陣取りゲーム大好き! 陣取りゲームデザインの考察
東京にいったとき、けがわさんという外に出歩くときはいつもアナルストッパーをつけるという変態と出会った。
そのアナルけがわに言わせると、エルグランデは最初おもろかったけど、ここまでめんどくさくする必要なんかないんで評価は一気に落ちたとのこと。
なにぃぃ! あの名作エルグランデを!!
つうわけで陣取り好きとしてはここらへんをちとクローズアップしたコラムをかいてみる。
以前、陣取りのゲームを作ろうと思ったことがあって、システムを色々と考えてた。
陣取りといえば移動系をどのようにするかである。移動は陣取りの肝だ。
ところがだ、考えても考えても、先手有利もしくは後手有利のシステムしか思い浮かばん事実に気が付いた! 例えば普通に動かしたとして相手の出方をみて自分の動きを決められる後手は有利である。そしてそれが多人数になればなるほど、後手が有利になる。
それを解決するために戦闘ルールを考える。昔のウォーゲームのようにCRT(サイコロを降って結果を判定する表)を使うなんてことはしたくない。じゃあ、1個ずつ除去していく方法が手っ取り早い。そうこれが最大のネックだった。この簡単な戦闘解決では後手有利は致命的となる。それが例え後から入った方から取り除いていくルールとしても同じく後手のほうが有利なのは明白である。勝てる戦闘しかいかないからだ。
CRT(Combat Result Table 戦闘結果表)の例
下記はバーバリアンキングスのCRTで、上段が戦闘比率で、左がサイコロの目。戦力比が3:10なら1:3のところを見ればいいわけ。そしてサイコロを振って交差したところの損害をみる。以下損害説明。
e=全部隊全滅
1/2e=相手側の戦闘力の半分を取り除く
r=退却
L=結果を戦闘力の高い方に適用
S=結果を戦闘力の低い方に適用
サイコロ/比率 |
1:1 |
1:2 |
1:3 |
1:4 |
1:5 |
1:6 |
1 |
La |
Lr |
Lr |
Sr |
Sr |
S1/2e |
2 |
L1/2e |
Lr |
Sr |
Sr |
S1/2e |
S1/2e |
3 |
Lr |
Sr |
Sr |
S1/2e |
S1/2e |
Se |
4 |
Sr |
Sr |
S1/2 |
S1/2 |
Se |
Se |
5 |
S1/2e |
S1/2e |
S1/2e |
Se |
Se |
Se |
6 |
Se |
Se |
Se |
Se |
Se |
Se |
CRTのメリットは同時性とランダム性にある。もし必ず勝ったり負けたりすると解っていれば、攻撃を躊躇したりする事はないだろうからだ。そして損害は両方同時に適用される。これほど簡単に戦闘を再現出来るシステムはない。また戦闘指揮官の能力はこの比率をスライドさせるという事で簡単に表現出来るのだ。
悩んだ。まじですごく。
何故、バーバリアンキングス(魔法の大陸)やディプロマシーなど昔のマルチプレイヤーウォーゲームが、前もって紙に今回の移動を書いて一斉に動かせるか身を持ってしったのだった。
このプロット方式は陣取りゲームを作る場合、最も安全で簡単な手法である。しかし、方式としてはあまりに古いし、紙にひとつずつ駒の移動先を書いていくとプレイアビリティががた落ちになる。それこそ3時間コースは当たり前だ。
次に主流となったのが、サードライヒ(第三帝国)で採用されているチット方式である。前もってチットを混ぜておき、自分のチットが引かれたら手番となる。
この方式はチット引きという運の要素を加え、明らかな後手有利を防いでいる。かにみえる。しかしやはりここでも順番の有利不利を覆すことにはならない。順番をランダムにしただけである。もちろん、チット数を変えて確率を変えている工夫はあるが、基本は同じ。最も重要な順番を運だけに頼ってしまっているのだ。
しかしこのチット方式はとても上手く機能した。それはCRT方式でランダム運が入っている事、そして最も重要なのはウォーゲームが歴史をシミュレートする事を念頭としており、有利不利は元々ルールに組み入れられた予定調和だったからだ。サードライヒでいえば、イタリアを引いたプレイヤーはその時点で負けである。勝負は最初のいんじゃんで決めるのだ。イタリアを引いて勝てないと怒り出すプレイヤーはいなかった。(゜Д゜)ウマー
余談だがサードライヒを2時間で終わるようにしたヒトラー帝国の興亡もこのチット方式を利用している。
ここでようやくドイツの陣取りゲームのシステムってどうなってるんやろと振り返った。
エルグランデのシステム。これほど素晴らしいシステムがかつてあっただろうか? 今ある状況のみならず、未来にどういったカードがあるかがわかり、なおかつ先手後手を自分で決める事が出来るのだ。今一番やりたいことをどうしても優先させるために、未来のリスクを背負わなければならない。また先手になると有利な事もあった。これぞ、戦略的陣取りゲームの最高峰である。
少なくともウォーゲーム出身の俺としては、これはゲームの革命とさえ思ったのだ。クラマーの凄さを肌身で感じたのはこの時だった。
クラマーのこのシステムの優れているところは、クニッツィアのシステムと比較しても分かる。クニッツィアは競りによって先手後手の有利不利をなくそうとした。確かに競りならば、自分で先手後手を選ぶ事が出来る。エルグランデもそのように出来ている。しかし決定的に違うのは、クニッツィアは競り自体が本質となっている点だ。これはアメンラーをみればよく分かると思う。(そもそもこのゲームは陣取りゲームでもないが)
ここで反発があるのは予定通りである。クニッツィアが競りのない陣取りゲームを作っているではないか、と。
チグリスユーフラテスという名作を出さずとも最近では頭脳絶好調がある。これは順番はそのまま廻る。そして陣取りゲームだ。
こういうゲームの共通する特徴に、やたらと升目が多いという事があげられる。ここがミソである。
マス数を増やす事で、膨大な選択枝を用意し、後手有利を薄めてしまったのだ。マルペケは先手しか勝つ事は出来ない。またそれも後手が間違った場合だけである。9マスしかないからそういう状況がおこるのだ。もっとマス数を多くした五目並べはどうだろう? 先手は有利だろうが、後手でも勝てる。
このように将棋、チェスなどのアブストラクトゲームは交互にゲームを進めるゲームであるにも関わらず、勝率を5割にする事が出来る。それは一重にマス目の数のおかげである。
エルグランデをみてみよう。マス数、たったの9つである。しかも手番は合計9回しかない。これで、あのシステムの凄さが分かってくれたと思う。
※ こういうのをエリア方式と呼ぶ。こういったマップの表現方式には他にヘクス(六角形の集合体でカタンみたいな感じと思えばいい)方式と、Point to Point方式がある。ヘクス方式はどの方向にも均等に距離があり非常に優れてる代わりに時間がかかる。エリア方式は、ひとつひとつの細かい戦闘を再現するのには向いていないが大きな戦闘の流れを簡単に再現出来る。PtPはその中間で、作戦レベルでの戦闘に向いている。戦国時代なら、信長が全国制覇するのに向いているのはエリア方式で、桶狭間の合戦を再現するなら日本の街道条件を考慮するとヘクスよりもPtPで十分再現出来るだろう。このPtPは後で説明する王と枢機卿やラージャでも利用されている。
しかもエルグランデには有名で素晴らしい機能を果たすヴァレンシュタインの塔がないのだ。それで陣取り戦闘ゲームなのだから恐れ入る。その元になった塔はあるが、これだけで戦闘の同時性を再現出来ている。素晴らしい!
ところがクラマー自身、このシステムにいちゃもんをつけられたのか、もっと運の要素を減らした拡張カードも出した。
また陣取りというと王と枢機卿があるが、駒が動かないのはただのパズルである。動的な動作が出来ないのはここでいう陣取りゲームに加えない。未だかつて動かない軍隊で陣地を広げたという話は聞かない。動くという脅威だけで取る事は出来ても、絶対に動かないものでは誰も陣地を譲ろうとしないだろう。だから王と枢機卿は陣取りというよりカードを使ったパズルである。
※ 日本のように強力な軍備を持つ自衛隊(世界で7番目に軍事費をかけている)よりも、イタリアのような弱い軍備しか持たない軍隊の方が隣国にとっては脅威なのである。それは外交をみれば解る。外交とは「何時でもやったらあ!」というバックグラウンドがなくては不可能なものだ。
さらに、クラマーはこの方式を進化させたポイント方式を生み出したのだった。ポイント方式は個人的に嫌いである。たくさんの選択肢があるので、最善手を打とうとやたらと長考するのだ。ゲームは周りの雰囲気に合わせたテンポだと思っているので、長考するプレイヤーがいるとわしゃ、だれる。もう、どうでもいいやと思うのだ。ティカルはその点、最悪だった。そしてそういう長考してしまうゲームシステムが嫌いなのだ。
エルグランデ、一度戦略的な陣取りゲームを考えた人ならば誰しもがそのシステムに驚嘆する筈だ。一度自分で簡単でいいから4エリア程度の陣取りを考えて欲しい。CRTを使わなければ絶対に壁にぶち当たる筈である。CRTは同時解決のシステムなのだ。間違いなく後手有利か先手有利となる。もしCRTも使わず、チット方式も、エルグランデ方式も使わず陣取りを考案出来たなら、すぐにラベンスバーガーに持っていくべきだ。それだけで十分、一流デザインのゲームとなるだろう。
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