Philippe Keyaerts

Descartes Editeur

3〜6人
90分

ビンチ


このゲームは、ルネッサンス期以降の文明の興亡をシミュレートしたものです。この非常に長い期間に、帝国が設立され、拡大していき、最後には新しい帝国に分割されていくのです。
プレーヤーは、いくつかの帝国を受け持ち、お互いに侵略しあい、より大きな領土を形成していきます。しかし、全ての帝国には、それ以上の拡大ができない、最大限の領土となってしまうときが訪れます。そのときには、プレーヤーは新たな文明を選択して新しい帝国を建設するのです。
このゲームは3人から6人で遊ぶのが最適です。しかし、ヴァリエーションルールを用いて2人でプレイしたり、ソロプレイすることもできます。

プレイ感

昔からシミュレーションゲームをやってた人ならご存じだと思うが地政学マルチという分野がある。複数プレイヤーで歴史的っぽくシミュレートしていくタイプのゲームだが、シヴィライゼーションやヒストリーオブザワールドのように4時間以上と非常に時間が掛かるのが弱点であった。ビンチは、90分ほどで出来るように工夫されたゲームである。かなり前に持ってたのだが、全然やる機会がなく、ようやくTAM夫妻、タカダと4人でプレイした。ビンチをリメイクしたスモールワールドをやる前にやってみたかった。


ビンチのボードにはヨーロッパが描かれているが、出てくる文明は全て架空である。ただし通貨とか農業とか天文学とかカエサルなど実際にあった文明の特徴をタイル化している。プレイヤーは、これら文明タイル2枚をランダムに組み合わせた勢力を操る事になる。

セットアップ時、文明タイルの組み合わせは順番に6セット分ボードに並べられる。プレイヤーは、左端からそのセットを取っていくのだが、気に入らなければ別の文明タイルセットを選んでもよい。ただしその場合は、追加で勝利点を支払う事になる。また文明タイルには追加でもらえる駒数が表記されており、プレイヤーは基本駒数にプラスして、自分の駒を用意する。これはその文明による勢力を現している。好戦的な文明ほど駒数が多いという事だ。


このように6セットの特徴ある文明タイルを並べる。Tを選ぶのは無料だが、U以降を選ぶには勝利点を支払う必要がある。


わしの最初の組み合わせは農業と革命である。革命は隣接した以外のマスから進出出来る。右下の赤い字が追加の駒数を表す。今回は基本の駒数(プレイヤー人数によって変わる)に7駒プラスしてゲームを始めることになる。

ボード上は、森林地帯、山岳地帯、平地などに分かれている。手番プレイヤーの駒は最初にボードの脇に隣接したマスから登場させる。その時、そのマスを征服するのに必要な数の駒(基本は2個)を置かなければならない。もし手元にまだ駒が残っているのなら、自分の征服したマスに隣接するマスに駒を置いてどんどんと勢力を広げていく事になる。
こうして勢力を広げて、これ以上広げる事が出来なくなれば、征服しているマスに対して勝利点を得る。これで手番終了で次のプレイヤーが同様に行う。

2巡目以降は、まず自分の征服しているマスから1個を残して駒を一旦手元に戻す。それらの駒を使って再び征服を開始すればよい。このとき全ての駒を手元に戻しても良いが、その場合はそのマスは中立状態に戻る。


ゲーム序盤の侵略。無色の駒は中立の駒。駒がある場合征服するのに追加の駒が必要なのだ。

手番開始時に、今操っている文明に見切りをつける事も出来る。その場合、征服しているマスから1個を残して全てストックに戻し、文明タイルも捨てる。それから駒のあるマスに衰退マーカーを置いて手番終了だ。次の手番にセットアップにやったように文明タイルの1セットを貰い新たな文明を始める事になる。衰退した文明は、タイルによる特殊能力は失われ、移動とかも出来なくなるが、勝利点を貰う事が出来るので、上手く衰退させて切り替えていくのがこのゲームのポイントとなる。

こうやって規定の勝利点を達成すればゲーム終了で、そのプレイヤーが勝利する。

どの文明が強いか解らなかったが、わしは革命農業国家としてスタートする。革命があるので、隣接していないところからスタート出来るのでスカンジナビア半島を拠点とした。タカダはより攻撃的な国家でモンゴルから侵入、TAMは小アジア、TAM嫁はイングランドから進出するが、ヒストリーオブザワールドのように一気には動かない。まずは征服して少し進出したところで、パワーがなくなり足止めを食う。そこから徐々に征服活動を始めるといった印象なので、プレイ感はちょっと違っている。

わしは駒数が少ないが、支配地域が農地(黄色)だと1勝利点が2勝利点となるので、当然、そこを狙うことになる。

序盤、わしの農業が意外にも強くて、みるみる得点を加算していく。やってる本人は、やられたらやられる一方で這々の体なのだが、得点は伸びるのだ。ただTAMとかをみてると、どうしても版図を広げたくなり、全然勝ってる気がしない。

ある程度、駒数が減ると、文明を衰退させて新しい文明を築く必要がある。TAMなどは侵略国家なので、次々にチェンジしていく。わしはまたしてもおとなしいタイプの国家。


早々に衰退させるTAM。衰退させたら駒を1個だけ残して衰退マーカーを置く。次の手番に新たな文明を選択して開始する。


そして見事に文明の転換を果たしたTAMは中央ヨーロッパを席巻する。

そのうちタカダとTAMは激突し、タカダの勢力はボコボコにされて危うく駒が0個になりかけるが、簡単に文明は復興できるところが面白い。

わし「わしも強力な勢力で攻めまくりたい!」

そういう願いが叶ってか、現行勢力では辛くなったところ、野戦将軍の文明を手に入れる。おそらくこれはカエサルをモチーフにしたもので、手番の開始時に駒を7個貰える。ただし手番の終了時には7個減らす必要があるので、結構考え物だったが、良い文明セットを得るにはかなりの出費が必要だった。

この野戦将軍、確かに攻めるときは無茶苦茶強いが、その後7個減らすと、守りが弱くなるどころか、せっかく陥れた土地すら手放す必要もあった。


野戦将軍と農業の組み合わせ。スカンジナビア半島でかなり勝利点を重ねていたが、TAMに勝利点で追いつかれさすがに限界。


新しい活路はイングランドから!

わしがぶっちぎりのトップ目で、タカダが滅亡に瀕してる時に、タカダの切れが始まった。

タカダ「こうなったら玉砕ですよ!」

なんと、わしの衰退した勢力ではなく、現行勢力に向かって突撃してきやがった。
一気にぼろぼろにされてしまった。野戦将軍、弱すぎ。


なんと同じイングランドからタカダの軍勢が大挙襲来。これでぼこぼこにされてしまった。

これが効いた。このままこの文明を保持してても未来はない。例え攻め落とせても、勝利点まで土地を保持する事が出来ないのだ。

わし「しょうがない。衰退させる」

文明を衰退させると前に衰退させてた駒は全て取り除く事になる。衰退は2つ持てないのだ。
そしてぼろぼろになった段階で衰退させたおかげで今回手に入った勝利点は僅か2点。

次のターンにTAMが順当に得点を重ねて規定の得点を突破して逆転勝利。

所要時間120分

ソマーリオ

文中にも書いたが、ヒストリーオブザワールドを改良したというイメージがあったので、手番処理も似たようなものかなと思っていたが、数ターンの間、文明を保持して攻めていくという事で感覚は少し違って最初は面食らった。

ヒストリーオブザワールドやヒストリーオブサムライは、文明を選ぶ時に大きな意味があったが、ビンチでは、選ぶことよりも、どのタイミングで衰退させるかという要素が重要となっている。これに失敗すると、わしが惨敗したように目も当てられないようになるが、むしろそこにビンチならではのプレイ感がある。

戦争はプレイ時間を長引かせる要因となるのでヒストリーオブザワールドでも簡略化されていたが、それに輪を掛けて簡略化していたおかげで圧縮を図っている。もともとこの手のタイプは、一瞬一瞬の局地戦を楽しむのではなく、全体的な流れを楽しむものなので、これで楽しさが減じられるという訳でもない。むしろコアとなる部分を強調して良いと思う。

システムとしては非常によく出来ているが、欠点として指摘されているように、獲得勝利ポイントが目に見えているおかげで、トップたたきが非常にやりやすく、好位置につけているプレイヤーが勝利し易いという事がある。
この部分は意外に大きく感じたので、は付けなかった。

コンポーネントは、可もなく不可もなしといったところ。木製の駒を裏返すのではなく衰退マーカーを用意しなくてはならないが、駒と衰退マーカーは木製と紙製という事で簡単に見分けがつくので、ヒストリーオブサムライのように特にプレイに支障はない。
ただしボードのマスに勝利点とか、攻めるのに追加の駒数などをアイコンではなく数値などで表示してくれればもっとプレイアビリティはあがったと思う。

そしてこれらの欠点を全て修正されたのが、スモールワールドである。勝利点はチップになり、隠し情報となった。ボード上のマスには必要な情報が描かれている。
ただし、歴史上にあったような文明マーカーはなくなり、ホビットやトロルなどファンタジー世界の住人たちに変わっている。またビンチであった異常に強いキラー的な文明の組み合わせが出来上がるのを防ぐ為に、タイルに凸凹をつける事によって、組み合わせに制限を課したところもビンチをよく研究してリメイクしたのを伺わせる。

まだスモールワールドはやったことがないが、間違いなくビンチよりも完成度は高いというのは想像に難くない。
個人的に問題となるのは、ビンチの描こうとする歴史的な雰囲気がモチーフがモチーフだけにスモールワールドではなくなってしまう事なのだが、幸か不幸か、ビンチで歴史が目の前で展開されているという雰囲気は無かったりしたので、スモールワールドよりもビンチを選ぶという理由は皆無となった。
現時点では平均的なプレイヤーでも楽しめる最も良くできた地政学マルチだと思う。もっとがっつりやりたい人はヒストリーオブザワールドを遊べば良い。

昔、やろうと思って作ってた文明タイルのリファレンスがあるので、ビンチを持っている人は良かったら活用をしてください。

gioco del mondo