Ryan Laukat

Red Raven Games

2~5人
20分

八分帝国

駿河屋で購入
たった8分間で帝国の興亡が実感できるゲームがあっただろうか?
地政学マルチゲームの常識を覆す、本格陣取りゲーム。
8ターンで巨大帝国をつくるのだ。

プレイ感

タイトルになっている通り8分間で帝国の闘争ができるという触れ込みのゲーム。どうしても地政学マルチというとヴィンチヒストリーオブザワールドのように長時間ゲームになるのは定めである。そこをどうやって8分間で収めるのか非常に興味があったので持ってきて貰った。mia、タナカマ夫妻、COQとの5人プレイにて。


COQ「実際には20分くらい掛かりますけどね」

タナカマ「いや、これは8分間で終わらせるようにプレイヤーが努力するゲームなんです」

ボード脇に6枚のカードを表向きに並べる。手番には、カードを1枚購入し、そのアクションを実行するだけ。カードは左端なら0ゴールドだが、右に行くに従ってお金が掛かり、1枚なくなると左に寄せて寄せて補充するよくある方式。全員が8手番やるとゲーム終了。勝利点が高いプレイヤーが勝ち。


初期は中央部から。カードは左から順番に価格があがる例の方式。チットはオプションルールだが、採用した方が良いらしい。

カードには、軍隊駒を増やす、軍隊駒を移動する、城を建てる、軍隊駒を取り除くのアクションがある。またそれとは別に特産品が描かれており、同じ特産品を集めれば集めるほど勝利点が高くなる。
勝利点は、各マス毎に単独最多プレイヤーが1勝利点、各大陸で単独最多支配マスプレイヤーが1勝利点、それに特産品の勝利点を加算する。

今回はタナカマの勧めで指定した場所に特産品チップを置いて、その支配者がそれを貰えるというオプションルールを採用した。これはカードの特産品と同等に扱う。

わし「あれ、ちょっと待って。これどこの地図?」

タナカマ「架空の世界です」

これにはがっかり。世界地図にしたら良かったのに。


自分が選択したアクションカードは、このように同じ特産品で並べる。枚数が多いと勝利点があがる例のやつ。下のアイコンがこのカードを取った時に行うアクションである。つまりカードは特産品の取得とアクションの両方の意味合いをもつ。丸い駒は砦で、駒を出すときに最初のマスか、自分の城壁のマスにのみ置くことが出来る。

やることは非常に簡単で、増員して移動して各エリアで多数を占めればええというだけ。
城があると増やすときの拠点となる。

またお金は8ゴールド貰えるが、カードを買うときに使うだけで増えることはない。計画的に使おうってやっちゃ。ただ残したお金は勝利点が同点のときの勝敗に影響する。

5人でプレイしても、マス目が非常に多くて、2個とか3個とかの争いにはならない事がほとんど。他のプレイヤーを乗っとるくらいなら空白地に置いた方がよっぽど良いので、それほど喧嘩にはならない。


徐々に帝国が広がっていく。マス以外にもエリア全体のボーナスもあるので、それを見極めて広げていく。またカードはターン数も表しており、これが8枚置かれたら終了だ。

唯一、タナカマが推奨したオプションのチップの場所だけが争いとなりえるのだが、実はわしは特産品の威力がそれほど強いとは解らなかったので、先に取られたらそれっきりになってた。

移動するときに海を越える必要がある場合は、船のマークの書かれた移動カードを選ばなければならない。

わし「あれ、これって行動に差があるんちゃうの?」

タナカマ「弱いカードは良い特産品が描かれてるんですよ」

あー、なるほど。
わしのルビーなんかは枚数が少なくて勝利点が高い。そういうカードの行動は弱くなってる。

逆に朝鮮人参なんかは、思いっきり枚数を集めないと勝利点を得られない。そういうカードの行動は強くなってる。朝鮮人参、これ、思いっきり枚数必要すぎやろ。。。

そんな感じで無人の荒野をどんどんと広がっていく。


ラスト1周。

いくつかの場所で紛争となったものの、大体は1マスにつき駒1個の配置だ。

わし「これ、後攻圧倒的有利ちゃうん?」

COQ「そうですね。相手の動きをみて決める事が出来ますからね」

各自8枚のカードを手に入れる、つまり8ラウンド終了後、解りやすいように、マスの支配者だけを1個ずつ残して除去していく。

結果、あっきーが12ポイントで勝利。

このポイントやと特産品のポイントが非常に大きい事が解った。
やはりチップを奪いにいくべきやった。

所要時間20分


最後は計算しやすいように支配プレイヤーの駒1個だけ残して取り除く。

ソマーリオ

確かにルールはコンパクトで、8分間は無理でも20分程度で地政学マルチの雰囲気を味わう事が出来た。
ただマス目が多くて、空白地を求めて移動するのでタイトルにある帝国の広がりという感じではなく、原始人類の広がりみたいな感じがする。

その大きな要因として地政学マルチに特有な人類の技術というものが見あたらない。例えば鉄器や車輪の発明、強力なリーダーの誕生。これらがあるからこそ、こういったゲームが好きという人がほとんどだ。それをばっさり削ってしまった。カードの行動の優劣にそれがあるとも取れるが、プレイヤーの感情論としては、そうではなく、固有名詞として存在し、他のプレイヤーに羨ましがられる基本ルールを覆す特権を得る事に満足を得るものなのである。

ただそういったものを加えて、さらにマスを少なくしてバッティングを多くすると、おそらくこの時間内には収める事は出来なくなってしまうし、何よりこのゲームの大きな欠点である後攻有利がもっと顕著に表れてしまうだろう。

その美点を活かす意味でもマスを多くとり、なるべくバッティングしないように意図的にデザインされたのだろう。帝国の歴史は戦いの歴史でもあるわけだから、技術もなくした。時間を優先するためのトレードオフだ。

取り立てて面白くはないが、取り立ててつまらなくもない。そこそこのゲームという表現が相応しい。
ルール的にも特に奇抜なところはなく、よくある陣取りの要素からゲームとして成り立つ最低限のところだけを上手く抽出した感じ。

コンポーネントからして、何もかもが普通。地図は嘘くさいが。

悪くはないのだが、値段があまりにも高い。
このコンポーネントで日本で3800円はあまりにも高すぎる。

タナカマ「キックスタートの少部数で、重みもそこそこあるんでしょうがないんですよ」

との事だが、3800円あったらもっとおもろいゲームあるでと言いたい。
2000円なら買おうかなと思ったが諦めた。

というわけで、僅か20分で帝国の歴史をやるという試みは面白いので、お金に余裕がある方に勧めたい。
見たまんま、期待せずにやると多分、思った通りの感想になる筈だ。ゲームとしてはあちこちのゲームの良いとこ取りをしてるのでまとまっていてそれなりに楽しめる。
ただわしゃ、長くてもよいから、ヴィンチやフォーアワーズエンパイアたるヒストリーオブザワールドをやりたいかな。短時間のでいえば、アプローチは全然違うがロールスルージエイジズがよく出来ていた。領土拡張よりも文明の発達の方がより惹かれるからだ。そういやコインを使って地政学マルチが出来るってのがキックスターターで募集されてたな。ルール読むとあっちの方がひねりがあって面白そう。

また設定をファンタジー世界にした8分帝国伝説という独立したバージョンも後にでた。こちらはアークライトにより日本語化されるので、それを待ってみてもいいだろう。
ちなみにタイトルはエイトミニッツエンパイアや8分帝国というのもあるが、上記のように8分間帝国伝説で発売するとあるので、それに合わせた。

その後、先にHJが本作の日本語版を急遽発売する事になった。

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