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坂上卓史
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Product Arts
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2〜4人
90分
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カンパニー
ようこそ。
開業手続きの案内所へ。
21世紀の現在、社会には様々な物やサービスが満ちあふれています。
しかし、すでにご存じの通り、経済はゆっくりと衰退に向かって動き出しています。
リスクを恐れない勇敢なあなた方は、経済に新しい波を生み出すことを決意されました。
一刻の猶予もありません。
さっそく、開業の準備を進めましょう。
プレイ感
ボードゲームをはじめよう!の店長に、とても面白いので是非レビューしてくださいと頼まれた。まあ、なんともチャレンジャーな人がいたもんだ。それよりも流通の関係上、同人ゲームについては、よっぽど気になったもん以外レビューせんとこと思ってたんで、正直に書いていいのならというのを念押しして引き受ける事にした。
時間がなかなか取れないので、miaと二人プレイすることにした。システムがドミニオンのデッキ構築型なれば、人数が少なくても同じように機能する筈である。早速届いたゲームは同人とは思えない程しっかりしており、箱をあけてみると、ルールブックに超濃い女がどでーんと印刷されてて、かなりの衝撃を受けた。これはAVならう○こを食わされるレベルの顔である。
これがその女性だ。このゲームで随一の働きをすることになる。
やり方はほぼドミニオンと同じ。市場カードがドミニオンの領土カード(勝利点カード)にあたり、これを買うには、お金ではなく、このゲーム特有の価値点を使って買う事になる。価値点は、基本的に商品を売る事でのみ得られる。商品というのは、このゲームがドミニオンとの違いを表している要素で、商品駒があり、これをメインボードからお金を使って購入し、売る時に価値点として得られるのだ。
行動は、フェイズ毎に1.アクション(経営カード Mのマーク)、2.売る(商品駒 Sのマーク)、3.買う(カードや商品駒 Bのマーク)と3つに分けられた。それぞれマークの数だけの行動が出来るという寸法だ。
お金で購入した商品駒は不動産カードにおき、売る場合は、価値点として市場カード(勝利点カード)を買う事になる。言い換えれば商品を売る行為では、市場カードしか手に入れることが出来ないという事だ。
青色は経営カード、灰色は不動産カード、一番下は左から借入金、負債、資本金カードである。資本金カードは0金で手に入る。
他に細かいルールはあるが、全体の流れはこんな感じである。終了条件は、3種類ある市場カードの1種類が売り切れた時か負債カードが売り切れた時で、全ての勝利点とマイナス点を合計して勝敗を決める。
市場ボード。勝利点となる3つのカードを並べる。市場カードは描かれている黄色のポーンの数が勝利点である。下の商品駒の周りのゲージは青色が売った時に貰える価値点(つまり上にある市場カードを買うのに使う)で、下の黄色が買う時に支払うお金だ。初期はサイコロによってゲージが決まる。価値点だけが、商品駒を売った時に1段階下がるというルールだ。
初期山札には、経営者カード1枚と、資本金カード(1金)が6枚、負債カードが3枚入っている。負債カードはこのゲームではマイナス点をもたらすだけのカードで、売るフェイズにお金を使って捨てる事が出来る。
わしの1手目は、負債カードをなくす作戦にでた。手札に負債2枚と資本金3枚があり、ルール的には好きなだけ償却出来る。負債1枚につき1金払うだけで償却出来る。ドミニオンの戦術として、デッキ圧縮方法があり、こういう無駄な負債を出来るだけ手元にこないようにさせるのが得策なのだ。
1金でオフィスカードの維持費を支払い、残りの2金で負債を償却する。償却時の金額がカード右上の銀色に囲まれた数値である。
2枚の負債カードを返却し、残りの1金でオフィスの維持費を支払う。オフィスなどの不動産カードは、ずっと場にオープン状態で置かれて、毎手番、効果を発揮する。その代わり、維持費がかかり、手番毎に維持費を支払わなければならない。お金が足りない場合や支払いたく時は、負債カードを受け取らなければならない。負債カードを受け取る唯一の方法だ。
2手目で負債を完済。これでわしのデッキには経営者カード1枚と資本金カード6枚しかない。これでぐるぐる回せばデッキとしては悪くない。
このゲームでは経営者カードは様々な種類が1枚ずつ入っているが、初心者に対して使いやすいアントレプレナー(起業家)だけは4枚入っており、今回、miaとわしはこれを入れる事にした。能力は、アクション+1と売る+1である。序盤は、商品を買うよりも資本金カードや経営カードを増やす事に力を注ぎたい。買う+1は不動産カードのオフィスにて毎手番コンスタントに実行できる。
アントレプレナーが最初に貰う経営者カードの一種。
さらにわしは、借入金カードを活用する戦法にでた。
借入金は3金で買う事ができ、手札として使うと2金になる。ただし最後まで返済しないとマイナス点だ。返済は3金で返済できる。3金で借りて3金で返すことが出来るとは、なんて良心的な銀行だろう。
このゲームでは資本金カードは1金しか存在しない。2金の価値は、手札枚数の上限が決まっているドミニオンシステムでは、1金の2倍以上の価値を持つ。そこに目をつけた。
そして3金あるごとに、借入金カードを購入する事になった。
miaもようやくそのことに気が付いて、借入金を購入しだした。
わし「うーむ、買う行為を増やしたい」
mia「そうねえ、買うが1回だけだもんねえ」
調べてみると、経理カードが買う+1である。
わし「お、この経理カードを買えばええんや」
経理カードは、先に書いたう○こ食わせられるレベルの女が描かれているカードで、効果は買う+1、2金、商品駒の仕入れ値を1段階動かして良い、である。なんつうマルチな能力。特に凄いのがそのままで2金の価値を生み出すところである。他にお金の替わりとなる経営カードはないので、キーカードとなるだろう。
2件目の不動産カード、倉庫を買う。これで商品駒をたくさん仕入れる事が出来る。カードの上に書いてる白の駒の数だけ置くことが出来るのだ。
これら不動産カードは買うとずっと表向きにおかれて効果を発揮するが、手番ごとに維持コストとして右上のオレンジに囲まれた数値を支払わなければならない。
ここでもうひとつ気づいた点がある。商品駒は黄色、青色、赤色と順番に金額も価値も高くなっている。一番安い黄色の商品が0金で手に入るのだ。確かに今、売っても0価値しかならないが、広告などを使う事で価値をあげてから売ればいいので、オフィスに置けるだけ買うとくのが得策だろう。
ある程度すると、借入金+経理戦法が功を奏してお金がようやく回り出す。
倉庫カード(不動産)も手に入れて、もっと高価な赤色商品を購入し、市場カードをばんばんと買い出すと、勝利に拍車が掛かった。市場カードは、ドミニオンの領土カードと違い、2金、3金、4金を生み出すカードなのだ。
mia「お金が苦しい。上手く回らない。最初に失敗したんが痛い」
この時点で70分経過。
隣の部屋で寝てた子供が起きた。
やっべー! 暴れられるので、継続不可となった。
おそらくこのまま行けば遅くとも20分後にはわしが市場カードを独占して勝利してたのは間違いない。
わし「90分コースか。意外と時間掛かるなあ。とりあえず、寝しなにもっかい再戦しよう」
…
わし「眠いので、早廻しでいくぞ」
2回目は二人とも要領を得ているので、かなり早廻しでプレイする事が出来た。
そしてmiaは前回の失敗をしっかりと踏まえたわしの初期戦法、負債早期返済、経理を使って順調に会社を拡大させる。
今回は黄色が価値が高い初期配置。
わしは前回とは違う作戦を試そうと、負債早期返済はしたものの、借り入れを少なくし、経理と早めの倉庫カード(不動産)を購入したがこれが大失敗だった。維持費が2金となり、これが思いっきり重くのしかかったのだ。前のように上手く廻らない。なんとか上手く廻そうと中盤になって借り入れを行うが、山となったデッキでは出現率が落ちてまったく効果があがらない。
早めに購入した不動産カードのせいで経営が圧迫される。
かたやmiaは、営業カード(経営カードで売り+2の効果)を買い、商品駒をバンバン売ることに成功。
このゲームの商品駒は売りが2回ないと厳しい。商品駒を2個売ることで、高価な市場カードを買うことが出来るのだ。1回だけでは、一番安いのしか手に入らない。
しょうがないので、倉庫の力を利用して商品駒を独占することで、miaの商品売買の勢力を削ごうとしたが、少ない商品駒であっても売っては買い、売っては買いと1手番で出来る為、完全に買い占める事が出来なくて、あっという間に一番安い市場カードを買い占められゲーム終了。
計算せずとも完全に負け。
所要時間45分
最後は勝利点はこんなけしか手に入れられなかった。しかも借入金のマイナスが2点もある。
miaのコメント
良くも悪くもドミニオンだねえ。ただテーマが身近なものになった分、悪くない気がする。早廻しでないと少し時間が掛かるのがネックかな。
ソマーリオ
ルールを読んでると、ドミニオンから逸脱した何かがあるのかなと期待したのだが、プレイ感にそんなに大差はないという印象だった。ドミニオンのシステムを経営という大人向けにテーマ変更したという感じである。
作者は商品駒の売買による、勝利点カードの取得を全面に出したかったに違いない。だが、残念ながらその手段は違ったとしても、やはりドミニオンの領土カード取得とそんなに差を感じる事は出来なかった。
ここをどう判断するかでこのゲームの評価は単なるドミニオンクローンか、新たなデッキ構築ゲームかに大きく分かれるだろう。思うに商品駒に全体の場に及ぼす影響力がないのだ。プレイヤー間で需要が高まれば、価格がつり上がり、低ければ価格が下がる、そういう仕組みがこのゲームにはない。
カードで価値を上下させるだけではドミニオンを脱却出来ていない。ではなくて、今まさにゲームを行っているプレイヤー間で、そうなってしまうようなシステムを考えて欲しかった。
デッキ構築はカードハンドリングの手段に過ぎず、本懐は別にある、そういうものだ。
プレイ時間は勝利するために必要な商品駒を買う、売る、という行為が2手間増えたおかげで90分クラスとドミニオンよりかかるようになってしまった。この部分は初期の手札を強くするなどして少し見直しして欲しい。このボリュームだと60分くらいが妥当だ。
他に気になったのはカード名称と効果のギャップ。経理でお金を生み出すのはおかしい。お金を生み出すのは営業である。このカード効果に近いのは資金調達で、それは財務の仕事だ。でも資金調達というのは何もないところから生み出すのではないので、資本金カードや借入金カードを手に入れる行為自体が財務の仕事となっている。このゲームに登場させるなら、2金能力の有価証券カードを用意して財務のみが手に入れる事が出来るとするとすっきりするかも知れん。
自分のデッキをみて経理の多い会社やなあと思うと少し可笑しかった。買値を変更できるのも経理ではなく、購買の仕事だろう。また事務処理を行う総務は、経営にどうのこうの関与できるような部門ではない。総務に割り当てられている効果はリストラだと思われる。リストラというのは人員整理の代名詞となってるがそもそもの意味はリストラクチャであり経営の立て直しという意味だ。
負債カードについては改良が必要だろう。そもそも負債は役に立たないというものではなく、負債を抱えることで、より大きな仕事が出来るようにする大切な資金源なのだ。このゲームのシステムでも負債カードは一切役に立っていない。すぐに償却した方が絶対に有利だからだ。
※わざわざ人数に合わせて負債カードの枚数を制限するので、わしのルール解釈が間違ってるのかも。
むしろ、借入金カードの使い方こそ負債カードに相応しい。こちらはお金として使うことが出来るので、資金源として十分な意味を持つ。そもそも借入金は負債の一種である。このカードは、経営ゲームには欠かすことが出来ない。このゲームで最も評価したいところだ。
不動産カードの使い方については、面白い試みだと思った。維持コストによって制限されるというのはなかなかに良いアイデアだ。あれば有利なのだが、固定費としてのリスクがあるというジレンマを生んでいる。
細かいところをあげれば、なんで広告は他社のものまで一緒に価値が上がんねんとか、広報しか価値を上げる方法がないのはおかしいとか、派遣切りさせたくなるような能力にしろとか色々あるが、その部分はシステム上の演出という事で。
コンポーネントは、同人とは思えない出来でしっかりしている。カードの絵はかなり濃くて個性的だが、作者が絵も描いてるようだ。最初は面食らったが、別に嫌味な感じもなく、これはこれで悪くない。
このゲームで気づいたがドミニオンと会社経営の親和性は悪くなく、拡大再生産というテーマに向いているように思う。自分の会社には本業を忘れて経理が多いというへんてこな現象もあるが、それさえ目を瞑れば経営ゲームとしての及第点はクリアしている。
勝つためには、メインボードの商品駒の価値とにらめっこしながら、デッキを組み立てる必要がある。ドミニオンでは今回ゲームに使うカードの種類によって、勝利への方程式を変更させたが、カンパニーでは、商品駒のさいころによる初期設定と、ドミニオンよりも少し濃くなった他プレイヤーとの絡みで違うデッキにした方が有利というケースがある。
ただし、初心者にはどうやったらお金が廻るか解らず、出遅れると挽回は難しいゲームなので、大人向けのゲームであるのは間違いない。ルールブックに勝つためのヒントを書いてくれれば良かった。もうひとつ、ルールには進行に関する1手番の例も載せて欲しかった。最初、市場カード(勝利点カード)は買うフェイズで買う+1を使って買うものと間違ってプレイしていた。ルールをよく読めば、市場カードだけは、売るフェイズに商品駒を売って好きな枚数買う事が出来る。
大阪のゲームマーケットでテストプレイでの評価も高く、発売後2時間で売り切れたらしい。行けなかった人もボードゲームをはじめよう!で発売しているので、経営ゲームが好きな方はチェックしてみるといいだろう。