Wolfgang Kramer

Hans im Gluck

2〜5人
80分

ハチエンダ

ゲーム説明

アルゼンチンの大農園、それはハチエンダと呼ばれる。
新しい農場主は、荒れ地を整備し、その奥に素晴らしい広がりを見せる牧草地をつかって囲い込みを始めた。
そこで育てられた豚、牛、羊などの家畜を市場に持っていき、収益をあげる。
アルゼンチン1のハチエンダを経営するために。

プレイ感

あちこちのサイトでおもろいとの評判で、メビウスのお勧めリストでも新作に関わらず一押し評価を受けている。見た目があまりおもろそうじゃなかったが、しょうがないので購入。クラマーの作ったチケットトゥライドとの評判もあったが、あまり期待してなかったのでまずBBと二人プレイで感触を確かめる事にした。


チケットトゥライドと同じく、同じ動物カードを集め、目的地である市場へ同じ動物タイルを並べていく。違うのは、お金でカードを買う(チケットトゥライドは貰える)事と、同じようなシステムで手に入れる土地カードもあるところだ。オープンになっているカードはちょっと高くなっている。


下の動物カード、左の土地カードを4枚ずつオープン。チケットトゥライドと違ってお金で買う。六角形のタイルが土地タイルで、手札の土地カードを使って同じ土地に配置、動物も同じように動物カードを出して配置していくが、動物は草原にしかおけない。ボードはリバーシブルになっており、慣れると裏面の上級者マップでやればいい。

このゲームのむかつくのはお金と勝利条件という2つの概念が存在するところだ。そういうゲームは別に珍しくもないが、このハチエンダは、それを手に入れる行動を取った時に、どっちが手に入るかすぐ覚えられないところである。
お金と勝利ポイントの単位はどちらも1で、すさまじく似ているばかりか、何故、どっちが手に入るのかがイメージ的にとても掴みにくいのだ。リファレンスがついてるので、これとにらめっこしないと駄目である。

「えーと、この場合はお金貰えるんやっけ?」
リファレンスをいちいち確認する。

BB「これでお金貰える?」

「・・・うん、それでお金入るわ」

とまあこんな感じ。またお金でカードを買うので、お金があると一気に買えたりするので手番の選択肢が結構多い。収支のバランスがかなり難しいのだ。

説明書片手にやってるとそれだけで駄目ゲーぽい予感が。


ボードに描かれている市場に動物で繋げるとお金が入る。動物は同じ動物か土地にしか繋げる事が出来ないので、同じ動物を集めないと市場へ接続する事が出来なくなってくる。池タイルは勝利ポイントになるので動物か土地で接触するように置くといい。

ところが、ゲームが動き出すとその評価がころっと変わってくる。

まずは開拓しにくい土地を整備して、そこから動物カードを市場へ伸ばすのだ。そして巻け、巻くのだ。市場へくっつけるごとにお金が連結している動物タイル+土地タイル分貰えるので、元、元+1、元+2・・・という形に何度でも貰えるのだ。

動物は同じ動物同士しかくっつける事が出来ないので土地で基地みたいなものを作り、そこから別の動物をみょーんと派遣する。そこで再び巻きに巻く。その繰り返しである。もうライブドアの株バブルかつうくらいお金わんさか入ってくる。

「粉飾でもなんでもいいから、黒字にするんだよ! 分割だ! 1兆分割しろ!」

ここでほりえもんのようにお金だけに走っては勝利点0でべったである。やはりこれからの時代、社会還元して企業モラルが問われる時代だ。会社をひっくり返せば社会だ。(←お! 良いこと言った)
その儲けで池を作り、ハチエンダ駒を配置し、「ま! あの社長は、自分の利益だけじゃなく公共の義務を果たしているステキな経営をしてるわ。これからの会社はこうでなくっちゃ」とおねいちゃんも大騒ぎ、ちんこもピコ立ちである。

おお! ゲームやったときは解らなかったがこうして書いてみると、なんとなくシステムが理解できそうや。そうそう、そんな感じ。クラマーめえ、やるう!

※ お金でも実は少しだけ勝利得点は入る。


市場へ接続する度に(同じ動物から土地まで)繋がっている枚数分のお金が貰えるので、こんな風に巻きに巻く訳だ。もう、豚だらけでブヒブヒである。しかしながらポイントがあって、出来る限りたくさんの場所の市場へ接続すると決算時の勝利ポイントが指数関数的に伸びるので、お金が貰えるからといって同じ市場へ接続しまくってもしょうがない。

このゲームの凄いところはここだけではない。非常に高度な陣取りゲームとなっている。細かいヘクスに分かれており、早いモノ勝ちであるので、相手との距離を考えて、土地を確保していかなければならない。

わしはBBが伸ばしそうなところにいち早く、豚部隊などを派遣して、利益をかっさらってやった。うひょー

結果、じり貧になるBB。


ゲーム後半、お金ばっかり狂喜乱舞して出しても勝ちはこない。高価なハチエンダを配置して、ポイントを稼ぐ。ハチエンダは同じ動物か、同じ動物グループ分だけ勝利ポイントが入る。真ん中のハチエンダでいえば豚グループにより8ポイントだ。BBにも教えてあげるとハチエンダ購入合戦となった。ただ1手番に1つしか買えない。

ここでBBに負け犬め! と罵声を浴びせてやっても良かったが、そこは自分さえ良ければそれでOKという米国個人主義と違うわし。さりげなく、儲けるアドバイス。(←ここらへんが鬼とは違う、仏のあきおと呼ばれる所以だ)

うひょー、やるう、俺!

やってるときは気づかなかったが、そこからお金にモノを言わせて社会還元し、勝利ポイントを稼ぐ。BBもようやくそれに気づいたが、お金の絶対量が違うのと先に行動を起こしたわしには届かず。わしのぶっちぎりの勝利。

所要時間50分


最終は激しく陣取りの攻防が! 中間決算まではオナニープレイで淡々と進むが、後半はかなり激しい凌ぎ合いとなる。前半と後半ではまったく違うゲームである。また後日TAMとやってみて分かった事だが、土地グループ(3枚以上)は決算時に×2の勝利ポイントが入るので、かなり強い事が分かった。土地は3枚以上になるように配置するのが鉄則だ。

「お金を持ったまま死ぬのは人間の恥だ」 アンドリュー・カーネギー

BBのコメント

なんかややこしかったけど、面白かった。勝利ポイントの手に入れ方がわからんかったわ。あまりお金使ったりするゲームは好きじゃないけど、これは動物がテーマになってるから楽しかったんかな。

ソマーリオ

まさに下馬評通りのおもろさ。ルール読んだ限りでは、チケットトゥライドのシステムにわざわざお金というややこしい概念をつけて、お金と勝利条件の手に入れ方といいまとまりのないルールやなと思った。
そして実際にまとまりはなかった。

ところがそれ以上余りある楽しさがこのゲームにはある。既に陣取りゲームのシステムは出尽くしたと思ってが、クラマーはこのシステムにより新しい境地を開いたといって過言じゃない。似ているのはチケットトゥライドぽいカードの動かし方だけで、まったくチケットトゥライドとは似て非なるものだ。プレイのやり方も、勝ち方のポイントも、求めるスキルも全て違う。

どうやればもっとも上手くエリアを支配出来るか、どうやってお金をためてそれを勝利ポイントへ変換させるか、タイミングは? それがこのハチエンダの肝であり、全てチケットトゥライドにはないところだ。

クラマーの凄さをまざまざと見せつけられた。特に、なんで同じような意味の土地カードと動物カードに分かれてるねんつうのは未だにわからん。それを採用してるクラマーは化け物である。すげえとしか言いようがない。

確かに手順は多く、お金と勝利ポイントの手に入れ方も分かりにくく、ルールは理解しにくいわとプレイアビリティはすこぶる悪い。そういう荒削りなところは気になるが、このゲームは間違いなく傑作である。このシステムによってクラマーは陣取りゲームにエルグランデ以来の新境地を開いたといって過言じゃない。

二人でやってこれだけおもろいとなると、多人数ならどうなんやろ? 今のところプレイアビリティの悪さで(タイルを裏表に違う絵柄で印刷してるってのも気に入らない)だが、に変更する可能性大。多人数でやってみてから決める。

ただし、途中何度も書いてるように、ヘビーゲームなので間違っても初心者にやらせてはいけない。きっと意味がさっぱり解らないだろう。中級者以上なら見かけの悪さに毛嫌いせず、やってみて欲しい。もうひとつ、長考しやすくゲーム時間が伸びがちなゲームなのでそういう人とやる時は覚悟してやる事。

出た時期が悪かったが、これは2006年、今年のゲーム賞になるんじゃないと予想。ちなみに緑色に反転させてるのは、自分への備忘録であるw

ちょっとルールでは解りにくいが、決算時は、必ず最終プレイヤーが手番を行ってから決算である。つまり決算時には全員同じ回数手番を行うことを忘れないようにしておくこと。そういった意味ではスタートプレイヤーマーカーってのがあった方が良かったと思う。

再プレイ後の感想

というわけでに変更した。
といっても、多人数でやったからではなく、ハチエンダの潜在能力の高さをようやく知ったからだ。

勘違いしていたのは、これはお金を稼ぐゲームではない。つまり動物を連結させていくゲームではないという事だった。お金はやってみると解るが動物で接続していくと余りあるほどになってくる。そして動物カードが終了条件となってくるので、チケライみたいに動物ばかりで接続していくと、あっちゅうまに終わるのだ。

前から土地カードの枚数が多いなあと思ってた謎がこれで解けた。
今更ながらで申し訳ないが、このゲームは土地を周りで大量に固めていくのが基本戦略となっている。勝利点が入る最低ラインの3つの土地じゃなくて、6つ7つの広大な土地を作り上げていくのだ。


序盤に徹底的に土地を敷いていくわし。序盤からお金が貯まればハチエンダを建てていく。土地カードばかり買うては作っていたので、お金はじり貧となったがこれは計画通り。必要に応じて、動物で接続すればいいだけだ。

それを行う為にお金が足りなくなってくる。そのために動物を使ったり収穫を行う。それが基本路線だ。以前、TAMに負けた時に、土地戦略もなかなか強いなあと阿呆な話を書いた。このゲームにおいて土地戦略なんてパターンはなく、土地を確保してそこからどうするかが正しい勝ち筋であった。土地を抑え、そこから様々な戦略が生まれる。


豚で更に下の市場に接続しようと狙ったが、miaの羊によって阻止された。しょうがないので、左下は諦めて牛を使って市場への接続を出来る限り市場に隣接させながら増やしていく作戦をとる。このとき、すでに牛の間に湖を入れる構想が出来上がっていた。かなり農場らしく見えるだろう。

タイトルにもなってるハチエンダマーカーの効果がいまいちと思っていたというのも、まったく勘違い。まさにハチエンダがこのゲームの勝敗に大きく関わってくるのだ。金に糸目をつけずにハチエンダを出来る限り早く買い上げる。そしてその土地を広げたり、動物グループを増やしたり、そういった戦略の中心にハチエンダマーカーがいる。また、中間決算までにハチエンダを置けば、2回とも得点が入り、一粒で二度美味しい事になる。


最終はこんな形になった。収穫マーカーも載せられ、激しい戦いが演じられたのが解る。今回は最初に土地を広げ、そこから一気にお金を回転させまくった青色のわしの勝利。最後はmiaの方が土地が多くなったがぶっちぎりの勝利であった。

そして当然の事ながら、池も同じくらい大事だ。むしろハチエンダは池とダブルで得点源とすべきだ。そのためにどのように陣地を形成していくかが腕の見せ所である。土地をしっかりと築いてゲームをすれば最初にレビューしたような閑散としたボードにはならず、所狭しと農場が出来上がる。これがこのゲーム本来の姿だった。

むう、面白い。相当なおもろさだ。

ハチエンダマーカーの効果、多量の土地カード、使わない収穫タイル、なんかバランス悪いなあと思いながらもそれなりにおもろかったが、それはハチエンダのポテンシャルの全てではなかった。完全に一番おいしいところを封印したプレイであったのだ。それがようやく解き放たれた。そのプレイ下において、クラマーの作ったチケットトゥライドなんて言葉は勘違いも甚だしい。全然違うプレイ感である。完璧なる新しいタイプの陣取りゲームである。


ここまで密集してくるとまさに農場の風景である。これが正しいハチエンダの形だろう。

クラマーこそまさに陣取りの神様といっていい。なんちゅうても、エルグランデのようなアクションカード式陣取りでもなく、ティカル系列のアクションポイント制でもない。まったく別の形の陣取りなのだ。そしてそのどれもが恐ろしいまでの完成度とおもろさを持っている。クラマー、一体この人は何者やろ? まじで戦慄するくらいの凄さを感じる。

ちゅうかね、2006年のドイツゲーム大賞ってなんやねんな。郵便馬車? これはどう考えても間違ってるやろ。ハチエンダが無冠なんてちょっと考えられへんねんけどな。

gioco del mondo