Thomas Lehmann

Rio Grande

1〜5人
60分

レースフォーザギャラクシー拡張:嵐の予兆

駿河屋で購入
ジャンプドライブ技術が宇宙に広がり、古代種族が息を吹き返す。また死にゆく太陽の運命を負った惑星から逃げ出す者たちもいる。
帝国はさらなる力を得て、反抗勢力を刺激し、傭兵を配下に収めることにした。
最も繁栄した最強の宇宙国家を作り出すことができるだろうか?

※以前まで英題からギャザリングストームと表記してましたが、後日ホビージャパンが日本語版を出したのでそれに併せて嵐の予兆としました。

プレイ感

レースフォーザギャラクシーの拡張である。毒を食らわば皿までという事で拡張も買うてみた。カード枚数がすくなくて、これくらいなら苦労せんと貼れるわ。ほっ。
このレビューを読む前に是非、経緯を話しておかねばならん。レースフォーザギャラクシーは前にも書いたように、丸々2日間かけて和訳シールを貼ったおかげで、その苦労を挽回すべくかれこれ20回くらいやった。これはドミニオンと一進一退のプレイ回数である。レースフォーザギャラクシーの煩雑なプレイをまったく苦にしなくなった上での嵐の予兆の登場である。これをよくよく念頭に入れて読んで欲しい。


今回の拡張で加わったのは、初期惑星4枚を含む22枚のカードと、2種類の目的タイル、5人目のプレイヤー用カード、それから1人プレイ用のアイテムである。1人プレイについてはまだやってないので後日改めてやるとして、今まで通り遊ぶ人は22枚のカードと目的タイルを追加して遊ぶ事になる。

※他に入れ替え用のカジノ惑星も入っている。

この拡張で大きく変わったのはひとつ、目的(ゴール)タイルである。目的タイルは2種類あって早い者勝ちの小(最初)目的と、ゲーム終了時に最大値を満たしていれば貰える大(最大)目的がある。目的タイルには、6の発展カードを建てるとか、全種類の製品を生産できるとか、軍事力を6以上とか、そんな風に描かれており、達成したプレイヤーは小目的なら3点、大目的なら5点のボーナスがある。小目的は6種類中4種類、大目的は4種類中2種類をゲーム前にランダムに選ぶ。これによって毎回ゲームの展開が変わるという寸法だ。
初期惑星がせっかく4枚も追加されてるので、しばらくの間、新しい初期惑星だけをつかってゲームをしている。


これが今回の目玉、目的(ゴール)タイルである。左の小目的から説明すると『エイリアンマーク3つ』『6の発展』『すべてのパワー』『全種類の製品』。大目的は『発展4枚以上』『工芸品、稀少元素生産惑星が3つ以上』。たったこれだけだがゲームのバランスが抜群になるのだ。

うお! と思ったのはやはりその目的タイルの存在である。これによって、ほとんどソロプレイと言われたレースフォーザギャラクシーに程よい絡みが出てきた。小目的は、早いもの勝ちなので、急いで建てねばならない。これには相手の動向を見ておく必要がある。大目的はゲーム終了時にみて決めるのだが、最初に条件を満たしたプレイヤーはタイルを手元に引き寄せ、誰かが超えない限りそれをキープしておける。カタンの最大交易路や最大軍事力と同じ要領だ。この内容だけで絡みが増えたってのは解ると思う。

この目的タイルはそれだけでなくプレイの指針を与える。プレイヤーに目的を持たせる事で、レースフォーザギャラクシーのもうひとつの弱点であったふわふわした達成感がなくなり、その満足感はゲームの楽しさを大幅にアップさせた。


手札の巡りから緑の遺伝子工学品が多く、6の発展カード銀河ゲノム計画で勝負してみることにした。

※ふわふわした達成感というのは、自己満足で作り上げたオラの銀河をみてけれーという奴。目的タイルがあれば、この目的の為にこんな感じで発展させたと他人に堂々と自慢出来るようになる。これがボードゲームにおいて非常に重要な位置を占めているのは解ると思う。

ゲームバランスにも大いに貢献している。今までのレースフォーザギャラクシーだと、低コスト工芸品生産惑星や稀少元素生産惑星はほとんど使えなかった。もう安物のこいつらがくると間違いなく手札からコストとして使うだけで配置するなんて事は皆無だった。20回くらいやったが、1度も使わないカードが何枚もあった。こんなん移住してたら勝てない。ところが、この2種類だけで構成する目的タイルがある。このおかげで、今まで移住した事のない1とか2とかの惑星を出すようになったのだ。そうなると低コストのこいつらを更に活かそうと、これまた一度も使った事のない発展カードを使うようにもなり、ありとあらゆるものが好転し始めたではないか!
まだまだある。軍事力が6以上の目的タイルのおかげで、強すぎる接触専門家の効果を弱める事にも成功している。


次から次へと緑のカードがやってきて。抜群の巡りである。これで負ける訳がない。

すげええ! たったこれだけやのにきちんとバランスが改善されてるやん!

レースフォーザギャラクシーの不満はいくつもあるが、その中でも使えないうんこみたいなカードがあるってのはどうにもなあと思っていた。ところが嵐の予兆を加えるだけで、今まで見たこともない銀河計画が可能となったのだ。


小目的も銀河ゲノム計画を先に建てて取り、大目的も発展カードをばんばん建てたので、入手。左上のマークが手に入るラウンド番号で、右が勝利点の数である。小目的は、同時に達成した場合、タイルを一人が受け取り、その他は、3のボーナスチップを受け取ることになる。また大目的は終了時点で達成している2番目プレイヤーは3点のボーナスが入る。


これが最終。ほれぼれするほど完璧である。

また追加されたカードも非常に面白いもので、いちいちあげると切りがないが、これまた以前のカードを活かすようなカードがあって、全てのカードにバランスが保たれ、意味が出てきた。当然、展開は非常に多様になり、様々な形で勝てる銀河が形成出来るようになった。軍事制圧し工芸品だけを輸出しまくって勝てる重商主義なんて事も可能なのだ。
或いは遺伝子工学惑星ばかりを集めて銀河ゲノム計画なんてのはSFにうってつけでたまらない。miaが一度やったようにエイリアンの遺跡を発掘して、エイリアン技術惑星ばかりに移住し、古代技術の教授のような銀河も可能である。脳裏にありありと世界観が浮かんできて楽しくなってくる。これらは基本セットだけでは到底不可能な勝ち筋であった。


これが2回目の戦い。またしても目的タイルをかき集め勝利。実は遺伝子工学品はわしゃ大好きやったりするw
miaが獲得している軍事6以上というのは接触専門家の押さえとして素晴らしいタイルだ。

週末に初めてmiaとやったのだが、3日間で9回もやってる。休みの日なぞ5回連続でやったりと、阿呆かと思えてきた。

※実は拡張カードの目玉ともいえる兵站革命の良さがまだ解らない。このカードは、移住を2回出来るというもので、軍事国家にしないとその恩恵を上手く使う事は出来ない。

目的タイルの追加と無駄カードがなくなったおかげで、色々と考えながらやる事が増えたのでプレイ時間は60分くらいに増えたが、なんせセッティングがお手軽で展開も変わるので何度も何度も楽しむ事が出来るのだ。


これが3回目。なんせおもろいのでやりまくりである。見れば分かると思うが、エイリアン技術や遺伝子工学ばかりが建っている。基本セットだけではこれほど強力な配置はできなかった。

それとなんでか解らんが、6の発展カードがやたらと建てやすくなった。単体ゲームだと、無理矢理にでも建てる気持ちが無ければ建たないし、建てずに終えるケースも多々あった。ひょっとして使えない6のカードが使えるようになって、建設機会が増えたからかも知れない。なんせ新銀河体制や銀河ルネッサンスのように非常に強いのと、まったく使えないろくでなしカードの差が激しいのだ。それがかなり是正されており、色んな発展カードに意味が出てきた。だから建てるようになったのかも知れない。

miaのコメント

俄然面白くなった!! 風邪ひいてなければ、あと3回はいけた。レースフォーザギャラクシーやりたい病になった。

ソマーリオ

レビュー内容が既にソマーリオとなっているので、分ける必要があるかというところはあるが、総括してみたい。

弱点がほとんど是正されて抜群のプレイ感になっている。むしろ嵐の予兆を加えなければレースフォーザギャラクシーは完成しないとも言える程だ。通常、拡張といえば雰囲気そのままで、有ってもなくてもいいけど、プレイヤー人数が増えるしってのが多いが、こいつはまったく違う。レースフォーザギャラクシーの革命ともいえるべき拡張で、miaのいうように「俄然面白くなった」という言葉が相応しい。

2日間もかけてシコシコと和訳シールを貼って後悔した事もあった。その悔しさが、20回もレースフォーザギャラクシーをやるきっかけとなったのだが、拡張を加えてやると苦労が報われたというよりも、やって良かったとさえ思うようになった。

レースフォーザギャラクシーに興味がある人に一言。毒を食らわば皿まで、の精神通り、レースフォーザギャラクシーをやるなら徹底的にやらねばならない。拡張まで加えて散々やる。10回はやらなければその楽しさは解らない。どんなカードがあるか解ってくる4,5回目くらいから割とおもろいかなあという程度にはなったので、そうなるとお手軽さがあってちょこちょこやってきた。評価はまあまあおもろいかなといった程度だが、よりおもろいドミニオンは、並べるのも片づけるのもめんどくさいw
この2つのプレイ回数はデッドヒートだったが、拡張が出た途端一気にレースフォーザギャラクシーが抜け出した。

ドミニオンは日本語版が出るが、あれよりもこっちの日本語版の方がわしゃ欲しい。既に和訳シールを貼ってるけど、ドミニオンと同じく2つ買う価値がある。

コンポーネントについて、最初「わ! いっぱい部品がある! どうやって使うんやろ」と楽しみにしたが、なんてことはない、そのほとんどはソロプレイ用だった。しかもルールブックもどうやって拡張を混ぜるのかよう解らんもので、よくよく読めばほとんどがソロプレイ用のルールだった。通常の拡張で読むところは最初の3ページほどで、目的タイルのとこだけやった。

問題なのはカジノ惑星は交換するってのは解ったが、4人以下でも接触専門家を1枚追加するのか、得点チップを追加するのかが解らない。得点チップはゲームの終了条件に関係するので、増やしていいのかどうかが特に解らないのにそこらへんが書いてない。カードの老朽化を考え、接触専門家の追加だけはやっているが。

ご丁寧にブランクカードがかなりの数枚ついている。これで自分の作った惑星や発展を加えてくれという配慮らしい。さらにコンテスト応募用のカードもある。自信のあるカードが出来たらこれで応募せよというものらしいが、良いものは拡張3に組み入れると書かれている。つうことは既に拡張3までは出すという事か! 非常に楽しみなのだが、今のプレイ感が良好なので、バランスが崩れない事を祈るばかりだ。

シールを作って貼れば何度か出来そうなんでちょっと作ろうかなと思ってる。やっぱりこういった宇宙もので最初に思いつくのは、デススターやろうな。アシモフのファンとしては心理歴史学とかファウンデーションとかを作りたい。ヤマト世代ならば、白色彗星帝国とかサルガッソーとか、銀河鉄道999からも大量にヒントがあふれてる。ここらは商用としてなら問題ありだが、個人で作って楽しむには松本零士先生も許してくれるだろう。リアルどころではブラックホール、二連星、彗星の巣などは簡単に出来そうだ。

※銀河帝国の興亡は、1〜3で本来は完結しているのだが、2,30年後になって突然アシモフが続編を書いた。続編も悪くないのだが、初代までの世界観を完全につぶしてしまってるので好きじゃない。ハリセルダンの心理歴史学こそ最高峰なのだ。銀河帝国といえばまずこの古典から始まるといっていい。

ソロプレイは、ノンプレイヤーキャラクターのロボットと対戦するというもので、後日やってレビューしたいと思うが割とルール分量がある。そこまでしてソロプレイをしたいゲームだとは思わないが、なんせしっかりと作られているようなので、やらないと罰が当たりそうだ。サイコロまで付いてておもろそう。

最後にもう一度書いておいた方がいい。あくまでこれは散々やったせいで、煩雑なところなんか完全に慣れてしまった上に拡張を加えた評価である。煩雑だったところがまともに評価出来んくらい慣れてもた。そういう人の評価。
ただし、ちょっとでもおもろそうなんて思ってる人がいたら、ごちゃごちゃいわずに買うとけと。そういう人は少なくともつまらんかったとは言わないだろう、そういうゲームだ。

gioco del mondo