工藤雅之

アークライト

2〜4人
30分

たんとくおーれ

この世界は現実の世界とは少し違う、いろいろなメイドがいる世界。
幸運にも貴族の家に生まれたあなたたちは、日々争うことなく平和に暮らしていました。
そんなある日のこと、あなたたちにそれぞれ別々の屋敷が与えられることになりました。
屋敷の主となったあなたたちはあることを思いつきます。
「我々の中で誰が一番素晴らしい屋敷にすることができるか競い合ってみよう!」

公式サイトより



プレイ感

アークライトがドミニオンのブームに乗っかかり、システムをそのまま丸ぱくりして、内容を『萌え』をテーマにした山賽(中国のぱくりものに使われる名称)ドミニオン。買う前から明らかにパクりよなあと思いつつも、やはり入手してどんなもんか確認せんことにはいかん。


ルールはそのまま丸パクりなのでドミニオンを参照のこと。違うところは、側仕えメイドと専属メイドの存在。側仕えメイドは場にさらす事で、山札の圧縮+勝利点が入るメイド。専属メイドってのは、それ相応のコストを払えば、表向けに自分の場に置き、効果が継続するというもの。MtGのエンチャント場みたいなもんだが、買う値段が高い代わりに、効果が絶大なオンリーワンのカードとなっている。


ハートじゃなくてはぁとよ。これがドミニオンのお金にあたるカード。もちろん1,2,3とあり、それぞれコストが1、4、7とどっかでみたような数字+1となってる。愛でメイドを雇うらしい。

この手のゲームで分かり難いのは固有名詞。ドミニオンのお金に当たるのははぁとで、アクションに当たるのはご奉仕。雰囲気ゲームなので、そう名付けたいのは分かるが、ルールということでいえば、コストとアクションで十分じゃないか? と常々思う。ルールを読んでて「あれ? 奉仕ってなんやったっけ?」てなる。想像力についてはプレイヤーに任せたらええやんけと思う。なんせ文言が直感的に解りにくくていちいちうっとおしい。

さて、プレイ感やけど、本来なら色々と書きたいのはあるが、実はmiaと1度だけしかやってない。ゲームバランスはきちんと取れてんのかと確かめたいのだが、2度目をやろうとすると断られた。よって、このレビューも想像力に頼る部分がありまったく見当はずれなところがあると思うので、そのつもりで読んでほしい。


黒いカードがそれぞれ1枚しかない専属メイド。このように場にさらして効果を持続させる。隣は側仕えメイド。そして紫のカードが、バランスを台なしにする悪癖カード。場にさらしているメイドに何枚でもつける事が出来る。

プレイ感は、ほぼドミニオンのまま。元々特殊効果のオンパレードのドミニオンなので、何を加えようとドミニオンである。ただし専属メイドのルールはそれなりにおもろい。非常に強力なメイドが、自分だけ手に入れることが出来るので、レアアイテムを手に入れたような喜びがある。最近流行りのドイツゲームぽくはなく、好き嫌いはあるだろうがその部分は、評価したい。


miaの専属メイドはかなり強力なのが集まった。専属メイドは、場に2枚しかでないので買えるかどうかは運が左右する。

カードコストについては、ドミニオンのコストを参考にほぼそのままなので(ほぼ全てドミニオンのコスト+1に統一されている)、問題なし。いや、あるのか。。

ただし、まったく判でついたようなコストにしてしまったおかげで、ドミニオンの6勝利点にあたるカードが、弱っちくなってしまった。それはドミニオンにはない側仕えメイドの存在があるからだ。圧縮+勝利点という効率よく勝利点を入れる方法があるので、あんまり役に立たないカードとなっているようだ。ドミニオンは本体だけなら、6勝利点カードを相手より1枚でも多く集めたら勝ちのゲームなので、その分戦術は増えているのだが、いかんせん、バランス調整不足である。


こいつらが側仕えになるとパワーアップするので、6点カードを集めるより効率がいい。

また、悪癖というドミニオンの呪いにあたるカードがある。ドミニオンの呪いは魔女カードによって他のプレイヤーに押しつけられたが、たんとくおーれでは、悪癖カード自体を購入して、相手に押しつけるというカードとなっている。そう、わしが、ドミニオンで最初間違って使った呪いカードのやり方そのまんまだ。

この悪癖カードがあるので、ドミニオンにあった攻撃カードの類はなくなっている。ところがこの悪癖、やたらとコストが安いので、恐ろしくバランスが悪いのだ。こいつ1枚だと−1だが合計で4枚以上になると1枚につき−2となるとんでもない代物。一人でも側仕えメイドや専属メイドがいれば、どんどんと悪癖をつけることが出来る。自分をプラスにするより相手をマイナスにする方がコストとして楽なのだ。もしほんまに勝ちにこだわるならどんなゲームになるかは想像に難くない。これは二人プレイだと特に顕著となるだろう。

悪癖を取り除けるカードはクレールというカードたった1種類しかなく、悪癖のルールは基本ルールな事から、このクレールも常に入れておかねばならない。でないとゲームが無茶苦茶になる。


悪癖が次々につけられてマイナスを倍増させてくる。

この2つについて、きちんとテストプレイを行ったのかと疑問に思った。元々ドミニオンはカードの強弱についてとんでもない柔軟さで、吸収することが出来るシステムだ。ここまで強弱バラバラのカードを許容出来るゲームは、わしの知ってる限りタリスマンドミニオンだけだ。だから少々のことではへこたれないのだが、当にたんとくおーれはドミニオンにないルールを付け加えたおかげでその恐るべき吸収力を上回ってしまった。ドミニオンのコストに合わせておけば大丈夫だろうとテストプレイを怠ったんじゃないかと思われる。

プレイ時間は30分

miaのコメント

何これ。メイドのこまっしゃくれた名前が気取り過ぎて気に入らない。はぁと、ご奉仕、家っていう固有名詞も直感的に分かりづらくてイラッとくる。

ソマーリオ

アークライトはデッキ型カードゲームと位置づけ、作者ヴァッカリーノの素晴らしい想像力の賜であったドミニオンをまるで元々あった1ジャンルかのようにこのゲームを発表した。これが数年後なら、それもありだろう。ただドミニオンはほんの1年前に出たばかりで、ようやく第一弾拡張がでたところで、こんなものをこしらえてしまった。作者を馬鹿にしてるんじゃないか? とわしは思ってる。

最初に『違うところは』と書いたが実はドミニオンと違うところなど一切ない。ドミニオンはそのシステムの中に、特殊効果にてゲームのバラエティを持たせるというのが全て内包されている。たんとくおーれの特殊カードは全てドミニオンの特殊効果の範疇に入っている。例えば専属メイドの存在にせよ、ドミニオンでそういった効果のカードを作ればいいだけの話だ。実際、ドミニオンの中にたんとくおーれのカードを混ぜても、カードの形状以外、何の不都合もなくゲームが出来る。つまりたんとくおーれはドミニオンの特殊カードを1ユーザーが考えて作っただけに過ぎないのだ。作者と書くのもおこがましく、1ユーザーと書くのが正解だ。元々ドミニオンのシステムは、そういうもので、未来に出るであろう拡張カードの特殊効果も全て織り込まれてシステムが作られている。だから、凄いシステムなのだ。

確かにゲームに著作権はない。でも、モラルというのはあるでしょうよ。法律で縛られんかったら、何やってもええのか? それはモラルによって自制されるべきやろと思う。
例えばマジックザギャザリングが流行した時、それを真似して作った遊戯王カードゲームやポケモンカードゲームなど、丸ごとマジックザギャザリングのシステムを使わなかった。なんとか独自色を出そうと工夫していた。マジックのように土地をタップして、魔法力として使わなかった。こんなのは当たり前。節度を持って当たり前のことをしてただけに過ぎない。

※山2無色4でマナを出して、飛行の5/5、さらに山を1枚タップするたびに防御力が1あがるリザードンなんていたら「おお、これは新しい!」なんて誰が思うだろうか? これはマジック最強クリーチャーの1枚シヴ山のドラゴンで、本来は攻撃力が1ずつあがる。

アークライトは、素晴らしいボードゲームのカタログ本を作ったり、マニアックなゲームの日本語化を手がけたりとゲーム業界の発展の為に頑張っていたのに、なんでこんなの出したかなあ。ヴァッカリーノが十分に儲かったその後ならいい。でもこの段階でやっちゃいかんでしょ。ほんまにゲーム業界を育てる気があるならね。同人ゲームじゃないんやから。いや、日本の同人ゲームの最近の質の高さをみると、同人ゲームに失礼やな。作者の利益を守ってあげないと、良いデザイナーなんて生まれない。人は霞を食うて生きてるのではなく、やっぱり金銭的見返りというものが必要なんや。昇進したり、褒められたりするのと、給料があがるのとでは人は同じ感情を抱くという。

ゲームはドミニオンそのものなので、前述したように特殊カードの調整不足のところはあるが、おもろい事はおもろい。こういった萌えのメイドが好きで、好きな絵師がいるならドミニオンのファンデッキとして買うてもいいと思うが、出来たら本家のドミニオンを買うてあげて欲しい。そう、これはGeekで上がってるゾンビニオンのようなファンデッキのひとつでしかない。亜流ですらなく、ファンデッキだ。わしゃ、これに対する評価は極めて低い。

実はもっかいやってから書こうと思ったが、miaに拒絶され再度やる機会がほぼなさそうなので半年たった今レビューを書き上げた。

gioco del mondo