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James Ernest
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Cheapass
Titanic Games
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3〜7人用
45分
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キルドクターラッキー DX版
(玄関に向かいやがった。しめしめ、今ならラッキーを殺せるぞ)
「あ、夕食はもうすぐ始まりますよ」
(ち、こんなところになんでこいつがいるんだ)
「いえいえ、ちょっと夕涼みにでも行こうかと」
(畜生。こうしている間にラッキーが部屋に戻ったじゃねぇか)
プレイ感
チーパスというアイデアだけで売り出している変わったメーカーがある。ボードは薄っぺらい紙に白黒のコピーをした申し訳程度の絵が描かれているカード類が入っているだけで、外箱はもちろんサイコロや駒は一切ついていない。こういった汎用性のあるものは自分で用意しなければならない。まさに同人誌である。その分、メーカーの名前通り値段は安くなっている。チーパスを有名にしたゲームにこのキルドクターラッキーがある。前々から興味はあったが、どうにも微妙な評価だったのと、自作するのがめんどくさかったので買うのに二の足を踏んでいたが、DX版が出たのでとうとう購入してみた。TAM、miaとの3人プレイにて。
基本はカードプレイである。カードには移動、凶器、失敗カードがある。移動カードは数字分進む移動力が書かれているものと、いきなりその部屋に移動できる部屋が書いてあるカードがある。自分の駒か、ラッキー博士を移動させるのだ。
このゲームの目的は、物騒なタイトル通り、ラッキー博士を殺す事だ。殺す為にはラッキー博士と二人っきりにならなくてはならず、また他のプレイヤーという目撃者のいない場所でやらなくてはならない。この洋館に集まっている全員がラッキー博士に殺意を抱いているにも関わらず、お互いがその事を知らないからだ。
洋館に招かれた3人。まさかこれほどまでにラッキー博士が憎まれていようとは本人は気づいていない。手番に、カードを使って移動する以外に、1マスだけ移動する事も出来る。名前の書いている大きな部屋で何もしなかった場合にのみカード補充が出来る。
序盤、ラッキー博士のきまぐれな移動により(ラッキー博士は、カード以外にも部屋の番号順に移動する)なかなかラッキー博士と二人っきりになる事が出来ない。
手札に上限はない。数字の書いてるのが殺害ポイントで、これに殺意マーカー分を足してラッキー博士の殺害の正否を決める。部屋の絵のカードはラッキー博士か自分をその部屋にいきなり移動させるカード。他に失敗カード、移動力の書いてあるカードがある。
しかし、そのうち、ラッキー博士を先回りして待ち伏せ出来る読みが出来てくる。
TAM「殺す」
TAMがわしらの目を盗んで二人っきりになってラッキーに襲いかかった。
危うしラッキー!
このままゲーム開始わずか5分で死んでしまうのか!
わし「はい、失敗ね」
他のプレイヤーは失敗カードを順番に出していき、殺意ポイント以上になったら殺害失敗となるのだ。
TAM「ま、最初はしょうがないですね」
TAMが殺害を試みようとするが、わしがしっかりと目撃している。ドアからドアへ、直線で視線を引く事が出来れば殺害を試みる事は出来ないのだ。誰も見ていないところでのみ殺害可能。
そう、最初は失敗カードがたくさんあり、確実に失敗する。ただ、失敗した場合殺意マーカーを貰うことが出来、次回から自動的にこの数分殺意ポイントがあがるという寸法だ。ちなみに失敗カードは、山札がなくなってリシャッフルする場合、抜いてシャッフルするので、後半に殺害は成功するようになっている。
うーん、なんとかラッキー博士と二人っきりになることは出来んもんか。というのも、最初のスタートマスである玄関で全員がたむろしており、なかなか死角が見つからない。ラッキーはどんどんと奥の部屋までいくし、移動カードはあまり使いたくないしと考えあぐねていたところ、部屋移動カードがやってきた。カードは出したら補充出来るのではなく、名前の書かれている部屋で何もしなかったら、1枚補充出来るのだ。移動はカードを使わずとも1マス進める事が出来るが、離れると目撃者となることが出来なくなるので、TAMのように殺害しようとする奴が現れる。
部屋を離れるタイミングが難しいと見計らっていたら、丁度、そのタイミングがやってきた。TAMとmiaが同じ部屋にたむろってる時にラッキーが2階に向かったのだ。
ここで部屋移動カードを使い、寝室で待ち伏せをする。
TAM「ああ、やべぇ」
わし「この必殺のジョークでぶっ殺してやる!」
※凶器カードはこういったもんで人は殺せんやろというのがいっぱい入っている。
失敗カードを出され、敢えなく失敗。
最初はなかなか目撃者がいるので殺害を試みる事は難しいが、だんだんと離れてくると殺害ポイント探しに奔走する。
しかしわしの狙いはこれではない。ラッキー博士を待ち伏せすることにより、追加のターンを迎える事が出来るのだ。こうやってラッキー博士につきまとい手札を増やして、再び殺害。
mia「わあ、危ない。じゃ、これで失敗」
うむ。別に殺意マーカーが増えるのでこれでよし。
こうやって、皆の殺害行動をひょいひょいと交わすラッキー博士を見ていると
TAM「なんか、ほんまにこいつ殺したくなってきました」
mia「ほんと殺意が芽生えてくるよ」
確かに苛つく。
プレイヤーの思いに比して、殺害マーカーもどんどんと溜まっていく。失敗カードもほとんど出尽くしたところ
TAM「殺す」
む、むう。このままでは殺害が成功してしまう。そういう場合、殺害マーカーを出す事で失敗カードと同様の効果を発揮出来る。が、そのマーカーを全てそのプレイヤーに渡さなければならないのだ。
現在一番殺意マーカー持っているのはmia。しかし、正面のTAMの連続殺害行為によってこの局面は劇手に変化する。
miaと手分けしたがmiaにごっそりともってかれる殺害マーカー。後半は手持ちの殺害マーカーの勝負である。
しかし、次の瞬間には、今度はわしが殺害を実行した。こうなると殺害マーカーが激しく移動するのみだ。
ごっそりと殺意マーカーを貯めるTAM。ラッキー博士の近くにおり、なおかつ、誰も見ていないではないか!
ここでTAMは部屋移動をうまく使い素早く2度の殺害を試みた。
ラッキー博士、命運尽きる。
TAM「やった! 最後は凶器がなくて素手でしたけど、こんなに殺意あったらねえ」
所要時間45分
TAMのコメント
ほんまに殺意が芽生えてくるゲームですね。おもろかった。
miaのコメント
これは楽しかった。
ソマーリオ
殺意マーカーをどれだけ出すかなんて事がプレイヤーに思いっきり委ねられている事で、ゲームとして完全に破綻している。もうすこしバランスの良くなるルールが出来ないかなどと考えてしまう。全てはタイミングで、相手にわざわざ殺意マーカーを使わせておいて、それから自分が試みるなんて方法が勝つ為に必須となる。勝ちにこだわるプレイヤー同士だと、こんなくそつまらないゲームもないように思う。ただ、それを差し置いても実際にやってみると行為自体はとても楽しいから評価に困る。賛否両論は当然のゲームだ。
特にラッキー博士の動き方が簡単な割に絶妙で、どこで待ち伏せしてやろうかと知恵を絞る事になる。人間は、普段悪いことが出来ないだけに、こういった似非ファンタジーにとても興奮するように出来ているようだ。
いや、むしろ相手を出し抜き二人っきりなるという行為自体がとても好きな動物なのかも知れない。例えばこれが、ラッキー博士を殺すのが目的ではなく、憧れのマドンナとセックスするというテーマでも同様に昂揚する筈である。その場合、このシステムそのまま流用出来る。
また名探偵クルードのところでも書いたが、こういったサスペンスタッチのゲームは女性受けがとてもいい。パズルチックなラッキー博士の動きといい、女性とゲームをしてみたいと思う人は、キルドクターラッキーをやってみると、すんなりとゲーム仲間にしていけるように思う。
コンポーネントをみてみると、DX版であるのだが、作りにまったくといい程センスがない。大味で下品なただでかいだけの木製の駒と殺意マーカー。カードや箱絵は、わしのアメリカ風劇画タッチで、どうにも好きになれない。また文中にもあったくだらない殺人道具。
ゲームの値段を考えると、備品類は少なくとても損した気分になってくる。
チーパス版のを買ってぺらぺらの紙でやる気も起きないので、これでしょうがないかとは思う。こちらにチーパス版の画像と和訳などルールが書かれている。バネスト公開のヴァリアントルールとWEBヴァリアントルール。
とは言うものの、あまりにも面白かったので、他のチーパスもちょっと欲しくなってしまった。ラッキー博士を沈没する船から救う、セーブドクターラッキーというのもあり、いくつか試してみたくなる。たしかTAMが魔女裁判を買うてたよなあ。わしもチーズの奴を持ってたんで、近いうちに試してみよう。
後日、最大の7人プレイをやってみた。あちこちで目撃者が増えてなかなか殺害に至らずにプレイ時間がやたらと増えると予想されたが、やってみると皆バラバラに上手く散らばって、殺害行動を起こす事が可能であった。またプレイ時間も60分ほどで終わり、人数が多い時に使うゲームとして重宝しそうだ。