Martin Wallace

Treefrog Games

2人
90分

数エーカーの雪

駿河屋で購入
古代よりずっと、帝国同士の対立関係によって大戦争が引き起こされてきました。17 世紀初頭から、そのような対立関係は世界的なものとなりました。カリブ海、北米、そしてインドでの新たな植民地を巡り、当時の二大超大国であったイギリスとフランスは長引く紛争を戦っていました。どちらの陣営も、砂糖やタバコ、綿、毛皮、絹、木材、茶のような価値ある商品の生産と貿易への支配力を確保したがっていたのです。

プレイ感

ワレスが作ったドミニオン形式のデッキ構築型ゲームという事でかなり興味があったが、さすがに人気作者のゲームのようで手に入りにくかった。Jyamaがせっかくなんで第2版を待ってからの方がいいと思うというので、待ってから購入した。
2人専用のデッキ構築という事で非常に楽しみにしている。miaとの2人プレイにて。


イギリス軍とフランス軍に分かれて北米での植民地戦争を描いている。イギリス軍はお金が潤沢で、フランス軍は支配地域が多い。ワレス自身の巻末コメントでイギリス軍の方が有利とあるが、多分やりこまんとそこまでは解らんと思う。わしがフランス、miaがイギリスでプレイ開始。

このゲームには北米が描かれたボードがある。それぞれ初期デッキから手札5枚をとる。カードは地域カードと帝国カードの2種類ある。地域カードは自分が支配している地域のカードで、新たに支配するとその地域カードがデッキに組み込まれる。帝国カードはドミニオンのように購入してデッキに組み込んでいく。この部分だけがドミニオンぽいだけで、後はまったく別物だ。


デッキに組み込めるカードはそれぞれ決まっているが、緑色の中立カードはどちらが使っても良い。デッキ構築ゲームとしては珍しいボードを主体に使うゲームだ。

手番には2アクションできる。地域の拡張は、まず目的地に接している地域カードを出す。次にその地域から目的地に繋がっている移動手段のカードを出す。カード下の羊皮紙に描かれているアイコンがアクションに使えるアイコン群だ。例えば、川で繋がっているなら小舟が描かれているカードを出せば良い。もし目的地に入植者アイコンが描かれていれば、さらに入植者アイコンの付いたカードを出す。これで入植完了となり目的地のところに自分の村駒(キューブ)を置く。新たに得た目的地の地域カードを探し出して、捨て札置き場におく。ここまでが1アクション。つまり通常の入植なら起点の地域カードと手段カードの2枚を使い、入植者アイコンが描かれていれば3枚使うのだ。目的地の地域カードを何故使わないかというと、そのカードをまだ持ってないからだ。拡張して初めて手に入るのだ。

相手が占領している地域を攻める場合は、同様の手順を行い、さらに戦闘アイコンのついたカードを1枚プレイする。そして戦闘アイコンのついた分だけ包囲戦トラックの駒を自分側に移動させる。戦闘はすぐには終わらず必ず包囲戦の形をとる。自分の手番の開始時に自分側に包囲戦トラックがあれば、勝利となり相手の駒を取り除いて自分の物として、代わりに自分の駒を置く。相手の駒は返すのではなく、自分が貰うところがポイントでこれは勝利点となる。新たに手に入れた地域カードを取るのを忘れてはいけない。


これが包囲戦トラック。自分の手番の開始時に自分側に引き寄せていれば勝利する。青色の大きな駒の場所で包囲戦が行われている。包囲戦はプレイヤーにつき同時に1つしか起こせない。

もう1つ奇襲攻撃という重要なアクションがある。起点となる地域カードと奇襲攻撃が可能なカードを出すことで、1,2マス向こうの敵駒のある地域(複数枚出すことで距離を伸ばせる)を攻撃できるのだ。相手はこれを阻止出来るカードをプレイしなければ奇襲成功で、相手の駒を取り除いて自分の戦果にできる。ただしこの場合は自分の駒に置き換える事はできないので、地域カードも手に入らない。

後はドミニオンのようにお金を払って、カードを手に入れるというアクションもある。
新たに手に入れたカードはドミニオンと同じように全てカード捨て場に置くことを忘れてはいけない。

基本のアクションはここらへんだ。そしてドミニオンと大きく違っているのは、手番の終了時にカードを全て捨てるという事はしない。使った分だけ5枚になるように補充する。それゆえ、カードの回転は悪いという事だけ覚えておいた方がよい。

こうして相手の本拠地を支配下に置くか、どちらかの全ての駒のストックがなくなったらゲーム終了。前者の場合は支配した方が勝ち、後者の場合は勝利点を換算して多い方が勝ち。ほとんどの場合後者で勝敗がつくらしい。

実際にやってみると、今までにないシステムなのでとっつきは悪いが、カードの出し方はイメージし易くシンプルなので、数手番やってみれば、すんなりとゲームに入っていける。
ルールで見落としがちなのは、包囲されている地域、自分の拠点(勝利に関係する地域)に通じてない地域、支配を奪われた地域の地域カードはまったく使えなくなり手札を圧迫するだけのカードという事。このゲームでは一度支配した地域を奪われてしまうと、その地域カードを返却することは出来ず、ただの邪魔カードになる。
もうひとつは、要塞や要塞を越えての奇襲攻撃はできないという事だ。
奇襲攻撃はかなり強いので、要塞を前線に築いてそこから攻撃をしていくというのが基本戦略のように感じられる。といっても奇襲攻撃を無効に出来るカードも多い。

イギリスは地域カードを使ってお金を手に入れるのに対してフランスはお金が入る地域カードが少なく毛皮を売ってお金を稼いでいくスタイルとなっている。

最初はどちらも未開拓地区に村を築いていくが、すぐに鉢合わせとなりわしからペマクイドに攻撃を仕掛けることにした。
包囲戦は非常に時間の掛かる戦いとなっており一進一退を繰り返す。どうしても戦力が必要とみたわしは民兵やら大砲やらをデッキに組み込みまくるという大きなミスをすることになった。
その間にその地域を通って奥のディアフィールドに奇襲攻撃を仕掛けた。miaは、奇襲を阻止できず。わしはmiaから駒を奪って勝利点とする。


ペマクイドを陥落することは出来たが入植者アイコンが付いてるので自分の駒に置き換えることが出来なかった。miaはボストンを奇襲にびびって要塞化する。

奇襲攻撃では自分の駒に置き換える事は出来ないので、通常の領土拡大アクションを使って海側から渡ろうとするものの、ペマクイドは入植者アイコンのついてる地域である。このマークのある土地は3枚目として入植者マークの付いているカードを使わなければならないが、フランスでこのマークがあるのは唯一ケベックだけなのだ。また船のマークのカードも必要だしと、3枚揃えるのが非常に難儀だったのだ。理由は、上記に書いたように兵力カードを大量に購入したからだ。恐ろしく手札の回転が悪くなり、毎手番、手札を捨てるアクションばかりをする事になる。

miaも当然、再入植すればいいのだが、イギリスでもやはり入植マークが少なく、どっちが先に引くかの手札捨てアクションを繰り返した。

かなりの間もの凄く不毛な引き合いがされてたのだが、先に攻撃した地域をようやく落とす事が出来た。ただここからがまったく伸ばせない。北米では小舟ルートがたくさんあるが、ケネベックからの小道ルートはほとんどなく、マークもフランスには存在しないという事実に気が付く。これ以上、ここから南に行くのは無理だった。ちなみにケネベックの地域カードは何のアクションも付いていないので非常にしょうもないカードである。


しょうがないので西に移動開始。

そこで奇襲攻撃でmiaの勢力を削ぎながら、東の海岸から勢力を拡大するのと、西に広がってるナイアガラの滝に向かって勢力を拡大するという作戦に出た。
miaも西に広がる広大な土地には目を付けており、進出を開始し出す。

勝利条件を満たすために村を町にしていきたい。しかしここでもやはり入植者マークが必要なのだ。しょうがないので7ゴールドと非常に値段の高い入植者カードを手に入れて2枚体制でこれを行うことにする。

勝利点の高い地域を選んで(村を町にすると点数が倍になる)、町にしていく。
包囲戦では、非常に時間に時間が掛かってしまうので、奇襲攻撃でmiaの勢力を削ぐことにした。
イギリス軍の民兵は奇襲攻撃を防ぐ事が出来ないので、この攻撃は有効だった。

さすがにこれ以上やられると困るとmiaも砦を築き、奇襲攻撃を防御する作戦にでた。


ナイアガラの滝にまで到着。miaはひたすら要塞化をすすめる。

包囲戦では戦果をあげることが出来なかったフランスだが、奇襲攻撃で手に入れたアドバンテージをいかして、規定の得点を達成してゲーム終了。

手に入れた駒を集計し、地域の得点を集計するとフランスの圧勝。
というのはmiaはフランスの駒を1つも撃破する事が出来なかったのだ。このゲームでは駒をやっつけるとそれがそのまま勝利点になるので、奇襲はどんどんと行っていった方が良い。

所要時間3時間


ここで駒を数えてみると余裕で終了条件を満たしてた。

miaのコメント

最初はとまどったけど、慣れてくると良い感じ。もっかいやるともっと面白くなりそう。

ソマーリオ

このゲームに慣れが必要なのは、地域カードとボードの場所とを見比べて確認しなければいけないところ。起点となる地域カードをまず出さなければゲームは始まらないからだ。アメリカの地名なので馴染みがあるかと思えば、知らない名前がいっぱいでなかなか覚えられない。この部分さえクリア出来れば、もっと深いところでこのゲームを堪能出来るようになるだろう。

カードの出し方は解りやすいと思うのだが、この部分がネックとなって時間が掛かってしまった。つい解りにくくなってしまうのは、村を町に発展させる場合と要塞を作る場合だ。この場合だけ起点となる手前の地域ではなく、地域そのもののカードを出す必要がある。

また本拠地との補給線が途切れているかが解りにくい。そして一旦自分の地域にしたものの、相手にとられた地域や補給線が切れた地域カードは何にも使えないというチェックがつい甘くなってしまう。それ以上に場所を探すのに手間取ってしまい、いつの間にかそのカードを使ってしまう事も多々あった。

デッキ構築についてはドミニオン以上の注意をもって作る必要がある。でないと今回のように、捨てるアクションばかりを繰り返す事になる。手札の回転が非常に悪いからだ。

こういった事は全て慣れの問題なので、数回こなすうちに気にならなくなるだろう。
そこで初めてこのゲームが、非常に面白い良くできたゲームだと解る。
今回のは、その状態を想像した評価だ。ゲームとして楽しめる十分なパフォーマンスを感じる。

ワレスがドミニオンにインスパイアされてこのゲームを作ったと、ルールには書いてあるが、ドミニオンとは全く違うプレイ感というのは解ると思う。ボードの果たす役割は非常に大きく、カードゲームではないからだ。完全にボードゲームである。ここまでくると作者がドミニオンにうんぬんのくだりは、作者の良心なだけでまったく別物である。似ているところはデッキが増えるというところだけで、お金の概念にしても別枠としてお金チップが存在している。ドミニオンでは、手札にあるカードだけで今回分の出費を全てをまかなわなければならなかったが、数エーカーの雪ではお金を貯金する事ができる。まあ、本来のお金の用途のひとつだ。

完全なウォーゲームなので、ひたすら攻撃的に攻める方が良い。そういった意味では遊ぶ人を選ぶかも知れないが、そもそもワレス好きのプレイヤーはわざわざワレスを選んだ人なので、問題はまったくないだろう。

どこをどのタイミングで攻めるか。包囲戦をいつ諦めるか。どのようなデッキに仕立て上げるか。どの方法で勝ちを収めるか。ゲームに必要な多くの戦術、戦略を試す事が出来る非常に優れたゲームだ。やり込めばやり込むほどに面白くなり、はったりなどの心理的要素まで含まれている。

このようにかなりのポテンシャルを秘めているくせに、プレイ感はテーマの割に重くない。何度もやりたいのだが、もう少しプレイ時間が短ければと思ってしまう。60分で終わるように慣れるまでやり込むのも手かも知れない。ブルームーン以来の二人用の大傑作ゲームの予感がした。

ちなみにネイティブアメリカンとなっているが、この時代はインディアンと呼ばれていたので、当時の雰囲気通りにやるならインディアンと呼んだ方が良いように思う。史実ではイギリスがケベックを陥落させて勝った。そのときに「数エーカーの雪を手に入れたにすぎない」という名台詞をはいた。

初版を持ってる人も以下のルール変更で二版と同じになるとの事。
・「本国の支援」カードをプレイしたとき、ドローデックに2枚以下のカードしかない場合、プレイヤーはそれらのカードをすべて引きますが、捨て札を混ぜて新たなドローデックを作ることはありません。たとえばドローデックにカードが2枚しかない場合、プレイヤーはその2枚しか引くことができません。
・プレイヤーは蓄積スペースに地域カードを置くことはできません。
・奇襲を行ったとき、プレイヤーは最初のカード1枚で、任意の支配地域から連絡路1本か2本でつながっている地域を奇襲することができます。さらに追加のカード1枚ごとに、奇襲範囲を連絡路1本分ずつ広げることができます。
・フランスの「川舟」カードをゲームから除外します。

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