Reiner Knizia

KOSMOS

2〜5人
70分

ベーオウルフ

ベーオウルフは、最後の戦いに出かけた。
火竜、史上最強の敵である。
しかしベーオウルフの体は50年の歳月がかつての力を失っていた。
もうかつての力はない。それは彼の死を意味していた。
しかし、ベーオウルフは言った。
「我は出会った、若いとき、多くの戦いに。
それでもなお、我は老獪な民の守り手として、戦いを求め、手柄をたてよう。
もし我を凶敵が洞窟から攻めて来るのなら」

レビュー

イギリスの古典文学にベーオウルフというのがある。話自体はゲルマンの叙事詩なのだが、英古典文学なのだ。ここらへんはこちらを参照のこと。最近になって、これは実話を元に作られたのではないかという説が有力である。指輪物語でストーリーの協力プレイという新しいシステムを作ったクニッツィアが挑んだのがこれである。ルールを読むとなかなかおもろそう。TAMとたっかんとの3人プレイにて。


このゲームは指輪物語と同じとよく言われているがストーリーを辿るゲームというところが同じだけであり、実際には勝敗を決めるために自分だけのために動くのでまったく違う。ベーオウルフの配下として、彼を助け、名誉をたくさん獲得したプレイヤーが勝つのだ。ルールは非常に簡単で、結局はクニッツィアお得意の競りである。

競りの順番に従って、用意された結果を選んでいくのだ。競りは、勇気、知恵、力、旅、友情、ベーオウルフ(ワイルドカード)とあり、マスによって何で競るか決められている。競り方式は二種類あって、一発で決める方式と、ぐるぐる回る脱落方式がある。いずれにせよ、競り勝った順番通りに、マスに描かれている何かを手に入れるか決めていく。時にはそれが名誉であったり、財宝であったり、そして傷(戦闘シーンのエピソードでは必ずある)であったりするのだ。


例えばこのヒゲラーク王の謁見エピソードでは、ベーオウルフのカードか、財宝1か同盟タイル1つかを競りの勝った順に選んでいく。今回は3人プレイなので左の2つ名誉3とカード2枚は使わない。4人ならカード2枚を使わない。そして矢印が直線なので、一発勝負の競りである。駒で隠れてしまってるが、ここに競りとなるカードマークが描かれている。隣のリシコなら、知恵と旅のリシコといった寸法。写真撮り直しがめんどいのでGeekから拝借。

まずはベーオウルフに付き従って、デーンへの旅路をいく。この段階では戦闘がないので、競りも緩い。なぜなら戦闘がないので、例え3番手になったとしても、カードが手に入ったりするので、本気にならなくてもいいのだ。

と、思いきやTAMはリスク(RISIKO)マスで、いきなりかすり傷を負う。

な、なんで、デーン国王に歓待されたりしとる段階でこやつは傷を負っとるねん!

※ リスクマスでは、カードを2枚引ける代わりに、目的のカードが1枚もなければかすり傷を負うのだ。目的のカードなら手札に出来るのでリスクはやっておくべきである。


斧が力、仮面がベーオウルフ、腕が勇気である。マスによって必要とするものが描かれているので、それで競りをするのだ。今、山札から2枚めくるリシコをしようとしているところ。丸いタイルは同盟タイルで、財宝とか名声が描かれている。非公開情報。

そしてとうとうヒゲラーク王から、グレンデルをやっつけてちょんまげと依頼される。

このグレンデルつう怪物は夜な夜な、人をさらってはなぶり殺すという良い趣味をしてる。で、正義の使者ベーオウルフに付き従ってこの怪物退治に出かけるのだ。

ここでは負けられん!

戦闘シーンとなると、ぐるぐる回って脱落者を決める競りとなる。ここで溜めてたカードを炸裂させるのだ!
なぜなら、ここで最初に脱落すると不名誉を貰ったり、傷を負ったりするので、かなりいやーんな感じとなる。

TAM「リシコ!!」

必要とするマークのカードがない場合、リスクマスと同じようにチャレンジ出来る。出ないと脱落である。しかもかすり傷を負うのだ。かすり傷3枚で負傷に変わり、これは最後に持っているとマイナスを食らったりするので要注意。

わし「はい、かすり傷な」

TAM、リシコ失敗。

ここでたっかん、無理をせず、競りを降りる。
わしゃ当然、名誉マーカーを手に入れ、たっかんは財宝を手に入れた。TAMは選択はかすり傷しか残っていない。

とまあ、こんな感じで最初は、わしが上手く名誉が入る競りで快調に飛ばす。


水魔追撃戦に突入。ここでは旅と勇気が必要なのだ。手前の赤いのが負傷マーカーとかすり傷マーカー。緑が勝利点となる名誉点である。

戦闘に次ぐ戦闘だったが、3人のパターンはほぼ決まっていた。ひたすら名誉を手に入れるわし、かたや同盟はいっぱいしたが傷だらけのTAM、財宝の亡者たっかんだが、かすり傷ひとつ負わない。やたらとリシコの引きが強くて、一度も失敗しないのだ。

たっかん「昨日、死んだ親父が夢枕に立ちました。ひでき、リシコで勝負しろ、と」

確かに、まったく失敗しやがらねえ、こいつ。だが、このふたり、名誉はまったくないまま前半を折り返した。

意外と逃げ切れるかと思ったが、問題はTAMの同盟タイルである。同盟タイルは、裏向けに貰い、何が手に入るか解らなくなっている。その同盟タイルをやたらめったら集めている。

ベーオウルフの旅の後半には最大の山場が待っている。それは最強の怪物火竜との対決である。ここで3番手になると、負傷2発くらったりするとんでもない奴だ。皆、戦いカードが欲しいので、その手前の鉄の盾エピソードでパワーをかけて競りをする。鉄の盾カードは、戦闘4というとんでもない強さなのだ。これがあればドラゴンとの戦いが有利になるはずである。どうしても欲しかったが、元々必要なカードの少ないわしはここで勝負かけられず、TAMとの一騎打ちでたっかんがこれをゲット。


猛烈な競り合戦となったフリース人(オランダ人の祖先)襲撃事件。負傷を貰う可能性のある場面では競りはかなり白熱するのだ。左がTAMの状況で、臆病風に吹かれた不名誉ー2がある。

この時点で負傷マーカー2とかすり傷2つ負ってピンチとなっている。最後で負傷マーカーが3つになれば、マイナス15点というとんでもない失点を食らうのだ。当然、次の回復マスでは、かすり傷2を返す。これでリシコ2回まで失敗して大丈夫な筈である。

そして激烈きわまるドラゴンとの対決である。もう、ここはやるだけやるしかない。手札的には全て必要なカードなので全部投入出来る筈である。問題は鉄の盾を手に入れて、強力となったたっかんだ。ここは全員が山場と心得ていて、強力な競り合戦が開始される。が、若干手札の少なかったTAMがリシコ失敗でいち早く脱落。そして案の定、たっかんはわしと同じくらいカードを持ってやがった。

たっかん「うわあ、僕ももうリシコせんとあきません! リシコ!! おお、成功」

わし「くう、わしも既に手札尽きて、リシコ勝負や。リシコ!! おお、性交」

たっかん「親父、頼む。リシコ!! おお! 成功」

わし「くっそー、こいつ、全然失敗しやがらん。リシコ!! あー、、、_| ̄|○」

かなり熱いリシコ勝負が繰り広げられたが、3巡目でわしがとうとう失敗。ドラゴン相手に活躍したのはたっかんであった。

ここから、財宝の山分けが始まる。つまり財宝タイルがものをいう。たっかんは、楽々と財宝を使って名誉を買いまくり、次々に名誉を手に入れていく。なんつー男だ。堀江やな、堀江! 金さえあれば手に入らないものはない。

それより特筆すべきはかすり傷ゼロである。負傷ゼロでも最後は+5のボーナスが貰えるというのにかすり傷ひとつ負わないとは! かたやTAMの負傷度は苛烈を極め、片目で右腕くらい取れてそうな勢いである。

結局、そのまま一気に押し切られ、たっかんの逆転優勝。

所要時間60分。


かくしてベーオウルフは死んだ。後継者たる正面のたっかんの無傷とずらっと並んだ名誉が光っている。

たっかんのコメント

いやあ、昨日、仏壇の蝋燭がゆらゆらと揺れて、親父がほんまに帰ってきたんですよ。「ひでき、今日はめいっぱい勝負してええ」と。

TAMのコメント

これ、引きだけのゲームですね。おもろかったですけど。

ソマーリオ

必要なマークのカードで競って、なくなれば終わり、しかも手札の補充は自動的ではなく意図的に行わなければならない……これって、わしがイマイチおもろなかったと評価したタージマハルと同じシステムやん!

タージマハルを一本道にした感じといえばいいのか。しかし、リシコの存在が、タージマハルでわしのキライだったプレイ感をまったく別のものにしている。いかにも戦闘やっているという感じがして、リシコ、かなり熱い。

確かに異常に引きの強かったたっかんのおかげで、引きだけのパーティーゲームという感じもするが、きちんと本腰入れて競る場所や、何で勝負するか(名誉か、財宝か)を考えてやればそこそこ戦略的にゲーム出来ると思われる。

あまり期待してなかったが、おもろかった。この後、指輪物語の友と敵をやったが、あのしんどさに比べれば気軽に熱く楽しめる。

おもろいのに日本で人気のない理由は、わしもそうだったが、ベーオウルフの伝説について日本人はあまり知らないという事があげられる。そういった意味で非常に残念なテーマとなってしまった。これが例えばやまたの大蛇退治とかであれば、もう少し人気も出ただろう。
当初をつけてたのだがどうにもおもろく何度でもやりたくなってくる。評価を変更することにした。また意外と女性受けのいいゲームでもある。

というわけで、マスの物語説明が独語でルールブックに書かれているがメビウス訳ではしょられているので、これを先のHPと照らし合わせて、詳しめにしてベーオウルフ物語説明をジョーコデルモンド版として作ってみた。ゲームのマスと対応しているので、これで話の大体の流れが解ると思う。ベーオウルフ、結構可哀想な奴なのである。

コンポーネントはかなり斬新的で力を入れているが、なんでボードをL字型にしたのか意味不明である。そこにカードを置くというのならば、別にL字にせんでも、ボード上にカードを置く場所として使えばええだけの話なのだ。また中央部の○の型になんでいちいちパーツをはめねばならぬのかも不明である。何かゲーム上に必要な仕掛けがあるならいざ知らず、紙の量は減っているのにこの分製作コストがかかってしまうだけじゃなかろうか? 絵のデザイン、木製のマーカーとかその他の出来はさすがに値段が高いだけあって、文句はない。

とは言うものの、同じストーリーゲームで、大の指輪物語ファンであるわしでも、ベーオウルフの方がおもろかった。指輪物語はまじでしんどすぎである。ある意味、指輪物語を忠実に再現しているとも言えるが。またタージマハルと同じシステムを採用しているが、あちらがキライだった人でも、リシコというルールのおかげで手軽に誰でも楽しめるゲームとなっている。物語を知らなくても普通に楽しめるのはいい。競り自体はとても簡単で意外と初心者受けするゲームかも知れない。というより魂のゲームだ。

最近、5人プレイでやってみた。mia曰くお化け屋敷ゲームに似てるやと。んー、確かに言われてみれば、あれは勇気、力、知恵で勝負するけど、ベーオウルフも同じような感じで勝負する。あちらはお化けカードだが、こちらの相手は他プレイヤー。そう考えるとお化け屋敷ゲームのシステム自体は悪くない感じがしてきた。あれを正常進化させてクニッツィア的味付けをすればベーオウルフなのだ。しかし今回、女性陣3人を加えたメンバーにもやっぱり好評で、テーマさえ知られていればおもろいゲームなのに勿体ないのう。

gioco del mondo