自作ゲームについて一考(ねこねこについて)

実は、去年の年末に初めて自作ゲームをデザインした事がある。元カプコンの岡本専務がゲームリパブリックという会社を立ち上げた。

ちょっとした縁があって、そこに3つほどゲーム案を持っていったのだが、その中でねこねこを大層気に入られた。
ねこねこといえば、わしがその前々日に5分で考えたゲームなのである。ゲームの名前も「なんて名付けよう?」と聞かれた時に1秒で思いついた「ねこねこ」、そんなゲームだ。

自作ゲームを作られている諸先輩方の噂では「ねこねこというのは一体どんなゲームなんやろ?」となってると聞いたが、5分1秒で作られたゲームと答える。

よりにもよって、5分で考えたゲームを気に入りやがるとは、岡本めえー! とか思ったが、後の2つも1分と30分くらいで作ったゲームなので大差ないのである。

結局、ねこねこをもう少し手を加えて修正しようと考えた段階で、アイデアを譲って欲しいと言われ、手渡す事になった。気持ち程度の金額であったが、まあ、とりあえず名前を売る事が先決かなあという感じである。それでもひょっとして商品化するかも知れないと思うともう少し自分でいじって直したかったのだが、ねこねこは向こうの手によって修正されているようである。

危惧したプレイ時間も短くなっているし(ねこねこは軽く楽しめる感じのゲームとしてデザインした)、コンポーネントも出来上がりつつある感じなので、一体どうなるのかと不安半分興味半分である。まあ、本心を明かせば里親に出したような感じでちょっぴり寂しい。言いたい事はあるが、今のところ静観中である。

名前を売るという事を書いたからには、当然次のゲームも考えているのだが、とりあえず今度はゲームのコンクールに出してみようかなと思っている。まあ、こんなえらそうな事を書いているのだが、実は皆が忙しくほとんどテストプレイ出来る環境がないので、どこまで推敲出来るかは疑問だ。
ゲームをデザインしてて一番思った事は、テストプレイにどれだけ時間を割けるかによって面白くもつまらなくもなるといった事だ。さじ加減ひとつでごろっと変わってくるのだ。

こういったマイナーな世界にして残念に思う事は、ユーザーの強烈な自負心である。かつてPalmがそうであったように「自分たちはとっくにその良さを知っていた」という気持ちは大手が参入した時に嫉妬となって暴発するケースが多々ある。俺たちユーザーを無視するな、と。

悲しいかな、一般大衆が認知するには大手の強力な資本が必要で、同人レベルでちょこちょこやってても無駄なのである。かつてパソコンがおたくの代名詞だった頃、そのおたくの手でパソコンは普及したか? 同人誌でがんばっているアニメやコスプレは「おたく」を脱却出来たか? もし、かつてのジュリアナで毎週土曜日コスプレダンスを主催する企画があればコスプレファンはおたくを脱却していたかも知れない。

わしが言いたいのは、普及させたいのならば応援はせずとも足を引っ張るような意見を述べてはいけないという事である。いわゆる情報操作であるが、これはとても必要な事だ。PsionというPalmよりもマニアックなPDAがある。このユーザーグループもがんばっていたが、あるとき、ちょっとした資本が投入されかけた時、フリーソフトから転用したしないだのともめて、結局その資本は撤退してしまった。私はPsionがとても好きだったので、そのユーザーグループの経緯を全て知っている。皆が「あ!」と気づいた時にはあとの祭り、自分で自分の首を締めてしまったのだ。

ボードゲームは日本ではとても小さなシェアしかない。大きなシェアになったときに出てくる批判的意見と、小さなうちに出てくる批判的な意見とではその意味がまったく違ってくる。大きくなった時の意見は1ユーザーの希望であるのに対して、小さなうちにやってしまうのは致命傷となる。将来、その芽が大樹となり、周りを豊かにするかも知れないものを潰してしまうという事だ。ただ今まで自分がやってきた方法と違うから気に入らないというユーザーの自負心によって。

残念ながら同人レベルでは一般に普及させる事など不可能だ。それは趣味のレベルである。同人レベルの人が銀行から10億円ほど借金してボードゲーム会社を作るというガッツある人はいますか? いくらその考えが高尚で理にかなった素晴らしい物であろうと、力がなければ意味がないものなのだ。

ローマにグラックス兄弟というものがいた。この二人はローマで問題になっていった根本的問題を解決しようと農地改革を行おうとした。そして殺された。その100年後カエサルはほとんど同じ改革を成功させた。この二人にあった違いというものは分かりますか? カエサルにあってグラックス兄弟になかったもの。それは軍隊である。

もし同人レベルが一般普及する意味があるとすれば(またこれはとても重要な意味がある)、それを好きな人がいると大手資本に知って貰うということ、ただ一点である。Palmも割合初期の頃からユーザーグループに入っていたが、結局、ユーザーグループのおかげで日本語版が出来、さらにSONYが資本投入する運びとなった。もうひとつ、厳しい現実を書かせて貰うならば「優れたものが売れるとは限らない」という真実である。多くの人はここらへんを勘違いしている。カタンは多くの点でモノポリーより優れているが、現在でもモノポリーの方が売れている。PsionはWindowsCEより明らかに優れていたが、すでに生産中止である。ここらへんは大手資本に委ねるしかないだろう。

私はこのHPで国産ゲームの批判はできる限りしないでおこうと思う。自分でこれから大樹になるかも知れない芽を摘み取りたくないからだ。そこから普及して、海外のゲームが安く手に入ったり、日本語版が出たりといったおこぼれを貰った方が楽ちんである。国産デザイナーは誰でも応援したい。NO2というゲームが向こうで猿真似だとののしられてる事を考えると、悔しく思う。確かに猿真似と言われたら言い返せないので、もっと日本独自のゲームを出せるように応援したいのだ

当然、ジャンルは違えど大手は大手になった方法を使ってくるので、やり方が違うのも当然である。同人ありーの、借金して会社作るのありーの、持ち込みありーのである。大体やり方なんてそれが正しいなんてない。色々な方法があって然るべきだし、失敗したらしたでやり方を変えたら仕舞いである。今はそういった意味で日本のボードゲームデザイナーの試行錯誤の時期であろう。色々挑戦して欲しい。ひょっとしたらここで駄目だししてる同人から一気にメジャーまで行く可能性もある。何よりも、せっかくの楽しい趣味なんだから皆で育てたいという気持ちは持ちたいね。

※ まあ個人的にはアメリカやドイツのボードゲームのマーケティングが日本の同人ゲームを着目してるとは到底思えないし、日本のタカラやバンダイなどのボードゲームを出してるメーカーが外部のデザインを採用するとは思えない(これはとても寂しいことだ)ので、海外で出すように働きかけるのが今のところ一番現実味がある気がするが。

そんな感じで、ねこねこについてはどうか暖かく見守って欲しい。おそらく今までねこねこの真実について知っていた者はTAMとローさんだけであろう。向こうに迷惑がかかったらいけないと思って秘していたからだ。ローさんいわく、別に言うても大丈夫ちゃう? という事なので、こうして書いた。

今後の事だが、ねこねこを岡本さんが持ち込むというのであれば、次のゲームについては自分の手で出せたらなあと思っている。ちょこちょことテストしているが、身内レベルでは上々のようで、今のところやる気は失っていない。ねこねこがどうか私のとっかかりになる事を祈るばかりである。

世の中寂しいけどコネやからね。。。でも、ほんまに商品化してわしの名前が出るとなったらかなり嬉しいやろなあ! 結構楽しみー。

gioco del mondo