Michael Rieneck

KOSMOS

2〜4人
70分

セイラムの魔法使い

セイラムには、魔法使いロバートクレイヴンが住んでいる。
ロバートは、太古の地球に旧支配者と呼ばれる神が存在する事を魔導書から知った。
旧支配者と呼ばれる禍々しい神は、ルルイエの海に沈められその力を封じ込められているものの狂信者たちが神を復活させようと動き始めていた。
もし旧支配者が蘇れば、人類は滅亡してしまうだろう。
ロバートは、ミスカトニック大学に集まった学生たちと力を合わせて神を封印する絶望的な戦いに挑む決意をした。

プレイ感

かなり昔からクトゥルフものってのはマニアによって延々と受け継がれている。今の若い世代もラブクラフトが想像したコスミックホラーに魅了されているのには驚くばかりだ。かくいうわしも若い頃ホビージャパンに散々そそのかされて、クトゥルフ神話のRPGを買い、HPラブクラフト全集を読んだもんだ。あまり好きでないリーネック作品だが、絵があまりにも禍々しくて、買うてしまった。miaと二人プレイにて。


全部で6箇所あるエリアで、次元の裂け目がある。これを全て対応したアーティファクトで封印して、最後にミスカトニック大学で復活しようとしている旧支配者を封印すればプレイヤーの勝利である。

手番は、場所カードを出して移動して、アイテムを取ったり使ったりして、旧支配者の眷属を退治したり、裂け目かどうかを調べたり、ルルイエに封印されている旧支配者を特定したりする。場所カードはミスカトニック大学にいくと全て手札に戻る。


ゲームスタートはミスカトニック大学から。正気度は6から。ロバートクレイブンに協力するのは8ダブ(留年)した30歳の学生と思わしき人物。ボード右下がネクロ駒で、これが前進すると危険度が増す。

かたや旧支配者側は、ネクロという悪の魔法使いが粛々と神を蘇らせようと活動している。ネクロ駒ってのが破滅カウンターで、これが最後まで達してしまうとプレイヤーが敗北するのだ。

具体的には、ターンの開始時に、クリーチャーカードをめくってエリアに配置する。クリーチャーカードってのはゾンビ、魔女のようなよく知られているものから、深きものども、溶岩虫、星の精などクトゥルフ神話お馴染みのものが登場する。で、こいつらの陣取った場所に行くとダメージを受けるのだ。こいつらは同じカードが2枚ずつあり、既に出ているカードと同じクリーチャーを引くと、活性化して酷い特別ダメージを受ける事になるので、やばそうな奴は早めに退治しなくてはならない。


左下にゾンビのカードがみえる。同じカードがでたらかなり手痛い目に遭うので早めに除去すべし。


ロバートクレイブンがおれば、クリーチャーからダメージを受けず、さらに短剣1つでぶち殺せる。深きものどもをぶち殺し。それから場所にあるアイテムを取ることができるが、アイコンマークのダメージを受けねばならない。カード下にあるのが次元の裂け目のタイルで、これが本物かどうか、本物であれば封印するというのがゲームの目的だ。

このゲームのポイントは裂け目タイルの正否である。裂け目タイルは正しいのが4枚、ただの壁が4枚あり、それをまぜこぜにして6箇所に配置する。残りの2枚は使わない。つまり2〜4箇所がゲーム中出てくる事になる。もし間違ったただの壁にアーティファクトを置くと負けとなってしまうので、しっかりと調査しなくてはならない。
ここにこのゲームが協力ゲームでありながら、非常にだっさいと思うルールがある。調査した結果を他のプレイヤーに話してはいけないというのだ。

「はぁ??」って感じ。

最も肝となる封印というアクションを話してはいけないって、おい。


ミスカトニック大学におかれたカードは旧支配者のカード。今回の正体である以外の旧支配者はこのように影として効果を発揮するが、威力はクリーチャーなど比べものにならないくらいとてつもない。


ちょうど、セイラムの魔法使いがおるので、うっとうしいクトゥルフの影をぶち殺しにきた。ここに現れたということは、今回の旧支配者は別にいるということだ。

わしがここを封印するから、お前はここを頼む。ぐう、やべえ、いや、そこは俺が調査しよう。

なんてのが協力プレイの醍醐味やん? それが出来ない。教えてはいけないといっても、どうしても行動パターンで知らしめてしまうのはしょうがないので、「これってルール違反なんかなあ」なんて思ったりする、なんとも言えないルールなのだ。かといって、これを教えてもいいとしてしまうと、恐ろしく簡単になってしまうのだ。

二人プレイやと、クリーチャーは毎ターン1枚しか出てこないので、ロバートクレイヴンの力を利用して葬りさっていく。むっちゃ平和なセイラムである。


ネクロ駒は、アイテムを取るときのアイコンによって進むのが基本なのでほぼコントロールできる。今回は、星の精を殺しにきたのではなく、次元の裂け目にアーティファクトをおいて封印しにきた。ここは赤色のアーティファクトで封印できる。このように次元の裂け目を正しいアーティファクトですべて封印していけばいい。

ロバートクレイヴン駒は、毎ターンの最後にカードによってランダムに移動するのだが、なんかやたらと合致して、次々にクリーチャーをやっつけられる。この魔法使いがいる場所では、ナイフ一本でクリーチャーを葬ったり、攻撃を受けなかったりという特典がある。

mia「先生がここにいるから、わたしが行って退治する」

わし「オッケー。ほな、わしはネクロノミコン使って旧支配者カードをめくるわ」

と、こんな感じで進む。


最後の封印はここである。ピンクのアーティファクトで封印。後は上に見えるルルイエにおかれた今回の旧支配者の正体を見極めて封印すればいい。

クリーチャーに攻撃された時以外は、エリアに置いているアイテムを受け取る時にしか、ネクロが動いたり、正気度が下がったりする事がないのも、なんか不思議なシステムだ。

アイテム置いたマスに支払うコストが描かれているので、計画的にアイテムを入手出来るから、怖さってのが全然ない。全て予定どおり。一応、全てのアイテムを取らなければ補充されないというシステムなので取るのだが、予期せぬ出来事ってのがなくて、こちらで計ったタイミングでゲット出来るのだ。

もっとハラハラしたいんやけどなあ。

と思いつつゲームは進行する。

とりあえず、実際にルルイエに封印されている旧支配者の正体を、ネクロ駒が一定の場所にくるまでに判明させとかんとゲームオーバーになる。
しかしこれまた基本、ネクロが進むのがクリーチャーが活性化した時とアイテムを取った時だけなので、前者は退治しまくったおかげで音沙汰なし、後者も予定通りネクロを進めるだけなので、まったく屁でもないのだ。

うーむ、、これ二人プレイでは簡単過ぎるんちゃうか?

また運の良い事に(悪いことに?)、次元の裂け目が僅か2箇所しかなかった。
二人でちゃっちゃとアーティファクトを配置して、正気度が高いmiaにルルイエに潜って貰う事にした。


今回はシュブ=ニグラスである。ルルイエに潜ってもらい、シュブニグラスの動きを止めてもらう。その間にミスカトニック大学に開いた次元の裂け目を封印すればいいのだ。


ルルイエにいる間、手番はパスとなり、毎回1ずつ正気度が減っていく。

全てのアーティファクトを配置し、旧支配者の正体を明らかにしたら、1人がルルイエに潜り、詠唱を唱えて押さえつけとかなければならない。そのプレイヤーは何も出来ず、毎ターン正気度が1ずつ減る。その間に別のプレイヤーがミスカトニック大学で、アーティファクトを配置して、最終的な次元の裂け目を封印すれば勝ちなのだ。

あっという間に終わった。


その間にわしはミスカトニック大学にて、アーティファクトを置いて封印する。これで最終的に次元の裂け目に置かれたのが正しければ勝利である。


ネクロ駒の進展度はここまで。


見事に正しく、置かれていた。つまり勝利である。

所要時間60分

人類の勝利。

簡単過ぎる。他のサイトをみると難しいと書いてたんやけどなあ。

つう訳で後日、再びやってみたが、今度は封印が4箇所あったにも関わらず、またしても楽々勝利。
前回ほど、クリーチャーが退治されずにちょっとだけ焦ったけど、ネクロの動きが鈍いんよなあ。

わしがルールを間違ってるか、二人プレイがぬるすぎるかのどっちかやろな。。。

miaのコメント

クリーチャーにやられたりネクロノミコンを見すぎると精神に異常を来すっていうのがなんか妙にリアル。ダークな雰囲気満点。事前にクトゥルフ神話を知っておくとより楽しめる。次元の裂け目を忘れずに。

ソマーリオ

リーネックのデザインは一言でいうと、田舎臭い。確か前にタナカマに「全然システムに切れがなくておもろないんよなあ」と話した時に「あか抜けてないんですよねえ」と言われた事がある。

おもろさの肝がさっぱり解りにくくて、ルールを読むとおもろそうと思うんやけど、実際にやってみるとそれがまったく切れ味がなくまるでエンジンを分回しても全然回らないダッヂバイパーみたいなスポーツカーである。
今までやった、ドラキュラ80日間世界一周大聖堂、全てそうだ。システムがのたくた〜と動いている。

※例えが解りにくくて申し訳ない。スポーツカーなのだが、トラックのエンジンを積んでる。

セイラムの魔法使いも例に漏れず、迫り来る恐怖というものがプレイヤー主体でなんとも切れ味の悪いシステムとなっているが、クトゥルフものということでみれば、マニアが喜びそうなアイテムや旧支配者がずらりと並んでいるのは一定のニーズがあるだろう。

絵柄のトーンはとても暗くラブクラフト想像の世界観を上手く描いている。個人的には茶色と白のモノトーンの方が古臭さを出してもっと良かったと思うが、これはこれでいいだろう。また旧支配者の絵柄の気持ち悪さは、見ただけで正気度を失う(世界観の設定なのだ)に相応しい仕上がりである。この絵を見たが為に買うたようなものだ。

クトゥルフが好きな人なら、キャラクターものというイメージで買うてみて損はない。が、それ以外の人には、あまり洗練されたシステムではないことから、もっとおもろい協力ゲームを買うべきだ。
個人的にはこの世界観は結構好きなので、キャラクターものとして拡張が出て欲しいなんて思ってるけど。つまりわしにとってクトゥルフってのはただのキャラクター商品以外何者でもないのだ。ガンダムのゲームを買うのと同じ感覚である。あの旧支配者がいったいどれくらいえげつない能力なのかを楽しみにしてる。いや、これならアザトースの方をもっと強くしたほうが…うんぬんかんぬんってただのキャラクターと化してる。そういった意味ではこのゲームはクトゥルフマニアのツボをついている。旧支配者の各種能力が違い、眷属がおり、アイテムがあり、雰囲気があり、ゲームにとって一番重要な要素、破綻なく遊べる。クトゥルフものはシステムにろくでもないのが多いのでこれは一番のセールスポイントだろう。

このゲームにセイラムの魔法使いという物語冊子がついていて、より深い世界観を得られるようになっているのだがドイツ語でさっぱり解らない。しょうがないので、興味を持たれた方にクトゥルフ神話ってのを簡単に説明してみる。
HPラブクラフトが書いた一連の宇宙的ホラー小説の世界観を、後の作家たちが流用したり系統化したのがクトゥルフ神話という世界観である。クトゥルフはラブクラフトの小説に出てくる有名な旧支配者の名前である。

太古の宇宙、旧支配者と呼ばれる神があちこちにいた。ところが神々の戦いで、あちこちに封印されてしまった。地球のルルイエの遺跡に封印されたのがクトゥルフである。こういった旧支配者は、巨大で絶大な力を持っているのだが、封印によって力を大幅に制限されている。

一九二〇年代アメリカ、これらの神を復活させようと狂信者がおり、旧支配者の手足となる眷属の怪物などがいる。それに気づいたものがなんとか阻止しようと活躍する。
しかしたかが人間の力では、どうすることも出来ず、復活を遅らせるのが精一杯である。さらにその圧倒的な力の差があるために、旧支配者についての知識を得れば得るほど正気度が下がり狂気へと導かれる。復活を阻止するためには知識を深めなければならず、知識を深めると発狂してしまうという悲しき戦いなのだ。

世界観の中で出てくるアイテムで最も有名なのは、ネクロノミコンという魔導書。この原書はアル・アジフというアラビア語で書かれたもので、それをギリシャ語やラテン語、英訳したものである。(という世界観)
このネクロノミコンには旧支配者の事が非常によく書かれているらしいが総主教ミカエルにより、焚書処分にされたりしている。(という世界観)クトゥルフ神話の聖書みたいなもん。
読むだけで正気度が下がったりするので、それをゲームに反映させるといいように思う。

さて旧支配者を分類すると、まるでキリスト教のように諸説色々あるが、ここは一番メジャーやと思える分類で。

魔王アザトース、副王ヨグソトース、使者ニャルラトホテプ

これら三体とシュブ=ニグラスを合わせて、最も力のある旧支配者連中で旧神とも呼ばれる。
その下に、旧神よりも力が劣る旧支配者がいる。

クトゥルフ、ハスター、クトゥグァ、イタカ、ダゴンなど。

その旧支配者に仕える怪物がいて、例えば深きものどもはクトゥルフやダゴンに仕える。
それらをあがめる人が狂信者である。

アーカムはラブクラフトが描くマサチューセッツ州にある架空の都市名で魔女裁判で有名になったセイラムをモデルにしているらしい。ミスカトニック大学はそこにある架空の大学名。

まあ、正直、小説はおもろない。最初に、この忌まわしいこの記憶がどうたらこうたら…とやたらと主人公が恐れおののくばかりなので、読者としては興ざめである。笑い話を話す前から笑ってるとつまらんのと一緒。また日本語訳が悪いのか、ぐにゃぐにゃ、むにゅむにゅみたいな表現が多くて、旧支配者のイメージは全部タコとしか思えない。呪わしい、おぞましいなどの単語連発で表現力が少なくて、全然怖くない。

人類以前に太古の地球に支配者がいてって歴史も現在からしたら、ほとんど進化論で解ってしまっているので、リアリティがなく小説に入り込めないばかりか、展開もかったるくて小説としては二流である。これは当時読んだらかなりセンセーショナルやったんかな。かなり昔に読んだのだが今にして思うと『狂気の山脈にて』なんかはバージェス頁岩で有名なカンブリア紀の異様な形の生物と絡めてた気がする。

わしのつたない記憶によると『インスマウスの影』『ダニッチの怪』『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』はマシやった気がするんで、興味があればこれらを読めばゲームをより楽しむ事が出来ると思う。どれかひとつと言うならやっぱりインスマウスの影かな。全部短編なんで入っている本を選ぶべし。下にあげといた中にそれぞれ入ってる。またこの世界観はかなりの作者に影響を与えたらしく、漫画では高橋洋介の夢幻紳士だが、わしの一押しはなんといっても諸星大二郎作品である。夢幻紳士は、冒険活劇編はまったく違うので間違わないよう。諸星大二郎は西洋のクトゥルフを日本風にアレンジしており、クトゥルフものと言い難いところはあるが、オカルト漫画としては独特の世界観があって非常におもろいのでまずは下記の妖怪ハンター地の巻をお薦めする。「パライソさ、いくだ」をテーマにしたゲームを作りたいくらいだ。
カインのしるしさんお勧めのタイタスクロウも入れてみた。ラブクラフトよりめんどくさい表現ではないので読みやすいが、どうにもタイタスクロウじゃない人の一人称形式で書かれてるので毎回毎回自分が違ってて感情移入しにくい。タイタスクロウの一人称にしたらええのに。

遊星からの物体Xのジョンカーペンター監督によるマウスオブマッドネスというクトゥルーものがBDで出るというので買うてみた。
こ、これは無茶苦茶おもろい! ここまでよく出来てるクトゥルーものはない。是非、観て欲しい。

gioco del mondo