Guenter Burkhardt

ABACUS

2〜5人
60分

ダージリン

ヨーロッパでは東洋のお茶ブームが巻き起こっている。
インド、セイロン、中国。
東インド会社を設立し、お茶の貿易に巨額の富を得るには農場経営の効率化が必要だ。
茶を摘み、木箱に詰め、出荷する。しかし品種によって流行があることを忘れてはいけない。

プレイ感

えらく凝った仕掛けで興味があったが、値段が高くて買う気が失せていた。泊まりがけでキャンプに行った時に、ムゲンに持ってきて貰って、女性陣が長風呂に入ってる間に野郎どもでやる機会を得た。ムゲン、Kei、タカダと4人プレイにて。


最初にタイルでマップを作るのだが、机の形の都合上、中国にしてみた。
手番になると、自分の茶摘み駒を好きなだけ直進させる。で、止まったところのタイルを取り、衝立の後ろに隠す。このタイルは茶箱の半分が印刷されており、タイル2枚で茶箱ひとつが完成するのだ。それから茶箱が完成していれば、一気に同じ種類の茶箱を組み合わせて出すと、その数マイナス1(都市に隣接していればそのままの数)だけの駒を舟に載せて一番上に舟ごと持って行く。この舟が手番の最初に得点をもたらすのだ。
最終的に誰かが100点超えたらゲーム終了である。


コンポーネントは抜群で、ボード全体は得点管理のために存在している。中でも舟は木製駒で、出荷すると一番下の舟に駒を載せてそのまま上に引き上げる。そうすることで横に描いている点数と掛けて毎手番得点が入るのだ。今なら青のわしは毎手番4点貰えるという事。

スタートプレイヤーであるわしは、すぐに茶箱を集め、1個すぐに出荷した。最初はボーナスとしてそれぞれ1個ずつ同じ舟に駒を載せているのだが、駒は以後、ひとりの駒で独占される。他の駒は廃棄されるのだ。これはスタートプレイヤーの有利さで、わしゃ都合2個載せて一番上に舟を移動させた。

※ルール間違いで、本来はスタートプレイヤーから順番に下から上へ1個ずつ舟に載せていくので後ろのプレイヤーは最初にたくさん得点が入るようになって先行有利のハンデを付けている。

これがかなりでかかった。何故なら手番の最初に毎回得点フェイズがあり、舟が一番上にあるという事は、駒数×3点も入るのだ。誰かが茶を出荷しない限り、ずっと6点はいる。


茶摘み駒を動かしてそこのタイルを取る。タイルは全て半分の茶箱となっており、手番の最後にこのように1つの箱の完成品として出荷する事が出来る。今回は都市の隣で出荷出来るので2個の駒を舟に載せる事が出来る訳だ。都市の駒ってのは木のタイルである。

そのままわしの得点が伸びる頃、他のプレイヤーも出荷し始めた。
出荷は出来る限り一気にした方がいいのだが、そうすると他のプレイヤーがずっと高得点ゾーンに留まり「うっしっし」となるので、様子を見ながらしなければならない。

茶箱タイルには茶箱が1〜3個描かれているが、どれも半分ずつとなっている。半分の表示のまま出荷出来ないので、3個描かれているタイルを取ると最低でも残り3枚のタイルが必要となりリスクを伴う。それでそれを取るとアクションタイルが貰えるようになっている。


出荷すると、茶の種類によってボーナスが得られる。舟の上にある台がそうだ。色ごとに2つ転がる駒がセットされており、出荷した一番下に来ている駒を一番上に持ってくる。その間がボーナス点だ。例えば、今、黒の茶を出荷すれば、4点入る。緑なら1点しか入らない。このように見定めて出荷しないと0点なんて事もよくある。

中盤、Keiが一気に載せてきた。しかも、一番下が自分の舟の時に載せたので、前に載せた駒はそのまま残り、得点効果は倍増される。

ムゲン「これ自分の駒が一番下に居るときを見計らってやったら強烈ですね」

※ これが今回致命的なルールミスであった。舟に出荷するときは、他人のんであろうが、自分のんであろうが、全て取り除く。それから新しい茶を置くのが正解だ。この間違いは確実に勝者と敗者を変えた。

皆は、虎視眈々と自分の載せている舟が下に来るのを待つようになった。
しかしながら、これがある意味明暗を分けた。何故なら…

Kei「じゃ、僕、10点すね」

わし「わしは9点か」

と1位、2位のわしらばかり得点が伸びていくのだ。しかもKeiは毎ラウンド1点詰め寄ってきやがる。
なんとかしなければ、セーフティリードがなくなってしまう。


この状態が何ラウンドも続いた。わしのリードは徐々に詰まっていく。

これの解決策は、出荷することだ。1つでもいい。出荷すれば、Keiの得点力は減衰する。

しかしわしの手元にあるタイルは、2つのタイル1枚…最低でも後2手番必要なのだが、わしのライン上にそのタイルがないのだ。なんでこんなんとっとんねん。(|| ゜Д゜)ガーン!!

ようやくこの状況から抜け出せたのは、タカダが溜めに溜めたタイルを一気に放出してからだ。もうちょい早くに出して欲しかった。そのころ、すでにKeiがトップの座に躍り出ていた。


慌ててわしも即座に出すが……


Keiはもうひとつ出してきた。しかもボーナスを倍にするタイルとセットである。ここでぶっちぎりのトップになってゲーム終了。

それから、アクションタイルを使って茶の得点を倍にして、100点達成である。ここからマイナス得点が計算される。手元に残ったタイルの茶箱半分につきマイナス1点だ。わしゃマイナス3点くらい、Keiの勝利。

所要時間50分

ムゲンのコメント

ほんまにおしい作品。茶箱の獲得のところが少し面倒だが、システム的には面白かったかな。

Keiのコメント

前半はご存知の通り失敗しまくりでした。玉を挟めなかったりで、2回ほど点数入らなかったですから、勝った要因は、後半に×2のカードで、赤玉をを狙い通りに挟め、二倍の得点を得た事やと思います。収穫も、やたらめったらとしたら勝てないですね、3や2の所で稼がないと、収穫ばかりしてると流されますから。もう一度別の(中国以外)で、もう一度やりたいゲームです。

ソマーリオ

タイルゲームに新しいものを作りだそうとしているところは賞賛に値する。普通タイルゲームといえば、置いて完成させていくというものがほとんどだが、逆にタイルを取り上げ、自分の手元で細かく完成させていくという手法を取っている。

そして得点方法も変わっており、毎ラウンド得点が入る仕掛けを作ってその恩恵を受けるというシステムとなっている。またコロコロと転がる茶の価値を決める方法もユニークだ。

ただ、こういった目新しい要素とは裏腹に、ゲーム自体はどこに肝があるのかさっぱり解らず終始ぼやあっと薄ぼんやりとしており、タイルを補充する動作や手番ごとの得点などかなり煩雑でテンポが悪く感じた。ゲーム時間は短いのにそう感じてしまうのだから、これは大きな欠陥といえるだろう。

個人的に一番気になったのは作者が意図した、茶摘みという感覚がこのゲームにはまったくないのだ。箱庭系のゲームはものを作る楽しみがあるが、ダージリンでは本来茶摘みをするという楽しみをプレイヤーに味わえるようデザインされている筈なのに、それがまったく感じられないのはかなり痛い。ただ海長とオビ湾さんによると、茶摘みがテーマではなく茶の流通にテーマがあるらしい。以下、興味深い内容なので、BBSから転用する。

実は「ダージリン」のテーマは茶摘みではなくて、お茶業界の流通で、しかもわりと上手く再現したなぁなんて思ってるんですよ。
お茶マーケットと言うのは結構不思議なところがいっぱいあって、商品の流通が特殊なんですよね。
静岡にいたころはお茶屋さんがいっぱいあったので、興味があっていろいろ聞いたことがあるんですが・・・・

毎シーズン“新茶”が登場すると、それまで大量にあった筈の旧茶はいっせいに姿を見せなくなるんです。
これはもちろん、お茶という商品は“新茶である”ことに大きな価値基準を置いているからなんです。
そしてこの“新茶に押された旧茶”というのは(日本で言うところ)煎茶になったり、ほうじ茶になったりするんですね。こうして旧茶はいろいろなところに散っていくんです。で、もちろん利益も低くなっていくと。
タイルを揃えた後、タイルが袋に戻される前に一回倉庫に入って、次の新茶が来ると倉庫から袋に帰るというところも、この辺のこだわりを感じるところです。
わざわざ2つのメーターを使ってお茶の市場価値を再現しようとおもったわけですなぁ〜と。

なるほど。そういう事であれば、確かにあの舟の流通構造はかなりテーマに合っている。

おそらくこのゲームが好きで好きでしょうがないという人は稀で、ほとんどの人がまあまあ悪くないという印象を持つものと思われる。これはゲームにとって不幸であろう。ゲームの御大クラマーは、万人がまあまあおもろいというゲームよりも、つまらんという人は多くても、もの凄く好きという人が少数いるゲームの方が売れると語った事がある。まさにこのダージリンがその売れないゲームのひとつに当てはまるように思うのだ。

木製の舟に、特殊なカッティングが施された木製タイルなどは非常に手の込んだもので、コンポーネントはアバクス出色の出来といえるだろう。ズーロレットの儲けをそのままつぎ込んだんじゃないかと思える程だ。その気合いの入ったアバクスには誠に申し訳ないのだが、またやりたいかと問われれば、他におもろいゲームもあるし、もう、ええかと答えるだろう。
ただし、この新しいシステムは、今後、他のゲームに取り入れられ、ドイツゲーム大賞を獲るようなシステムと進化していくように思う。たくさんのゲームのシステムに慣れてきた人は一度はやってみる価値ありだ。このようにシステム的にかなり見所はあるが、ダージリンではやや空回りしている感じだった。

作者のギュンターブルクハルトは、一筋縄ではいかないデザイナーの筆頭である。トリックテイクを作らせたらウィリートランプトリックゲームのような「よくぞまあ」なんてものを作るし、ジャガーのピラミッド銅鍋屋といったまったりしているが、不思議と楽しいゲームも作り出す。ヒット作は持たないがちょっと面白いデザイナーなのだ。そういった意味で購入するのは悪くない。かなり凝ったコンポーネントで、おそらくはすぐに絶版になるかと思われる。今思ったのだが、この茶摘みは銅鍋屋からの発展かも。

実は今回レビューしたのは、Keiが勝ったので絶対にレビューしてくれと懇願されたからであったが、致命的なルール間違いを海長とオビ湾さんに教えて頂き訂正する事となった。ここからちょっと愚痴やけど、これはムゲンの持ち物で、こいつがやる前にしっかりとルールを一度読んで確認してれば、ここまでの致命的なルール間違いはなかったように思う。時間のない現場でいきなりルールを読み始めてやったとしても正しいルールできちんとゲーム出来る人はほとんどいない。少々のルール間違いならいざ知らず、勝利に直接結びつくような間違いはあまりにも無念なんで、めんどくさがらずに頑張って読んどいて欲しいわ。

ただこういったルール間違いがあったとしても、内包しているプレイ感はほとんど変わらないだろう。

gioco del mondo