佐伯 拓也

ゲームフィールド

3〜4人
15分

落水邸物語

あるところにレイトという建築家がいました。ある日、友人から別荘の設計を頼まれ、建設予定地となる山林の下見をしていました。
どのような家を建てようか悩んだレイトは友人に尋ねました。
「君はどこに座りたい?」
すると友人は冗談めかして目の前を流れ落ちる滝壺を指さしました。
その冗談を真に受けたレイトはしばらくその場所を見つめていました。
こうして滝の水を受けてそびえ立つ世にも珍しい建物が出来上がったのです。

プレイ感

2006年のゲームマーケットで話題となり、ゲームフィールドが一般発売した。ネットでの評判が非常に高かったので、すぐに購入した。で、ようやくタナカマ夫妻とやってみることにした。
今回は3人プレイなので、1人はノンプレイヤーキャラクターとして登場させる。


簡単にどういったゲームかを説明すると、プロット方式のマストフォロートリックテイキングである。

最初に得点カードの配置を行う。
1から8までのカードが3色あり、これを全員に配りきる。今回は1人はノンプレイヤーなので、得点カードの横に1枚ずつおき、残りは配る。手札は6枚になる。
手番は親から順番に、得点カードの横、一番下から順番に自分のゾーンにカードを置いていく。
全てが埋まると、結果をみていくのだが、これは上から順番にトリックをみていくのだ。


縦列に得点カード、写真に写っていないが横列に自分のカードをおく。それから下から順に得点カードの横に手札を配置していくのだ。今回は3人プレイなのでノンプレイヤーキャラクターが一番左に入る。こいつは先にすべてのカードを置かれた状態であるが、一番上だけは伏せ情報だ。そういった意味でこのゲームは本来は4人プレイ専用なのだ。

トリックを取ったプレイヤーは、得点カードを取る。
一番上でトリックを取ったプレイヤーが2段目でリードプレイヤーとなる。これを一番下まで行う。
要は逆順にカードを先に配置し(プロット)、マストフォローのトリックテイクを行うという事だ。

得点カードには、赤色と青色のカードがあり、赤色の合計と青色の合計との差異が得点となるのだ。
そのまま得点になるわけではないのが要注意。
これを人数分やる。

ゲームスタート。

はっきり言うて、下の方のトリックは上の影響次第でどうとでもなるので、なんだかよう解らないまま配置していく。

ノンプレイヤーキャラクターの1段目だけはカードが伏せられているので、常にリードプレイヤーのこいつ次第で趨勢が一発で決まる。


これが一番上の横列。このようにすべてのカードが使われてすべて埋まる。ノンプレイヤーが親として最初の1枚をめくってそれぞれの段落ごとにトリック勝負をしていく。マストフォローなので、親と色が違ってたら即負けだ。

1段目わしがノンプレイヤーを上回りトリックを取る。
2段目親のわしがトリックを取る。
3段目親のわしがトリックを取る。
4段目親のわしがトリックを取る。
5段目親のわしがトリックを取る。
6段目親のわしがトリックを取る。

オイオイ…
なんせマストフォローのルールなので、親、圧倒的に強い。1段目の親をとりさえすれば、あれよあれよというまに一気に全部確保してしまうのだ。


よっしゃぁ!! 全取り! 勝ったな。

わし「得点凄いんちゃうの?」

タナカマ「いや、あきおさん0点です」

わし「なんで??」

タナカマ「青色と赤色の合計点の差なんで、全部取ると0です」

(|| ゜Д゜)ガーン!!

タナカマ「僕らは、1度もトリック取ってないのでルールにより3点貰えます」

(|| ゜Д゜)ガーン!!

2回目。

同様に、親プレイヤーがあれよあれよと一網打尽にする。
1回目とは違い、2手に分かれたが基本的な流れは一網打尽だ。

わし「これ」

タナカマ「惜しいですね」

そう、やってることは非常に面白いのだが、親の強さが圧倒的過ぎてゲームにならないのだ。


こうなるとノンプレイヤー、ノンプレイヤー、白となってトリックを取るという事だ。

3回目もあれこれ考えつつ、なるべく得点するように置いてみるが、なんせケツから置いていくので、まったく思うように取れない。

本来ならこれで終わりなのだが、あまりにも惜しい。

タナカマ「上級ルールを入れてみますか」

上級ルールでは、長考カードを各自1枚ずつ持つ。これを配置することで、その段に置くカードを一旦保留にできるのだ。

ただ最終的にそこにカードが置かれるので、親圧勝という基本的なシステムは覆せず、それほど変わらない結果となった。ここでこのまま終わらせるには惜しいので知恵を出し合う事になった。

わし「切り札をありにしよう」

ということで赤色を切り札に。
切り札が強すぎてそれで決まってしまった。

タナカマ「まぎれが欲しいんですよね」

わし「そうそう」

てれこに裏向けに配置をやってみる。
しかし、裏向けだろうが親の強さは相変わらずでやっぱり同様の結果に。

ここで時間切れ。

そうそう、実際の所要時間は15分。

ソマーリオ

なんや、このクソ惜しいシステムは!?
猛烈に惜しい。あとほんの少し手を加えるだけで、猛烈に面白くなるのは確実である。
その1手が解らない。誰か考えて欲しい。

内容は、物凄くオリジナリティ溢れており、これが同人なのかと驚く。
残念ながらゲームとして落とし込む事が出来ていないように思うのだが、この斬新なシステムはそんなものを吹き飛ばす力があり、初心者よりもゲーマーに受けがいいと思う。

これが出た2006年前後は、同人ゲームは著作権無視、システムパクって改悪なゲームがいっぱいあり、まだほんまの同人レベルであった時代だった。Living Dead Till Dawnなんて、勝ち負けもへったくれもない無茶苦茶なゲームもあった。それがまた妙な味わいがあって、前提条件として「同人ゲームとしては」という判断で、おもろいおもろくないと判断したもんだった。
そういう物の見方をすれば、こいつは確実にである。考えてみればこのピーキーなゲームバランスはLiving Dead Till Dawnに似てるかも知れない。

ただそれからドイツゲームのシステムが研究された甲斐あって、レベルが異常にあがってしまい(未だに真の同人レベルというのは存在したとしても)、商用とほとんど差がなくなりつつある。実際に同人と商用のあいのこである街コロはボドゲ最高位であるドイツゲーム大賞にノミネートされたくらいだ。ピンキリまであるといった印象である。
そういった現代情勢からは、をあげるよりも、このシステムをほんの少し改良すれば、街コロのようにノミネートくらいされるんじゃないかと思う。以前ヤポンブランドとして海外に出した事があるようだが、まだまだこの時は、同人レベルから脱却してなかったように思う。

プロット式のトリックテイクといえば、最近、ロボトリノという同人をやったが、短期プロットでなんとかゲーム性を保っているロボトリノに対して、システムの様々な工夫という点では圧倒的にこちらに軍配があがる。こんなシステムもあるんだという意味で、熟練ゲーマーには一度やってみて欲しい。
或いはもう少しやり込めば、勝つコツみたいなのが見えてくるのかも。

gioco del mondo