Franz-Benno Delonge

Zoch

3〜5人
90分

マニラ

さあさ、よってらっしゃい。みてらっしゃい。
ここはタイで最も盛んな先物取引市場だよ。
何々? 海賊が出るだって?
まあ、品物が着けば御の字、船が難破する事だってあるからねえ。
それでもそれが先物の魅力だろ?

プレイ感

去年、ナイアガラが大賞受賞した後に、ぽっとでたのがこれ。意外とおもろいと言われて思わず買うてみたものの、よく見りゃコンポーネントは素晴らしいがただのサイコロ賭けゲーム。結局、ずっと眠ってたのだが、ようやくTAM夫妻、たっかんとの4人プレイが出来た。

説明の段階でなんだかねむぅーくなる。何がなんだかよう解らない。海賊も略奪と襲撃があるし、賭ける方法がいっぱいあって、どれがどう絡んでるのか解らない。こりゃ駄目だわ、、、と思いつつ、ゲームスタート。

最初の港湾管理人になったのは、TAM嫁。とりあえずやっとこうという事で皆、競りに降りた。この港湾管理人は、やたらめったらやる事が多くて、競りという方式を取っているので、余計に嫌な予感が。

しかし、そのラウンドが終わると一発で理解出来た。非常に簡単なルールだったのだ。要は3隻の船が、3つのサイコロを振って港に着くか、否かを賭けるだけなのである。


単にサイコロ3回で、港に付けるか付けないかの賭け。上に乗ってる人が賭けたという意味で、船の場合は最初に賭ける程、配置コストが安い。成功すると船首に書いてあるお金を均等割する。サイコロを1度振る毎に、1つどこかに賭ける事ができる。

皆が順番に1つ賭けると、サイコロを1つ振る。つまり3つめを振る直前は、ほとんどどの船が到着するかどうか解るという状況になっている。徐々に、勝てるかどうかが解っていくという構造は、あのメンバーズオンリーと同じである。船は、乗組員数が決まっているので、こりゃラッキーと思っても、満員となってはどうしようもない。

ここで港湾管理人になりたがる人が続出。管理人になってしまえば、積み荷を選べるばかりか(毎ラウンド4つのうち3つしか積めない)、合計で9マスまで、船を前進させる事が出来(1つの船は最大5マスまで)、港に到着させやすくする事が出来る。

もう今年の新卒の就職人気職種は間違いなく港湾管理人だ。

OG訪問で、港湾管理人歴42年のポングサクレックさんの話に、目を輝かせる初々しい女子大生たち。

ポングサクレック「港湾管理人つうたら、おねいちゃんよぉ、いがに船荷を安全に届けるかだ。全部は無理だ。ほれ、海にゃあ、海賊がいるでよぉ。海賊に襲われだ時は、わしゃ、がたがたと震えながら言ってやっだ。そんな事ばっかすてると、おがあちゃんが泣くど。それで助かった事もあっただなあ」


手前黄色の場所が、一番最初に港に着く場所。成功すれば表示してある6ペソ貰える。ちなみに駒を置くオレンジの場所が配置する為のテラ銭である。手前、青色が海賊の場所で、船を乗っ取る事ができる。当たればデカい。向こうに見える赤の場所は港に付けなかった2隻目の船が行く場所。オレンジは3隻目、つまり全て港に付けないと予想している。もちろんレートは後ろほど高くなる。

一気にレートは10ペソ台になる。ここで、TAMが港湾管理人になるが、積み荷の翡翠を外してきやがった。

むう、それは困る。実は最初に株券が配られて、その船荷が着く毎に、株の価値があがる仕掛けがある。で、わしゃ、2枚とも翡翠だったのだ。これを外されては、価値があがらんではないか!

ポングサクレック「港湾管理人の一番の魅力だっで? そりゃ、株券さ買える事だがや。株さ持ってねーどお金にはならねぇかんらのう」

女子大生たちの股ぐらは、ポングサクレックさんの熱っぽい語り口調に濡れ濡れだ。
TAM夫妻は、互いに株券を買い、それを優先的に積み荷にした。

ここでTAM嫁の、賭けが連続ヒットして、徐々に差を広げつつある。

わしゃ、せこせことしか当たらないので徐々にじり貧になっていくが、それよりも海賊に命を賭けたのが原因である。海賊は非常にギャンブル性の強い賭けで、どれかの船が13に泊まると、能力を発揮する。当然、見ながら出来るので、泊まりそうやなと思った時に、賭けるのだが、なかなかに上手くいかない。また2回目のサイコロで到達すると単なる乗組員になるだけだが、3回目に泊まると船を強奪出来て配当を独り占めに出来るのだ。積み荷の配当は頭割りなので、一人独占というのはかなりでかい。

しかし、この海賊になるにもお金がかかり、徐々に目減りしていく。目の前を船が過ぎるのをただ指をくわえて眺める毎日だ。

ところが、転機がきた。そう、3回目に13のマスに泊まりやがったのだ!

「カピタンいきやしょうぜ!」

カピタン「がははは、うちの若いもんは荒くればかりで困るのう」

おらおらおらー! 船乗りは慌てて、海にどぼんと飛び込む。そのまま奪った船を港につけ、30ペソ独り占め。

カピタン「うわっはっはっは! 海賊はやめられねえ!」


うわっはっはっは!!! 海賊成功じゃああ!! 3回目に13に止まると海賊の強奪が始まり、船を一人で乗っ取る事ができる。つまり30ペソ独占。いやあ、長い間無駄に船を何度通り過ごした事か。寂しいよ、前通り過ぎて行くと。

そこで一気に躍りでたわしは、港湾管理人の競りで強烈なレートを浴びせまくる。

TAM「わわわ、海賊あがりやから何するかわからへんわ、この人」

たっかん「海賊あがりすからねえ、何しでかすか」

そっから翡翠を連発で載せまくり、一気にまくしあげる。

海賊上がりのわしの荒っぽい行動に、皆が震え上がる。

おお! これはかつて禁酒法の時代に密売酒で大儲けしたお金で財界に鮮烈なデビューをしたケネディ家のようじゃねーか!!

しかしその行動を横で見ていたTAM嫁、海賊の魅力に取り付かれ、指をくわえて待つ日々を過ごす。

カピタン「ええが、ねえちゃん。海賊家業は根気が第一なんやでぇ」


それ以降、海賊は大人気となりましたとさw 右に置いてある青と赤は、水先案内人で、やばそうと思った船を1か2マス進める事が出来る。何故、青と赤かというと、青赤にてれこに乗ってる船がやばくて、二人で押し上げたからだw

結局、そのまま翡翠を最高価格まで持っていきゲーム終了。どれかの商品価値が最高になるとゲームは終わる。

翡翠の株券を3枚みせびらかして、ぶっちぎりの勝利。

所要時間60分。


右上にあるのが商品相場表で、緑の翡翠が最高価格まで跳ね上がっており、わしが3枚持っている。株券はそんなにたくさんないので、この3枚ってのはかなりの枚数なのだ。なんといっても1枚30ペソの価格である。

TAM嫁のコメント

楽しかった。これ買うんちゃうの?

TAMのコメント

いや、おもろかった。お金があれば欲しいんですけどねえ。

ソマーリオ

ただのサイコロをつかったギャンブルゲームなのに、非常におもろかった。ルールだけ読むとかなりしょぼそうだが、やってみると意外に覚えやすく、誰もルールについて別に悩む事はなかった。

本文では紹介しきれなかった仕掛けが色々とある。測量士などは、船を1、2マス進めたりして、成功率を変更させる。保険屋は10ペソ貰い、そこから着かなかった船に対してお金を払っていく。

よくぞまあ、こんな単純な仕掛けで、これだけ雰囲気たっぷりにテーマに即したゲームを作ったなあ、と感心。コンポーネントは、木製の駒といい、マニラの船乗りのような形をした駒といい、作り込まれたお金チップといい、文句のつけようがない。そのまま地獄の黙示録に出てきそうな雰囲気である。

徐々に成功率が解っていくシステムと賭け方は明らかにメンバーズオンリーを真似しているが、じりじりとしたジレンマに悩まされるメンバーズオンリーと比べて、気軽にサイコロを楽しめる良さがある。どっちがいいかと問われれば、どっちもいいとしか答えられない。

確かに、メンバーズオンリーはクローズドしたカード方式で、どうなるかを予測させるから素晴らしいと言われ、マニラはサイコロという運だけと言われる事もあるが、これはシュレーディンガーの猫である。

箱の中に猫がいる。その猫が死んでいるか生きているのか解るためには箱を開けなければ解らない。箱を開けた時点で初めて、猫は生きているか死んでいるか決まる。これは量子力学の根本概念である。

アインシュタインは、最初から猫は箱の中で死んでるか生きているか決まっていると反対していたが、結局この理論が正しい事を認めざるを得ない状況になり、「それでも私は、夜空を見上げたその時に、月がどこからか沸いて出てきたとは思えない」と捨て台詞をはいたのは有名である。

いかさまをしているならいざ知らず、他人の持っているカードを知らないうちは、サイコロだろうが、カードだろうが同じと考えてもいいのだ。結果は出された時点で、決定されるのだから。

とは言うものの、カードプレイは、他人と違った予想を組み立てる事が可能だし、はったりを効かせる楽しみもある。サイコロプレイは、わいわいと騒げる良さがある。やっぱりどちらも楽しいと言いたい。

あと、意外と時間がかかるというのが嫌だという人は、最初の商品相場を全て1段階あげてやるのがお勧めである。今回は、わしが一気に片をつけたので1時間で済んだ。

ただのギャンブルゲームでありながら、これほどテーマに即していて楽しめるゲームとはいうのは、稀であるといえる。説明がむずくてそこで挫折してしまう可能性があるが、説明を根気よく聞ける中級者にはお盆や正月に皆で集まって楽しむのにぴったりのゲームだ。やってみると非常に簡単なのに、そこだけが勿体ない。デロンシュってこのデザイナー、フィヨルドトランスアメリカなどなかなかに良いゲームを作るデザイナーのよう。要注目。

gioco del mondo