中村 誠

ワンドロー

1~4人用
40分

はやぶさ君の冒険

はやぶさ(MUSES-C)は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)によって打ち上げられ、小惑星イトカワでサンプルを採取、地球に持ち帰るというミッションをあたえられていました。
あなたたちは、はやぶさの運用チームとなります。
はやぶさに降りかかるさまざまなトラブルをやりすごし、無事地球まで帰還させることが、ゲームの目的です。






プレイ感

日本が誇る歴史的快挙を成し遂げたはやぶさの旅を協力ゲームにした。基本は4人プレイで行うので、二人の場合は、特殊ルールが存在する。昔、NHKでやってたロケットの番組をみて以来ロケット大好きで、アポロの偉業を描いた『人類、月に立つ』はDVDも本も持ってる。まあ、そんな話はともかくmiaと二人プレイにて。


手札から同時にイオンエンジンのカードを出す。イオンエンジンカードにはA~Dがあり、被ると破棄される。被らなかったものだけが、推進力として場に並べられる。これを規定枚数そろえると1フェイズがクリアで、次の目的地に向かえる。これは二人だと非常に有利なルールなので、二人の場合、他に誰かが居ると仮定して、山札から2枚めくられる事になる。

他にトラブルカードというのがあり、これを2枚引くと好きな方のトラブルを発生させなければならない。トラブルにはエンジン停止とか、クリティカルエラーなど効果の違うものがある。


基本はこのようにイオンエンジンABCDカード。これを同時に1枚ずつだす。バッティングしなければ、場にカードを置いていく。

もうひとつ、はやぶさを応援するものとして技術カードというのもある。

A~Dのカードはゲームの肝なので、これだけは相手プレイヤーに教える事が出来ないルールになってる。

先に書いておかなければならない事がある。それは非常に簡単で、あっさりと何度も地球に帰還する事が出来た。おかしいと思ってルールを読み返すと、二人プレイの場合、カードが何枚か先に抜かなければならなかったのだ。通りで楽すぎた。


規定枚数がたまればフェイズカードを進めて次のフェイズへ。これを何度か繰り返すと地球へ帰還イベントが発生する。何フェイズ繰り返すかはシナリオの難易度によって違う。

ちゅうわけで、イオンエンジン停止というシナリオをやることにした。このゲームでは、難易度に従ってシナリオがいくつか用意されており、最初に入れるトラブルカードや、フェイズクリアの枚数(例えば初級では8枚だが、このシナリオでは9枚)が違っている。イオンエンジン停止シナリオは、中難度のシナリオである。

最初に入れるトラブルカードはイオンエンジン停止A~Dの4枚。このトラブルは、書いてある通りイオンエンジンが停止になり、その後そのカードを出しても推進力に足せないというもの。


これが技術カード。難易度があって、サイコロの目で正否を判定する。イオンエンジンカードが場にたまると、こればっかりが手札に入ってきてむしろうっとおしかったりするのはなんとかならんか。

まず最初の地球帰還まで30億キロのフェイズの時点でAエンジン停止。

一旦停止すると、次々にトラブルに見舞われる事になる。
何故なら、1枚も推進力にならないと罰則として、トラブルカード予備札から1枚山札に混入されるのだ。エンジン停止してしまうと、クリアする為に3枚のエンジンで推進しなくてはならなくなる。そう、トラブルがトラブルを呼ぶことになるのだ。

Dエンジンも停止してから、CもBも停止するのにまったく時間は掛からなかった。

結局イトカワにたどり着く事すら出来ずにゲーム終了。

わし「これ、もうちょい簡単なシナリオでないとあかんのとちゃうか?」

という事で、一つ下のシナリオにて再挑戦。


こちらがトラブルカード。1枚なら握りつぶせるが、2枚引いてしまうとどちらかを発動させなければならなくなる。

ポイントはトラブルに対する対応なのだが、それ以上にイオンエンジンさえ順調ならトラブルが増える事はない。この部分でどうしても暗黙の相手に解るようなブロックサインを出してしまうのだ。
例えば、Aを立て続けに出すとか。


次々にトラブルが発生してエンジンがどんどん停止。こうなるともう無理。

その部分が一番話し合いたいところなのに、話し合ってはいけないというのはセイラムの魔法使いでも同じだった。とはいっても完全に相手に伝わるかどうかは解らないし、手札にもよるので完璧に決まる訳ではないが、なんとなく気分が滅入るのだ。

トラブル対処については、まあ、そんなに話し合う事もなく、「今、Bエンジン止められたら困るから、Cエンジンにしよう」とあっさりと決まる。もっと人数が増えたら話し合う機会が多くなるだろうが、二人やとこんな程度である。

わし「もうすぐイトカワ到着や。今度こそ持って帰るぞ!」

mia「ほんと、頼む。今度こそ」


イトカワ到着。フェイズカードはこのようにはやぶさが体験した物語となっている。

というのは、今まで枚数を抜くのを忘れて簡単にクリアしたにも関わらず、ただの一度もイトカワから持ち帰っていないのだ。全て失敗。ただこのゲームは地球に帰還出来たら勝利となっている。

わし「よしミネルバきた」

ミネルバとはイトカワから物質を持ち帰る時に難易度を大幅に下げる機構なのだ。これは技術カードに混じっており、ミネルバ射出さえ成功すれば、楽々とイトカワ物質を持って帰れる。

mia「今度こそ、大丈夫?」

なぜ今度こそと念を押されるかは、過去、何度もミネルバ射出失敗のさいころの目を振っていたからである。


これはターゲットマーカーといって、同じようにイトカワからの物質を取れやすくするカード。

わし「いけ…失敗」

mia「阿呆か!!」

わし「しゃあないやんけ」

mia「大体、自分だけが得するゲームの時は異常にさいころの目良いくせに、皆でやるときはこれか?」

わし「阿呆、まだ失敗と限った訳ちゃうわ。ミネルバなしでも持って帰ったらええんやろが」

ほとんどの技術カードには難易度設定があって、書いてある目以上の目を出せば成功である。
またイトカワの採取に関してもそれがあり、難易度6である。つまり6の目だけが成功という超高難度なのだ。

わし「いけ、…1。すまん」

mia「またなんもなしぃ?」


大気圏突入!

結局、そのまま地球に帰還成功して勝利。

ばんざーい、ばんざーい!

mia「なんか腑に落ちない勝利だな」

所要時間40分

miaのコメント

まあまあかな。特につまらなくもなく、楽しくもなく。
ただ最近はやぶさの話題があるたびに、何故かその冒険物語をよく知ってるのはこのゲームのおかげ。

ソマーリオ

かなり期待してただけに、肩すかしを食らった気分だ。ファンデッキとしては、はやぶさが直面したトラブルの勉強にもなるので悪くないと思う。
ただ残念ながら、他のドイツゲームと並んで純粋にゲームとして楽しめるかというと、セールスは見あたらない。

イオンエンジントラブルのシナリオがたまたまそうなのかも知れないが、一度、トラブルが発生すると一気にゲームオーバーへの道を進む。あれこれ対策を考えるよりも早く、起きたらすぐに潰すくらいの勢いでないと駄目だった。
また技術カードを選べるのだが、ある程度イオンエンジンカードが場にたまると必然とそればっかりになってどうでもよくなってくる。全然嬉しくないのだ。

トラブルが起きないようにあらかじめ手を打っておくという方法が勝つ秘訣で、そうなるとトラブルが起きないか、即座に解決するかとなって、ゲームとしてのカタルシスが無くなってしまうのだ。こういうゲームに重要なのはずばりドラマ性だろう。それが無くてははやぶさ君の冒険にあらずではないだろうか。

トラブルの解決難易度曲線があまりにも急激すぎるバランスが問題なのだ。一つ目のトラブルが発生すると指数関数的に一気に難易度が跳ね上がる。

これはあくまでイオンエンジン停止のシナリオの印象の強さから書いてる。成功したシナリオでは、トラブルを発生させないように行動したので今度はドラマ性が失われてしまった。勝つにはむしろトラブルを解決するのではなく、発生しないのが大きな要因となっているように思う。

またレビュー中、再三繰り返してるが、イオンエンジンの事を言えないのは、そこが協力の根本であるが故に大きな違和感を感じる。協力ゲームの名作パンデミックと比べるとその差は一目瞭然だろう。協力ゲームの一番楽しい部分を無くしてしまった。ちなみにセイラムの魔法使いでも同じように論点がずれてしまっている。
協力感なし、むしろ、バッティングしたらアウトなのだからライバルである。アナログゲームだからこそ協力というのは人間の直感的感覚でないといけない。これはその感覚を完全に無視しており、まったく協力してるように感じない。

とはいえ、ゲームとしてのハードルを低く見積もれば、カードの出来はよく、歴史的快挙であったはやぶさについて、子供と話が出来る教育価値の高いゲームだと思う。miaの言うようにはやぶさのことを能動的に調べた訳でもなく、よく知らないと本人は思っているのに何故か実体験したかのようによく知ってる自分に驚く。残念ながらそういう価値しか見いだせなかった。

gioco del mondo