Friedemann Friese

2F Spiele
アークライト

2〜5人
60分

ビール侯爵

駿河屋で購入
プレイヤーはいずれ自分の領地に立派な宮殿を建てたいと考える弱小貴族。小さな畑しかない領地で、最初はビール用のホップ・小麦・清水しか生産できないが、それらを上手く売ることで資金を得て、やがていろいろな建物を建てることが可能となっていく。
一方で、プレイヤーの目標は、6箇所あるすべての土地を宮殿にすること。つまり、お金を儲けるための畑や建物も、いつかはすべて壊して宮殿にしなければならない。宮殿からは収入がない。いつ打って出るか、お金儲けによらないそれがビール侯爵のつとめである。

プレイ感

アークライトはフリーデマン・フリーゼで勝負を掛けてきたってくらいフリーゼの日本語化をすすめてきた。ルールを読むと、ドミニオンチックなところがちらほらあるが、こんなけ違ってたらドミニオンとは言えんわな。二人やとソロプレイ感が強くなるという噂だが、早くやってみたかったのでmiaと導入ルールでやってみた。


それぞれ自分の山札(デッキ)を持つ。このデッキ内容はまったく同じでドミニオンのように変わる事はない。それに自分の所領を表す個人ボードを貰う。これには水、大麦、ホップの畑が最初から付いてる。
ラウンド毎にこれらが生産され(駒を貰う)、それをビール醸造所に売る事でお金を得る。得たお金を使って手札にある色々なカードを個人ボードに建設していく。最終的に、宮殿カードを6個建てたら勝ちである。


それぞれ6マスの個人ボードと1つのデッキを貰う。領地は最初から3マスは水、大麦、ホップが生産出来る畑が付いてる。
二人プレイなので醸造所は2カ所。需要が高ければ買い取り価格が上がるし、低ければ下がる。この内容はカードによってゲーム毎に変わるように出来ている。

ルールは非常にイメージしやすいので解りやすい。醸造所はプレイヤー人数と同じだけ使うので今回は2カ所だけ。これはどちらの醸造所というものではなく、好きな方に売ることが出来る。醸造所にはフリーゼお得意の需要と供給のシステムが組み入れられており、あまり売ると値が下がるし、売られないと値が上がるように出来てる。

手札は最初だけ6枚、それ以降は4枚でやりくりする事になる。ラウンドの最後に使わなかった手札を1枚だけ残してデッキの一番下にほかさなければならないのだが、自分の好きな順番に並べていいのだ。デッキは回転するので、いつ、仕込んだかをなんとなく覚えておかないと不利になるのだ。

わしの初期手札はコストが8とか掛かる中型大麦畑で、こんなんいきなり建てるんは無理。他にも超高い物件が勢揃いしており、何も出来ずに手番終了。かたやmiaは、安い畑がたんまりとあったらしく、自分のボードに建設する。

こんなん、要るか、ぼけえとデッキの下に宮殿カードやら高い物件やらを埋め込む。念のため、宮殿はなるべく早く廻るように上にして戻した。

そして3枚補充、またしても、ふざけた価格の物件ばかり。(|| ゜Д゜)ガーン!!

それでも前に残してた2個生産出来る大麦畑をためたお金でドデンと建てる。miaは相変わらず順調に小さい畑を建てて非常に順調。

つらいのは、今回大麦をほしがる醸造所が少ないという事だ。というのは、醸造所の需要供給カードは、開始時にランダムに決められる。それによってどれだけ欲しいかが決まり、今回は大麦は両方合わせてもたいした需要がない。つまりゲーム通じて大麦の価格は買い手市場の訳だ。いくら3個生産してもなあ。

miaはカードの巡り運が良く非常にバランス良く畑を作っていく。それに対して、なんとか早めに銀行を引いたわしは、これで定期的に収入を得るようにした。しかし畑の違いはいかんともしがたく、常に収入でひけをとりまくる。


なんとか大麦を2個生産出来る畑を作る。が、今回の醸造所では大麦はそれほど需要がない。醸造所はどちらのものでもないので好きな方に売ればいい。

何度も大麦を腐らせてしまうわし。というのは、供給が過多になったら、その分経済メーターが下がり、価格が下落する。0になると売る事が出来なくなり、倉庫を建てないと生産物は保存しておけないのだ。

このゲームの管理の難しいところは領地の狭さにある。6カ所しか建てる事が出来ないので、もし7カ所目を建てたいとすると、どれかひとつを潰さなくてはならなくなるのだ。結構カツカツなので倉庫を建てるか否かは難しいところだ。

わしはなんとか銀行で食らいつこうとするが、圧倒的に開いた生産量の違いはどうしようもない。といっても、収入によってプレイ順が変わり、このゲームは価格変動がある分、電力会社と同じく先行の方が有利となっている。本来なら収入の安いわしが先行で有利なのだが、生産物が偏り、どうしようもない状況ではその有利さもあまり使えない。


ようやくホップ畑と銀行を建てて追いすがろうとするが、収入は全然追いつかず。ちなみに手番では1度には2枚までしか建てる事は出来ない。

なんせ、まったく出てこないのだ。必要な畑カードが。

そこで畑ではなく建築物中心に展開する事にした。畑がこないという事は当然、そういう事になる。
また、宮殿カードは引く度に、なるべく次回早めに廻るようにデッキに仕込んでいく。

例えば、建築を2コスト安くする建築現場、1種類の生産物を3個まで別の生産物に変える市場。途中、3個生産できるホップ畑が来たときには、これを潰すかどうか非常に悩んだ。なんつっても宮殿カードをこれからたくさん建てねばならない。毎回2コスト安くなるなら貧乏貴族のわしはこれほど嬉しい事はない。またmiaの暴力的な大量売りで、暴落した大麦やホップを変換する市場を潰してしまってはマジで食いっぱぐれる。高値で売れる水を得るカードが全然こなかったのだ。

中盤にもさしかかると、価格の大暴落が始まるのだ。今後、生産してもそれほどメリットを感じないと思ったわしは、畑を捨て、1ゴールド多く売れる商社を建てて、生産量が少なくても付加価値額をあげて対抗する事にした。建築現場を一旦潰してしまえば、二度と建てる事が出来ないのが恐怖となって、苦しいながらも残した。


もう、畑は捨てた。ホップ畑だけを残し全て潰す。右上にあるのが収入マーカーで、この順番に手番を行う。ビール醸造所の問題があるので、収入が低いと得になるように出来てる。ちなみに駒類はボード下に置く場所があるのだが、例の木箱を使っているのは赤ちゃんをあやしながらやってたので、バラバラにならないようにだ。このゲームでは非常に使いにくいので、ボード下に置いた方がいい。

さらに、強化銀行を引く。本来なら、これを最初の銀行に差し替えればいいのだろうが、銀行を2行体制にして、生産物に頼らない経営を強化する。やってみるとこれが意外に苦しく、収入はてんで歯が立たなかった。

だが、このゲームはお金ではなく、宮殿を建てるのが目的だ。
6枚の宮殿を建てるお金をストックしたと思ったわしは、畑を全てつぶしカードの保持数を増やす役所を建てた。収入は、銀行のみ。

mia「えー! そんなんで大丈夫なの?」

宮殿の価格は最初は8ゴールドだが、2枚建てる毎(プレイヤーが二人なので)に2ずつあがっていくように出来てる。一度に2枚建設出来るので、2枚ずつ建てていけばmiaよりも総工費は4ずつ安くなるはずなのだ。そのためにも手札に宮殿を残しておきたかった。


今回は導入ルールなので、好きな場所に宮殿を建てる。収入マーカーの上に宮殿の価格カードがある。人数分の宮殿が建てられると、次のカードをめくり価格があがる。つまり2枚ずつ建てるのはかなり有効だ。収入は激減したが、残りのお金で建てきるのみ。赤ちゃんが寝たので戻したw

そしてそれが見事に成功した。一気に2枚ずつ宮殿を建てる。

mia「あ、しまった。わたしも建てなきゃ!」

しかし1枚だけ。これはラッキーと、さらにその安い値段で建てていく。


残り1枚。

こうなると終盤はあっという間だ。なるべく上に仕込んだ宮殿が次々に手札に現れる。

2枚ずつわずか3手番で宮殿を建て終えたわしが高らかに勝利宣言。

所要時間60分


6個建てて勝利。わしは9ゴールド、miaは31ゴールドも残してしまった。

miaのコメント

敗因はお金を余らせてしまった事。珍しく順調に生産出来てたのになあ。ゲームとしてはまあまあかな。

ソマーリオ

なんとも不思議なプレイ感。途中まではずっとお金儲けのための生産ゲームなのに、後半はうってかわって建築競争という名の引き競争。引き競争といっても自分でデッキを仕込めるのだから、運ではないところに妙がある。

宮殿自体は何も生み出さず、単にマスがひとつ減ってしまうお荷物なだけなので、建てるタイミングってのは非常に重要となってる。建てれば建てるほど値段が上がっていくというのが、このシステムを補足している。

タナカマに以前、このゲームについての感想を訊いた時、ゲームの目的が途中でころっと変わってしまうので、2,3回やらないと面白みが分かり難いとあった。

しこたま貯めたお金を、一気に散財してお金よりも名誉を取るという浮世離れした侯爵の気分というのを味わえる不思議な感覚があるのだ。商人miaに商売としては完全にやられていたが、侯爵あきおが勝てた勝因はここにある。

ルールを読んだ限り、宮殿を買い始めるタイミングや効果ってのがドミニオンの領土を買うタイミングと効果とよく似ているのでドミニオンぽいかなと思ったが、ここまで違うシステムだとドミニオンチックと書いたのは大きな間違いだった。まったくプレイ感は異なる。

またソロプレイ感が高いと噂のあった二人プレイも醸造所の相場問題があって、気になるほどではなかった。単に初めてで忙しかっただけかも知れんけど。ただし相場に関してはそれほど値動きがない割に処理がめんどくさいので他に方法があったように思う。最後の宮殿の抜けだしに関しては、一瞬で終わってしまった。宮殿の値段がもっと絡む多人数でやれば、もっと面白くなるだろう。

思ったのはこのゲーム、導入ルールでは大しておもろくないんとちゃうかという事だ。ボチボチの楽しさだった。変わったプレイ感もあって、もう一度やってみたいとは思ったが、なんつっても文中にあるように、宮殿を先にデッキに組み込んでおけば(もちろん大体だが)、デッキが1巡したところで丁度勝てるというのではあまりにも単純過ぎる。

正式ルールは、領地ボードの指定した場所に1〜6の指定された宮殿を建てて行かなければならないのが加わる。どこそこを潰して、次にこれが来てと、まさにプラニングを立ててデッキを再構築していく事が求められるのだ。わずか6マスしかない領地で、それを上手く管理していく、これこそがこのゲームの真骨頂ではないだろうか? 1マスを建て替える影響というのはやってみると解るがかなり大きく、非常に悩む事になる。

このゲームを一言で表すならドミニオンのデッキ構築型ゲームならぬ、デッキ再構築型ゲームである。フリーゼにとって、お金儲けだとか、特殊能力だとかは単なる蛇足に過ぎず、やりたかったのはデッキの再構築の部分なのだ。そう考えると非常に意欲的で面白いデザインだ。凄い! ただし初心者にはさっぱり勝つコツが解らないのはフリーゼらしいっちゃらしい。

覚えておかねばならないというのはめんどくさく感じるが、やってみると記憶力の悪いわしでもそれほどしんどくはなかった。ざくっと記憶しとけばなんとかなる。導入ルールでさえ仕込んだ宮殿があがってきたとき、確かに嬉しかったのだから、これが正式ルールとなれば、プレイ時間は延びるだろうが、その嬉しさもひとしおだろう。

コンポーネントについては絵も可愛く、雰囲気も駒も悪くはないが、醸造所の需要供給がカードになった事で、載せたり外したりが頻発する為、細かい駒の動きがかなりめんどくさいのが難点くらい。

後日、正式ルールでプレイして、評価を決めたいと思う。パズルチックな感じ、仕込み感から、ちょっと楽しみである。

正式ルールにて

このレビューを書き終えた後、すぐに正式ルールでやってみた。miaと二人プレイにて。

正式ルールでは、ゴミ屋と観光局というカードが加わる。ゴミ屋は、手札のカード2枚をゲームから除外するというデミ二オンのデッキ圧縮効果があり、観光局は宮殿の数×2ゴールドの収入が得られるというカードである。今まで何も生み出さなかった宮殿は観光局によって収入源となるのだ。

序盤、miaは農場にいいのがこないおかげで、役所を使い手札戦略をとる。わしは今回は安い農場が手元にきたので、とりあえずこれを建てておく。

前回のプレイから、それほど農場は満遍なく手に入れても大して変わらないと気づいたので、今回の目玉である水を大量に出る農場を建設してからは、またしても重商主義を取ることにする。大麦、ホップ畑を潰し銀行や商社を建設した。


ひたすらに水に特化した作戦。そしてその後すぐに見切りを付けて農地を潰した。

特に商社は売価が+1ゴールドとなるので、非常に有効だった。さすがの水も途端に暴落したので、今度は市場を建てる事にする。市場は3つまで別の生産物に交換出来るというものだ。当然、もう3つ以外不要だと思ったので、水が3つ出るカードだけを残して、後は全て商業地にする事にした。

銀行2行体制にし、市場、商社、水3、そしてそれなりにお金が貯まってきたので、最初の宮殿を早々に建てる事にした。

mia「えー、もう建てるの!」

というのは、この宮殿をデッキに沈めてしまっては、しょぼい畑を早めに潰す事が出来なくなる。

miaは農場試験場や役所を強化して、3枚残し、5枚補充という回転率をあげる政策に出たが、収入はわしにはほど遠い。

宮殿を覚えていくとTだけが手元に来ていない。そこで銀行1をつぶし虎の子として手元においていた観光局をその場所に建てる事にした。これで最後まで観光局は富を生むはずである。若干収入は下がるがこれで最後までいける。


Tに建てた観光局がミソ。ここは最後まで埋まることはないところなのだ。


次々に帰ってくる宮殿。これで勝利が見えた。

miaも慌てて建てるが続かず、わしはそこから次々に埋めた宮殿を2枚ずつ建て、最後に残ったTの位置の宮殿も、まったくのロスなく手元に戻ってきたので、そのまま建てて勝利した。手元に残ったお金はわずか5ゴールドという完璧な勝利だった。

所要時間45分


最後はこのように建てられる場所が決まっているところに建てるのだ。

極端に所要時間が減ったのには理由があり、収穫時にいちいち生産物を手元のカードに置くのではなく、受け取りつつそのまま醸造所に売ったので手間が省けたからである。手番の順番通りにやれば手元に駒を一旦置く必要などまったくなく、そのまま醸造所に置けばいいのだ。これでかなり時間が節約出来た。

正式ルールでのmiaのコメント

うーん、やっぱり難しい。特に導入ルールに比べて難しくなったという事はないんだけど、宮殿に変換していく時期が難しい。

正式ルールでのソマーリオ

miaの言うとおり導入ルールと比べてカードの位置を覚えておく辛さもそれほど高くなく、単純に役所や農業試験場などにも意味があるようになったのがいい。埋めたカードが次に手札に返ってきた時に自分の思い描いていた通りの領地になっているかどうかを楽しむのだ。

それほど難しくはないので、導入ルールをやらずともいきなり正式ルールでやってみるのもいいかも知れない。導入ルールも1度やれば十分だ。ラストの飛び出しについては、フリーゼらしく、電力会社の最後に似ている。

デッキの廻し方が特徴的で、こんな変わったプレイ感のゲームは他にないと思う。をあげることはないが、妙に味のあるゲームなのだ。

ただこれぞというものがある訳ではないので、あまりゲームを持っていない人には勧めない。もっとおもろいゲームがある。特に気になったのは、フリーゼお得意の需要供給システムが、めんどくささの割に機能が100%活かされていないところだ。ブロックが細かすぎる割に値段の上下が少ない。主題としてならともかくプレイ順に差を付けるだけならもっと簡易な方法で十分だったと思う。

ゲーム持ちで変わった物をやりたい人やフリーゼファンなら持っておいて損はないだろう。これが5000円6000円なら勧められないが都合の良いことに日本語版が出たことでこの内容にしては安く買えるのは大いに魅力的だ。あほみたいにドミニオンのクローンそのままでうんざりしてたわしには非常に新鮮でフリーゼのデザインはさすがに凄いと感じた。やるならここまで変えないと。

gioco del mondo