Christophe Raimbault

Ludonaute
Hobby Japan

2〜6人
30分

コルトエクスプレス

駿河屋で購入駿河屋で購入

1899年7月11日:午前10時。ユニオン・パシフィック急行は、47名の乗客と共に、ニューメキシコ州フォルサムを出発した。
ところが数分後、頭上から慌しい足音が聞こえた。次に銃声が響く。重武装の強盗達が容赦無く、罪もない人々から財布や宝石を奪い取った!
はたして彼らは冷静に弾丸を避けられるのか? サミュエル・フォード保安官が付きっきりで見張る金庫に納められた、ナイス・ヴァレー石炭会社の一週間分の給与を強奪してしまうのか? ゴールにたどり着く盗賊はただ一人だけ!

プレイ感

ドイツゲーム大賞になったにも関わらず、日本では流通在庫が少なく全然手に入らなかった。ようやくホビージャパンが多言語版として出してきた。
見た目から「これだけちゃうん?」という不安は拭いきれず、一昔前ならこのコンポだけで馬鹿売れしたであろう。タナカマに聞いても、最初に1回やったっきりやってないないので全然覚えてないというボドゲ屋にあるまじき答え。COQからもこの全然動きのない絵がねぇといかにも駄作っぽい。
唯一、お昼を一緒にしたライバルの街コロ菅沼さんが「ワイワイできてやっぱり面白かったですよ」と言う。
しかしジョーコデルモンドとしてはこの超ネガキャンを無視しても大賞作品なのでやらざるを得ない。
タナカマ、COQ、若返ったタナカマ嫁(嘘)おーしろとの4人プレイにて。


機関車と人数分の車両を連結する。それぞれ車両に表記されているドル袋やルビーを配置する。保安官駒を鞄と共に機関車に、プレイヤー駒をてれこに最後の車両とその一つ前に順番に配置する。
各自、キャラクターカードを貰い、そのデッキと6発の弾丸カード、250ドルのドル袋を上におく。手札

COQ「これ、細かくて面倒ですね。このコンポーネントが完全に仇になってる感じ」

計画フェイズと実行フェイズに分かれている。計画フェイズでは、ラウンドカードに指示されただけアクションを行っていく。アクションは手札から1枚表向きに場に出すか、自分のデッキから3枚補充するかのどちらか。
指示されたアクションが終わると、実行フェイズに移る。
実行フェイズでは、山積みとなった場のカードを親が持ち、裏返しにする。それから1枚ずつ実行していくのだ。
つまり計画フェイズであらかじめ全員行動をプロットしておき、カードを置いた順番に解決していくという事。


見ての通りの立体的なコンポーネントに駒やタイルを配置。かなり細々してるのでちょっとプレイアビリティは低い。
ラウンドカードは4回のアクションカードを置く事を意味してる。3アクション目はトンネルで裏返し、4アクション目は逆周りで置く。最後にそのラウンド特有の効果、今回なら保安官激怒を適用する。このようにラウンドによって3アクションしかなかったり、トンネルが長かったりと色んな状況が生まれるのだ。

カードは、移動、昇降、撃つ、殴る、拾う、保安官移動の6種類ある。手札は6枚。
実行が終わると次のラウンドを行うが、その時自分のデッキを再シャッフルして新たに6枚引く。


手札は6枚。1ラウンド使うとすべて混ぜて引き直す。左に見える弾丸カードはよく出来てて一発撃つごとに弾が1つ減る絵となっている。これを相手のカードに紛れ込ませ、不要カードを増やしていく。

こうやって5ラウンド終了後に、お金を一番持っているプレイヤーが勝ちだが、ボーナスとして一番撃ちまくった人にはガンスリンジャーの称号を得て1000ドル入る。

まずはプロット。親のCOQから時計回りの順にカードを出していく。表向きなので相手の行動を見て判断出来るのだがラウンドカードにはトンネルが描かれている事がある。その場合は裏向きに出すのだ。
一見すると後手の方が有利に見えるが、先に行動した方が殴ったりぶっ放せたりと有利な事が多い。

このとき重要なのは、現在、自分と相手がどこにいるかという情報を頭の中でイメージしておく事だ。例えば、「殴られて、ドル袋をぽろりとしてから隣の車両に吹っ飛ばされている。そしてここでルビーを拾って、次のターンに隣にいる奴を撃ってから屋根に登る」みたいな感じだ。


アクションカードをこのようにひとまとめに山積みにして置いていく。これは昇降のカード。ここでイメージしていくのが大事。

そして行動フェイズになる。
次から次へとアクションが実行されていく。アクションは実行出来る限り必ず実行しなければならない。
それがまるで人形活劇のようにチャカチャカと動いていくのが、めちゃめちゃ面白いのだ。
車両が立体的になってるのが超活きてる!

COQ「じゃ、あきおさん、撃ちます!」

撃たれると相手の弾丸カードが自分のデッキに組み込まれる。
以降、これを手札に引くとまったく意味のないカードとなるのだ。


プロットされたカードの山を裏返しにして、上から順番に解決していく。ここで大活劇が演じられるのだ。

手強いのはおーしろである。このゲーム、実はこれだけに留まらずキャラクターによって能力が違っているのだ。このシャイアンというキャラは、殴ると相手のドル袋をそのまま懐にしまえる能力がある。通常はドル袋やルビーは相手に殴られた時にのみ、車両にポロリする。欲しければ次のアクションで拾わなければならないのだ。シャイアンと同じ車両マスにいて、シャイアンが先に行動する状況ではほぼ確実にスられると思ってよい。

わしのキャラクターであるジャンゴは、棺桶引きずってガトリング砲というイメージをしているようで、撃った相手を1車両移動させる。

わし「これ、ポロリもせんし意味ないんちゃう? とりあえずタナカマ、撃つ!」

ズキューン

タナカマ「あーー! しまった。そかジャンゴはノックバックさせられるのか。これはやばい」

わし「ひょっとして」

タナカマ「じゃあ、降ります。そして何もないところを拾います。鞄狙ってたのに」

という事が起きる。一旦イメージから外れてしまうと、相手がいないのに殴ってしまったり、意味もなく昇降したりしてしまうのだ。


ちなみにドル袋は250ドルから500ドルの隠し情報で、ルビーは500ドル固定、鞄は1000ドル固定だ。ドル袋のために置くのが結構面倒くさいのだが、やってみるとその面倒さを補って余りある面白さがある。

さらにこのゲーム、面白い仕掛けがあってラウンドの最後に何かしらイベントが起きる。
例えば保安官が怒って屋根にいるプレイヤーを撃ったり、屋根にいるプレイヤーが全員一番後の車両に移動したりする。これは列車が走ってる最中ロープでもって柱に引っかけてくるりと一回転して元の位置に戻る状況を意味してる。

なんという活劇感!

保安官と同じ車両に乗ると、撃たれて、屋根の上に逃げなくてはならない。撃たれると、キャラクターに撃たれたのと同じく流れ弾カードをデッキに組み込まれる。

おーしろ「あ」

保安官に撃たれて屋根に逃げた後、昇降カードをプロットしたおかげで、またしても保安官に撃たれて上に戻る。

タナカマ&わし「クスクス」


屋根の上は安全地帯だが、お金を取る事ができない。ただしタナカマのトゥーコは屋根に向けて射撃できる。

とまあ、こんな感じでゲームは進み、5ラウンド目終着駅に到着。最後のイベントを行って勝者を決める。

COQが6発の弾丸を撃ち尽くしてガンスリンジャーになる。大量にドル袋を持つシャイアン。
しかし勝ったのは、最後まで諦めずに鞄をゲットしたタナカマ。

なんとタナカマ、一発も撃たず。

所要時間30分


というわけで終了。別に終了の図をとっても意味ないけど。

COQのコメント

最初、このコンポーネントがプレイアビリティを下げてると思いましたが、このコンポーネントがあってこそのゲームでした。確かに面白い。これ、あきおさん、付けるでしょうね。

タナカマのコメント

いや、俺、自分用にこれ買おう。西部劇の状況が色々あって楽しい。大賞に相応しくないテーマという意見もありましたが全然OKでしょう。

ソマーリオ

おい、ネガキャンはどこいった? というくらい皆、絶賛。
これは確かに大賞やわ。ボードゲーム史上、ここまで活劇感のあるゲームはなかった。USJでも昔やってた(アメリカでは未だにやってる筈)ワイルドワイルドウエスタンが目の前で展開される。

木の駒がまるで生きてるかのごとく、ちょこまかと動く。

コンポーネントが豪華というより、コンポーネントに工夫が凝らしてあるというのが正しい見方だろう。お金を掛けたのではなく、単に厚紙で立体的に組み立てているだけだ。プラッチック成形よりも絶対に味がある。古いゲームだがカリブもそんな良さがあった。
とか言いながら豪華版が出たら、ちょっと心揺らぐかも知れない。

また凄いと思うのは、殺した殺されたってのがないのだ。
普通、こういう撃ち合いをするとどうしてもヒットポイントがあって、ゼロになると死ぬ。ところがこのゲームではその負傷というのを無駄カードを増やす事で、非常にスマートにルールに組み込んだ。悲壮感が全くなく、これなら大賞の審査にも引っ掛からない。

キャラクターの特徴も、強すぎず弱すぎず、ゲームを壊すことなく適度に組み込まれてて、西部劇ファンならマストバイだ。

ありとあらゆるところにフレーバーが組み込まれ、ゲームとしてそれが見事に活かされている。作者は西部劇の大ファンであるのは間違いない。痒いところに手が届くように研究しつくされている。

パーティゲームとしてのワイワイ感のみならず、僅か30分でこれほど濃密なゲームというのも珍しい。

さて西部劇のゲームといえば、昔、アバロンヒルからガンスリンジャー(邦題:真昼の決闘)てのがあった。実はこのゲームでもプロット方式を使ってたのだ。その動作は非常に細かく、撃鉄を起こす、狙う、撃つみたいな感じである。この時代の銃の性能は低く、なかなか当たらなかったので狙いまくってた記憶があるw ウィンチェスターのライフル銃の命中精度に驚いた。

コルトエクスプレスの作者はガンスリンジャーを研究して作ったに違いない。キャラクターごとの能力の違いや乱闘など、すべて存在していた。西部劇の緊張感を出すにはプロット方式が最適なのだろう。
いわばシミュレーションゲームのガンスリンジャーをファミリー向けにした後継者とも言えるのだ。

ガンスリンジャーでは西部劇で起こりうる出来事をほとんど網羅している。コルトエクスプレスもいずれ列車のみならず、屋内での決闘なども出てくるかもと期待している。もちろん拡張はすぐに買うた。

マカロニウエスタンだがわしの一押しは、夕陽のガンマンと続・夕陽のガンマンである。タナカマはシェーンを推してた。

そや、書き忘れてたので追記。
寺沢武一はコブラを書くにあたり、西部劇のSF版を描こうとしたという。
たしかにコブラ、西部劇やわ。
つまり、コブラのキャラクターを自作したら、めっちゃコブラのゲームが作れるやん!
ま、それだけなんやけど。

gioco del mondo