|
Michael Menzel
|
KOSMOS
|
2〜4人
60分
|
アンドールの伝説
amazonで購入
小規模な奴隷の一団が、過酷な監督官の目を盗んで、未踏の大地へと逃げ出しました。その途上、灰色山脈を踏破するなか、一匹の竜に遭遇し、危うく全滅の危機に瀕しました。リーダーのブランドゥルは自分の民に対する責任を痛感し、鋼の意志と炎の勇気で果敢に戦いを挑んだため、竜は「不滅であるはずの己の命が、まさか失われるのでは?」と不安に襲われました。そのため、ブランドゥルとその民の通過を、許さざるを得なかったのです。以来この竜はブランドゥルに対する復讐を誓い、破滅をもたらそうと、己の眷属たる怪物たちを派遣して、周辺を襲わせるようになったのです。
『アンドールの伝説』は、それより80年後に始まります。ブランドゥルは、アンドールと名付けられた新天地の王となっています。
プレイ感
ドイツゲーム大賞のエキスパート賞を取ったアンドールの伝説は珍しくもファンタジックな世界観である。内容もRPG的な、如何にも重そうな内容であるがゆえに、ルールを読むのも面倒だったのでそのまま放置していた。
2人からやれるゲームを探しているとこのアンドールがあったのでようやくmiaとやってみることにした。
このゲームは協力ゲームである。ルールの説明方法が変わっている。ルールは2冊入っており、チュートリアルと詳細とある。なんかよう解らんがチュートリアルを読めば出来るんかと、書いてあるとおりセットアップする。それからやっていくと、非常に簡単にゲームができるようになっていた。
ついているシナリオは6つある。チュートリアルは伝説1から。
最初、エルフを選んでたが、初期位置が遠かったのでmiaの剣士と交代。個人ボードには攻撃力と意志力(HP)が記録されるが、伝説がすすむと、武器とか防具とかおけるみたい。ボード上の四角いタイルは伝説1のチュートリアル用ぽく、やたらとサイズがでかく、プレイヤーの敷居を低くしようとしている努力が伺える。伝説ごとに様々なアイテムが用意されるようだ。
手番には、移動するか同調するかをするだけ。移動は1マス1時間、同調はパスみたいなもんで1時間、時間経過させれば良い。基本的に7時間まで時間を使える。それが終わると、手番交替。
これが時間経過マス。一番遅れているものが手番を行うのではなく順番に行う。8時間以上は夜間強行で意志力が−2される。
移動したマスにタイルが置かれてたりしたら、その効果を適用する。ちょっとへんな表現だが、他になんか特殊な事があるのかも知れないが、そこらへんは全てシナリオカードに書かれているので、その例外ルールとか目的とかはそこを参照という感じだ。
チュートリアルでは移動だけを学ぶが、その後、伝説1の前半に導入される。ここで、シナリオカードがめくられ、色んな指示が出てくるのだ。
怪物をどこそこにおけとか、その怪物はこう動くとか、戦闘はこうだとか、ルールを1から読まなくても、出来るように工夫されているのだ。
白い駒が語り部駒で、怪物を倒すか、1日が終わるとひとつ上にあがる。シナリオカードと同じマスにきたらシナリオカードをめくってそれを読み上げる。ここに色々な指示やルールが書いてあるので、ルールをほとんど読まずにできるというわけだ。
で、怪物が出てきた。ゴルという最弱の怪物だが、こいつらは1日経つごとに、城に進撃してきやがるのだ。わしらはこいつらが3個(2人プレイなので)、城に入って蹂躙するまえに、ぶっ殺すのが仕事だ。
戦闘は、同じマスに入ったら、次のラウンドに戦闘宣言をして1時間進めて行う。
やり方は、意志力に合わせたさいころの数を振って一番大きな目と攻撃力を合わせた数を比べる。
その差だけ意志力を減らす。意志力が0になったら死亡である。1回で決まらなければ1時間進めて再度これを行ってもよい。
3匹のゴルがでてきた。怪物はボードに描かれた矢印にしたがって1日の終わりに進撃してくる。城を目指しているのだ。ボードの矢印はあくまで怪物の侵攻路であり、プレイヤーは矢印関係なく移動してよい。
伝説1の後半から本格的なシナリオが始まる。他にイベントカードなるものがあって、これとシナリオカードの文言で、特にルールを知ることなくゲームが進められるのだ。
シナリオには語り部駒があり、1日の終わりか、怪物を1体殺すごとに語り部駒が1段階上がり、物語が進んでいく。
エルフはせこく隣マスから攻撃できる。強いので、サイコロは1個ずつ振って、その最新の目で攻撃の決定をするかどうか決める必要がある。
ボード下にあるのが怪物の攻撃力と意志力ゲージ。詳細ルールを読んでないから分からないが、途中で戦闘をやめると記録する場がないことからすべて全快するものと思われる。ちなみに戦闘は常にプレイヤーに選択権があり、怪物がこちらを勝手に攻撃してくることはない。通行するときに怪物をスルーすることも可能だ。
とにかく、ひたすら井戸水をごくごく飲むことで意志力を5もあげることが出来る戦士のわしに対して、miaは攻撃力をあげるイベントが多くて、意志力が低いが強いみたいな展開が続く。
井戸にはりつく剣士。
といっても、かなりカツカツで、次にこれやってあれやってという風な事は出来ない。なんせ時間との戦いで、やりたいことは色々あるが、ほとんど出来ない。進撃する怪物をぶち殺さなければあっという間に城が落城してしまうのだ。
途中で、王から新たな任務がくだった。
秘密文書を”歌う樹”の元に届けよというものだ。
機密文書は怪物に見つかってはいけない。機密文書を持っているプレイヤーが怪物と同じマスに入れば、即座にゲームは負けである。
文書タイルが置かれたマスは、わしのところから遠くてmiaに頼むしかない。
城の左下にある文書タイルを右上にある歌う樹まで運ぶという密命だ。
mia「えええ! これちょっと無理じゃない? 遠すぎるし、怪物がうじゃうじゃ出過ぎてる」
確かに厳しそう。これやらんでも別に限定勝利は得られるんじゃないかと2人で協議するものの、やたらとせっぱ詰まったリアルな雰囲気に是非とも届けたく思う。
そこで可能かどうかマス目を数えてみた。
最短でいけば合計12マスでいける。つまり2ターンあれば可能だ。ルール上、1手番に1マスずつという制限はないので、一気に7マス、夜間強行を行えば10マスまで進められる。
これは十分、可能であろう。
わしがまず橋を渡り、露払いをする。miaは文書をゲット。
そこでやろうという事になった。
今度は、最短ルートに存在している怪物の確認である。ゴルという怪物は雑魚だが、新たに出てきたスクラルてのが超強い。1対1でやったら絶対に勝てない。そのスクラルが1体、どうしても通るルートに居やがった。
そこでシナリオの途中で教わった共同攻撃というものをすることにした。攻撃可能な場所にいるキャラクターの攻撃力を合算できるのだ。
基本ルール的に共同攻撃者は同じマスにいないといけないので、文書を持つmiaが共同攻撃に参加することは出来ない。しかしmiaのエルフは隣のマスから攻撃できるという特殊能力を持っているので、うってつけなのだ。
というわけで、一気にスクラルを捉え、翌日には歌う樹まで運べる筈だった。しかしスクラルをやっつけた事で、語り部が進み最後の日を迎えてしまった。
時間さえ進めれば、一気に移動できる。ここでmiaとスクラルを共同攻撃する。
語り部がNに達したので、そしてシナリオカードを読む。赤いタイルは、わかりやすいようにシナリオカードを読む場所を表している。
そこで文書が届けられなかった事で、敗北したことを知った。
(|| ゜Д゜)ガーン!!
ここに文書が届けられなければ敗北と書いてあった。
最初から諦めてなくてマシやったけど、なんというカツカツな感じ。
喜んで、怪物をしばき倒したのが敗因だ。少々、城が攻められてる方が良かった。
所要時間 90分
確認しながらやったので時間が掛かってしまった。
miaのコメント
序盤に怪物をやっつけすぎたのが、最後に生きてくるとは。これで解ったからシナリオの続きをやりたい。
ソマーリオ
ファンタジー世界を舞台にしたボードゲームも数が増えてきたが、その中でとりわけRPG的な内容のゲームは全てがルールが多く、非常に時間が掛かる。
そのせいで剣と魔法の世界大好きのわしも、ディセントを含めほとんどのゲームをスルーしてきた。記憶によればルーンバウンド以来だと思う。
剣と魔法の国(マジックレルム)からタリスマン、ルーンバウンドと進化を目の当たりにしたが、その全てがやたらと時間が掛かりルール分量が多いのだ。
そして2013年とうとうアメリカンな大味ゲームではなく、ドイツ人が作った緻密なファンタジーゲームの傑作が誕生したのだ。
ドイツ人がこのファンタジーの世界観をどのようにゲームに落とし込んだのか、それは相反する命題の弱点を克服した事による。つまり世界観を味わうためには細かいルールは増えてしまうのはしょうがないが、そうすると時間が掛かり敷居の高いゲームとなってしまうという事だ。
アンドールでは、剣と魔法の国方式によってクリアする事に成功した。必要なルールを段階をもってプレイヤーに学ばせるのだ。そのルールは非常に簡略化されており、最初にルールを読まず理解せずともチュートリアルに従って順番に用意してやればゲームが出来てしまうというレベルにまで落とし込んだ。凄い!
これはD&Dのプレイヤーがルールをほとんど知らなくてもゲームが出来てしまうというのに習ったものだろう。実際にそのレベルにまで達している。
ルールだけ徐々にという訳ではなく、ここもルーンバウンドに習い、カードによって徐々に物語が進展していくというストーリー仕立てになっている。レビュー途中にも書いたが、これが妙にリアルで、その世界に浸れるのだ。ドラゴン駒があることから、シナリオの最後ではドラゴンと雌雄を決するのであろう。ありきたりだが、王道だ。
また協力プレイとしたところも実に良い。ルーンバウンドは確かに面白かったが、その面白さの根源は自分への成長である。強くなっていく自分が素敵なのだ。よって相手プレイヤーと比べて強くなるのにしくじったりすると、途端につまらなくなってしまう欠点があった。また相手を止める手段がないのがいっそう拍車を掛ける。
ルーンバウンドでのシナリオの進行は、トッププレイヤーだけの進行であり、他のプレイヤーは置いてけぼりを食らう。アンドールでは、協力プレイとすることで、全員が物語についていけるようにしたのだ。シナリオの立ち位置も違っており、端的にいえばルーンバウンドはフレーバー、アンドールでは勝利条件となっている。
そして最終仕上げとして、勝てるかどうかギリギリに調整されたバランス。このゲームバランスにはびっくりする。よくぞまあこんな調整をしたものだ。
欠点はまったく見あたらない。ファンタジーRPGをうたったボードゲームの進化の頂点だ。
決してゲーマー向けではないドイツゲーム大賞のエキスパート賞に選ばれた事からも、ファミリーゲーム内に収まるゲームというのが解るだろう。そのくせ、ファンタジーの要素はたっぷり味わえる。協力ゲーム、徐々にルールを学べるという事から、小さな子供と一緒に出来るんじゃないかとさえ思っている。
拡張もいくつか日本語化されており、アークライトのページで追加シナリオなどもダウンロード出来るようになっている。ありがたい。わしゃ、早速、拡張を全てポチった。