Friedemann Friese

2F-Spiele
アークライト

2〜4人
90分

ラクラク大統領になる方法

駿河屋で購入
選挙ポスター風のパッケージが目を引く、鬼才 フリーデマン フリーゼの怪作が登場。 (ちなみに、パッケージの人物がフリーデマン・フリーゼである)
プレイヤーは選挙員や資金を運用し、影響力を拡大。大統領への当選を目指すという明快な内容だ。しかし、ゲームシステムを少しずつ拝借して面白いものを作るという、ありそうでなかった挑戦の結果、デッキ構築、ワーカープレイスメント、カードドラフト等のゲームシステムが絶妙に絡み合った独特のボードゲームとなっている。いろいろなゲームシステムの遊び倒したゲーマーも、これからボードゲームを遊んでみたい初心者も大満足の充実した一作だ。

プレイ感

ドミニオンから少し、アグリコラから少し、スルージエイジズから少し、プエルトリコから少し、と名だたる名作から少しずつアイデアを頂戴してゲームを作ったなんてはっきり言うて何もかも無茶苦茶。タイトルの原題も意訳すれば『パクり』というフリーデマンフリーゼらしい毒々しさが全開である。これはゲーマーにして気にならない人はおらんやろと、わしも猛烈に気になったので、当然のように購入した。miaと2人プレイにて。


このゲームは少々セットアップがややこしいが、セットアップ方法は順番に別シートになってるのでその通りやっていけばよい。
最初はお金カード7枚と勝利点カード3枚のデッキを持つという、まったくドミニオンと同じである。そうそう、最初に書いておくが、このゲームの基本デザインはドミニオンと同じデッキ構築型と思った方が理解し易いだろう。手札は5枚で、第1フェイズは順番を決める為に全員が一斉にカードを1枚出す。カードの数字を比べて高い順に今回のプレイを行っていく。ここで使用したカードはクリップボードとして横に置き、今ターンでは使えなくなる。


ボード中央にアクションマス、下が買えるカード。手札は5枚だが1枚はスタート順を決めるのに使う。

第2フェイズでは1個ずつ順番に運動員駒(アグリコラでいうアクション駒)をアクションマスに置いていく。置いたアクションはすぐに実行せずともよく、どのフェイズで使用出来るかが決まっており、自分の手番中に使用する事が出来る。使用した駒は使用済みを表す為に寝かせる。このフェイズで使いたいカードが手札にある場合は、プレイすればよい。


アクションマスに自分の運動員駒を順番に配置していく。実行したら駒を倒す。実行出来るフェイズがアクションによって決まっているが、あまりその制限を気にせずともよい。なぜならそのフェイズでしか通常は実行しないからだ。枚数が減っているのは第2フェイズで使えるアクションカードを使用した(紫のカード)からである。


アクションマスは最初からあるマスとラウンドが進むごとに強力なアクションが増えていくカードマスがある。左は3人以上の場合に使うアクションマス。

第3フェイズは、カードの購入フェイズである。大通り(一番下の列)にあるカードをプレイ順に従って購入していく。購入は購入アクションを使わないと出来ない。第2フェイズで購入アクションに駒を配置していなかったり、手札に購入アクションカードがない場合は購入出来ないので注意。スルージエイジズのように一足飛びに買おうとすると割高になる。
購入金額や使えるお金、また使ったカードの処理方法もドミニオンの処理とまったく同じである。


手札のお金と、アクションで手に入れるお金と併せてカードを購入する。


カードの値段は左下の数字である。ただし右側にあるカードを買う場合は追加コストを支払う必要があるので、強いカードはいきなりだと割高となる。

第4フェイズはクリーンナップフェイズで、プエルトリコのように駒の置かれていないアクションマスに1個ずつ勝利点タイルを置き、運動員駒を手元に戻し、購入可能カードを左に寄せて足りない分を補充し、今回手に入れた勝利点タイルを勝利点に記録し、追加のアクションカードを1枚並べる。これで次のターンが始まる。

ゲームは誰かが勝利点95稼ぐか、11ターン終わるか、博士号カードが買われるかしたら終わりである。一番得点が進んでいるプレイヤーが晴れて大統領だ。

ドミニオン形式全般に言える事だが、そのほとんどがカード効果で進むために、ルールブックを読んでも今ひとつピンとこない事が多い。とりあえずゲームをやってみることにした。こういう場合、とりあえずやってみればすぐに解るものだ。

1手目は、お金3枚勝利点2枚である。順番決めでは、お金が少ないので温存するつもりで勝利点カードを出した。勝利点カードは総じて数字が小さいのでmiaが先攻。

順番にアクションマスを埋めていくが、かなりなめきったマスに唖然とする。かたや2コイン、かたや1コインだったり、かたや2購買権、かたや1購買権、という同じアクションなのに倍も価値が違うのがずらりと並んでいるのだ。通常こういったアクションマスはジレンマが起きるようになるべく同価値となるように調整されてるのだが、これはもう無茶苦茶だ。
フリーゼはとんでもない鬼才である。人気のないマスは、徐々に価値があがるという発想をプエルトリコからちょっと拝借して補ってしまった。

ルールブックのヒントに、最初は運動員を増やすカードを購入した方が良いとある。
先攻はmiaなので、第3フェイズで買われるかと思いきや、2コインのカードを購入してきた。わしは喜んで運動員駒が増えるカードを購入。運動員駒は3個までが通常使えるが、4個以上いたとしても、ターンの最後に回収されてしまう。使用するには手札から追加の運動員カードを出さなくてはならない。

お互いに勝利点を記録して、次ターンとなる。

3ターン目がすぎた頃、徐々に大通りに強力なカードが出てきた。

3コインになるカードやカードを3枚引けるカードなどだが、それよりも強力なのが勝利点6点を得られるカードである。

実はここまで意外にもmiaに得点で後塵を喫していた。
わしはドミニオンのイメージで、お金カードなどを優先して購入していたが、miaは複数の勝利点チップをのったアクションを選び、得点を伸ばしていたのだ。

ただこのときは、自分のデッキを充実させることで必ず逆転出来ると信じていた。
ここで子供が起きてしまい、継続不可能になったので、例によって写真をとり、状態を記録して後日、続きをやる事になった。

続きの開始で、デッキ構築につとめた作戦だったが、やっぱり得点によって完全に引き離されてしまっては、怒濤の追い込みを決めたとしても追いつかない事になる。miaの手をみて、完全に離されないようにほどほどに勝利点チップの載ったアクションを選択していく。

そしてどうしても欲しかった勝利点6のカードを入手する。
こいつを回転させればアクションで手に入れるよりも大量得点が期待できる。

7ターン目、信じられないカードが大通りの買える位置に並ぶ。

遊説カード。自分の持っている勝利点チップを倍にするカードである。

わし「ちょっと待って。確認する」

ルールを何度読んでも、自分の勝利点チップを倍にするとしか読み取れない。
しかも繰り返しアクションを使う事で最高3倍にまで出来ると書かれている。

僅か5コイン。当然、これを入手する事にした。


一番左が恐ろしく強力な遊説カード。勝利点を2倍にする。

9ターン目、これを仕掛ける事にした。
手元には僅かばかりのコインカードがあり、まともにカードを購入できない。
そこで、1コインにつき、カードを1枚引けるという賄賂カードを使い、今回使えるコインを全て使って山札からカードを引く事にした。中には遊説カードが埋まっている筈なのだ。

そしてその目論見は見事に成功して、遊説カードが手に入った。
当然、購入は完全に諦めて、ひたすら勝利点チップのたくさん載ったアクションを選ぶ。
決め手は、カードをもう一度使えるアクションの選択である。

手元に集まった勝利点チップは合計13枚。これを遊説を使って2倍、さらに遊説カードを再使用することで3倍にして、39点を獲得。

mia「ええー、何それ!!」

わし「なんかおかしいよな。もっかいルール読んでみる」

というのは、このターンの開始時、わしは42勝利点しかなかった。一撃で今までコツコツ溜めてきた得点と同じだけを叩き出したのだ。疑うのも無理はない。

しかし何度読んでも、遊説の解釈に間違いはなさそうだ。

mia「こんなの、もう勝てないよ」

あと、14点手に入れたら終わりである。

一旦、このパターンを理解してしまえば、山札からひたすら引くアクションを使って、同様の条件を整えるだけ。

そして次のターン、デッキ最後1枚を残して遊説を手に入れる事は出来なかったが、運動員3人追加し、選ばれなかった大量の勝利点チップを選びまくり95点を余裕で突破して勝利。

所要時間70分


デッキに残ったラスト1枚が遊説だった事だけが残念だが、それでも猛烈な得点をたたき出した。

miaのコメント

なんだかなあ。よく分からない。ほんとにあれでルール合ってるの??

ソマーリオ

途中まではしっかりとゲームになってたが、遊説が出た瞬間、ゲームは無茶苦茶になった。何度もルールを読み返したが、ルールは間違っていないようだ。

となると、これは完全にチートである。
如何に素早く遊説カードを手に入れるかで勝敗は決するだろう。遊説カードは2枚しかないので、3人や4人プレイをやったら、確実に2人は脱落する。

今まで積み上げてきたものは一体なんやったんやろというのは、ローマの栄光でも感じた事がある。

もちろん他の勝ち筋はあるかも知れないが、いずれにしても、どんな形にせよローさん曰く最後1万点みたいな形で終わるだろう。

ドミニオンから少し、アグリコラから少し、スルージエイジズから少し、プエルトリコから少し、全ては上手く機能していた。
なんか勿体ないなあという気がしないでもないが、これがフリーゼの毒のある洒落なんだろうと思う。
わざと最後を無茶苦茶にして、笑い飛ばせばいい、そんな意図が見え隠れする。

フリーゼの、フリーゼによる、フリーゼファンのためのゲーム

フリーゼのおふざけを許せる人ならば買えばいいが、大多数の人は買わない方がいい。
とはいってもパクってるくせに独自の味付けがしっかりとあるのはやはり凄いとしか言いようがない。

ちなみにテーマはシステムからは完全に逸脱しており、大統領になる方法もクソもない。カードハンドリングをやって遊んでいるだけで、カードのタイトルも無理矢理付けてみたという感じでイメージ出来ない。
フリーゼはもちろん解ってて、ルールブックにテキストに意味はないと書いている。
正直、これが他のデザイナーが作ったならパクリだの消化不良だのボロクソ書いてるところだが、フリーゼだから許せるという不思議なゲームなのだ。解っててこんな事をするあたり、まあ好き勝手にしてって感じ。こんなゲーム、フリーゼ以外は作れんわ。

ルール間違いの補正

どうにも意見の食い違いが見られるので、もう少しルールについて調べてみた。そしたらサマリーシートでようやくその謎が解けた。得点を得る緑カードは、得点チップに換えずに、そのまま得点するという事だ。

これで遊説が異常に強いという事ではないと解った。
そこで記憶とこのレビュー写真を頼りに、プレイ感を想像上で再現してみる。

やはり、ラストは良いとは思えない。一番ラストの手番では遊説を使わずに32点を獲得してるのだ。賄賂を使ってデッキからカードを引きひたすらに得点カードを手に入れれば、あっという間に終わってしまう。

途中までの苦労がなんだかなあという感じはやはり同じである。
4人プレイでやればまたプレイ感も変わるかも知れないが、ラウンド数を見ても、どうにも最後の一斉得点パターンというのは同じに感じる。得点するというのがあまりにも直接的過ぎるのが原因だろう。2人プレイでの評価はやはり同じ。

gioco del mondo