Reiner Knizia

Hans im Gluck

3〜4人
90分

チグリス・ユーフラテス

駿河屋で購入
紀元前4000年、チグリスとユーフラテス川流域に、文明が起こった。
文明を築いたのは、一人の王、神官である。
文明を支えたのは、大農園主、文明を発達させたのは豪商であった。

数百年のスパンで、新しい国が興り、滅亡していく。

レビュー

クニッツィア最高傑作と誉れ高いチグユーをようやくレビューする時がきた。以前、4人でやったのだが、さっぱり訳分からんまま終了。このままレビューするのは忍びないともう一度やる機会を待っていた。TAM夫妻、たっかんとの4人プレイにて。


このゲームは王(黒)、神官(赤)、農業(青)、商人(緑)という4人のリーダーがキーとなる。この4人はひとつの王国(リーダー駒を含み縦横に隣接するタイル群をそう呼ぶ)につき、一人ずつしか存在できない。もし同じ種類のリーダーが内部に登場すれば内戦となり、外部に現れれば(つまり2つの王国がくっつくようにタイルを置く)戦争となる。


初期配置。この上にはワイルドカードとなる財宝が載っており、争奪戦という展開になるよう最初にゲームの方向性をつけている。

勝利点は4色あり、それぞれのリーダーから得られるようになっているが、最も少ない色で勝負が決まるサムライでも踏襲された例のくにちー方式であるので満遍なく入手していかねばならない。タイルを王国に置いたら、そのタイルに対応するリーダーを持つプレイヤーが同色の勝利点1を得る。


誰の国という概念はなく、色に応じたリーダーが得点をえる。各王国に同じ色のリーダーは1つしか居る事が出来ない。例えば、左下に出来ている王国なら、緑のタイルを置いたなら弓矢のプレイヤーが、青のタイルを置いたなら雄牛のプレイヤーが同色の得点コマを受け取るという寸法。

ここまで読んで、頭脳絶好調にそっくりだと思うだろう。まさにその通り、わしの思うに頭脳絶好調はチグユーの簡易版だと考える。一時、サムライがそうだと言う人がいたが、サムライはまったく違った印象を受けた。しかし似ているのはここだけ。チグユーの最大のキーは、最初に書いた戦争と、モニュメントの建設であるからだ。戦争とモニュメントの建設がなければ勝つことは出来ない。

序盤は、少しずつ領土を拡大しつつ勝利点を細々と稼ぐ。わしは川タイルが多かったので、右上に唯一川タイルとしてモニュメントを建てることが出来る場所を中心に国を広げていく。それを補うように、TAM嫁が農業のリーダーを置く。ひとつの王国にはリーダーの種類さえ違っていれば別々のプレイヤーが共存してかまわない。こうして、中央部に大きな王国と、左上から伸びてくる大きな王国、あとは小さな王国が点在する形となった。


各王国が発展しているが、ここで大きな戦争がおきて大きく領土は変化する。同じリーダーがある国同士がくっつくようにタイルをおくと戦争が起きるのだ。戦争はサイコロではなくタイルの数で勝敗を決する。衝立のタイルを出す事も可能。

モニュメントを作るには、2×2の区画に同じ種類のタイルを置いたとき、その4枚のタイルをひっくり返し、その上にその色を含んだモニュメント(2色で成り立っている)を置くのだ。手番の終了時に、その色のリーダーは、勝利点を1つずつ獲得できる。毎ラウンド自動的に入るので非常に強いのだが、このモニュメントを作るタイミングが難しいのだ。このモニュメントを作ることで、王国が4枚のタイルを失う羽目になり、戦力が落ちる。戦争は、リーダーと同色のタイルの枚数が基本戦力となるので、4枚は非常に痛い。せっかく建てたはいいが、即座に戦争で獲られては元も子もない。またモニュメントは破壊することも出来ない。

そうこうしているうちに中原を支配するTAMの王が、戦争を仕掛けた。なんと、もう一方の大きな王国にである。それをたっかん、ディフェンスするも、手札から出した多くのタイルで撃破する。かつてそこには2大王国があったのは古い話である。これに勝ったTAMは、相手国の黒タイル(王のタイル)を全てほかして、6点もの大量得点を得た。戦争は、相手の戦争の原因となった色タイルを全て捨てさせ、その分得点するという非常に強力な手段なのである。


この後、東西に延びる恐ろしく大きな帝国が誕生する。

これにより、中央部の王国は強大な権力を持つTAM王が支配することとなった。
やばいと思ったわしは、近くにいた王を移動させることにする。そう、いきなりTAMの王が支配する場所に登場させたのだ。

戦争では、王を支持するタイルは黒なのだが、内戦となるとリーダー駒に隣接している赤の神殿タイルとなる。つまり互角の戦いが出来るのだ。一度目は敗れるものの、二度目にその国はわしの王が支配する国となった。世代交代である。一見強大な王国と思えたものも、内部から崩れていく。歴史とはそういうものである。

※戦争は常にタイルを置いた結果おき、内戦はリーダー駒を置いた結果によって起きる。戦争の方が圧倒的に勝利点をえる事が出来るので、まずは内戦でリーダーを交代させてから戦争という形が必勝となるのだろう。

とはいっても、実際のところ内戦では、赤の勝利点1つしか得ることが出来ないので、対してメリットはなかった。そこでわしの王は高らかに宣言した。

王「わしは、ここに巨大建造物を創造し、神にこれを捧げる!!」

そう、ようやくモニュメントが建ったのだ。わしの駒が少ない赤色と組み合わせた黒のモニュメント。これから毎ラウンド、点数が入る。


モニュメントは同色のタイルを2×2にしたときに建設可能でタイルを裏返す。このモニュメントが建ち始めるとゲームは終盤。2色によって出来ているモニュメントからは毎ターン、勝利点を1ずつ得るという強力なアイテムなのだ。

と、思いきや、ここでたっかんが強力な一手を打つ。TAM夫妻がそれぞれ支配する巨大王国を戦争させたのだ。

たっかん「もう、人のフンドシで相撲とりますよ!」

えげつなぁ。

TAM嫁「え? これ私が点数入るんちゃうの?」

たっかん「へ? これ、僕が入らんのですか?」

わし「お前、リーダーここに居るんやろ??」

たっかん「いや、いません」

ど、ど、ど、ど阿呆かぁああ!!

たっかん「すんません。ルール分かってなかったです」

最初から、リーダーに点入ってるでしょうが!

無理やり巨大王国を戦争した結果、TAMが勝利。勝利点12を手に入れた。

負けやんけ。阿呆が。


完全にこの王国はTAMのものに。こうなるともう手に負えない。

このキングメーカーの一手で、勝負あった。あれほどの巨大な国同士の場合、普通抑止力となって、戦争は仕掛けないものだ。それをこのど阿呆がやっちまいやがった。TAMぶっちぎりの勝利。

所要時間90分

TAMのコメント

いやあ、これはおもろいっすわ。

ボケのたっかんのコメント

歴史ものはかなり燃えます。おもろいです。

ソマーリオ

ほんまはもっと細かいルールがあるのだが、全体的な流れはこんな感じである。国が勃興して、滅びていく。そんな様子が描かれている。クニッツィアにしては、テーマと合っているような感じもするし、意外とそうでない感じもする。2回やっただけではなんとも言えない難しいゲームだ。

4人のリーダーはそれぞれ特徴があるのもいい。無理やり決めたというルールではなく、自然と役割が決まっているのだ。

ただこのゲーム、アクワイアに非常によく似ていると思うのだが、何故かネットでそういう評判を見たことがない。国と国がぶつかって融合されるというダイナミズムは、アクワイアそのものだし、それを行うことによって大きなメリットを得るというのもそっくりだ。アクワイアはそのまま大きくなってゲームが収束されるようになっているが、チグユーは、タイルの補充がなくなるまでゲームを繰り返す。戦争後は、タイルを捨てて荒廃と化すのでアクワイアのようなダイナミズムがないからだ。

内戦はシミュレーションとしてみると、少々不満は残る。内戦というのはかなりボロボロになるものだが、このゲームの内戦では大きなダメージはない。むしろ文中にあるように世代交代といった感覚か。

こういった歴史もので一番難しいのは勝利点の考え方である。何を持って勝利するのか? 最後に一番大きな国を持ったプレイヤーが勝者なのか、それでは中盤頑張ったプレイヤーはどうなる? それを、王、宗教、経済、食料という形にしたのは見事としか言いようが無い。

覚えるルールが多すぎるし、どうやれば上手く勝てるかという方法を探るのも非常に難しいので、初心者にはまったく楽しむことが出来ないだろう。上級者が何度もやって、チグユーの深みを知ることが出来るものと思われる。ジョーコデルモンド的にやりこまないと解らないゲームなど持っての他だが、これは是非、もっとやりこんでみたいと思わせる何かがある。

このゲームは一度は絶版になったが、メイフェアが再販したので興味がある人は入手していいと思う。あるいはもっと安価で、同じルールのチグリスユーフラテスカードゲームを買うという方法もある。

gioco del mondo