ゲームブック復活

去年はマッドマックスの新作映画で大興奮したので、帰ってきてネットで検索を掛けてたらフリーウェイの戦士というマッドマックスチックなゲームブックが引っ掛かった。そういえばそんなんあったなあと懐かしく思う。
今の子供らはあまり知らないと思うが、ゲームブックは読者の選択によってストーリーの展開が変わるTVゲームでいうところのアドベンチャーゲームの本版である。数百のパラグラフで構成されており、○○したければ31へ、出なければ85へいけ、みたいにパラグラフ番号を辿ることで物語りが展開されるのだ。もちろんゲームブックという名の通り、サイコロを使って攻撃を行うなどゲーム性があるものがほとんどだ。

海外ではそんなのがあるというのだけを伝え聞いていただけだったが、1984年に社会思想社から火吹山の魔法使いが発売された。
この本は、非常に良く出来ていて、マッピングも可能だった。
初めて宝箱を開けるときのあのドキドキ感は、もう二度と味わえない。
のちにそのまんまボードゲームにもなっている。高値で取引されたりしてるので、この本がどれだけ人気があったか解るだろう。

その後も魔法ルールを加えたバルサスの要塞など、ファイティングファンタジーシリーズとして次々に発売したが、段々とワンパターン化して、わしゃ途中で買うのを辞めてしまった。

ゲームブックは当時、高価だったパソコンのアドベンチャーゲームの廉価版ともいえたが、悪貨が良貨を駆逐するように低品質なゲームブックが続々と発売され、ブームは終焉に向かっていった。
まあここらへんは、わしの曖昧な記憶よりもWikiで調べてみて欲しい。

※ゲームブックのシステムを逆輸入した世界樹の迷宮というDSのゲームもある。

で、何を書きたいかと言うと、Kindleをいじってるとふと、ゲームブックのKindle版が出てたら、リンクが貼られてめっちゃ楽なんちゃうかとアマゾンで調べた事による。
あるわ、あるわ。
というよりほとんどがFT書房というところから出ている。これまた調べてみると、当時ゲームブックに嵌った人が、もう一度ゲームブックの良さを解って貰おうと立ち上げた会社のようだ。

龍の山の神殿というのが非常に評価が高い。パラグラフは600もあるが、1200円と高いので二の足を踏む。
しかしよく見るとアマゾンプライムライブラリーの指定本となっていた。図書館のように無料で借りられるという事だ。やったー!

というわけで、落としてやってみた。さいころは面倒なのでiPhoneアプリで、記述はBoogieBoardでやることにした。

これが実に素晴らしい本だった。
作者の後書きにある通り、単純にパラグラフの指定だけではなく、ほぼ全ページにわたり情景描写をきちんと書き、読者に物語に没頭し進むべき方向の動機付けを与えている。酷いのになると何の情報もないまま、北へいくなら129、西へいくなら31へ、というのを連発してて、これならそのままパラグラフの数字でも大差ないというものさえあった。

書式や挿絵についても、当時のそのままを出来る限り再現していて、気持ち悪いくらいにすんなり読めた。挿絵のタッチはそのままで驚きを禁じ得ない。
また思った通りKindleのリンクがよく機能しており、さっとパラグラフに飛ぶので物語に完全に没頭できる。(120のパラグラフにはリンクミスがあるので注意)

登場するアイテムは非常に多くて、どのように役立てるかは何度かやらないと解らない。凄いボリュームがある。少し残念なのは手に入れたアイテム名が解りにくく、書式に従い○○を加える事と名称をきちんと確定させて欲しかった。よく似たアイテムが出てくるので、これで合うてるんかな? とリンクを辿る事もあった。

戦闘については、攻守のターンがあるので、これはちょっと煩わしい。ファイティングファンタジーシリーズのように攻守は一度にすべきだと思う。

いくつか改善して欲しいところはあるが、それはこの作品が全盛期のファイティングファンタジーやソーサリーの後継と言われても納得できるほどの素晴らしい内容であるからだ。
FT書房のサイトをみると、質の高いゲームブックに必要なものとして、しっかりとした描写と挿絵と書かれていて、なるほどと唸らされた。確かに龍の山の神殿には両方とも備わっている。

そのほかにも調べてみるとiOSアプリでソーサリーが発売されている。こちらは思いっきり凝っていて、現在地を示す地図があったり、音楽が流れたりと、アニメーションしたり、リンクジャンプではなく文章が下に足されていったりと、原作の良さをそのまま活かした素晴らしいものとなっているようだ。残念ながらまだ1巻のみの発売で英語版だけなので、是非日本語版を出して欲しいところ。ここまでくるとゲームブックではなくて、完全に普通のゲームである。

ちゅうわけで、細々とゲームブックが復活しつつあるので、わしも細々と応援していきたい。
Kindle版は物語に没頭できるのでええで、ほんま。難しいやろうけど、体力とか持ち物をそのままメモ出来たら最高なんやけどな。

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