Daniele Tascini
&
Simone Luciani
Czech Games Edition
2〜4人
120分
ツォルキン
駿河屋で購入
ツォルキン歴は、日常生活や宗教儀式や日々の占いに欠かせない暦であった。人は生まれた日によって性格や将来が決まるという考えかたがありそういったことと密接に結びついていた。現在でもメソアメリカでは260日の暦を使用している部族がいる。
なぜ260なのかは、マヤにおいて天上は13の層があり、手足の指の数が合計で20だからという説や、二十進記数法が使用されていたからという説がある。起源としては、オアハカ州のモンテ=アルバンI期(500B.C.頃)の石碑で既に確認されており、マヤ以前からメソアメリカの広い範囲にいきわたっていた暦であると思われるが、確実なことは不明である。
プレイ感
あちこちで話題になっていた歯車式ワーカープレースメントシステムを採用したチェコのゲーム。わしゃ2013年エキスパート賞に予想したが、ノミネートすらされず相変わらずのへっぽこ予想屋ぶりを発揮した。COQさんに持ってきて貰い、タメラ、miaとの4人プレイにて。
ボードを組み上がると歯車がかみ合ってくるくると回る。それだけでテンションが激高。これはバースのはちゃめちゃジェットコースターを彷彿とさせる。さらに
わし「わわわ、何このクリスタルスカル!」
タメラ「そうなんですよ。これだけで買う価値ありますよね」
わし「あるある」
これがクリスタルスカルである。
クリスタルスカルは中学時代ムーを愛読していたわしにとっては、かなりよく知ったアイテムである。インディジョーンズクリスタルスカルの謎でも出てきた有名なオーパーツなのだ。
COQ「これは無名なイタリア人デザイナーコンビによる作品なんです」
準備として駒を2個ずつ、さらに4枚のタイルをランダムに配り、そのうち2枚を選ぶ。そのタイルには最初に手に入れられるものが描かれている。これで他プレイヤーとの当初作戦の違いを演出する訳だ。
手番に自分の駒を置くか、既に置かれている自分の駒を手元に戻してアクションを実行するかを選ぶ。最低でも1個はその行為をしなくてはいけない。つまりパスは禁止という事だ。
ポイントは駒を置いた時にアクションを実行するのではなく、取り除いた時にアクションが実行されるところ。
このゲーム最大の仕掛けはここにある。1ラウンド終了すると歯車が周り、歯車に載った駒のアクションがグレードアップするのだ。待てば待つほど良い仕事をするようになる。
決算は4回ある。3柱いる神様への貢献度によって勝利点を貰ったり、資材を貰ったりする。また1駒につき2とうもろこしを食料として消費する。払えなければ罰則がある。
こうして4回目の決算を迎えて、ボーナスなどを加味して勝利点が一番高いプレイヤーが勝ち。
5カ所ある歯車が都市になっており、そこにアクション駒を置いて行動する。ボード右上から神様の信仰、技術、モニュメントタイル、建物タイルとなっている。すべてアイコン化されているので、ある程度ゲームをすると解るようになっている。
最初は自分の駒が2個しかないので、一気に置いてしまうと次は絶対にアクションを実行するために取り除かなくてはならないシステムなので、わしは1個置きだけにした。こうすれば次の手番でももう1個を置くことで前に置いた駒が奥のアクションに進む事が出来る筈だ。
アクションの系統に従って5つのエリア(土地)に分かれている。食い物(とうもろこし)系、資源系、発展系、その他系そしてお祈り系である。発展系というのは、テクノロジーのレベルをあげたり建築物タイルを建てたりすることで、他のアクションがアップグレードする。お祈り系は、クリスタルスカルを捧げる事で神様への信仰心を深め、勝利点を大きく稼ぐアクションだ。クリスタルスカルは、資源系で手に入る。
この手のゲームでタナカマが以前ルアーブルで言うた言葉を思い出す。
『食い物は裏切らない』
というわけで、まずは食い物の確保に向かう。
※タナカマという名前をさくっと書いているが、テンデイズゲームズの店長で、アクマイザー3のガブラに似てる人の事だ。
一番左がタナカマことガブラ
mia「人増やした方がいいのかな?」
COQ「ワーカープレースメントでは人はアクション数になりますから多い方が良いと思います」
そんなことは百も承知で、とうもろこしを得たわしは、すぐに次の駒は人を増やせるエリアに置いた。人を増やすには少しだけ熟成させる必要がある。
駒を3つに増やした後、決算時の食料支払を半分にする建物タイルを手に入れたくて、資源を入手後それを手に入れる。
他にもmiaは1人分が無料になる建物タイルを手に入れたり、COQは最初のタイル選択で1人分無料になるのを選んでたりして、なんせ食い物対策を進める序盤。
mia「これ、神様へのお祈りって強い?」
COQ「大事です。前にやったときに、タメラくんだけがそれをやってぶっちぎりで勝ちました」
神様は先に書いたように3柱いて、マヤの神様がケツァルコアトルしか知らないので、絵の見かけで、太陽神、ケツァルコアトル、生け贄の順に強力な神様となっている。ただし序盤は生け贄が一番色々な特典がついているので、徐々にアップグレードさせていくのがいい方法だと思われる。
上、神様は3柱あり、真ん中の太陽神が一番強い。右側の数字が決算時に手に入る勝利点で左にちょこちょこあるのが手に入る資源である。その下にあるのが技術度で、特に重要なのが一番上の農耕のところ。これを進めておかないと、都市パレンケでとうもろこしタイルがなくなった場所ではとうもろこしを手に入れる事が出来なくなるのだ。タイルについては次の画像を参照。
そうこうしているうちにタメラがチチェンイツァに駒を置いた。
チチェンイツァがお祈りのエリアなのだ。
COQ「タメラくんを上回るにはここであきおさんが駒を置くしかないですよ」
駒の配置には、各エリアで一番安価なところを埋めていかなくてはならないというルールがある。
ラウンドの最初は常に0のマスだ。0のマスが埋まれば1のマスに置ける。この数字は追加で支払わなければならないとうもろこしである。ちなみに歯車が廻ると、0のマスが1のマスに移動するという事になる。つまりいきなりアップグレードされたアクションマスに置くという事でもある。
タメラ「別にいいですよ」
ここで悩む。チチェンイツァは、一番大きな歯車となっており、かなりのラウンド数が進まないと一番最後のアクションまで辿り着けない。当然、効果もでかい。またこのエリアだけは各マスにクリスタルスカルを捧げる必要があり、ゲーム中1度しかアクションを発揮しないのだ。だからこの瞬間を逃せばタメラがどんどんと奥に行くので一番強力なアクションはタメラが行う事になる。
わし「うーん、まあクリスタルスカルも持ってないしええわ」
現在、わし以外の全員がクリスタルスカルを持っている。
mia「じゃ、わたしが置く」
と、miaが1とうもろこしを払って前に置いた。
大きな歯車を1メモリずつ廻していく。歯車にシールが貼ってあるのが決算のマークだ。上に載っているタイルはとうもろこしタイルで、場所の都合上、ここに置いているだけ。チチェンイツァではタメラ緑の上にmiaの赤駒を置き、わしはその後ろに陣取った。
またちょっと見にくいが、その上にある都市パレンケでは主にとうもろこしが手に入る。横に置かれている森林タイルやとうもろこしタイルによって得られる資源が決まってくる。まずは森林タイルを伐採してからでないととうもろこしを収穫できないのを現している。
わしの中盤の作戦はまたしてもCOQから言われたサイボーグ作戦である。
COQ「あきおさん、食料を半分にする建設タイルがまた出ました。もう1つこれを建てれば、食料要らずですよ」
わし「そんなんありなん?」
タメラがルールを調べるが、確かにそれを禁止する項目はない。
COQ「やるなら次の決算までにやらないと勿体ないですよ」
ガブラ『食い物は裏切らない』
ガブラ…じゃなかったタナカマの言葉が頭にリフレインする。
わし「やってみるか」
食い物が半分になるタイルが2枚で完全にサイボーグ化する。隣の縦長のタイルは初期に貰えるタイルで、これによりプレイヤー間のばらつきを作る。
都合の良いことにラウンドを計算すると、決算時に建設できる目処が立った。
次ラウンド、チチェンイツァに駒をおいて3番目のポジションを取る事にした。
ここは一旦載せるとあとはエスカレーター式なので、早めにポジショニングすることが大事と判断した。
ここで色々と無理したせいで、とうもろこしを手に入れる手段が乏しくなってしまった。
というのは、とうもろこしが手に入るパレンケは、3段階目以降、とうもろこしが入る効果は大きくなるが、全員で獲れる回数が決まっており、技術革新しないと手に入らなくなるのだ。
面白いのが、とうもろこしタイルの上に木材タイルを重ねるようになっている。最初は木材を手に入れ、とうもろこしタイルが剥き出しになるととうもろこしが貰える。そしてとうもろこしタイルが全てなくなると、荒れ地になるというイメージだ。タイルがなくても収穫できる技術革新が必要ってことだ。
技術革新にまつわるティカルに駒は建物タイルを手に入れるのに消費してしまったせいで、畑に対する技術革新が進まず他のプレイヤーの後塵を拝す事になった。
いくらサイボーグ化したとはいえ、とうもろこしは全てのアクションにつきものなので、手に入れる手段が乏しくなるのは困った事になる。
そこから挽回しようと少し手に入れたとうもろこしを神様に捧げるが、僅かな供物ではカインとアベルのように全然、上昇せず。
最後は、チチェンイツァで得点をあげたものの、もう1回捧げ物をして勝利点をあげようとした矢先
3人のクリスタルスカルが捧げられているチチェンイツァ。この都市だけはクリスタルスカルがないとアクションを実行できず、また1マスにつき1度しかアクションを実行できない特別な都市。もう1つ駒を置いたのが見える。
タメラ「じゃ、1ラウンド進めて終了させます」
各プレイヤーはゲーム中1度だけ、スタートプレイヤーマスを選び、歯車を1度ではなく2度廻すという掟破りな事が出来る。ルール的には適当に聞き逃してただけなのだが、実際にこれをやられるととてつもない効果がある事がよく分かった。全ての作戦が崩れ去るのだ。
結局、これが効果を発揮して、タメラがぶっちぎりで勝った。
所要時間2時間
最終。タメラぶっちぎり。後の3人は僅差。
COQのコメント
面白いんですけど、長時間ですから次にやる機会があるかどうか。タメラくんは終了させるタイミングが良かったですね。
タメラのコメント
時間を掛けたら良い仕事をするってのが実にイメージにぴったりでいいんですよ。要素は多いですが上手くアイコン化されているのも素晴らしい。
miaのコメント
神様にお祈りしてたら2位になった。あれこれやれる事が多かったけど、ルールはそんなに難しくない。
ソマーリオ
なんでこれが
エキスパート賞
にノミネートすらされなかったのか不思議でしゃあない。というとCOQさんが「チェコに対する嫌がらせですよ」という。まあ、それは冗談にしろ、ありきたりなワーカープレースメントではなく、歯車ごと駒が回転して時間を掛ければ掛けるほど良い仕事をするというアイデアが実に素晴らしい。
ビッグチーズ
のシステムをより戦略的にシンプルな目に見える形にした。歯車機構のおかげで一目見てアクションの全容が解り、プレイアビリティも高い。
それに伴い駒が離れた時にアクションを行うように修正されている。タッチパネルのイベント駆動のようなイメージ。つってもプログラマーしか解らんか。
この歯車の機構は、マヤ文明のイメージともぴったりで一体どちらが先にアイデアとしてあったのか興味があるところ。マヤの歯車にしたから発展するワーカープレースメントを思いついたのか、発展するワーカープレースメントを考えたからマヤの歯車を思いついたのか。
戦略の幅は非常に広く、様々な形で勝つ事が出来るだろう。要素はかなり多く見通しが良いという訳ではないが、やる事は非常にシンプルでその部分においては置くだけというワーカープレースメントの良さがよく活きている。アクションのアイコン化によってプレイアビリティも高めている。
コンポーネントは見ての通り非常に素晴らしい。特にクリスタルスカルの作りや、歯車の動き、美しいボード絵など、どれをとっても文句の付け所がない。タメラがちょこちょこと絶賛をしてるのも頷ける。
こういうのをみるとワーカープレースメントの走りである
アグリコラ
からかなり洗練されたなあと思った。
このゲームの欠点は日本での流通と値段だろう。値段に見合う仕掛けがあるので致し方ないところがあるが、流通の方はどこかが日本語版をだしてくれたら良いのにと思った。やはりチェコのゲームという事でギャラクシートラッカーもそうだが日本での流通網は弱い。
2012年マヤ歴で滅ぶと言われたこの年に出したってのも非常に良かった。1999年にも誰かが出したら良かったのに。
という訳で、長時間ゲームには割と辛く
をつけないが、これは
をつけたい。時間に見合った濃度がある仕掛けも内容も素晴らしいゲームだった。
その後、ホビージャパンより日本語版が出ることになり、少し安く誰でも手にしやすくなった。
gioco del mondo