Steve Finn

Doctor Finn's Card Company

2〜4人
20分

ビブリオス -写本と修道士-

駿河屋で購入
中世の修道院では、知の遺産である図書館を作ろうと競い合っていた。
必要なのは、勤勉なる働き手と写字室の備品類である。
修道院長は、それらを確保するために寄進されたお金を使ってやりくりしなくてはならない。
ときには強力な司教の手助けを受けて、キリスト教世界で最大の図書館を建設するのが目的だ。

プレイ感

この写本と修道士はアメリカ人の同人ゲームで、洋々雑記のブログを読んで、個人輸入してみる事にした。薔薇の名前ファンとしてはこれは見逃せない雰囲気だったのだ。mia、OEC、コツミとの4人プレイにて。
ちなみにその後ビブリオスという名前で一般流通して人気を博しているようなので、邦題を入れ替えた。わしの持ってるのは同人時代バージョンの写本と修道士である。


このゲームは2つのフェイズに明確に分かれている。最初の寄進フェイズでは、手番プレイヤーは、山札から1枚見て、それを、自分か(1枚)、競り用にか(1枚)、他のプレイヤー用(公開する)にかを分ける。それをプレイヤー人数+1回、1枚ずつ行う。それが完了したら、左隣から順番に他のプレイヤー用に分けたカードを1枚ずつ手札にする。
要は、各プレイヤーは手札1枚ずつ持ち、競り用カードが1枚裏向きに置かれる状態になればいい。
これが終われば手番を交代して同様に行う。


各カードには価値がサイコロによって示されている。このサイコロは転がすものではなく、ただ価値を示すマーカーとしてのみ使われる。これはゲーム中上がったり下がったりする。左の2つが修道院の働き手を表しており修飾家(赤)と写字生(黒)。間を挟んで必要な物を表しており、原稿(緑)、巻物(茶)、備品(青)となっている。プレイヤーはそれぞれ修道院長となり、最高の図書館を作るのが目的だ。カードの品質は同人ゲームとしてはかなりいい出来である。

皆に説明しても意味が分らなかったようなので、まずはわしからスタートした。カードを1枚めくる。金貨(橙)3のカードである。これはわしがもろとこ。で、2枚目をめくる。備品の1である。これは公開して他のプレイヤー用にしよう。そして3枚目、う、またしても金貨3。これは誰にも渡したくないので、競り用に裏向きに置く。

とこんな風にしていくわけだ。1枚ずつ判定していくところがポイント。だからこんな事にもなる。

じゃ、4枚目、写字生の4やとお!! ショックやあ、わしの手札は配分されてるし、競り用にも既に配分されているので、これは他のプレイヤー用に配分せなあかん。

皆「サービス?」

皆は、他のプレイヤー用に置かれるカードしか見ることが出来ないので、この葛藤は手番プレイヤーにしか解らないのだ。

こうして他のプレイヤー用に3枚のカードが出ると、左隣のmiaから、好きなカードを取って手札にしていく。これでわしの手番は終了だ。全員、手札1枚ずつと競り用に裏向けに1枚おいている。カード内容を全て知っているのは手番プレイヤーのわしのみだ。

最初やった頃、司教(黄)が人気がなかった。司教のカードってのは手札にした時点ですぐに公開し、装飾家、写字生、原稿、巻物、備品と5種類ある価値を上下させる事が出来る。自分の集めているものの価値を上げればいい(カードと対応している)のだが、最初はまだ集まっていないのか、どれを上下させたらいいのか解らなかったのだ。


司教(黄)は価値を上げ下げするカードで即座に実行する。今回の司教は価値を2つ下げるというもので、一番左の修飾家の価値を1にされた。ただ今回のこれはルール間違いで、ほんまは各1つずつしか下げられないのだ。

mia「じゃ、わたしの番ね。これは公開、これも公開、あ、これは貰う、うーん、競り用、最後は公開だけね」

明らかに良いカードが来たら、さっと自分の懐にねじ込む手腕は、さすがといいたい。

このシステムのポイントは、一番良いと思われるカードを自分のカードにし、2番目に良いと思われるカードを競り用にするという事だ。人である、写字生、装飾家は2〜4のカードがあり、他の3つは1か2しかないので最高のカードがきたらさっと自分の手札にすればいい。ちなみに最初にわしが取ったゴールドは1〜3なので、3だったから素早く取ったまでだ。


ここまできたらほとんどシステムは解ったように思う。最終的に点数の合計の一番高い人がボード上の価値の得点を総取りするシステムだ。つまり勝てるカードと負けるカードをしっかりと判断しなければならない。第一フェイズよりもアツくなるのが、競り用に裏向きに置いておかれたカードを手に入れる競りフェイズである。

全員、何かよう解らんまま、このように配分を繰り返していく。山札がなくなったら、次の競りフェイズに移行する。

競りフェイズ用に分けられた山札をシャッフルして、手番プレイヤーが1枚めくる。左隣から、手持ちのゴールドの価値を使って競っていくのだ。


今回は司教がほとんど競り用に入れられてしまったようだ。第二フェイズで激しく値動きが変化する事になる。

最初に出たのは司教+2。2つのものの価値を1段階ずつあげる事が出来る。

ちょっと欲しいかも。

mia「1」

コツミ「2」

OEC「パス」

わし「3」

そこから全員パス。わしは3のゴールドカードをほかして、司教を手に入れ、すぐに効果を発揮。わしががっつり持ってるのは、巻物である。巻物の価値を2つあげて5にした。

※実はこのときにも先に書いたルールをすっかり忘れてて、1つの価値を2段階あげてしまった。価値は一気に2段階の上下は出来ず1つずつ適用する。


4の写字生を手に入れてほくほく。と言いたいところだが、これ1枚ではどうしようもない。結局手放すことになった。

次はmiaの番。カードをめくって競り開始。

ゴールドの2である。

ゴールドが競りカードになった場合、手札から枚数を出して競る。

コツミ「じゃ、1枚」

OEC「2枚」

わし「3枚はようだせん。パス」

mia「パス」

コツミ「パス」

OEC「え、どうするんですか?」

わし「自分の手札から裏向きに2枚、場に出してゴールドを手札にしたらええ」

OEC「なるほど!」

このようにゴールドが競りになった場合、競りに出てくるであろう集めたいアイテムの資金にすればいいのだ。このゲームの勝利得点は、最終的に各アイテムの数字合計がトップの人が、価値を総取りするシステムなので、集まりが悪いカードってのは何の役にも立たない。ので、そういうカードはゴールドにどんどん変えていけばいい。

よう出来てるなあ。と感心した。

OEC「じゃ、あきおさんから」

わし「3!」

mia「いきなり3!?」



コツミ「じゃ、競りどうぞ」

OEC「1」

わし「3!」

mia「なんで一気にあげる!」

理由があるんじゃ。わしのゴールドって全部3なんよな。お釣りは出んから、3単位だ。世界のナベアツがこの状況になったら大喜びだろう。
とは言うても多めに払っても悪くはないので、相手がくじけない額の1とかもやってみたりはした。さすがに6はよう言わんけど。


わしの手札。見事に3のゴールドばかり。ここまできたら勝負の札は修飾家(赤)と備品(青)だ。

この競りでおもろいのは、自分が持ってない値を言ってもルール上認められている事。ゴールドが足りなくても宣言していいのだ。ただし、それで間違って落札してしまった場合、他のプレイヤーからランダムに1枚ずつ手札を抜かれるというキツーイお仕置きが待っている。今回は誰もならなかったから解らないが、ひょっとしたらOEC当り、ブラフを言うたかも知れん。

わしの勝ち目はひたすら巻物だけ。手札それしかない。後は価値が1になってしまった装飾家もそこそこ持っていたが、微妙な感じである。

司教のマイナス1が出た。

やべぇ! これ落札しとかんと確実に価値が上がってる巻物を下げられてまう。

わし「3!」

一同「また、3からかい!」

皆、あまりわしの危機感が解らなかったようで、3で落札出来た。そして、適当な価値を下げた。

ほっ

わし「じゃ、次の競りね。司教マイナス2…_| ̄|○

だ、誰じゃー、司教ばっかり競りに仕込んだんは!

結局これは落札出来ずに、コツミに備品を下げられてしもうた。

(|| ゜Д゜)ガーン!!


まじかいな! せっかく6あった備品の価値が5に。これはかなり厳しいかも。

こうして全ての競りが終了。

1つずつ誰が一番合計が多いかチェック。トップがサイコロの目の価値を総取りするが、同点だった場合、カードに描かれているアルファベットの若い方がトップとなる。

な、なんとコツミが2箇所においてトップを取り、勝利。

所要時間20分


結局、備品しか取れませんでした。さらに下げられ4点で二位。残念。

なんか解ったという事ですかさず2回戦目。

今度はmiaが写字生でコツミと同点で争ったが、アルファベットの差でmiaが取り、2箇所制覇して、miaの勝利。当然といえば当然だが、4人プレイやと5箇所なので2箇所取ったらほぼ勝利出来るようだ。

コツミのコメント

今回一番面白かったです。カードも良いし、スムーズに進んだような(あきお先生のおかげかな?)。私は呪いのミイラとこのゲームが欲しい!

OECのコメント

(説明)
アメリカの同人カードゲーム。
ブースタードラフトっぽいフェイズと、競りとでカードを獲得して、装飾家、写字生、原稿、巻物、備品なるイコンを獲得し、その総合価値で勝負する。 4人で2回。
(感想)
序盤のフェイズは、雰囲気満載なイラストのカードを手に、タンタンと進んでいくものの、水面下の思惑の動きが面白い。山から引いたカードが単に自分と他の人との手札になるだけじゃなく、後で自分も参加する競り用のカードも選別するというのが、なんとも言えない。
前半の攻撃的保留も守備的保留も、思惑が飛び交う競りの前では保留は保留。後半の競りフェイズは、まさにそんな感じ。意外とここでどんでん返しが起こってたりする。
が、しかし、どんでん返しに参加できない奴が一人。はい、僕です。前回ゲーム会の『楽しい動物園』よろしく、ホントに競りが上手くない。両方とも最下位(同立含む)。
システムは同人とは思えない洗練されたもの。若干上下するイコンの価値、見え隠れする他人の思惑、そして他人に知られにくい経済力で望む競り。絶妙のバランスで立ってる。ただ、そのマネージメントが下手なのは、個人の問題です。競りゲーム嫌いじゃないんだけどなーw

miaのコメント

シャガールや、ゴッホみたいな絵柄が可愛い。同人ゲームとのことで、それほど期待してなかったけど面白かった。

ソマーリオ

これ、ほんまに同人ゲームか? っていうくらいの完成度の高さに驚いた。最初の寄進フェイズのジレンマや、競りフェイズのジレンマなど、見事としか言いようがないくらい完成されている。このままAmigoあたりに持ち込めば即座に商品化出来そうだ。

人である写字生、装飾家は、2〜4というばらつきがあるので読みにくいが、残りの3つは1か2しかなくほとんど1なので、自分の持ってる枚数から勝負を予想できる。だからといって確実に読み切れないってのは、ゲームをやる前にランダムにカードを抜いてしまうからだ。

そして司教により価値の上下がゲームをますます解らなくする。といっても4人プレイなら上記の通り、2箇所抑えればほぼ勝ててしまうので、その部分だけは調整が必要かも知れない。3人以下だと司教の効果は絶大となる筈だ。

おもろいのは競りフェイズの使い方。ゴールドカードを使って競りをするのだが、中にはゴールドカード自身が競りカードとなって現れるケースがある。手持ちのゴールドが心許ない場合、あるいは不要なカードがある場合、枚数を使って競り落とすという考え方が、誠にもって素晴らしい。

やってることは非常に軽快で1ゲーム僅か20分ほどで終わるゲームなのだが、やり込めばやり込むほど、ジレンマが解ってきてそれが強烈になっていくデザインとなっている。

コンポーネントは、VHSのケースのような箱に入っており、なかなか悪くない。カードの絵柄は、シャガール、ゴッホ、ゴーギャン風の絵でカトリック教会の厳粛なムードがあって、雰囲気が良く出ている。カードの質も悪くなく、このクオリティは同人ゲームでは最高じゃないかと思われる。

最初見たとき、サイコロが入っていたので、サイコロゲームかとちょっとがっかりしたものだが、サイコロはサイコロとして使うのではなく、価値マーカーとして使うのを知ってほっとした。確かにマーカーで価値を表示した方がいいと思うのだが、サイコロの方が安価に出来たのかも知れない。出来ればサイコロの色もカードの色と対応させておいてくれれば、得点計算のときにサイコロを手元に引き寄せるだけでもっと簡略化出来たが、それは贅沢というものだろう。今度、自分で色サイコロを買うてこよう。

もし価値マーカーにサイコロを使うという意味があるとすれば、最初の価値を一様に3ではなく、サイコロを振って初期の価値を決めていけばヴァリアントとしてはおもろいかも知れない。

欲しければ、自分で個人輸入するしかないが、日本へだと送料込みで28ドルちょいで送ってくれる。本人のサイトで、送付先をOtherにすれば、単価が上がり日本向けの送料込みの値段になる。日本語訳はこちらで手に入ります。

と書いたら、とあるメーカーから商品として発売されることになったようだ。うーむ、さすが。わしが手に入れた時も在庫切れで次の再販を待って手に入れたのだが、このレベルだと確かにメーカーが目をつけるのも当たり前だ。
テーマが変わるかどうかは不明なのだが、例えテーマが変わったとしてもシステムは完成されているので楽しめると思う。

薔薇の名前ファンばかりではなく、競りゲームが欲しいと思った人にも十分愉しませてくれる内容だ。相場はやや難しいが、手札に選択肢はそれほどないので、そんなに苦労する事はないだろう。
ちなみにGeekでもかなりの高評価をされている。

gioco del mondo