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タカラ

2〜6人
20分

宇宙ゲーム

宇宙。それは人類最後のフロンティア。
人は宇宙に憧れ、宇宙に飛び立とうとした。
1969年7月20日、アポロ11号に搭乗したアームストロング船長が初めて月面着陸に成功した。
宇宙に人が到達することが現実となってからは、恒星間飛行を夢見るたくさんの人々が、見果てぬ宇宙への旅路を想像した。

プレイ感

わしのボードゲームの思い出は、そのまま兄とのゲームの思い出となっている。ところが、唯一、兄と共有していないゲームがある。それがこの宇宙ゲームだ。

近所に住んでいた幼馴染がこれを持ってて、遊びに行くたびにこいつをやったもんだ。よくいくおもちゃ屋で250円で叩き売りになってたのを買うたらしい。おもちゃ屋にすれば在庫処分だったのだろうが、あまりにもこのゲームばかりやりに来るので、そいつが「部品こんなになくなってなかったらあげるのになあ」と言われたくらい好きだった。ヤフオクでずっと探していたが、ようやく見つけたと思ったら2万以上もつりあがり、とうとう落札してしまった。ちょっと後悔してるw 昔8000円オーバーで落ちたんやけどなあ。で、当時なんで250円で売ってたのか、手にして分かった。印刷物が入っており発売は1964年頃と思われる。アポロ11号よりも古いのだ。つまりこれを遊んだ子供ってのはわしよりも年配で、そのおもちゃ屋が何年も不良在庫として抱えてたものだったようだ。懇意にしているバイク屋の店長もこれが大好きでやりまくったといっていたので、結構メジャーなゲームだったのかも知れない。前置きはこれくらいにして、とりあえずお試しということでBBと二人プレイをしてみた。


ルールは人生ゲームと同じ、すごろくである。ただ人生ゲームがお金を貯めていくのに対して宇宙ゲームは、基本的にお金を消費していく。お金というと語弊があるが、宇宙ゲームでは、宇宙旅行に必要なものをエネルギー、食料というふうに分けており、これが紙幣の形となっている。これを出発前に、ロケットカードに従って指定の量を貰うのだが、なんと、ロケットによって搭載量が異なっている。エネルギーがたくさんある宇宙船もあれば、食料が多い宇宙船もあるのだ。凄い!


ボード全景。まさに人生ゲームライクだが、最初に貰うお金はロケットによって指示されている。また単位は同一ではなく、食料、エネルギーに分かれている。一番右端の赤いヤツはおなじみの借金ではなく、メーザ証という宇宙指令を受ける時に必要でこのゲーム最重要なオールマイティカードである。人生ゲームの株券のようなヤツは人命救助証と事故防止証。今回わしはパルスロケットのアンドロメダ号


これが宇宙新時代をイメージさせる最新式ルーレットだ! 鉄球を中に入れて、六角形のつまみを回せば、どこかの穴からコロコロっと出てくる。それが進める数だ。左のカード群が宇宙指令で、宇宙指令カードを引くという指示があれば、これを引いて指示を受ける。この宇宙指令がかなり強引で、あっちこっち飛ばされてしまうのだ。もうすぐゴールという時点で、スタート付近に飛ばされたりするw

凄いのはこれだけでなく、ロケットにとって一番大切なパイロットも駒として表されている。こちらも人生ゲームと逆で、増えることなく宇宙の塵となって消えていくのだ。宇宙のなんと恐ろしいことだろう!
まだまだこれだけではない。ロケットには、ドッキング機能が着いていて、アポロ着陸船のように分離させることが出来る。

たまらんでしょ? そう、当時はたまらんかった。わしの好きなのは光子力ロケットで、やたらとエネルギーが多い。まさにスピード命のロケットである。といってもマスの指示でエネルギー札こんだけ消費しなさいとあるだけで直接移動スピードには関係ないが、なんせ、光子力という言葉にメロメロである。マジンガーZも光子力で動くのだから、光子力こそ未来最高の推進エネルギーであるに違いなかった。今からすると、豆球つけただけで、進めるなら苦労はしないなんて思うが、きっともっと未来には光を収束させて進む事が可能になるやも知れん。

ロケットの中には、核融合で進むロケットなどもあり、学研で出てきそうなロケットのオンパレードである。なかでも一番嫌いだったのは、 レッドタイガー号ロケットであり、理由はデブっちょだったからである。しかもその風貌と同じく食料が多いという、なんだか鈍足のジャンボジェット機を想像してしまう。あこがれはやっぱりコンコルドだった。


あちこちに、駒を配置。中でもとりわけ価値の高いのが太陽のところにおかれる宇宙人。そして左下におわすお方こそ、宇宙美人だ!
今回はBBはわしの最もダサイと感じている核融合ロケットのレッドタイガー号。鈍重なイメージだが、食料が多い。このように全て個性を持たせているのは素晴らしい。

このゲームで最も忘れてはならないのがメーザ証。ようは何にでも使えるジョーカーみたいな紙幣なのだが、メーザーっていう響きだけでなんでも出来そうな勢いがある。そういや昔東宝の映画にこれまた未来的な響きを持つメーサー殺獣光線車ちゅう武器があった。調べてみた。どうやらマイクロレーザーのことをメーザーというらしい。造語じゃなかったのね。やるなー! メーザー! これからはなんかやるときはメーザ証発行とか言おう。


出発進行。ロケットの先に宇宙カプセル横には4人の乗組員が配置される。まずは宇宙ステーションを目指してスタート。赤い升目に宇宙カプセルを置いてくるのが使命だ。盤上には、スプートニク1号やアポロもあれば、宇宙怪獣付近の宇宙ステーションのように、もうギザギザがありすぎて明らかにおかしいやろ! って絵もあるw でも宇宙に使った、使うであろう色んなものが描かれているのが素晴らしい。

ほんまに久しぶりに箱を開けて、BBと二人でやってみた。宇宙人や鉱石の駒がある。これの価値が非常に高く、手にしただけでわくわくするのだ。中でも一番は、宇宙美人というエイリアンが要ることである。宇宙美人である。直訳すればミスユニバースだ。まんま地球にもいるのだが、こちらはれっきとした宇宙公認(?)の宇宙美人である。幼なじみが持っていた宇宙美人は犬が脚を咬んでしまってまともに立たなかった思い出があるが、ガキの頃は宇宙美人のすごさが解らず、手に入れて一番うれしかったのはタコ型の宇宙怪獣であった。まあ、連れて帰ると一番価値の高いのは宇宙人であるが、この宇宙怪獣だけは宇宙ロケットの先端に乗せて帰る事が出来る。今なら、宇宙美人で一発こきたいところだ。


たこ型の宇宙怪獣は、このように捕まえるとロケットに差すのだ。わしがこの宇宙怪獣を見事とらえた。絵の横には、名前と国名が書かれている凝りようだ。いや、でもスプートニク2号とか書かれてる絵の人工衛星(?)って見たことないんすけど?? とこのように嘘と真実が混ざっているw

しかしながら、子供の冒険心を最も満たしたものといえば、なんといっても功労賞。ネックレスになっており本物の功労賞よろしく首に下げる仕様になっているのだ。これはいくつもあり、宇宙指令を達成したり、マスの指示によって貰う事が出来る。たくさん首からかけてジャラジャラさせるだけで、ほんまに評価された感覚があって得意満面なのだ。功労という言葉はこのゲームで覚えた。


宇宙遊泳プール。ここで隊員1名を宇宙遊泳させ、ほったらかしにして最後に回収するというとてつもない人権無視で無謀な宇宙プランである。この役目をする人はきっとあみだくじかなんかで決めたのだろう。

宇宙指令カードというのがあって、その依頼を達成すれば、エネルギーカードを貰えたり先の功労賞を貰えたりするが、今回やってみて思ったのは、あちこちに駒を移動させる指令が多くて、何がなんやら解らなくなるって事だった。もうすぐ地球に帰還すると思いきや、いきなりスタート付近に戻されたりと、ちょっとここらへんは物語性に乏しい。特に地球から飛び立つ時に、きちんと宇宙ロケットの歴史とブースターの切り離しまで描かれているのであまりにも残念である。ここらはちょっと調整したいところ。


着陸間際のわし。ここでは、乗組員がひとり欠けてるのが解る。宇宙遊泳に置き去りにしてしまったのだ。回収結構むずいのよ。

昔の記憶では、何故かパイロットが全員帰還出来なかった気がしたが、今回やってみてようやく解った。パイロットが死ぬのはもちろんの事、必ず宇宙遊泳で隊員一人を出してしまい、パイロットがいなくなるように出来ているのだ。うまく行けば、無事帰還出来るマスもあるのだが、これはなかなかに難しい。さらに、カプセル型ロケットってのもあって、これまた宇宙でドッキング失敗してしまうようになっている。

そう、宇宙は危険に充ち満ちているのだ!

ゲーム時間は宇宙指令のおかげであちこち飛びまくってしまったが、非常に短く二人だと20分ほどで終わる。そして帰還して、持ち帰ったものを計算するときが最も楽しい時だ。


先に宇宙怪獣を捕まえて帰還しているBB。なんと乗組員全員生還した。これは結構むずいのよ。わしももう着陸態勢に入っている。乗組員二人になってるけどw


わし「宇宙怪獣、ウラン鉱脈、それと使用済の宇宙美人(謎)ね」 宇宙美人は先が凸型になっており立てる事が出来ない。昔の友人のヤツはこの部分が犬に噛まれてガシガシになってたなあ。それよりも、この功労賞の数を見よ!


どう見てもメフィラス星人のぱくりとしか思えない宇宙人。

不思議だったのは、鉱脈である。金色と銀色があるのだが、何故か銀の方が高い。理由は銀色はウランで、金色は金鉱だったからだ。なるほど。この鉱脈を手にするのが非常に好きで、アポロ月着陸船のような形をしているだけで、満足度が高い。これを手に入れただけで大喜びしたものだ。

宇宙カプセル、乗組員、宇宙人、鉱脈など全てお金(というか現代風に言えば勝利ポイント)に換算する。そして一番お金の多いプレイヤーが勝ちだ。乗組員の価値は安くもなく高くもなく妥当といったところ。というわけで勝者はわし。久しぶりの功労賞は、頭のでかくなった今では、首に通す事が出来なかったとさ。ちゃんちゃん。


これらがアイテム全部。宇宙ロケットは当然6種類ある。わしの好きなのは左上の光子力ロケットのライテングスター号だ。

BBのコメント

これ、当時やってたら楽しかったやろうな。夢がいっぱい詰まったゲームやったわ。

ソマーリオ

まあ、確かに今やってみたら、たいしておもろなかったというのは真実。これはまあしょうがないか。あくまで大人の目線からこのゲームを紐解くと、男の子にとって一番大切なものがこのゲームには全て存在しているように思う。

宇宙という未来指向型のSFアドベンチャーであるという事。怪獣や宇宙人、鉱物資源などを持って帰るコレクション性の高さ。アドベンチャーというからには死と隣り合わせであるという危険までもこのゲームにはある。そしておのおの性能が違い、科学的根拠のある推進装置のあるロケットは自分のロケットという満足感を与えた。宇宙時代にふさわしい非常に凝った仕掛けルーレットと、ロケットの歴史までボードには描かれている。さらには人が名誉を感じる功労賞というバッジは、きらきらと金色に輝き、実際にそれをたくさん首にかけることが出来るという優越感。合体分離するロケット駒。とどめは漫画付き。もうありとあらゆる男の子の夢がこのゲームには詰まっている。


これが付録冊子。結構分厚い。


中身は漫画になっている。

大阪万博の時にタイムカプセルってのが埋められたが、このゲームを入れといても良かったんじゃなかろうかとさえ思う。それくらい当時の憧れが全て詰まっているのだ。よくぞまあ、こんな凄いゲームを出したものだと感心することしきり。冊子には、アポロロケット計画はどのようにするか、みたいなFAQまである。ここまでくるとどう表現していいのか言葉さえない。

アメリカンゲームのひとつではあるが、明らかに内容は日本オリジナルであり、人生ゲームから派生させた唯一の日本版人生ゲームだとわしゃ思っている。このゲームをやることで、あのとき思い描いていた夢が再び蘇り、つまらない大人になってしまったと嘆いている人に、もう一度やる気と失った夢を与えてくれる、そんなゲームなのだ。ちなみにこのゲームの宇宙観こそ、2001年宇宙の旅の宇宙観そのものだ。どちらもSFなのだが非常に懐かしい気持ちにさせてくれる宇宙なのだ。そういう風にmiaに説明すると、なんでもそういうのをレトロフューチャーというらしい。

ちなみにこういった無機質の宇宙空間とパイオニアスピリッツを描いたアランムーンのアンドロメダも、ゲーム性はまったく違うがある意味同じような雰囲気がある。ゲームとしての洗練度が明らかにアンドロメダの方が上なのだが、宇宙ゲームには60年代70年代の懐かしさや現実の重みみたいなのを感じる事が出来る。他にもミッションレッドプラネットも同じようにレトロフューチャーだろう。

gioco del mondo