Wolfgang Kramer
&
Michael Kiesling

Ravensburger

2〜4人
60分

メキシカ

アステカ人もしくは、のちにメキシコ人と呼ばれる者たちは、彼らの神が予言した印を求めて、メキシコを放浪した。
1325年、ついに目的地に到達し、テスココ海の島の上に本拠地を設立した。都市テノチティトランの完成には、約200年を要する事となる。

プレイ感

ティカルのあまりの長時間プレイにより、クラマーのこういったAP制ゲームはドイツゲーム大賞トーレス以外買わずにいた。ティカル、ジャワ、メキシカとシリーズのようなパッケージであるが、いずれもスルーした。ところが最近になって、ジャワは絶版になったがメキシカはRioGrande版が未だに発売されていると気づき、なんとなく購入してみた。miaとの二人プレイにて。


アクションは大まかに言って運河タイルを置く、駒を移動する、エリアを確定する、建設駒を置くがある。運河タイルで区切られたエリアがエリアマーカーと同じ数であればエリアを確定させる事ができ、ポイントがはいる。大きな決算は2度あり、エリアマーカーが全てなくなり、誰かの建設駒を全て使い切ったラウンドで得点計算するのだが、それがエリアにどれだけ建設駒を置いてるかで、エリアのマス数だけ入るようになっている。


まずはエリアを囲って作る。サイズは右下のタイルに描かれており、そのサイズを目指して運河で土地を囲うのだ。囲えばそのタイルを取りエリアに置いておく。図を見れば解るが、丸いタイルがそれ。エリアを作るには、自分の駒がそのエリア内にいなければならず、対応するエリアタイルが残っていなければならない。

こう書くとめんどくさそうだが、簡単に説明すると、エルグランデのようなエリアを自分で作り、エリアごとの勢力で、1位、2位、3位の得点が貰えると思えばいい。
先にエリアを作る作業から開始するので、エルグランデよりも進化したゲームであるのだが、その分、一切運の要素がないアブストラクトなゲームとなった。


エリアが確定すれば、そこに自分の建設物を置いておかなくては、後々、勝利ポイントがもらえない。自分の駒の移動は非常に大事で、この駒がいるエリアでしか作業できないと考えていい。ただし運河を使えば非常にトリッキーな動きができるところがミソ。

序盤は、ひたすら運河を置いて、エリアを作る事に専念する。

わし「ほな、ここに8つのエリアを作って、あれ、ちょう待てよ。こうしたら9つ出来るな」

mia「えー、それ取られたら、どうやって作ったらええの」

エリアマーカーは各種揃っているが、全て早いもの勝ちである。わしが9のエリアマーカーを使う事により、miaは別のエリアマーカーに合わせるように調整しなければならない。

運河の作り方はまるでパズルのようで、空間認識能力の低いmiaは、手元で一生懸命先に作れるかどうかを調査している。わしゃ、こういうのは得意だ。

前半と後半で使える建築物が決められており、当然、得点の高い大きなエリアには高い建築物を置き、小さいエリアには低い建築物を置くようにする。

わしはこういうゲームでは必須である、いっちょかみ戦法を行う。つまり、価値の低い建築物であっても、2位にすることで、得点が入る。この手のゲームはあまりやった事のないmiaを尻目に、こそこそと自分の建築物を配置して2位になるようにする。


ある程度エリアが固まってくると、建築物でエリア支配めざして争うようになってくる。真ん中の十文字エリア(スタートマス)は特殊で建築物をおけない。3つ置いてしまえばエリア支配が取られることはなくなるということ。

そうして決算を迎えた。スタートプレイヤーのわしが最後に駒を置いたので、miaはもう一度手番がある。最後にスタートマスに置いて、決算だ。決算時にスタートマスにいれば5点はいるのだ。

mia「えー、これってそういう事なの? 駒をいっぱい置いても同じ得点?」

わし「そうや。だからちょっとでも稼げるいっちょかみがいいって何度も言うてるやん。前にエルグランデやった時も、大兵力を1つに集めて得点減らしたやろが」


だんだんとせばまってくると行きにくいエリアが出てくる。ここを押さえないと後半は勝てない。


運河にかけてるのは橋でこれを使ってエリア間を移動させる。橋をかける場所は非常に重要で、これ次第であっと驚く場所に駒を移動させることができる。

後半になって、一番ポイントの高い場所にあろう事か、4階建て2つに3階建て1つも建てて来やがった。

わしゃ、最初に4階建て1つを建てたが、そこは2位で諦めて別の所に建てる事にする。


おいおいおいおい! これは無理! ただ、これはかなり無駄であるというのがドイツゲームの鉄則。ちょっとピンぼけだが、エリアタイルの真ん中の数字13がマス目の数と最多支配の人の得点、上の数字7がエリアタイルを置いた人と2番目の支配の得点で、下の4がここに駒を置いた人の得点である。

面白いのは、運河の利用である。運河に橋を架ける事が出来るのだが、運河や海上をつかって、橋から橋へと移動する事が出来るのだ。この移動方法はトーレスの塔内の移動とそっくりで、あっと驚く移動となり非常に気持ちがいい。

mia「じゃあ、ここで運河作っといて、ポイントが足りないので次回に完成させよっと」

わし「ん? そんな事すんの? ほな、ここに橋つくって、海上移動して、そこに降りて運河作って、はい、完成」

mia「わぁわぁわぁ!! ちょっと待った。待った。これなし」

運河壊された。

ちょっと酷かったので、待ったしてあげた。

結局そこから、わしの運河をスイスイ使ったいっちょかみ作戦はあちこちで成功して、ぶっちぎりの勝利を収めた。後半の決算は、エリアマーカーが置かれていないところでも決算が置き、マスの数だけ入るというもの。わしゃ、東端に広大なエリアが残ってるのをみて、後で瞬間移動して建築を1つ置いたろと画策してたが、先にmiaが全ての建築物を置いてゲームが終わってしまった。残念。それだけはやりたかった。

所要時間50分


最終的にこんな感じ。最終ラウンドの得点はでかいので逆転も可能だ。

miaのコメント

面白い。最初意味わからなかったけど、次やったらもっと面白くなると思う。

ソマーリオ

あれほど長時間プレイを覚悟してたのにたった50分やとお? しかもそのうちのほとんどの時間はmiaが運河で囲めるかどうかを調査してた時間だ。それが無ければ1人につき15分くらいで終わるような気がする。ただこれはあくまで早打ちが信条のわしらの間だけであり、他のサイトをみると3時間くらいかかるとあるのであくまで参考程度に。

ティカルの10APと違い、たった6APなので若干考える時間は少なくなると思ってたが、劇的ともいえるほど短縮されている。AP以外にも駒を減らして最善手を探る時間を短縮させたトーレスで培われた手腕がそのまま生きているのだ。メキシカでは駒はたった1個である。ただ今回のように二人プレイだと絡みが少なくなり短く出来るのかも知れない。二人プレイでも長時間かかってしまうティカルとはやはり好対照である。

おもろさは、トーレスと比して勝るとも劣らない。名作陣取りのエルグランデでさえ、あのデザインを踏襲しつつ推敲に推敲を重ねシンプルにし、軽やかなプレイテンポでは抜きんでているとさえ言える。
トーレスの不可思議な動きとエルグランデの陣取りの部分を上手くミックスさせたようなゲームなのだ。AP制のゲームではおそらくこれに敵うものはないのではないか? 最終進化形とさえ言える。

唯一の欠点は、完全なアブストラクトゲームで、運の要素は一切ないところだ。トーレスがややもすると強すぎるアクションカードを使って、運の要素を内在させたが、メキシカは完全に運の要素を除外した。そういった意味で、エルグランデを想像するより、トーレスの運の無いタイプだと思った方がいいかも知れない。その部分で、やりこんだ人とそうでない人とにプレイの差が出るのが残念と言えるが、これは人の好みだろう。3人以上の意志の揺らぎにより、運に近いプレイは得られると思えるので、3人以上でやってみたら誰でも楽しめるだろう。しかしこれほどまでに完成されたゲームなら競技用ゲームとしても十分使用出来るんじゃないだろうか?

クラマーのデザインの凄さというより、クラマーの編集者としての素晴らしさをまざまざと見せつけられた気がする。気持ちのいいくらいシンプルで、エレガンスで、悩ましい。推敲すればゲームというのはここまで昇華する事が出来る。

gioco del mondo