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カナイセイジ
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カナイ製作所
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3~8人
40分
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成敗
降りしきる雨の中、少女が一心に祈りを捧げていた。
「どうか、お父ちゃんの敵をうってください」
……
「これはわたしからの依頼としましょう」
「平次の調べによると彼女の父を父親を陥れたのは、奉行の青柳と、越後屋惣兵衛。そして実際に手を下したのは用心棒の乾八郎という剣士です」
「じゃあ、あっしは乾を殺る」
「あたいは青柳の首を貰った」
成敗人たちは、そういうと小判を1枚ずつ受け取って、闇に消えていった。
プレイ感
オビ湾一押しのカナイ製作所のゲームでさらに一押ししてたので、買うことにした。テーマは必殺仕事人で、昨今流行の協力ゲームだ。プレイヤーはそれぞれ能力の違った成敗人を操り、プレイヤーと同じ数だけいる、これまた能力の違う悪党どもを成敗するのだ。お勧めの人数は4人から6人と書いてあるが、ここに集いし成敗人はTAM夫妻、タカダ、アマバ、ムゲン、レイの7人。ほんまはmiaもいてマックスの8人でやる予定だったが、子供がぐずつきだしたので、不参加となった。
場に7人の悪党を並べる。そして悪党にはそのキャラクターによって並べる状況カード(黒)の枚数が違う。その数だけ裏向けに並べていく。手札は7枚。
わし「じゃあ、キャラクターは女3人なんで、せっかく女が2人いるんで、ここから配るわ。そして残りの男キャラクターを野郎で適当に配る」
配られたキャラクターにみる。
わし「わしのは辰。肉体派でスピードは遅いけど、攻撃力が高い」
わしはルール確認のために色々と読みつつ、キャラクターにあわせた裏の顔カードを渡せとあるので、キャラクターにあわせて渡していった。
この裏の顔カードは成敗人が、成敗する悪党を決めるカードで(つまり1対1で殺る)、決めセリフが書かれている。これが超格好いい。
これが辰の裏の顔カード。最後に仕留める悪党におくカードだ。それぞれセリフが違う。
そしたら向こう側でやたらと盛り上がり始めた。
タカダ「ちょ、何それ」
みると、アマバの成敗人が源斎というお爺ちゃんで、ライフが2しかない無茶苦茶弱いキャラクターなのだ。
そして裏の顔の決めセリフが
アマバ「えれきてる、ばんざーい」
これだけで皆、大喜び。悪党を決めるときにこのセリフを言うてカードを置くのだ。それが
アマバ「えれきてる、ばんざーい」
もう、正直、これだけでにした。
おもろすぎやろ、カナイさん。
タカダ「げんじい、死にかけやんけ。大丈夫か」
このゲームは準備が大変である。今回は7人なので8枚中7枚の悪党カードを場に並べる。ルールによると一人強い奴がいるのでそいつを外した。
で、それぞれの悪党に書かれた状況カードを指定枚数、裏向けに配置する。これはその悪党が雇っているちんぴらや、裏取引などの様々な状況を表しており、これらの情報を収集する事がゲームの大きな目的となっている。
各プレイヤーに支度カードを7枚ずつ配る。これは自分の攻撃力などのパラメータをあげたり、悪党の状況を偵察したりすることが出来るカードだ。
手番には、(1)支度カードをプレイする。(2)成敗人の特殊能力を発揮する。(3)共通の能力を発揮する。(4)裏の顔カードを悪党に置きゲームから一時抜ける。のどれかを行う。
支度カードをプレイして効果を解決したら、その支度カードを自分の前に出しておく。重要なのは左上の数字でこれが支度に掛かった時間を表しており、合計で10(時間)までしか出すことが出来ないのだ。10時間となった成敗人は裏の顔を置いて成敗する悪党を決める行動しか選べなくなる。
このように支度カードを並べて自分を強化したり、悪党の情報を集めたり、除外したりしていく。裏向きに出してるのは特殊能力を使ったという事。合計で10時間までしか支度できない。
成敗人の中には特殊能力を持っている者がいて、その能力を使うにはどれくらいの時間が掛かるかが効果と共に書かれている。それを使えば自分の手札を1枚1時間として裏向けに同様に自分の場に出す必要がある。
共通の能力はカードを相手に渡したり、カードを補充したりといった誰でも使える能力で、これまた経過時間を手札から出さなくてはいけない。
最終的に、全員が裏の顔カードを成敗する悪党に置いたら、攻撃を解決するフェイズとなる。
悪党の状況カードを全て表にして、成敗人の能力と比べる。スピードが速い方から攻撃力分だけ相手のライフを削り、まだライフが残っていれば反撃を行う。攻撃のやりとりはこの1回限りだ。この1回のやりとりで、悪党を全員殺し、成敗人が全員生き残らなければ、負けである。
状況カードを見極めギリギリ勝てる悪党を選別するのが大事だと解るだろう。
今回の成敗人で最も重要な役割を果たすのがムゲンの早耳の平次だ。
ムゲン「あれ、これどういう意味なんですかね?」
平次の特殊能力に、悪党一人の状況カードをすべて確認し、好きな奴をタップ(横向け)して戻せるとある。
ムゲン「タップする意味が解らない」
そこでルールブックを読むと、状況カードをタップしておく事で、危険なカードなどを皆に伝えるのに使うと書いてあった。
なるほど。
ムゲン「うぁ、これヤバイ。こんなカードがあるんか! これは横にしときます」
わしら成敗人はルーキー揃いで、状況カードにどんなのがあるかさっぱり解っていない。
このように進展していくと状況カードがめくられたり、確認されたりする。
わし「事前にオビ湾のブログで手に入れた情報によると、中には病気の娘がいて、仕方なく悪党に身をやつしているなんてカードもあるらしい。で、そいつを殺してしまえば負け」
TAM「まぁじっすか! じゃあ、状況カードの偵察むちゃ大切やないですか」
タカダ「というか、げんじい、大丈夫ですかね? ライフ2ですよ? 攻撃力も超弱いし。もうお爺ちゃん、ここにこんでええのに」
わし「だから、状況をさぐって、げんじいのえれきてるでも勝てる悪党をあてがわんとあかん」
そこでわしのキャラクターも状況収集に励むことにした。
わし「偽情報やった。特になんも効果はないんやけど、自分の場においておくとある。ん? あ! これ2時間も掛かってる。なるほど、2時間かけて得た情報が偽情報やったってことか。くっそー」
レイ「じゃ、この必殺というカード出します」
攻撃力∞とある。
そんなカードもあるんや。
朧に必殺のカードがつく。
タカダ「じゃ、スピードさえあげたら絶対しとめられるじゃないですか」
わし「しかし悪党、乾八郎の特殊能力は必ず反撃するとあるから、油断は出来ひんな。よし、こいつはライフの多いわしが殺る! レイちゃんは、もっと強い奴を狙ってくれ」
そこからげんじいに気を遣ってカードを廻したり、こいつならなんとかなるんじゃないかと相談したりしながら進めるも、決定的に情報量が不足している。
特にきついのが、特殊能力を使ったとしても、自分の手札から時間消費のカードを出さねばならないこと。最初の7枚でやりくりせんと駄目という事だ。カードは基本的に増えない。交換が出来るだけだ。
状況カードはかなりキツいのが多くて、麻薬の取引をやってる悪党がいたり、ちんぴらを雇っているのがいたりと、確認したり公開したりすればするほど、悪党の背景がみえてきて、その人物が肉付けされていくのだ。
アマバ「あ、待ち伏せ。これライフがマイナス2になってるんですけど?」
わし「げんじい、それ待ち伏せ受けて死んだで」
皆「えーー!!」
全員負け。
待ち伏せにあってげんじい死亡。このようにめくった人のところおいて弱体化させるカードもある。もちろんライフが0以下になれば死亡だ。
所要時間40分
そこから状況カードを全てめくると、確かに病人の娘がいたり、実は善人やったという悪党もいて、状況をみるだけでも楽しい。
このままでは悔しいというので、ルール通り最初は難しいキャラの源斎を抜いて再び始めるも、今度はTAM嫁が待ち伏せにあって死亡。
またしても負け。
これが裏の顔カード。右上にえれきてる、ばんざいがある。
タカダのコメント
げんじい、おもろすぎた。
ムゲンのコメント
これむっちゃ難しい。悔しいなあ。
ソマーリオ
こ、こ、これはおもろい! カナイさん、これはかなり凄いで!
本来人がやるべきゲームマスターが不在のテーブルトークRPGなんよな。ゲームマスターが決めるべきシチュエーションやNPC判定を、悪党の状況カードというのを使って見事に表現している。全員がプレイヤーとして参加して、自分のキャラクターを演じるのだ。
悪党のキャラ付けが素晴らしく、状況が徐々に明らかになっていくにつれて、生活までが見えてくる。
成敗人たる自分も、情報収集してると待ち伏せにあったり、麻薬の取引をやってるのを見つけたり、あるいは時間を単に浪費する偽情報に惑わされたりと、状況カードを自分だけが確認、全員に公開という2つのやり方で、プレイヤー自身が東映太秦映画村で演じている時代劇の登場人物になった気分にさせてくれる。そう、まさにテーブルトークRPGの世界なのだ。
悪党はやたらと強く、2度とも、成敗に行くことすら出来ずに負けてしまったが、協力ゲームは敵が強いほど燃えるものである。裏の顔カードのセリフを唱えたいので、すぐにでも再戦したい。ただ最適人数を超える人数でやったから難しくなったのかも。
コンポーネントは、カードだけだが、もの凄い種類のカードと、特徴あるキャラクターカードのおかげで定価は2800円と高くなってしまったが、それに見合う価値はある。
杉浦のぼるの絵柄は、個性的なくせに嫌味なところはなく、カナイ製作所ワールドの一翼をになっている。
舞星の時は、ゲームバランスの悪さと、特殊効果が多くて、楽しむためには何度かやってカード内容をある程度把握しておかなくてはいけないという欠点があった。元々カナイさんのデザインは特殊効果を全面にだすタイプなので、馴染むのに時間が掛かるのだ。Love Letterは500円という制約が上手く機能して、プレイヤーがゲームの楽しむのに理解する時間を短縮して佳作となった。
そして今回の成敗は、むしろその把握しておかなければならないものを、ゲームのシステムに上手く組み込んで、最初から楽しめるようにしたのだ。内容を把握していくことがゲームの目的そのものになっている。
カナイさんのキャラクターには攻撃力、ライフなど、おなじみの数値が描かれ、一見するとどれもが同じようなゲームに映るかも知れない。現に朧は舞星のキャラクターの一人だ。しかし何度もゲームを制作していくうちに、キャラクターのパラメータの使い方に磨きがかかり、ついには成敗のような傑作ゲームが誕生した。
このゲームの設定をクトゥルフ神話にしても、非常に面白いものが出来ると思う。エルダーサインなんかは、重要な探索部分をサイコロで決める事で、クトゥルフで一番面白いところをくだらないものにしてしまった。悪党カードを、場所カードにして、プレイヤーが探索するという形にすれば、相当面白いものが出来るだろう。成敗のシステムは一番面白いところをプレイヤーが堪能できるシステムなのだ。
現在のドイツゲームらしさってのはまったくなく、カナイ製作所独特のプレイ感で、むしろドイツゲームから入った人よりも、テーブルトークRPGや、ドミニオンなどから入った人の方が気に入るかも知れない。
カナイさんの性格から、追加の悪党や成敗人カードを出しそうなので、かなり楽しみである。というか、早くあの決めセリフを言うところくらいまでは進めてみたい。
ルールの補足
実はこの後、カナイさんのTwitterにより、途中でライフが0になっても負けでない事が解った。
ライフが0以下になったとしても、そのままプレイヤーはゲームを行う。そして最後に裏の顔を置いて戦闘フェーズ開始時にライフが0で死亡となるらしい。つまり戦闘フェーズまではゲームとしては進むし、途中であるなら1以上に回復させるチャンスがあるという事だ。
また殺したら負けの悪党に関しても、やっぱり裏の顔カードを置いて戦闘しなければならないらしい。この場合、自分も悪党も戦闘後生き残る必要がある。「実は善人」な悪党との戦いは、自らの悪行を恥じ、死ぬつもりでかかってくる悪党の攻撃をいなして諭す必要がある、そうだ。