはローのみ。手番の早いマーカーをここに有効に配置して、ゲーム通じて聖ガブリエルのプロジェクトを散々手に入れた。

最後は出航アクションだ。

mia「あ、あれ? 先に出航のアクション迎えちゃった。何も出来ない。。。」

こういう阿呆がおる。順番マーカーの場所のアクションの実行権限を得るので、船員募集や、プロジェクトの購入より前に出航アクションを選んでしまうと、無意味となってしまうのだ。最初の頃は出航アクションは自分の中で番号の大きなものにするように心がけよう。

今までの苦労は全てこの出航の為にある。ゲームで勝利するためには出航をせねばならない。今まで集めたものを出航というアクションに全て集約し、勝利点を得るのだ。
船(プロジェクトタイルを裏返したもの)には耐久性があり、その日数で行ける目的地にしか置く事は出来ない。
最長航路のコルカタ直通は9〜11日間の旅となるが、ここらへんの船は後半にならないと出てこないし、船員を集めるのも大変なので、まずは近場を目指す事になる。
船タイルを置いた場所の勝利点を貰える。例え11日間航海可能なガレオン級の船舶であったとしても、4日の場所におけば4点しか入らない。そのとき別に配置ボーナスを貰える。船員であったり、お金であったりと場所によって違う。

※カルカッタ、カリカットというのは英語読みらしく、本来はコルカタと呼ぶらしい。既に日本でもそう呼ぶようになっている。

4日間航海出来る小さな船が主流だ。これでも上手くいけば3つ目の目的地モザンビークまで航海可能だ。どういう事かというとアクションが全て終わった後、航海フェイズというのがある。自動的に行われる処理なのだが、各目的地にあるマス目が全て埋まると、左側の船から順番にひとつ上の目的地への航海を始めるのだ。その時、航海可能日数以内であれば、どんどこ航海を続けていく事になる。
このルールはまさに大航海時代を思わせ、ルールを読んでてワクワクしたところだ。もし自分の行ける日数がない場合は、お役目ごめんで船タイルは廃棄(リスボンに帰ってくる)される。

3人目のパトロンである商人であるセルニーギは使うのが少し難しいがここに効果がある。商船を出航させる事が出来るのだが、出航時のボーナスしか基本は受け取れず、一旦出航してしまうと誰の物でもなくなる。その分、簡単に出航させる事が出来るので、自分の船がたくさんある目的地のマスを埋めてしまい、ボーナスの勝利点を貰う作戦が成り立つのだ。
更に次の目的地に行こうが、リスボンに戻ってこようが、埋まると目的地に応じたボーナス点が入るようになっている。セルニーギの商船はマスを埋めるのにうってつけなのだ。

さて船長駒がどうして小さいかはこれで明らかとなった。要はこのように上へと航海するので、自分の船であるという目印となっているからだ。

最初やったときは、航海日数を余らして近くの目的地に置き、(マス埋めによる航海で)遠くへ目指させた方が得だと思って、それが全員になんともなモヤモヤ感を抱かせていたが、ずばり、航海日数のマス目の得点を満額受け取ってもあんまり変わらん事に気づいた。むしろ新しい目的地への航海はボーナス程度に思うべきで、11日間航海の船は11日のマスに置いて11点獲った方が基本は良いと思う。また船にはお金を産むタイプと、勝利点を産むタイプもあり、上手く考えて配置すればいい。このタイプの船は、ボード上に残っていれば毎ターンそれらをもたらす。11日間の船を11日のマスに置いたところで、そのマス目が全て埋まらないと帰ってはこないので、毎ターン手に入れる事ができるので心配はない。

今回、残念だったのは、皆、航海に不慣れで、ボード上にあまり船が浮かばなかった事だ。代りにセルニーギの船ばかりが所狭しと置かれ、がっかりだった。

中盤になって、上の写真の通りローの持ってるバルトロメウディアスがやたら強い事に気づき、奪う事にした。そうするとわしの宣教師もOECに奪われたりとパトロンの移動が始まる。が、一度も動かなかったパトロンが1人いる。初期からずっとオビ湾が持ち続けているポルトガル王だ。こいつは追加のアクションマーカーを貰える。アグリコラでいえば子どもが産まれるようなものだが、このゲームではあんまり強くない。お金が枯渇しがちなので、アクション数が増えてもあんまり変わらないからだ。結局、最後までオビ湾の元から離れなかった。

ロー「それセルニーギより弱いよね」

オビ湾「全然役に立たないです」


今回まったく活躍できなかったポルトガル王。ここにおいているシールの貼っている駒は、ポルトガル王タイルを持っている人だけが使える駒で終始持ってたオビ湾の黒駒だけがないのはそういう事だ。21,22の順番マーカーはその駒用だ。なんで2つあるかと言うと、そのターンにポルトガル王を奪ったプレイヤーがいると、即座にシール駒が貰えるのでそのターンだけ2つの駒が存在する事になるからだ。

まあ、後日miaと二人でやったとき、良い使い道を思いつくのだが、このときはなんせ考えどころが多かったのでそこまで頭が回らなかった。
実はアクションを実行するとき、パスする事でお金を手に入れる事が出来る。早い手番だと1レアルしか貰えないが、後半のアクションをパスすると3レアル貰える。つまりポルトガル王を使えば1手番パスのアクションを用意しておけば毎回お金を手に入れる事が出来るのだ。気をつけるのはポルトガル王のシール付き駒は21,22しか使えず、パスしてもお金を手に入れる事が出来ないので、やるならそれより前の順番マーカーでパスをして、ポルトガル王の駒でアクションを実行するように配置しよう。

なんせ人気のあったのは、バルトロメウディアスとフランチェスコアルヴァレス。ただアルヴァレスを長らくホールドしたおかげで、わしゃ宣教師駒がたんまりあったので、獲られてもそれほどダメージはなかった。

わしはこの宣教師による船員の確保がうまくいき地味に出航を繰り返したが、かたや聖ガブリエルのプロジェクトを前面に押し出してきたローとの一騎打ちの様相。やはりこのゲームは大航海時代のゲームなのだ。出航させなければ勝てない。

最終ターンには、コルカタに到着する船が続出した。
と、突然、ルールを読み出すロー。

ロー「今、重要な事に気づいた」

わし「何?」

ロー「これ、船員を雇わなければ船長は0レアルで手に入る」

わし「それ、何度も念押したやん」

ロー「今の俺にこれはかなり重要なのよ」

みるとローは手元にお金がない。そして聖ガブリエルの11の船が1隻転がっているが、船長がいない。

ロー「よし、これで船長を手に入れる」

さらに

ロー「セルニーギを貰う」

(わちゃあ。やられたか)

わしの手元にいる9ガレオンをコルカタに配置して9点を手に入れる作戦だったのだが、セルニーギの船もローの船も11でコルカタを埋める事が出来る。もしここに配置されてしまえばわしの船はその下のマリンディに留まざるを得なくなる。さらにコルカタは全て埋まりボーナスも入る。

(気づくな、気づくな)

ロー「うーん、じゃこれをここに配置してと…あ、いや待てよ、あきおさんの船はどんな感じかな?」

(やべえ)

ロー「あ、じゃあ、コルカタに配置したら、妨害出来るよね」

わし「ばーれーたかあ!!」


痛恨のセルニーギの11の商船。これでさらに出航ボーナスが付き負けてしまった。

結局、ローへの逆転はならず。

所要時間140分


最後は3ポイント差の接戦。あそこでばれたのが敗因ですなー。ちなみにアクション駒のおけるマスの数は人数によって変わる。

miaのコメント

勝ち筋が難しい。ポイントになるのは出航なのかな? 出航をさせるところにもう少しロマンが欲しい。
面白い面白くないか解りにくい不思議なゲーム。作業をやってる感覚がある。

オビ湾のコメント

同じワーカープレイスメントで最近遊んだ「カーソンシティ」も難しかったけど、あれはシステムが難しいのではなくて損得勘定を読んでいくところが面白く、難しかった。
対してヴァスコダガマはシステムの歯車をうまく回さないといけない難しさがあり、よりゲーマーズな印象だった。システムに気を取られてテーマに浸れるようになるにはちょっと慣れが必要かも。逆に言えばそのくらい存在感があるゲーム性。面白かったと思う。

ソマーリオ

テーマ性といい、様々な要素の絡みといい、戦略の多様性といい、間違いなく一級品…の筈なのだが、何故かパッとしない。色んな要素が絡み合いすぎて、ゲームのテンポを悪くしているのが大きな原因のように感じる。
特にこのゲームの目玉である順番マーカーは、テンポを恐ろしく悪くしている。むしろこれをなくしてしまって、先取りでやってみたらテンポがあがって非常におもろくなるかも知れないとさえ思う。ただこれを抜いてしまうとせっかくの新しい試みである部分が失われてしまう。

船員が色違いでないと駄目なところとか、プロジェクトタイルをひっくり返して航海準備完了とか、更に航海を続けるところとか、船によっては追加の価値をもたらすところとか、テーマにばっちりあっていて、プエルトリコの楽しさを彷彿させる。でも、考える要素が多すぎて、モヤモヤしたプレイ感なのだ。

このままでも十分楽しめるが、この霧が晴れたならプエルトリコに並ぶを付けただろう。まったく勿体ない事この上ない。このレビューにかなりの文字数を割いてる事からも解ってくれると思う。

もっとテンポよく、気持ちよく出航させたい。セルニーギの船が気持ち3分の2くらいになって欲しい。それを考えてヴァリアントを作ってみたくなる。素性は良くもっと上を目指せるゲームなのだ。

後日miaと二人でやってみたが、二人プレイでも同じように楽しめたと言っていいのか、同じようにモヤモヤしてたといえばいいのか。テンポ良く出来るように慣れると楽しくなるというのは明らかなので、レースフォーザギャラクシーのようにヘビーローテーションでやってみたくなる。妙に後を引くゲームだ。

2010年度のドイツゲーム賞で、僅差でフレスコに破れて2位になったようだ。
また同時期にでたエンデバーという大航海時代をテーマにしたゲームはこれよりも大局的で、完全にアブストラクトゲームだ。こちらが合わないひとはエンデバーの方が合うかも知れない。

gioco del mondo